No.678205

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第028話

こんにちは。
私はふと思いました。
皆さん、『ジャンヌ・ダルク』ってご存知ですよね。
フランスを救う為に戦った聖人です。

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2014-04-12 13:07:14 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:1165   閲覧ユーザー数:1053

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第028話「鬼と龍の会談」

重昌達は精鋭を引き連れ長安を起ち、途中漢中にて絢香と合流し5,000の軍で江陵に向かった。

荊州を収める劉表と三国同盟の和議を行うためだ。

使者に寄越した一刀が戻ってき話を聞くと、会談への話は恙無(つつがな)く終わり、だが一刀は重昌にくれぐれも警戒は怠らないようにと注意を促した。

白龍がどれほど宴席で一刀をもてなそうとも、使者として来ている彼を友ともてなすと同時に、彼に対する警戒の目だけは決して取り除くことは無かったのを一刀は気付いていた。

一刀が知らない間に白龍も国主としてまた一段と成長していた……いや、あれが本来の白龍、劉景升の本当の姿のだろう。

それを聞くと重昌はニヤついた。

「面白い。……『荊州の劉』、楽しみだ」

やがて絢香と共に江陵に着き、劉表は5,000の行軍を領内に出迎え入れ、重昌と絢香を含め、一部の将達を大広間に寄越した。

そこには丸い円卓があり、三人はそれぞれ同じ間隔を開けて座り、重昌の後ろには紅音と美雨、紅音の後ろには一刀と胡花、劉表の後ろには劉備と関羽が控えていた。

尚、恋歌と蓮華は少し距離が離れた所で待機していた。

「お二方、今日は遠路はるばるご苦労でござった。改めて紹介させてもらうが、私が荊州刺史、劉景升です」

「涼州刺史、影村タナトスです」

「……漢中太守、張公祺(こうき)

少し絢香が遠慮しがちで話したが、そんなことは気にせずに劉表は続きを話し出す。

「さて、なんの因果か判らないが、我らは一刀殿のおかげでこうして顔を会わすことが出来た。今回、我々が互いに手を結び、この戦乱の大陸を静める件についてだが、まぁ堅苦しい話は、酒と料理を嗜みながら話し合いましょう」

