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機動戦士ガンダム異聞〜旭日の旗の下に〜第7話

ヘリオポリス崩壊の原因については少し原作と異なります。

2014-01-29 16:26:40 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1779   閲覧ユーザー数:1754

これまでのあらすじ

 

 

 U.C.0079年1月3日、ジオン公国とプラントの宣戦布告から始まった大戦は、新たな局面に向かおうとしていた。

 

 サイド7、1バンチ「ヘリオポリス」宙域近くを航行していた紺碧艦隊は、偶然にもザフトによる連邦軍新型モビルスーツ強奪作戦を目撃、ヘリオポリスに無人偵察機「半蔵」を潜入させた。しかし、5機のMSの内4機はザフトの手に渡り、強奪を免れたモビルスーツは、ヘリオポリスに侵入したジンと史上初のMS同士の戦闘を繰り広げたのである。その戦闘に巻き込まれた半蔵に変わり、前原はMS隊隊長安室零少佐と副官の篁唯衣大尉を潜入させた。彼等の情報により、連邦の新型モビルスーツは、バッテリー動力型である事が判明した。宙域からの撤退を決意した前原だが、その時、艦橋に戦慄が走った。

 

 

 

「我、ザフトト交戦状態ニ有リ」

 

 

 

 今、日本の努力が試されようとしていた。

 

 時にU.C.0079年12月8日。大東亜戦争開戦から183年が経過していた。

 

 

第7話 ヘリオポリス崩壊後編

 

 

 事の発端は、数分前に遡る。

 

 偵察活動を続けていた安室と篁は、コロニーのドッキングベイ方向から侵入する2機の機影を発見した。1機は連邦軍の宇宙戦闘機「メビウス・ゼロ」もう1機はザフトの新型MS「シグー」であった。

 

 

 

 ZGMF-515「シグー」とは、ザフトがジンの後継機として開発した指揮官級用のMSである。この機体は地球降下作戦の2週間前に正式採用され、ザフトの指揮官階級である白服を中心に配備が進んだ。地球降下作戦では、ザフトが開発した地上戦用局地MSである「バクゥ」、「ディン」、「グーン」や、ジオンの「ザクⅡJ型」、「ザクキャノン」と共に活躍し、ジオン、ザフトの電撃戦を支えた機体である。

 

 

 

 上空での戦闘の中、安室は地上で待機していたMSの変化に気付いた。大型のキャノン砲を片手に持っていたのである。

 

『どうやら連邦のMSは戦況に応じて様々な兵装に換装出来るようですね』

 

 モニター越しに唯衣が呟いた。安室はあのMSがシグーを狙っている事が分かっていた。だが、それと同時にあのシグーからどす黒いプレッシャーを感じていた。

 

「(カミーユの気持ちも分からなくもないな)」

 

 安室は、前世で共に戦った戦友の事を思い出していた。その時だった。

 

「!!」

 

 安室は殺気を感じ、驚異的な反射神経で後方に下がった。唯衣は突然の事に一瞬動揺するも、安室に続いた。そのすぐ後に無数の76mmの弾丸が人口の地表をえぐった。

 

「感づかれたか…」

 

 安室はそう呟くと、僚機である唯衣の無事を確認すると、周囲に目をやった。試作品だが、アレックスの全天周モニターにより他の機体より広い視野を得れる。周囲を見やると、先程までメビウス・ゼロと交戦していたシグーが向かってきていた。

 

「邪気が来たか!」

 

 安室はそう呟くと、右手に装備した79年式光線小銃改を放ち、シグーを牽制しつつ、唯衣に指令を出した。

 

「篁大尉は富嶽と合流してくれ!それと、富嶽に暗号電文!「我、ザフトト交戦状態ニ有リ」だ!」

 

『了解!隊長!五武運を!』

 

 唯衣はそう言うと、来た道を反転してその場を去った。安室は機体が見えなくまで待った。

 

「…行ったな」

 

 そう呟くと、安室は光線小銃の銃口をシグーに向けた。こうして、今に至るのである。

 

