No.648972

真・恋姫†無双 異伝 ~最後の選択者~ 第二十八話

Jack Tlamさん

いよいよ反董卓連合との戦いが始まります。

ちょっと外連味出し過ぎたかもしれないけど…では、どうぞ。

2013-12-27 19:12:31 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:10119   閲覧ユーザー数:6716

第二十八話、『翻る十文字』

 

 

―反董卓連合が、姿を現した。予想より一週間以上も遅れて。総大将関係ではあまり手間取らなかったようだが、

 

何か問題でもあったのか…と思えば、作戦関係で揉めていたらしい。麗羽の相変わらずな無策ぶりに苦笑しつつ、

 

俺達は汜水関で迎撃態勢を整えていた。余分な時間が取れたので、十分な準備を行うことができた。

 

そして今、連合が劉備軍を先頭に汜水関に接近してきた。俺達は戦闘に入る前、将連中で作戦の最終確認をしていた―

 

 

 

「―さて、連合も接近してきた。作戦の最終確認だ。まず最初は連弩で攻撃をかけるから何があっても出るなよ?」

 

「承知しております。董卓様を守るため、どんな侮辱も流して見せましょう」

 

華雄は俺が大将軍になってからというもの、きちんとした態度をとっている。別にいいとは言ったのだが、どうも意外に規律を守る

 

方のようだ。上からの指示には従うということなのだろう。朱里や灯里に軍略の教えを請うてたりもしたし、冷静を心掛けるなど、

 

変わる努力をしているのが窺える。

 

「ほんで、敵さんがええ具合に怯んだところでウチらが登場、ってわけやな」

 

「そういうことだ。だがおそらく、華琳は君を狙っているぞ。なまじ今回は人材不足だからな」

 

「今回は華琳に捕まるつもりはないで。今なら春蘭すら圧倒できそうな気がするんや」

 

「そうだな。今の君なら愛紗を向こうにまわしても圧倒できるだろう。だが油断はするなよ?」

 

「わかっとる。用心しいしい戦うわ」

 

霞にも出てもらうことになっている。利を優先して出て来るであろう曹操軍或いは孫策軍との戦闘を行うためだ。

 

今の霞なら春蘭や愛紗を相手にしても完封できるだろう。雪蓮相手だと微妙だとは思うが…冥琳が止めてくれるのを祈るしかない。

 

曹操軍や孫策軍が出て来るかどうかはわからないわけだが…十中八九どちらかは出て来るだろう。

 

「隊長と朱里ちゃんはいつ頃出るの~?」

 

「俺達は皆の攻撃で連合がさらに混乱状態になった頃合を見計らって旗を揚げ、出陣する。華雄には劉備軍を相手してもらうが、

 

 その時が来たらそこに俺達も加わる。まあ、だからといって華雄の役割は変わらないが…銅鑼で合図するから聞き逃すなよ?」

 

「はっ」

 

「私達はどうすれば?」

 

「凪と沙和は霞の援護だ。凪は霞の副官として付いてくれ」

 

「了解です」

 

「了解なの」

 

ここには凪と沙和がいる。真桜は洛陽で兵器の生産を続けている。もしもの際の補充用だ。まだ敵にこの二式連弩を渡すわけには

 

いかない。置き去りにしなくても済むように携帯性を高めているが、万が一置き去りにしなければならなくなった場合、火を使って

 

焼却処分することになるだろう。そういった時の補充用のものと、ここで時間を稼いでいる間に虎牢関に待機する弩兵隊に供給する

 

連弩の生産を続けてもらっているのだ。矢の生産は引き続き行われ、定期供給される手筈になっている。音々音に代わって詠が指揮を

 

執り、洛陽に残った兵で生産を続けている。

 

「ここで可能な限りの時間を稼ぐことになる。基本方針は覚えているな?」

 

「はっ。負傷兵を増やし、敵軍の行動を鈍らせるというものでしたな」

 

「その通りだ。だが無理はするな。こっちが死んだら元も子もない。まずは連弩による先制攻撃で負傷者を増やす」

 

「私達が出た後はどうするのです?」

 

「そうなったら、連弩は下げます。敵は混乱していると思われるので、そこを突いて攻撃してください」

 

「了解や。ウチらかて流れ矢にゃ当たりとうないしな」

 

