No.676913

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第026話

以前の三国√の回にて、華雄姐さんの真名を勝手に作らせてもらったのですが、wikipedia見てたら華雄姐さん真名あったんですね。

まぁ所詮wikiですから、完全に信頼がおける情報とも限りませんが、とりあえずwikiさんに合わせて『雅』と改変しときました。
前作の方もそれで修正を入れて、これからもそれでいくつもりですので、また何かありましたらコメ下さい。

続きを表示

2014-04-06 22:35:46 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1241   閲覧ユーザー数:1126

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第026話「馬鹿と天才は紙一重」

劉弁を黒幕とした反董卓連合の舞台が終焉を迎えて瞬く経った後、劉協により漢王朝の体制基盤の見直しが行われたが、先の黄巾の乱に加え、最早漢王朝には天下を収める権力がないことが示され、大陸の各地では節々で新たな紛争が起きていた。

その矢先に、事件が起きた。

「何!?幽州の公孫瓉が冀州の袁紹と戦い敗れただと!?」

各地に放った物見からの報告を受けて、一刀は声を高くして物見の報告を繰り返した。

「はっ。これで河北の実権は袁紹が握ったことになります。公孫瓉は徐州の劉備まで落ち延びた模様です」

物見は報告を終えると、そのまま軍議室を後にし、重昌を中心とした円卓の前で、一刀達はこの議題を話し合った。

「私が調べた情報によれば、元の原因は二人の小さな意見の食い違いだそうです。それが発展してこれだけの大きな事態に」

三葉がそう言うと、椿(愛紗)がその報告に意を唱えた。

「果たして、それだけであろうか?」

「っと言うと?」

「袁紹は派手好きだ。恐らく、河北覇者とでも名乗りたく思い、幽州を攻めたということも考えられるのでは?」

「確かに、あの袁紹のことね。恐らくそういう考えの延長線じゃないかもね」

椿(愛紗)の意見に乗っかるように詠も話し、皆あれよこれよと話しをしていると、重昌の鉄扇がパチリと締まる音が響き渡り、皆静粛する。

「お前たちは袁紹のことを何も判っていない」

彼は立ち上がり、円卓を回るように歩き出し、一刀の後ろに控えていた香蘭に話を振り、「徐庶」と言われた瞬間、彼女は少し声が強張ってしまった。

「貴様の意見を聞こう。袁紹はホントに私利私欲の為に、軍を発したと思うか?」

彼女は2秒程考えた後、彼の問いに答え始める。

「確かに、彼女は派手好きではあります。しかし報告にある戦い方は、従来の彼女のものではありません。以前の彼女は戦法も何もなく、数で相手を蹂躙する戦い方でしたが、今回彼女は、幽州を攻め取る戦力だけを引き連れ、後は国に残しています。戦い方も決して深追いもせずに、ただ相手の戦力をゆっくりと削り取る戦い方です。また、以前の彼女は、自分の領国内でも、あまり良い政をしていたとは言えませんでしたが、今は色々改善されて、敵国である幽州でも、彼女は『名君』だと呼び声も高いです」

「そういうことだ。ちなみに付け加えるのであれば、近頃公孫瓉は五胡対策に力を入れすぎて、内政より軍務を優先し、人民の評価はあまりよろしくない。それを見据えた上での兵の進行。そしてさらに今は群雄割拠の時代。この袁紹の快進撃は一体次は何処に及ぶと思う?」

誰かが「徐州の劉備」と発言した時、重昌は机に地図を広げて大陸の徐州を鉄扇でさした。

「その通り。洛陽には曹操が居るし、皇帝も居る。いきなりそこを攻めるのは得策ではなく、今攻めるのであれば、当主交代から間もない徐州しかない。あの辺りは遺書があるとはいえ、先代の陶謙の威光が強すぎて、民もあの小娘に馴染みきっていない。いくらあの小娘の所に、関羽や趙雲の様な豪傑、諸葛亮や龐統の様な賢人がいようと、数の暴力には勝つことも出来ない。そしてその状況を黙って見過ごすわけもない人物もいる」

