毒を塗った杯による殺害計画は計算外の人間、美以によって破綻した。
その手の策が不可能だと思った何太后は、二つ目の策を行うべく行動を開始した。
両手をゆっくりと合わせる何太后。
侍女の一人がそれを見て、コクリと頷き、一刀の方へゆっくりと歩いていく。
そして、一刀の背後を通り過ぎようとした瞬間、袖に仕込んでいた小さな針を手に一刀の首を刺そうと・・・
ヒュッ!
高速で飛んできた箸が侍女の手を掠めて、壁に突き刺さった。
「ん?」
振り向く一刀。
「お、おほほ・・・・・・」
侍女は針を軽く握って隠し、そそくさと引っ込んでいった。
ちなみに、箸の飛んできた方向には、
「代わりの箸を持ってくるのです」
「はぐはぐ・・・・・・」
顔色一つ変えず箸をもってくるよう言うねねと、相変わらず食べまくっている恋の姿があったのだった・・・・・・
一刀は厠へ行くと言って、会場を抜け出した。
「全く、ここまで露骨だと怒りを通り越して呆れるな」
実は、あの後も幾度か一刀の殺害を狙った作戦は続けられたのだが、一刀とその仲間達の働きによって全て未遂に終わっていたのである。
「何でそこまで俺を殺したいんだか・・・・・・」
「自分より力がある者がいると知れば、排除すれば安全だと考えても仕方ないでしょう?」
「排除される方はたまったもんじゃないっつ~の・・・・・・ん?」
一刀が振り返ると、そこには秋蘭を連れた華琳の姿があった。
「久しぶりね」
「ああ、こうして話すのは麗羽と一緒に会った時以来か?」
「そうね。それにしても、短い間に随分出世したものね」
「パッとしない男でも出世は出来るみたいだな」
「・・・・・・嫌味な男ね」
「あんたが言った事だろ?身から出た錆だ」
一刀の言葉に華琳は苦笑いしつつ肩を竦ませた。
「で?あんたは帝側の人間か?」
「だとしたら?」
一刀と華琳の視線が火花を散らす。
華琳の後ろでは秋蘭がいつでも飛び出せるよう身構えているようだ。
「だとしたら、聞いてみたいかな?」
「聞く?」
「帝について勝算があるかどうか」
「・・・・・・」
「あるか?」
「・・・・・・はっきり言って薄いわね」
「そうだろうな。で?やっぱ帝側か?」
「それは・・・・・・」
「ああ、やっぱ言わなくていいや。今から提案する事はどっち側でも関係ない事だし」
「?」
「実は面白い事考えてんだけど、乗らねえか?」
一刀たちが戻ってきた後、痺れを切らした何太后は、ついに奥の手を使うことにした。
指を二回鳴らす何太后。
直後、高官の男が立ち上がり、帝の方へ近付いていった。
そして、
「お覚悟を!!」
懐から短刀を取り出し、突如帝に襲い掛かった。
ただ、それ自体は護衛の兵士によって帝に刃が届く前に取り押さえられたため問題ではなかった。
問題は、その後である。
何太后が何故このような真似をしたのかと問いただし、兵士に拘束されたままの男はこう言ったのだ。
「・・・・・・ほ、北郷一刀に脅されて、やりました」
その一言が出た途端、何太后は北郷一刀を拘束するよう兵士達に命令した。
あっというまに囲まれる一刀。
ここで捕まったが最後、言い訳も出来ない状況が出来上がっているのだろう。
「やれやれ」
頭を掻きながら一刀はゆっくりと立ち上がった・・・・・・
「自分を狙った人間の言葉をあっさり信じるとは、どういう訳なんだか・・・・・・」
「黙れ!帝を狙うなど大それた事を!引ったてい!!」
「小物は黙ってろ!!」
一刀の一喝で怯む兵士と帝陣営の人間たち。
「君、君たらざれば、臣、臣たらず! 帝のためなら何をやってもいいと思ってる馬鹿野郎共!茶番は終わりだ!!」
一刀が手を上げると、まず猪々子、斗詩、美以が立ち上がった。
続いて董卓陣営の五人が立ち上がり、更に曹操陣営の四人も立ち上がった。
美羽と七乃は・・・・・・猪々子たちの背後に隠れた。
「と、董卓殿!曹操殿!どういうおつもりか!?」
「命の恩人に恩を返す。それだけです」
「無能な君には付き合いきれませんので」
立ち上がった者達が完全に敵対する気だと分かった帝陣営の人間たちは、一気に青ざめた。
これだけの将たちが一斉に反旗を翻し、更に親衛隊などを除き、洛陽にいる兵士たちは多数が董卓軍の兵士で占められているのだ。
絶体絶命の状況で帝は失禁し、座ったまま意識を失っていた。
何太后は膝を突き、呆然としている。
「さて、どうしてくれようか・・・・・・」
ポキポキと指を鳴らす一刀。
こうしてさしたる抵抗も無く帝は敗北し、
漢帝国は突然の終焉を迎える事になったのであった・・・・・・
おまけ
囚われの身となった帝、何太后はある場所へと移送された。
それは、蜀のとある場所にある古びた館。
そう、そこはかつて一刀たちが肝試しを行った四人のアヤカシが出る恐怖の館だった。
ちなみに、外史が始まった時から死人だった彼女達に人間の法則はあてはまらないのか、彼女たちは前の外史の記憶を持っており、一刀はあっさりと帝たちの事を頼む事が出来た。
その一室の隅で帝と何太后はへたり込み、震えていた。
そんな帝と何太后を見下ろす人影があった。
「・・・・・・」
それは、この館最大の恐怖ともいえる母親の霊であった。
この一室で一刀の許しが出るまで生活する事。
それが散々一刀を陥れようとしたこの二人への罰となったのである(他の者達の多くは強制労働行き)
ところで、一刀は今回の事を頼むにあたって、この母親にある贈り物をした。
それは漠然とした不安感をマスコットにしたものであり
しかも意外に気に入られたようで
母親は壁や床、天井にそのイラストを描きまくり
部屋はますますカオスな様相になったのだとさ・・・・・・
ちゃんちゃん♪
どうも、アキナスです。
戦力差を考えれば当然といった感じでしょうか?
派手な戦いを期待していた人がいたらごめんなさい。
というか、ぶっちゃけるとここからが本番です。
帝不在のこの状況、国を束ねるのは一刀なのか?
一刀が華琳に言った面白い事とは何か?
それでは次回に・・・・・・
「エロゲ限定版パッケージ縛り!!」
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分かってた事ですがね・・・・・・