連弩は先制攻撃用だ。そこまで射程が長いわけじゃないが、関の上から発射すれば射程距離は稼げるだろう。

 

大体の配置は決まった。まず、弩兵隊に関の上で待機するよう指示する。射撃タイミングは朱里が握る。また華雄と霞、凪と沙和は

 

いつでも出陣できるように編成された部隊と共に待機してもらう。これでまず体裁は整った。後は誰が罵倒に出て来るか…愛紗か、

 

或いは雪蓮あたりか。

 

 

「―汜水関守将・華雄に告げる!世に仇なす董卓につく貴様の武に、如何ほどの価値があろう―」

 

 

愛紗の声で罵倒が聞こえてきた。

 

「どうやら始まったと見える。朱里、寄せて来るまで時間はそれほどないよな?」

 

「はい。寄せて来たら連弩で攻撃、敵が混乱してある程度下がったところで皆さんが出陣し、近接戦闘を開始します」

 

「よし…俺達が出るのはもう少し先だな」

 

「そうなります…孫策軍も出てきましたね」

 

「やはりか…劉備軍と協力することにしたのか、孫策は…誰かある!」

 

「はっ!」

 

「待機している武将達に伝達。連合の先陣は劉備軍及び孫策軍。合図とともに出陣し近接戦闘に入れ」

 

「はっ!」

 

伝令が走っていくのを見送り、俺達は連合の方を眺めやった。

 

「…俺達がこちら側に立つことになるなんてな。なんというか、複雑な気持ちだ」

 

「同じく…」

 

気持ちに迷いはない。だが、こうやって連合と向き合っていると、かなり妙な気分だ。愛紗や孫策の罵倒が聞こえる中、俺達は妙に

 

落ち着いた気持ちのまま、それを聞いていた。孫策は華雄にターゲットを絞っているようだが、愛紗は色々好き勝手言ってるなあ…。

 

「…聞いててイライラする内容だな」

 

「ええ…」

 

「まあ、そうじゃなきゃ罵倒の意味ないけどね…相手に大義が無いから…」

 

「そうですね…これでちゃんとした大義があればまだしも納得はできるのですが…」

 

「反董卓連合にちゃんとした大義があった例なんてないからな…」

 

月はいつも犠牲にされてきた。乱世への足掛かりとするため、諸侯はいつも月を踏み台にしてきたのだ。だが、今この時を以てその

 

考えが甘かったことを思い知らせてやる。特に…桃香。彼女は碌に情報を集めようともせずに月を悪と断じた。そればかりか、戦いに

 

必要な情報の収集は怠らない。なんという矛盾だろう。それならば最初から情報収集をしていれば良いのに、それは駄目とは…もう、

 

これは痛い目を見てもらうしかない。洛陽の現状を見れば、考えも変わるだろうか…いや、無理か。俺達がこちら側についた以上は、

 

何が何でも董卓軍を悪として断じ、暴走するだろう。そうなった時、向こう側にいる『計画』参加者達が上手くやってくれることを

 

祈るしかない。俺達にできるのは戦う気力を奪うことまでだからな…。

 

「(…まさか一人で追いかけて来るなんてことはしないよな、桃香…)」

 

掲げられた『劉』の旗の方を眺めながら、俺はここにいない桃香に語りかけた。

 

 

(side:雛里)

 

前線に立つ愛紗さんが、汜水関を守る華雄将軍に向かって罵声を浴びせている。だけど、一向に出てくる気配がない。

 

「華雄さんって人は挑発に乗りやすいって聞いたけど…嘘だったのかな?」

 

「それは無いと思います。きっと誰かが押しとどめているんでしょう」

 

きっと一刀さんの指示だ。それに、華雄さんだって考え方を改めて、無闇に力を揮うのではなく、耐えることを選択したのかも。

 

そうなったら厄介だ。汜水関は非常に堅牢な要塞。そこに篭られては打つ手がない。

 

「む~出てこないのだ~」

 

鈴々ちゃんも苛ついている。前線に立っているのは愛紗さんと星さん。そして孫策軍からは孫策さん、甘寧さん、周泰さんが出ている。

 

「(…私は向こうの作戦を知っているからいいけど、汜水関に無策で突撃するって…正気を疑います…)」

 