重昌は華琳が収める洛陽に青い齣を、袁術が収める陽州に黄色い齣を地図の上に置いた。

ついでに言うならば、袁紹は黒い齣です。

「徐州は肥えた土地だ。それをみすみす袁紹に渡すようなことを、曹操が行うわけがない。袁術も袁術で、袁紹に負けじと、必ず徐州取りに名乗りを出す筈。そして袁術が疲弊した頃を見計らって、その寝首を掻くのg―」

また誰かが「孫伯符」と言った時、重昌は「その通り」と言った。

黄色い齣は赤い齣に取り替えられ、彼は話を続ける。

「孫策は袁術を表舞台より排除した後、勢いそのままに呉を取り戻す。徐州は二大勢力によっての取り合いとなり、小娘も表舞台から退場する。曹操、袁紹もいずれどちらか消えるわけだ。……見ろ、こうして時代は動いていく。袁紹はそのきっかけを作ったに過ぎない。その様なことを実行する袁紹を、貴様達は本当に無能と言えるか?」

しばしの静寂の後、紅音が「しかし、袁紹は本当に何も考えていないで、この状況もたまたまかもしれないではないか?」と発言するが、重昌はこう答えた。

「それならばそれもまた運命。もし彼女が何も考えていない無能ならば、時代が彼女をこの舞台に導いたのだろう」っと。

やがて袁紹は重昌の読み通り、徐州獲得に動いた。

その袁紹にそうはさせじと、曹操、袁術も動き、徐州は三大勢力の戦いの渦の中に飲まれた。

しかし袁術は徐州侵攻の際、孫策のクーデターにより国を追われることとなり、徐州の劉備は、自らの意思を実現するため、自分に付き従う民を引き連れて叔父の劉表を頼り荊州へと逃亡した。