劉表が手を鳴らすと、料理を運んだ料理人が出てきて、続々と円卓に料理を並べていく。

「さぁさぁ、近頃私の国では豚の飼育に力を入れておりまして、今回の料理は荊州の豚を惜しげもなく使った料理となっています」

その言葉通り惜しげもなく料理の数々に絢香は少し言葉を失うが、未だに重昌の前には一つの料理もきてはいなかった。

「……劉表殿?何故、未だ我が主のところには一つの料理もきていないのか?」

紅音がそれを不満に思い劉表にそう問いかけた。

「いやいや、影村殿は今回この会談を設けるきっかけを作って下さった方だ。影村殿には最上級の料理を用意している」

しばらくすると、料理人が4人がかりで何やら大きな蓋の付いた皿を運び、円卓上の重昌の前に置いた。

その蓋を開けると、そこに入っていたのは頭を射抜かれた豚の死体であった。

「どうぞ影村殿。今先程仕留めた豚の丸かじりで御座います。死後時間も経過していないので、肉体は死滅しておらず、血の滴る肉の味は格別ですぞ」

にこやかに豚の死骸を勧める劉表。

その光景に皆鼻を腕でおおう様に紡ぎ、重昌と一刀だけは表情を崩さないままであった。

あまりの壮絶さに雅は怒りの声を挙げようとしたが、彼女は何処かからの視線を感じると思い止まり、視線を追うとその先には一刀がおり、彼は目で何か語っていた。

それは「待て!!」っと言うように聞こえたので、雅は黙ってその光景を見守った。

「……ふふふ、これは重畳。豚の生肉ですか。しかしこれを食べるには大変骨が要りますな。酒でもあれば喜ばしいのですが」

「大丈夫。ちゃんと用意してある」

劉表が重昌に用意した酒は、この時代では宴会の際に用いられる様な一壺の酒であった。

またコップなどの杯は無い。

「酒まで用意してくれるとはかたじけない。しかし少し工夫を凝らしたい。今近くに妻を控えさせているので呼んでもよろしいか?」

劉表の明らかな挑発に対して彼が何を気になったので、劉表は重昌が連れて来たという『妻』の同伴を許可した。

ちょっとだけ時を戻して恋歌と蓮華側では。

劉表が用意したのは豚の死骸であった。

それはとても料理と呼べるものではなく、蓮華は劉表のそれらの行動に歯軋りをした。

「……劉表、お屋形様を愚弄するか?だから私はあの様な男など信用におけなかったのだ」

蓮華のあからさまな劉表に対する殺意に、恋歌はクスリと笑った。

「恋歌様、何がおかしいのです」

その矛先を恋歌に向けるのは違っているのはわかっていたが、つい蓮華は怒りながら恋歌に問いかけてしまった。

尚、恋歌と蓮華は荊州に到着するまでの行軍の際に、真名を交換しあっています。

「いえいえ、蓮華ちゃんもまだまだ若いなって」

少し馬鹿にされた様な気分になったので、蓮華はムスリとした表情でまた恋歌に問いかけた。

「劉表と貴女のお母様である孫堅は、元は友だったのよね?貴女のお母様のことはよくは知らないけど、『江東の虎』と言われた孫堅が、何故劉表と親密な友好関係を結んでいたか不思議に思わない?」

確かにその通りだ。

母親である孫堅は、娘である自分が言うのもなんであるが、戦場に出れば血を見るのが大好きな軽い『戦闘狂』になる。

そんな母親であったが、人を見る目は確かであり、恋歌に指摘されて思えば、何故母親は目の前のあの様な男と友好を結んでいたのか不思議に思えた。

「……重昌はね、試されているのよ」

「試されている?」

「そう。劉表はああして度がきついおふざけをしている様に見えるけど、見てみなさい。劉表の重昌を見るあの目を――」

恋歌に言われて劉表を見ると、確かに彼は笑っている。

一見、重昌を侮辱し楽しんでいる様に見えなくもないが、その目だけはしっかりと重昌を見据え、彼の力量を計っている様であった。

「……見えるかしら?劉表の王としての気質が?」

また恋歌諭されながら落ち着いて劉表を観察すると、チャラけている様に見えてもその気に隙は無く、まるでその昔に母が自分に見せてくれた王の気質にも似ていた。

やがて恋歌が重昌に呼ばれた。

「見てなさい蓮華ちゃん。私があいつを慕う、重昌の……王としての気質を――」

彼女は蓮華を連れて円卓の席に近づいていった。

「……!?炎蓮(いぇんれん)?」

「え?」

劉表は蓮華を見てその表情を変え、また自分とは違う名を口走った。

その名は、今は亡き蓮華の母・孫堅の真名である。

「劉表殿、誰かと勘違いしている様なら訂正しますが、彼女の名は孫仲謀。決して貴方が討った孫文台ではございませんよ」

「……あ、あぁ、そうか。いや、私としたことが、つい文台が黄泉の国から蘇って、私を討ちにきたのかと思ったよ」

劉表の表情を見たとき蓮華は「違う」と思った。

一瞬見せた劉表の表情は、今再び友と再開出来た事への驚きと戸惑い、そして喜びに見え。

また、重昌に指摘されてからの落ち着きを取り戻す間に見せた表情は、懺悔と後悔にも見えた。

そうしている間に、恋歌は腕をまくり、重昌は片手で豚を掴んで上空に放り投げ、恋歌は大皿を掴んで豚と共に飛び上がり、豚の体にそって何か腕を振るっている。

彼女が着地し、豚も彼女の持つ大皿に乗ると、改めて恋歌は重昌の前に大皿を置いた。

「さて、それではいただくとしますか」

彼が軽く豚を叩くと、豚の皮は四方から勝手に剥がれていき、やがて皮なしの豚の肉塊となった。

重昌は着物の上着を恋歌に預け、手刀で豚と切り刻みながらモリモリとその肉を食べていき、その光景は虎が狩った鹿の肉を食べている光景に似ており、劉表も絢香も食欲を失うに十分であった。