事実上策など無意味に等しい攻城戦だけど、何らかの作戦は必ず練られる。だけど袁紹さんの指示でそんなものは一切なく、私達はもう

 

無策で汜水関に当たるより他なかった。きっとこれからもこんな調子だと思う…これでは被害が無駄に大きくなるだけだ。でも、私には

 

それについてはあまりできることが無い。もちろん、自軍の被害を抑えるために頑張るけど…。

 

「…篭られてしまうと打つ手はありません…」

 

「そうだね…でも、ここを早く突破しないと洛陽の人たちが…!」

 

「逸っては駄目です、桃香様。ここで死んでしまっては元も子もありません」

 

「(…)」

 

朱里ちゃんが桃香様を諌めるのを見ていると、ふと誰かの気配を感じた。そちらを振り向くと、孫策さんがやってきていた。

 

「駄目ねえ…華雄が突撃しようとしたんで誰かが無理矢理気絶でもさせたのかしらね」

 

「そうかもしれません…でも、不気味なくらい静かですね。旗が動いた気配もないし…」

 

桃香様の言う通り、汜水関は気味が悪くなるくらいの静けさに支配されていた。半ば無人ではないかと思うくらい、静かだった。それを

 

疑問に思うのは当然。何か反論してくるならともかく、それすらもない。ずっと沈黙を保ったままというのは、何をするつもりなのかを

 

相手に勘ぐらせて動きを鈍くするという意味で有効な策。こちらにも補給のあてはあるけど、洛陽から補給できる董卓軍と違って、この

 

連合軍の補給はかなり離れた場所から輜重隊を用いて行わなきゃいけない。時間を稼がれるだけでも痛手だ。それが余計に焦りと疑いを

 

生み、ますます動きが鈍くなる。ご丁寧に、周囲の意見をほとんど聞かない総大将がいるというおまけつき。

 

「(…正直、敵に回したら恐ろしいと思ってたけど…連合が陥る状況を全て見抜いているかのような作戦…すごい…)」

 

そうとしか考えられない。先見の明というにはあまりにも状況を的確に読んでいる。まるでこうなることを知っているかのように。

 

孫子曰く「先ず勝ちて、然る後に戦いを求む」。

 

一刀さん達は何もかもを知っているような気がする。もしもそうだとするなら、連合は結成された時点で敗北が決定したようなもの。

 

私は確信していた。この連合は…負ける。

 

「ええ…何か嫌な予感がするわ」

 

孫策さんも桃香様の意見に同意する。周瑜さん曰く勘が鋭い人ということなので、この異様な静けさに不信感を覚えているのかな。

 

「嫌な予感?」

 

「ええ。私達がこうして汜水関に寄せてきたことが、既に敵の術中に…っ!」

 

不意に孫策さんが顔を険しくする。

 

「えっ?」

 

「来るわ!」

 

「来るって、何がですか!?」

 

「ぐずぐずしないで!一度退くわよ!蜂の巣になりたくなければね!」

 

事態が呑み込めていない桃香様に言い捨てるように告げると、孫策さんは自分の軍の所に戻り、撤退の準備を始めた。

 

私は、撤退した方がいいと知っている…一刀さん達が『あれ』を使うから。連合を混乱させ、士気を削ぐための『あれ』を。

 

「…桃香様、撤退しましょう!」

 

朱里ちゃんは事態を理解したみたい。声を張り上げて桃香様に進言する。

 

「え、でも…!」

 

「ぐずぐずしていては駄目です!孫策さんが何か感づいた…これはまずいことになるかもしれません!早く!」

 

そう言って、朱里ちゃんは銅鑼を鳴らすよう指示し、撤退準備を始める。

 

かなり早く準備を整え、私達が撤退を始めて少し経った瞬間―

 

 

―汜水関から矢が雨のように降り注いできた。

 

 

兵の皆さんの悲鳴が聞こえてくる。降り注ぐ矢の雨に追いつかれ、倒れていく兵が幾人も出始める。

 

「な、なんなの、これ!?」

 

「こんなこと…はっ!?こ、これはっ!?」

 

朱里ちゃんが何かに気付いたような表情になる。私達はそのまま、矢が届かない安全な場所まで撤退していった。

 

―――

 

――

 

 