その劉備の陣にて、曹操や袁紹の追っ手を掻い潜った劉備達は、一息の安堵を漏らしながら荊州へと軍を進めていた。

「えへへ、それにしても良かったよ。星ちゃんがこんな街道を知っていたなんて」

「本当だぜ。私達が旅をしていた時なんか、こんな道聞いたことも無かったぞ」

後ろを歩く劉備と馬超は、そう談笑しているが、とうの先頭を歩く星と諸葛亮は、それ程嬉しそうな表情でもなかった。

「………星さん」

「朱里、このことはくれぐれも桃香様に話してくれるな。話せばあの人のことだ。今からでも引き返すなどと言い出しかねない」

「はい、判っています。この事実は……私の墓まで――」

そう言いながら、星は懐より、一つの地図を取り出していた。

この地図に書かれているのは、徐州から荊州まで安全な行路で進む方法が示されており、元の所持者は、実は星ではないのだ。

この地図は洛陽にて星が重昌に貰い受けた物である。

彼に「いつか使う日が来る」と言われ渡され、今日まで大事に保管していた。

その事実を知っているのは、軍師である諸葛亮と龐統のみ。

自らの主に言えば、重昌を嫌う彼女のことだ、恐らくどんな手を使っても従うことは無かったであろう。

諸葛亮も最後の最後までこの地図に頼らない方法を探し続けたが、それは徒労に終わり、結局は重昌の策に甘えるしかなくなっていた。

彼女も劉備と同じく、重昌の手のひらの上で踊らされているに過ぎなく、彼女の軍師としての誇りは、一人の男によってズタズタに引き裂かれているのだ。

だが彼女たちは諦めない。

自らの主の夢を実現するために。

なぜなら、諦めたらそこで全て終わってしまうのだから。

そんな中で劉備に付き従う、白馬に乗った武将がいた。

公孫瓉である。

彼女は袁紹に旧地を追われ、今は劉備の下にいるが、実は最初、長安の影村の下に逃げ込もうとも考えていた。

きっかけは反董卓連合の際、彼女は影村に同盟の話を持ち込まれていた。

この時、既に同盟相手に友の劉備がいる状態であったので、彼女に話を通さないわけにはいかなかった。

勝手に同盟を組めば彼女にこれからは不審な目で見られることは間違いなく、しかも彼女は影村を嫌っている。

それにこんな何の取り柄もない自分に、何故西涼一帯を統治する刺史が、こんな田舎豪族にそんな話を持ち出すのかと不思議でならなかった。

だが彼は言った。

「貴女の才能は、私が開花してやる。だから黙って私についてきて欲しい。もし仮に、貴女が心半ばで倒れそうになれば、まずは私の下に来てください。必ずや貴女を優遇致しましょう」

そう言われ、彼女は袁紹の追っ手を命からがら振り切った後、長安に向かう際に力尽き、劉備に拾われたのだ。

このまま自分が影村の下に向かえば、それは恩義をかけられた劉備に対し反する行いであり、それに自分が影村の下に向かうと判れば、彼女に何をされるかたまったものでもない。

【それでも桃香は親友だ。あいつの期待に答える為にも頑張らなくては。影村殿、申し訳ない。やはり私は、友を見捨てることは出来ない】

一方その頃袁紹側では。

「おーほっほっほ、進みなさい進みなさい。このまま華麗に華琳さんも蹴散らして、このワタクシが天下に覇を唱えますわ」

高笑いと共に、袁紹軍は徐州へと侵攻していた。

「……文ちゃん、最近、姫、変わったよね」

そんな袁紹を見ながら、顔良が文醜に同意を求める。

「そうか、アタイにはいつもの姫にしか見えないんだけど」

顔良にそう同意を求められるも、彼女は自分の短い髪を掻きながらイマイチピンとは来ていないみたいだ。

「そうだよ。だって、公孫瓉さんを攻める時だって、まず民のことを第一に考えての進軍だったし、それに最近は贅沢も控えて、内政にも力を入れてくれてるし」

「……確かに、そのおかげでアタイらも仕事もやりやすくなったしな」

「もう、文ちゃん、内政なんか一つも手を出したことないじゃない」

愚痴を零しながらも、顔良は文醜と共に袁紹の後を追いながら軍を引き連れる。

二人が言うように、袁紹は変わった。

自分を大きく見せる姿勢は今も変わらないが、仕事においてなら以前とは段違いだ。

内政に取り組む姿勢も、以前は「可憐さが足りない」と言って投げ出していた小さな案件も今は自ら目を通すようになり、家臣に案件の間違いを指摘するまでにもなった。

人材不足を憂い近頃は人材発掘・育成にも力を注ぎ、高覧や張郃などの武将を採掘し、これらが公孫瓉を破るきっかけになったと言っても過言ではない。

またその頃曹操陣営では――

「今から軍議を始めたいのだけれど、銀は?何故あいつは来ていないの?」

曹操軍の首脳陣は既に集まっているにも関わらず、未だに銀の姿だけは無かった。

「今日はいい天気ですからねぇ。恐らく庭園で日向ぼっこでもしているのではないでしょうか?」

程昱が棒付きの丸い円の飴を舐めながら眠そうな声でそう話す。

皆「お前じゃないんだから」と言わんばかりに彼女を見つめるが、実際それも外れてはいなかった。

銀が華琳に仕えしばらく経つが、確かに彼は優秀であった。

族の討伐に向かえばその豪腕を奮って鬼神の如く働きを見せ、内政をさせても優秀な文官であれば5日はかかる案件を半日で終わらせるなどといった働きを見せるが、そんな彼にも欠点があった。