そのうちに重昌は骨と腸以外全てたいらげ、最後に口直しと称して瓶の酒をガブガブと一気に飲み干してしまった。

血だらけの口と手を拭き取ると、重昌は劉表に問いかけた。

「劉表殿、馬の生肉を食べたことはあるか?」

「あ、あぁ、私が若い頃に内乱の掃討に向かった時だ。私は反乱軍の計略にかかり、籠城していた城は包囲され、食料が尽きた頃だ。援軍が来るまでその飢えを馬の肉で凌いだことがある」

「ならば人肉は?」

「……………なんだって?」

彼は重昌の言っていることが判らずに問いを問いで返した。

人肉とは人間の肉なのは判っている。

次に彼が発せられる言葉を聞きたくないながらも、劉表はその問いに激怒した。

「あ、あるわけなかろうて!!どんなに飢えを防ごうとも人肉を喰らうなど、それは人道に外れる行為だ!!」

「聞きたくない」っとただその思いだけが頭の中を駆け巡った。

その話に耳を塞ぎたくなったが、それでも重昌は話をやめなかった。

そして言った「私はあるぞ」……っと。

聞きたくはなかった。

だが、本当に人間を捨てた者が目の前におり、その事実すら目を背けたくなった。

重昌は話しだした。

彼の故国での話だ。

一刀が生まれる前の若い時、当時彼にはそこにいる恋歌を含む4人の妻がいた。

武芸を嗜む者もいれば、知に富んだ者もいた。

戦場ではその腕を奮っていつも重昌を助け、彼曰く自慢の妻達だと。

しかし、そんな中で彼らに試練が訪れた。

重昌は自分の不注意で敵の計略にかかり、部隊は壊滅に近い状態になった。

劉表が経験したように、重昌も味方援軍が来るまで籠城戦を敢行した。

だが、いつまでたっても見方は来ず、そのうち食料は底をつき、彼の部下は一人一人と餓死していった。

自身を元来臆病で自己中心的な性格と言う重昌は、妻達の死ぬ姿を見たくない一心で、残る全ての食料を妻達に分け与えた。

自分は大丈夫だと嘘をついて。

しかしいくら精神は騙し通すことが出来ても、肉体を騙し通すことは限界が来る。

「自分が死んでも恋歌達が生き残ってくれればそれでもいい」その気持ちは確かにあったが、だが今ここで自分が死ねば自分を愛してくれている恋歌達のことだ。

きっと絶望のまま自分の後を追うように死んでいくか、籠城が破られ侵入してきた敵兵に恋歌達が犯されるかだ。

いくら精強な恋歌達とはいえ、衰弱し、槍も持てないようになれば捕まるのは時間の問題。

そんなことは絶対に起こすわけにはいかなかった。

諦めかけたその心に再び火が燃え上がり、彼は這いながらとある物体にかぶりついた。

そう、死んだ部下の死体だ。

腐っていたが幸い重昌が死体にかぶりつく様を見た者はいないことと、死体は蛆が沸く直前であったこと。

しかしそんなことは関係なかった。

たとえ蛆が沸こうとも、彼はその蛆ごと歯で粉々に噛み砕いて喰っただろう。

まだ血の水気が残る死体は食べても食べても血の塩分により乾きが潤うことは無かった。

途中意識が戻り、彼は自分が何をしているのかと性根と疑った。

鼻水と涙を流しながら、その頭に後悔と懺悔が蘇りながらも、彼は生き残るために再び部下の死体を喰らった。

気分は優れないまでも、重昌は何とか体を動かして、何処かで倒れていた馬の肉を切り刻んで恋歌達や生き残っている部下たちに分け与え、援軍が来るまで持ち堪えた。

その話を聞いてここにいる恋歌と一刀以外の誰もが顔を青ざめさせ、劉備は話に耐え切れず意識を失い関羽に支えられていた。

「私はあの飢えを乗り越えて、自分が喰らった部下達にも誓った。この様に人が飢えなくともいい世の中を作るっと。その為に劉表殿、是非とも貴方の力が必要だ」

「私の……力?」

我に戻った劉表は重昌に言われたことをオウム返しする。

「そうです。北は私、西南は張魯殿、東南は劉表殿に統治をお願いしたい。やがてこの統治が完成出来れば、徐々に国を一つにまとめ。最終的には大陸を一つにまとめあげ、半永久敵に続く人の世を作るのです」