「―死者は少ないですが、かなりの数の負傷者が出ています。治療のため後方に下げますね」

 

「うん…」

 

矢を受けながらもここまで逃れてきた人や、無事だった人の報告によると、死者はほとんど出ていないらしい。その代わり負傷者が

 

相当数出てしまった。今は治療のため、矢を受けた人達は後方に下がっている。無事な人達で部隊を維持しているけど、数はかなり

 

減ってしまって、一万五千といったところ。

 

「…こんなことって…」

 

「朱里ちゃん?」

 

「…桃香様。董卓軍は『連弩』の開発に成功したのかもしれません。いくら弓兵の練度が高くても、あんなにたくさんの矢を同時に…

 

 しかも連続して放つなんて考えられません。城壁の上で待機していられる弓兵の数にも限りがありますから…これはやはりそうかと」

 

「連弩?」

 

「…私が設計しているものと似たものだと思います。手持ちで扱える弩で、同時に複数本の矢を放つことができ、またそれを連続して

 

 行えるため、大量の矢を放つことができるのです。これが完成すれば、私達の軍の打撃力不足を補えると思って設計していましたが…」

 

考え込んでしまう朱里ちゃん。そこにしんがりを務めていた星さんと愛紗さんが戻ってくる。

 

朱里ちゃんが二人に説明をしている間、私は今後のことを考えていた。

 

「(…次の一手は…)」

 

そう考えているうちに董卓軍側の銅鑼が鳴り響き、汜水関の扉が開かれる。そこから出て来るのは『華』、『張』、『楽』、『于』の旗。

 

まだ一刀さん達は出陣しない。でも、戦いがさらに激しくなることはもう私だけでなく皆が気付いていた。

 

 

(side:白蓮)

 

「…始まったか…」

 

私は汜水関から降り注ぐ矢の雨を『望遠鏡』を介して見ていた。少なくとも今は、私達の出番ではない。

 

「そのようですね。しかし…この『望遠鏡』とは便利なものですね…遠くのものがここまでよく見えるとは…」

 

「天界では広く普及している道具だ。この時代から千三百年以上先の時代に発明されたとされている」

 

「つくづく、凄いのですね、天界というのは…これも信じられないほど高度な技術です」

 

「だが構造と作り方さえわかれば、この時代でも作ることはできる…材料はすべてこちらで揃うものだったからな」

 

私達は先鋒ではなく、麗羽と同じ中軍に配備されていたので、それほど状況は見えなかった。しかし、朱里から設計図を渡されていた

 

望遠鏡があるので、いとも簡単に前線の状況を観察することができた。これは本当に便利なものだと思う。

 

しかし、連弩を持ち出すとは…朱里も中々あくどいことをする。作戦の内容については既に連絡は貰っているが、確かに朱里の策は有効だ。

 

こちらは補給に時間がかかる。治療に必要な薬や包帯を激しく消耗しては、兵に「死ね」と言っているようなものだ。そうなれば、士気は

 

低下するだろうし、指揮官への信頼も怪しいものとなる。特に、義勇兵出身が多い劉備軍にとっては痛手だろう。生活のために軍にいる、

 

それだけの兵が多いのだから。そこを桃香は勘違いしているのか、あるいは…いや、詮無きことか。

 

「向こうも打って出て来たよ」

 

涼音も望遠鏡で前線を見ている。ちなみに、主要な将には一つずつ作って渡してあるので、それぞれが戦況を確認することができた。

 

「あれはさらなる混乱を招くための布石だろう。今現在、先鋒を務める劉備軍及び孫策軍はそれなりに被害を被っているからな」

 

「…三段構えの作戦ですか。一刀達の作戦は相変わらず手堅いのか大胆なのかわかりませんね」

 

今度は優雨だ。

 

あいつらはこの時代から千八百年も先の時代に生きる者…私もそこに至るまでの歴史はある程度知っているが、その中で数多の戦いがあり、

 

戦術も進化してきたと聞く。つまり、今の時代に生きる者では想像も付かないような作戦を思いつくことができるのだ。孫子の兵法はあの

 

二人の時代でも活きるそうだが、それでもこの時代とは比べ物にならないくらい発達しているだろう。制圧射撃能力に優れた連弩で先制し、

 