 

 

 

 

 

イ601富嶽号艦橋

 

 艦橋では、ザフトと交戦状態に入ったという連絡を受け、意見が分かれていた。助けに行くか見捨てるか。確かにアレックスならシグーと戦っても無事だろう。しかし、それはカタログスペックでの話であって実戦ではどうなるかは分からないのだ。

 

「閣下!今すぐ安室少佐の救援に行きましょう!」

 

「しかし助けに行けば我々の位置が知られる事になるぞ!」

 

 意見の対立が艦橋を荒立たせるが、そんな時に篁大尉から通信が入ってきたのである。その内容は、安室少佐がシグーと交戦中で、安室の命令で脱出した事を話した。

 

「了解した。篁大尉。連邦の新型モビルスーツについての事はよく分かった。直に帰投しろ」

 

『富嶽2番了解!』

 

 前原は通信を切ると、腕を組み瞑想に入った。彼は決断する時、数分間の瞑想に入るのである。そして、その数分間が、前原を決意させた。

 

「良し!我々は現状を維持!安室少佐が帰投し次第、この宙域より撤退する!」

 

「閣下!安室少佐の救援に行かないのですか!」

 

「私は安室少佐を信じる」

 

 この言葉により、日本の参戦は回避されたのである。

 

 

 

 

 

 

ヘリオポリス内部

 

「私もよくよく運のない男だな・・・」

 

 シグーのコックピットで、ラウ・ル・クルーゼは静かに呟いた。本来ならヘリオポリスで開発されていた5機の新型モビルスーツの強奪だったが、強奪できたのは5機中4機は良いとして、残りの1機によって「黄昏の魔弾」ことミゲルは乗機のジンを失い、自分は宿敵のムウ・ラ・フラガと死闘を繰り広げている最中に所属不明機を発見し、交戦状態に入ってしまったのである。しかもその機体がジオンの情報に合った日本のモビルスーツに酷似していたのである。だが、それ以前に

 

「なんだこの機体のプレッシャーは…」

 

 そう、この機体から放たれるプレッシャーに脅威を覚えていた。ムウとは違うこのプレッシャー、まさかダイクンが唱えた人の革新=ニュータイプだとでも言うのか・・・馬鹿な。クルーゼは考えるのを止め、目の前の敵に集中した。

 

「全く、目障りだな!君は!」

 

 クルーゼはシグーの突撃機銃の銃口をアレックスに向けた。

 

 

 

 

 

 

「ストライク…嫌違う…あれは一体…」

 

 ストライクのコックピットの中で、少年キラ・ヤマトは上空のMS戦を見て呟いた。モルゲンレーテの工場に入っていった少女を追いかけた事が全ての始まりだった。嘗ての親友との再会、マリューという女性に言われてストライクのコックピットに乗り込み、襲い掛かるジンを無意識で撃退し、友達を助けたセイラという女性との出会い。そして再び現れた敵との戦うためストライクに乗り、上空のメビウスに乗ったムウという連邦軍の兵士を助けるためにシグーに狙いを定めていたが、突然シグーが不自然な挙動でコロニーの奥に向かったのである。ストライクのカメラを底に向けると、ストライクに似た白いモビルスーツと、ニュースで観た日本のモビルスーツに似た黄色いモビルスーツがそこにいて、黄色いモビルスーツが撤退して、今に至るのである。今、ストライクは長距離支援用のランチャーパックを装備しており、主兵装のアグニ320mm超高インパルス砲を装備していた。

 

「でも、今は…」

 

 やらなければ、友達に危険が及ぶ。そう思い、キラはアグニの狙いを定めた。その時だった。

 

 突如、ストライクの頭上を、一つの光が通り過ぎた。

 

 

 

 

 

 

「!!何だ!あれは!」

 

 突如、ドッキングベイ方向から危険を予知した安室は、直にその場を去ると、アレックスの目の前を一筋のビームが通り過ぎたのである。ビームはコロニーの外壁を貫通し、今まさに崩壊しつつあった。安室はビームの方向を見ると、そこから純白の白い船が現れたのである。