それは何事に関しても不真面目であること。

とある案件を任せられても、自分は不要と感じればそれを誰かに押し付けどこかに行き。

早く仕事が終わり、誰かを手伝うと思いきや、昼間より何処かの居酒屋で酒浸りになっているなど。

実際今日の軍議も、袁紹や袁術の動きに関して話し合うだけ。

銀の一人ぐらい抜けたところでそうとでもなるのだ。

彼は特に全く問題を起こしてはいない。

しかし問題を起こしていないからこそ厄介であり、処分に困っている。

華琳はとりあえず、紫に銀を連れてくる様に言うと、紫はそのまま部屋を後にした。

※忘れた方の為に、紫は司馬懿のことです

彼女は銀を求めて場内を探し回ると、彼は程昱の予想通り、口に枝を咥えながら、庭の木の上でその190を越す体を木の腕(枝)に任せて寝ていたのだ。

下から「銀兄さん」と呼ぶと、彼は顔だけ紫に向けて手で返事をした。

「兄さん、早く軍議に出席してください。華琳もカンカンでしたよ」

ちなみに銀と紫は同じ影村塾の同門であり、銀が兄弟子に当たる。

「……別に俺がいなくても、軍議は出来るだろ」

「何を言うのですか。今日h「今日は対袁紹、袁術で、徐州の地をいかに手に入れるか。だろ?」」

自分が言おうとしたことをそのまま言われ、彼女はグウの音も出なくなっていた。

「そんな会議今更したところで情勢は見えている」

彼は言うのだ。

この後劉備は徐州を追われ逃亡。

袁術も国を留守にした際に孫策の反乱で追われる羽目になり、最終的に華琳と袁紹は徐州覇権巡って官渡で激突する。

そして生き残った者が次に親父殿である重昌との対決。

ここまで彼は予知して見せた。

「そこまでわかっているなら、何故軍議に参加しないのですか?兄さんの意見なら、華琳もすんなり聞きいれたでしょう?」

「それだ」

今度彼は、左腕を枕にして体を紫に向けたままで右手に自分の咥えていた枝を持ち、彼女に向けた。

「それだよ。それじゃダメなんだ。ただ俺の言うがままのことを受け入れるだけではダメだ。華琳にはもっと俺以上に先見の明を持ってもらわなくては困る。きっと親父殿は俺以上のことを見据えて行動を開始してくるはずだ。いくら最近袁紹が『名君』と呼ばれる様になったからといって、奴如きに手をこまねいているようでは、親父殿と対決することなど夢のまた夢だ。内政は桂花の様な文官が。戦略はお前や風の様な軍師が。戦いは俺や春蘭の様な武官がこなせばいい。華琳の役目は、そんな俺たちを使いこなし、いかに導くか。それが重要なんだよ」

紫も彼が言うことに関して最もな様な気もしていた。

自分の主である華琳の”第一”の役目は、戦うことでも内政をこなすことでも戦略を考えることでもない。

彼の言うとおり自分達の先を見て、その先に導くことである。

自らの師でもある重昌は、常に先を見据えながら自分達に必要な知識を与えてくれた。

司馬の名門出身である紫は、幼少の頃よりあらゆる英才教育を受けていたが、それでも重昌に勝る教育者は他に皆無であった。

彼は言った。

「教育とは人を導くこと。現状維持ではない」

それまで自分に学問を与えてくれた師は「名門とは?」などと、いかにして自らの地位を確立するかなどと”冒険心”に満ちた教育を行わなかった。

あの反董卓連合の際、董卓側に立ち連合軍相手にその知略を揮った賈駆と陳宮、さらに会ったことはないが劉備軍で猛将として名の知られる馬超も、影村塾の出身だという。

皆それぞれ名のある場所で花開き、かくいう自分や目の前にいる兄弟子、銀も今また曹操と言う名の大木の下で、その才能を花開かせようとしている。

それらの”種”を作った師を相手にするのだ。

銀が華琳に求めるものも納得できないわけでもないと思った。

「……っま、そういうわけだ。華琳にも伝えておけ。俺は本当に俺が必要となった場面に動く。それまではここで寝て待つってな。それと、ここで話したことも言うなよ。本人のためにならん」

そう言いながら彼は踵を返す様に寝直し、このことを主に報告するのかと思うと、紫は憂鬱になり、勿論報告すれば報告した後で、軍議終わり、華琳にそのことに関して散々愚痴られたことは言うまでもない。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
7
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択