続いて近接戦闘に持ち込むというのは、内容そのものは使い古されたやり方かもしれない。だが、投入される打撃力が違う。間違いなく、

 

前線にいる劉備軍と孫策軍は動揺しているだろう。

 

「今回は手堅い方だと思いますよ~」

 

続いて風もゆっくりと進み出てくる。眠そうな気配はないが、口調は相変わらず間延びしている。

 

「お前から見ても、あれは堅実な策と映るか」

 

「はい~。ですが、連弩を使っていることでより効果的になっていると言えますね~」

 

風の言う通り、確かに連弩の正面打撃力はこの時代にあっては相当なものだろう。紫苑、黄蓋や夏侯淵といった、矢を複数同時に、それも

 

連続して射ることのできる弓使いは限られる。だが連弩は機械兵器なのでちょっとした訓練で誰でも扱える。数も揃えられるとなったら、

 

非常に脅威なのだ。

 

しかし、それで先制攻撃を行った後に打って出るというのは、関の防衛戦という観点からすれば決して上策ではない。民を考慮する必要が

 

無い以上、篭っていても非戦闘員の代表格である民に被害は出ないからだ。そこが優雨が言うように「大胆」な策なのだろう。混乱を増し、

 

それをいいことに被害を拡大させるのは有効な策だからだ。連弩を持ち出してくればいいじゃないか、とも言えるが、まだこの段階では秘密

 

兵器、劉備軍の孔明もこの時点ではまだ設計段階のはずだ。そんなものを連合に渡すわけにはいかない。故に、近接戦闘には連弩を出さず、

 

既存の武器で戦闘を行う。そういう意味では大胆かつ堅実な策と言えるだろう。機密保持も重要な仕事だからな。

 

ふと、前線に出て来た董卓軍の部隊を観察していた涼音が声をあげる。

 

「えっと…漆黒の『華』、紺碧の『張』、それから『楽』と『于』を確認。あの紺碧の旗は…」

 

「霞…『神速の驍将』張遼だな。私が知る武将の中でも特に馬術に優れた者の一人だ。個人としての戦闘能力も高いが、用兵術にも長け、

 

 その速さたるや、誰も追随できないほどだ。戦いを楽しむ武人ではあるが、冷静な指揮官としての貌を持つ、極めて優れた武将だよ」

 

「白蓮様でも勝てない?」

 

「武では無理だ。だが、馬ならいい勝負をする自信はある…これでも白馬長史と呼ばれているんだ、馬で負けるわけにはそうそういかんよ」

 

旗を見る限りでは霞、華雄、凪、沙和が出てきている。全員が一線級の武将だ。いまいち目立っていない華雄さえ、その戦闘力は実は非常に

 

高い。暴走さえしなければ良い将のはずだ。真桜が出てきていないのは後方で生産指揮にでもあたっているからだろう。

 

一線級の武将が揃っている上、向こうは物量でも勝っている。こちらに恋と同程度の武将でもいない限り、連合が勝つことは難しいだろう。

 

いや、いてもこちらの負けは決まっているようなものだ…戦とは、始まる前から既に勝敗は決しているもの。孫子の教えだ。

 

「ふん、いつもいつも馬鹿の一つ覚えのように…よくもやるな、麗羽は」

 

「それは仕方ないことなんじゃないかな?歴史の流れ、っていうのがあるんでしょ?」

 

「…まあ、この外史の物語を成立させる上で、この戦いは欠かせないからな…事実上、漢王朝の権威が失墜したことを示すこの戦は、な」

 

「でも、つまらない嫉妬に囚われているばかりでは、名家の出というその肩書きを疑いたくなりますね」

 

「『正史』ではあんなやつじゃなかったはずなんだけどな…それを言ったら私もそうだが」

 

「暴君だったって話?」

 

…目立ってなかった、と言われなかったのはいいか。公孫賛が目立ってる三国志なんて、私が知る限りでも無いに等しいが…。

 

「まあ、な。正直、それを知った時には驚いたが…『正史』について深く考えても、この外史においては詮無きことだ」

 

「そうですね…」

 

取り敢えず、馬鹿の話は脇に置いておこう。私が目立ってなかったとか云々の話も、だ。

 

「お呼びがかかるかもしれん。各員そろそろ舞台袖に控えるぞ。衣装と台本の確認を忘れるなよ」

 