 

「ホワイトベース!?嫌違う、それよりも、これで撤退できる!」

 

 安室は好機と逃さず、直様撤退した。

 

 

 

 

 

 

「ちっ…取り逃がしたか…」

 

 クルーゼは愚痴をこぼした。だが、あのまま戦っていたら機体の性能差でやられていたかも知れなかった。ある意味では連邦に助けられたのである。その時、ヴェサリウスから通信が入ってきた。

 

『クルーゼ隊長!レーダーが日本軍のパトロール艦隊を感知しました!これ以上この宙域に留まるのは危険です!』

 

「了解した。アデス。私が帰投し次第、最大船速で現宙域を離脱する」

 

 クルーゼはそう言うと、バックパックのバーニアを吹かし、コロニーから出た。

 

 

 

 

 

 

イ601富嶽号艦橋

 その頃、紺碧艦隊は、コロニーの外壁を突き破ったビームを確認していた。

 

「なんだあのビームは…」

 

 入江は呆然としていた。しかし、前原はそれより大変な事を予想していた。

 

「いかん!あんな大出力のビームを内部から撃ってはコロニーが内部崩壊するぞ!」

 

 前原はそう言うと、潜望鏡でアレックスを探した。そして、ビームが収束すると、先程のビームで開いた穴から、アレックスが現れた。

 

「よし!アレックスに牽引ビームを照射しろ!」

 

 イ601の格納庫のハッチが開き、牽引ビームがアレックスの脚部を捉え、格納庫に収容した。

 

「格納庫ハッチ閉鎖完了!」

 

「良し!機関室!最大船速!後の事は薩摩艦隊に任せろ!」

 

 紺碧艦隊のミラージュコロイドが解除され、エンジンのアフターバーナーが点火し、その場を去っていった。

 

 

 

 この数時間後、ヘリオポリスは崩壊した。

 

 

 

 

 

 

オーブ連合首長国本島、内閣府官邸

 

 大高弥三郎はアスハ代表との会談に出ていた。内容はヘリオポリスから脱出した民間人の保護である。本来ならばジムのライセンス生産についての協議だったが、同席していた高野からヘリオポリスの状況を伝えられたため、会談の内容が変更されたのである。

 

「では、大高総理。避難民の件、お願いします」

 

 ウズミ・ナラ・アスハは今回の大高の対応に感謝し、今回の事態に対する謝罪をした。

 

「いえ、アスハ代表。我々とオーブは成立以来の友好国でもあり、かつては同じ日本人だったのですから」

 

 大高は謙虚に言うと、ウズミは顔を上げた。そんな中、高野はある事を言った。

 

「しかしアスハ代表、これによりモルゲンレーテが連邦のモビルスーツの開発に協力してしまった事が公になってしまいました。貴方の地位も…」

 

 その時、ウズミは高野を制し、その問いに答えた。

 

「高野大臣の言う通りです。全ての責任は私にあります」

 

「では…!」

 

 高野は察したように言うと、ウズミは黙ってうなずいた。

 

 

 

この数日後、ウズミ・ナラ・アスハの代表辞任が発表された。

 

 

キャラ設定

 

 

地球連邦政府

キラ・ヤマト

初出:機動戦士ガンダムSEED

概要

 ヘリオポリスに住む第1世代コーディネイター。その出生には何らかの秘密があるらしいが…

 

プラント

ラウ・ル・クルーゼ

初出:機動戦士ガンダムSEED

概要

 ルウム戦役で戦果を挙げたエースパイロット。連邦軍のムウ・ラ・フラガに対し執着心を抱いている。

 

オーブ連合首長国

ウズミ・ナラ・アスハ

初出:機動戦士ガンダムSEED

概要

 オーブ連合首長国代表。オーブの5大氏族の一つであるアスハ家頭領。紺碧会、青風会と繋がりがあり、紺碧艦隊の存在も知っている。今回の事件の責任を取って代表を辞任した。

 


 
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