「半永久?そこは永久ではないのか?」

劉表は華琳が言った同じ問いを重昌に訪ねた。

「残念ながらそれは無理というものです。人の世が続く限り、争いが絶えることはない。平和な世が来ても、いつかは壊れる。永久に続く平和、そんなものは幻想でしかないのです。だから作りませんか?共に出来るだけ長く続く安息の世の中を――」

彼は黙りそして間をおいてから重昌の問いに答えた。

「……一つ聞こう。もし、私が断れば?」

「その時はしかたありません。私の理想を叶えるために、貴方を踏み台にするまで」

「……飲み干せるか?この劉景升という名の瓶に入った老酒を全て」

※老酒とは、キツイお酒のこと

「必要とあらば、何杯でも」

「……仮に、貴方が飲み干せねば?」

「それなら仕方がない。私の下にいる誰かが代わって飲み干すでしょう」

そう言われるとまた黙る。

先程豚の皮を手刀で切り刻んだ影村の妻、豚の身を切り刻んだというのに、その手には一滴の血も付着していない。

これを見るだけでも影村の妻の実力は常識を逸脱しており、影村の下には友である一刀の様な優秀が星の数ほどおり、影村の様な賢人も幾人もいると聞く。

影村が志半ばで倒れようとも、次の影村の代行者が再び立ちふさがるに違いない。

それを相手にするのは、この身一つだけではいつかは潰れ、息子である劉琦や劉琮ではその者たちに対抗出来る実力も才覚も無い。

一つ考えた際に、劉表は提案を出した。

「それならば影村殿。ここは一つ賭けに出ませんか?」

「賭け?」

「私としては貴方と組むのも面白く思える。しかし貴方が私にとって薬となるか毒となるか確信が持てない。そこで私に確信を持たせる為に、互の将を出し合い、勝負しませんか?」

「それは面白い」

「ただし、貴方の奥方や一刀殿はダメです。その者を使われれば、今の私に勝ち目はない」

「私はそれでも構いません。そちらの将は?」

彼は少し考え、即座に答えた。

「そうですね……ならばこちらは関羽を出しましょう」

「それなら私は華雄です」

そう聞いた瞬間、雅は重昌に耳打ちした。

「お館様」

「なんだ?いくらなんでもその様な大事な一戦に私を使うなどと」

「……不安か?」

小さい声で二人は話し合うと、重昌は劉表に許可をもらってから、雅を連れて少し端に引っ込んだ。

「雅、何故不安なのだ?私は君の実力を勝って君を指名したんだぞ」

「お館様は私の実力を買いかぶり過ぎです。それに私は前回の世界にて愛紗……椿に斬られた者ですよ」

一刀にとっての始まりの外史にて、華雄は今の椿である関羽に斬られた。

劉表の後ろに控えている関羽も、椿程でないにしろ、前の世界の関羽(椿)以上の実力を誇っているに違いない。

そう判断できるのは、彼女の武将としての本能が、自身にそう告げるのだ。

「はっきり言おう。雅、今の君の実力は僅かながら関羽に届いていない。しかし、戦場においては実力が勝る者が勝者とも限らない。気候、油断、戦況、こういった現象により状況が覆ることなどよくあることだ」

そう諭されても未だに雅に自信は持てなく「しかし」と渋るが、「華固有」と彼女の名をはっきりと言い、彼女は自信喪失により丸まった背中を伸ばした。

「華雄、君が私についてから、君は少し遠慮しがちになっている。だがな、それでも私は君に期待をしている。それだけでは自信にならないか」

彼女の両肩に手を置くと、雅は両目を開けて「いきます」っと言った。

「勝ってこい。見事勝利したらなんでも一つ褒美を与えようではないか」

雅は自信と情熱を取り戻して、関羽との戦いに備えて獲物を取りに行くのだった。

 


 
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