「了解!」

 

涼音の返答でこの場は解散となる。私の近くには今や我が軍の筆頭軍師である風がいるばかりとなった。

 

「…風」

 

「はい~?」

 

「『次回作の台本』の準備は進んでいるか?」

 

「…もちろんですよ~。ですが、お兄さんたちがあんなことを考え付くなんて、風は驚いてしまったのですよ~」

 

風が驚くのだから、『次回作』は余程の出来らしい。私も驚いたが…当然導き出されるべきものではあった。しかしまさか皇帝陛下までも

 

巻き込み、しかも陛下に腹芸をさせると言うのだから、まったく驚かされる。後で陛下から伝えることがあるとのことだったが、いったい

 

何を伝えられるのか。それはわからないが…。

 

「…どちらにせよ、連合に与した諸侯に大義はない。今も、そしてこれからも…な」

 

連合全体について言及しながら、私の目が捉えていたのはただ一つ。

 

勝ち馬に乗ろうとするでもなく、野望を抱くわけでもなく、ただ偽りの大義に踊らされる…劉備軍だった。

 

 

□華雄隊(対劉備軍先鋒・関羽隊&趙雲隊)

 

―華雄は隊を率いて関羽隊及び趙雲隊と激突。敵兵は兵に任せ、自身は関羽との戦いを引き受ける。

 

「我が名は華雄!関羽よ、武の価値などそれぞれ!我が武は董卓様の御為にこそあり!どんな罵倒も涼しい風よ!」

 

先程の関羽の罵倒を、華雄は全く意に介さず、部隊を率いて作戦通りに動く。事前情報と違っていたためか、敵は少なからず動揺している。

 

華雄とて罵倒が気になっていないわけではない。かの『江東の虎』の娘・孫策の罵倒などは特に響いている。

 

「貴様が華雄か!我が青龍刀を受けてみよ!」

 

「貴様こそ!我が『金剛爆斧』の味を堪能するがいい!」

 

両者の激突が衝撃波を生む。交わされる剛撃の連続が空気を震わせ、火花を散らしながら尚も凌ぎ合う。

 

「くっ!貴様は何故董卓に味方するのだ!?」

 

「知れたこと!うおおおぉぉぉぉぉおおおおっ!!」

 

先程の罵倒。これまでの華雄なら猛る猪となって無闇に吶喊しただろう。

 

だが、今の華雄は違う。

 

誇ることと驕ることは別物。そう教えてくれたのは、大将軍となったあの男…北郷一刀であった。

 

華雄とて自らの武には強烈な自信がある。しかし、それでも呂布や董卓には未だ及ばぬとは思っていた。そうした猛者達を易々と打ち破り、

 

圧倒的な力を示した二人の『天の御遣い』。その存在は華雄に良い影響を与えていた。

 

未だ最強になど及ばぬ。だがそれでも、守れるものがある。そう思い、華雄はただ主たる董卓に刃を向ける敵を排除する。

 

「悪に与する貴様の武が、私に届くと思うか!」

 

「ほざけ関羽!我が武に価値など要らぬ!我が武は我が信念によってのみ揮われる!」

 

華雄の『金剛爆斧』が唸り、関羽の『青龍偃月刀』を苦も無く弾いた。それを見、畳みかけるように斧を振るう。

 

「御託を並べるのは好きではないのでな。弁明などせぬ。だが…懸命に洛陽を立て直した董卓様に刃を向けるとあらば、私は戦おう!」

 

「立て直すだと!?悪政を敷くことが都を立て直すことだと言うのか!戯言をほざくな!」

 

関羽の槍が閃き、華雄はそれを受け止める。凄まじい衝撃―だが、今の華雄には通じない。華雄を今、支えているのは己の武だけではない。

 

洛陽の民、同僚の武将達、軍師達、皇帝、そして何より…主たる董卓。

 

それらを想い、それらのために武を揮う。背負うものあってこその武人。己のためだけに武を揮う武人は、あの領域には到達し得ない。

 

そう思うからこそ、こんな一撃では華雄は揺らがない。目の前にいる関羽は、今の華雄にとってはそよ風ですらないのだ。

 

「ふん…言いたければ言っておれば良い。貴様らが洛陽に至ることあらば、その目で確かめろ」

 

