第38話 郭嘉の秘密
翌日。これまでと同様、程立さんに導かれて庵の中に入る。
「お入り下さい。私が表に出ない理由。それは“これ”なのです。」
郭嘉さんは目に巻いていた包帯を取り、目を開いた。
「!」
左目は黒だけど、右目は白だった。
オッドアイ。左右の目の色が違う。
俺にとっては単なる”遺伝子の悪戯”なのだけど、この世界では”呪い”だとか“祟り”扱いされるだろうなあ……。
「皆さん、あまり驚いていませんね。 親と風以外に見せるのはこれが初めてなのですが、親からは“呪われた子”・”祟り”扱いされました。」
「ご主人様が驚かないのならば、恐れることではない。そういうことです。」
「ええ。」
「俺の世界では珍しいけど居るから。実際に見るのは初めてだけどね。普通に見えるんでしょ?」
「ええ。包帯越しでも見えるくらいです。」
「なら大丈夫だよ。それに、俺の仲間には赤目、赤髪、桃髪、いろんな子が居るよ。程立さんだって金色の髪じゃない。嫌なら俺たち4人以外には見せなければいい。それだけさ。」
「ありがとうございます。私の真名は水晶といいます。」
水晶……。何もかも見通す、そんな真名だ。ピッタリだ。
「風の真名は風なのですよ-。良かったですね、水晶ちゃん。」
そうして真名を交換した。
「ということは、仲間になってくれる……のかな?」
「それは……。」
水晶さんは口籠もり、それから激しく咳き込んだ。
「私はそれほど長くないかもしれません。それでも良ければ力になりましょう。」
「水晶ちゃんは昔から体が弱いのです……。」
「治す方法は無いのか?」
「一つだけ。“華北の桃髪”という鍼灸師に会うことです。その人物ならば治療できるようです。」
「華北の桃髪……。名前は分からないのか?」
「それが……。一切読めません。会えるかどうかは読む気にもなりませんでした。」
「会おう。鍼灸師、仲間にしよう。一緒に来て、くれるよね?」
「はい。不肖、郭奉孝。力になりましょう。」
「一つよろしいですか?」
と、今まで黙っていた福莱が口を開いた。どうしたのだろう。
「一つ質問をさせて下さい。
”前方に谷があります。道は、1人ずつしか通れない小さな吊り橋があるのみです。私たちは100人の集団で、ここから逃げるつもりです。しかし、後ろから敵将が追撃にきています。敵将は、こちらの将が一人降伏するならば他の将や兵は見逃してくれると言っています。”
さて、水晶さんに判断を委ねられたなら、どうしますか?」
「それ以外の情報はないのですか?」
「ないです。」
「その状況になってみるまではわかりませんね。ただ、私が居ればそんな状況に陥ることはない。そう断言します。それが軍師の務めですから。」
「ありがとうございます。」
これだ。この自信。福莱たちとの違い。それはここだけ。能力的に大きな違いは無いだろう。しかし、ここが違うんだ。
一晩、庵で休み、出発。福莱の母と会い、共に来て貰うことにした。
道中で風が“日輪を捧げ持つ夢”を見て、それについてどう解釈すべきか、そんな話が持ちあがった。皆の意見は一致。“日”を“立”てる“昱”に改名する。ということ。そうしてついに“程昱”が誕生した。
そんなことがありながら、俺たちはもう一つの、最後の目的地へとたどり着いた。
水鏡女学院へと。
キャラクター紹介
郭嘉 字は奉孝 真名は水晶
実は真恋姫発売前に恋姫2次を考えたことがあるのですが、そのときに郭嘉の真名として考えたのが「水晶」でした。○年越しの真名です。
由来は、全てを見通す“戦局の予言者”とまで言える正史や演義での活躍、そして眼の色からです。
彼に関するエピソードはキリがないほど沢山あります。紹介するとネタバレになってしまい、つまらなくなるので35話の後半部にある一刀の説明くらいに留めておきます。
その業績は不気味でさえあります。それほどに凄いです、とだけ言っておきます。
歴史に“if”は意味がありませんが、彼と周瑜がせめてあと10年長生きしていれば歴史は大きく変わっていたでしょう。
(コメント)
真恋姫のファンブックでかんたか氏が「カタブツなイメージのある郭嘉ですが」と書いていたり革命のキャラ紹介で真面目な~と書いてあるのが個人的にはものすごく謎です。その印象はどこから来たのか……? 基本“不良軍師”でどっちかというとアウトローな人物なのですが。
程立(昱) 字は仲徳 真名は風
なぜか郭嘉の引き立て役になってしまいました……。すみません。
“十面埋伏の計”など、数々の献策を行った名軍師です。“ダーク”なイメージのある人物ですが、実際は堅実で清廉な人物とみる向きもあるようです。
(コメント)
フシギちゃん? なかなか面白いアレンジです。
宝慧、出す? 出さない?
後書き
尺の関係でかなり短くなりました。すみません。 “華北の桃髪”は実在のある人物の呼び名のパロディです。
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第3章 北郷たちの旅 新たなる仲間を求めて
現実世界において差別を助長するような意図はないことをお断りしておきます。