「…どういうつもりだ」

 

「御託を並べるのは好きではないと言った。貴様も私も武人、貴様の武でこの私を打ち破ってみせろ!」

 

「華雄ーーーーーーーーーーーっ!!」

 

猛然と突進してくる関羽を、華雄は一瞬睥睨する。

 

「(…なんと愚かな女よ。あれは少し前までの私と同じだ…本当に守るべきものと向き合えていないが故の弱さを覆い隠して…)」

 

ふと思う。幼いころの記憶が無く、それが故に己の真名を知らず、己の本質は武のみであると錯覚するより他なかった、かつての己を。

 

関羽はそんなことはないだろう。だが、この女の在り方はかつての華雄のそれと酷似しているように、今の華雄には思えた。

 

彼女については一刀から聞いている。主の理想の実現のため、武を揮う武人であると。

 

だが、華雄は思う。

 

「(貴様が本当に守るべきものは、貴様の主の理想なのか…?…少なくとも、それだけではあるまい…?)」

 

振り抜かれる偃月刀を弾き、続く剛撃の連続を見事な手際で捌きながら、なおも思う。『我思う、故に我あり』…何も考えない人間は

 

そこにいないのと同じ。目の前の関羽という女は、主の理想を守ることに拘り過ぎている。それが、今の華雄に疑問と憤りを抱かせた。

 

「(こやつは本当に民のために戦っているのか?己の力を、主の理想を実現するための手段としてしか見ていないのではないか?)」

 

そんなことはないはずだと、華雄はふと浮かんだ邪推を振り払う。

 

しかし、関羽の刃から伝わる感触が、華雄の邪推が全て間違いというわけではないと語っているようにも思えた。

 

「―どうした華雄!先ほどから受けてばかりではないか!」

 

関羽の声に、我に返る。無意識のうちに関羽ほどの豪傑の刃を捌けるようになっていたとは…華雄は自身の新たな力に驚く。

 

だが少し押されてしまっていたようだ。私もまだまだだな…そう思いながら、華雄は腕に氣を込め、強く踏み込みながら言い返す。

 

「攻めるばかりが戦いではないわ!だが、攻めの武こそ我が本領!受けてみよ、我が友より託されし、我が新たな力を!」

 

己の分身たる巨大な戦斧は、高まった華雄の氣を吸ってその威力を桁外れの領域にまで増大させる―

 

 

『―剛破(ごうは)爆砕斧(ばくさいふ)!!』

 

 

戦斧が関羽の偃月刀に打ちつけられた瞬間、打撃点で何かが爆裂する。

 

「がぁぁぁぁぁああああっ!!」

 

吹き飛ばされる関羽。凄まじい威力だ―技を放った当人である華雄でさえ、その威力に驚嘆していた。

 

斧に氣を集中させ、打撃の瞬間に爆裂させる。それにより打撃点から瞬間的に激烈な衝撃波が生じ、あらゆるものを砕く剛撃となる。

 

まだまだ原石…あの男は華雄をそう評した。それは間違いではなかった。華雄にとってあの男は、今や良き友であり、良き師であった。

 

このような技を一月足らずで使いこなせるようになったのがその証拠。新たに得た力を、華雄は思うままに使いこなしている。

 

「まだまだ!ゆくぞ関羽!」

 

華雄は続けざまに押し込む。今度は関羽が防戦一方となる。油断はしない、だが、この愚か者を今ここで通すわけにはいかない。

 

「(我が友…そして我が主との誓いがあるのでな。貴様を斃すわけにもゆかぬが、ここを通すわけにもゆかぬ。付き合ってもらうぞ!)」

 

なんとか体勢を立て直した関羽が再び向かって来るのを睥睨しながら、心の中で語りかける。

 

「せりゃーーーーーーーーっ!!」

 

「おおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおっ!!」

 

またしても衝撃が空気を震わせ、ぶつかり合った刃はその反動で離れる。盛大に散る火花を無視し、両者は激しく切り結んだ。

 

 

□張遼隊(対孫策軍・孫策隊)

 

―張遼は孫策軍と激突する。張遼に副官として付けられた楽進、于禁もそれぞれの隊を率いて近接戦闘に突入する。

 

「ウチが孫策の相手をする!甘寧も周泰も強敵やで、油断するなや!ええな!?」

 

「「「「「「「「「「応っ!!!」」」」」」」」」」

 

張遼の声に兵が応じ、戦闘に突入していく。戦い始めて少し、張遼は孫策の姿を捉えた。

 

「張遼か…あなたがこっちに来たのね。てっきり華雄が来るかと思ったんだけど」

 

「そら悪かったなあ。けど、あいつも昔のまんまやないで。三日会わざれば括目して見よ…って言うやろ?」

 

「…それ、『男子』が抜けてない?」

 

「ウチらは男やない。せやから問題ないやろ?」

 

「違いないわね。お互い、いい女だし」

 

「自画自賛やんけ」

 

「女なら容姿にも自信を持たないとね。それにはちゃんと頑張って磨かないといけないけど。そうじゃない?」

 

「…まあ、女としての魅力を磨かんとあかんと思う時はあるな。でもウチかて十人並みやとは思うで」

 

「そう思うわよ。美しさと強さが同居している。噂通り良い武将のようね、あなたは」

 

戦場で敵同士の間柄にありながら、軽口をたたき合う張遼と孫策。それは、互いの本質に気付いているが故か。

 

張遼と孫策。どちらも軍の指揮官として非常に優れた人間であるが、武人としての彼女達は、戦いを心底楽しむ、まさに修羅。

 

そうした共通点が、二人の間に奇妙な落ち着きを齎しているのである。

 

「孫策…どうしても戦うんやな?」

 

「ええ」

 

「連合の大義が偽りだったとしてもやな?」

 

「…お喋りはおしまいにしましょうか」

 

孫策が『南海覇王』を抜き放ち、張遼にその切っ先を向ける。張遼もまた『飛龍偃月刀』の切っ先を孫策に向けた。

 

「ええで。ウチも御託を並べるのは好きやない。けどな、ウチかて守らんとあかんもんがあるんや。それだけは譲らへんで」

 

「そうでしょうね」

 

何の臆面も無くそう応じる孫策の姿に、張遼はますますその笑みの切れ味を鋭くしていく。

 

「後悔せえへんように気張りや、孫策。さあて…やったるか!うりゃああああああっ!!」

 

「はぁぁぁあああああっ!!」

 

互いの刃を閃かせ、凄まじい速度で剣戟を重ねる両者。張遼が得物の長さを活かして強く鋭く偃月刀を振るえば、孫策は天性の

 

感覚と桁外れの臀力で以て剣を振るう。刃がぶつかって離れる度、張遼も孫策も笑みを深くしていく。これは修羅同士の戦い。

 

並の戦士ではそこに介入することはかなわず、一線級の武将でも不可能の公算が大きいであろう。それほどの戦いなのである。

 

「あっはっはははははーーーーっ♪」

 

孫策など、狂気に満ちた笑い声をあげている。張遼はその理由を知っていた。

 

「(ま、ガキのころから戦場に連れ出されて血を見てりゃ、そうもなるやろな…)」

 

子どもの頃から戦場。そんな人間など、張遼の知り合いには何人となくいる。だが、目の前にいる狂戦士のようになったやつなど

 

一人もいない。強者との戦いを楽しむ者はいるが、こんな血走った目をし、高笑いしながら戦いを楽しむ人間など、張遼は孫策の他に

 

知り合いを持たない。

 

「(ウチも大概やけど…春蘭のヤツを除けば、本物の修羅と言えるのは雪蓮くらいやな。愛紗は修羅にはなりきれんし)」

 

ふと、憧憬を抱いていた少女のことが思い浮かぶ。戦いに信念を持ち込むのは悪いことではない。むしろ強き信念を持った戦士であれば、

 

それは修羅にとっては好敵手となり得る。張遼とて信念も無しに刃を振るっているわけではない。だが、それに拘り過ぎるのも駄目だ。

 

まして、借り物の信念など。

 

今の張遼はそう考えていた。目の前の女は王だ。借り物の信念を持ち得る人間ではない。その在り方は先代の『江東の虎』孫文台に似る。

 

この孫策という女は統率者だ。だから通用する部分がある。しかし関羽は違う。関羽はあくまでも武人でしかなく、加えて主人に色々と

 

依存する部分が大きいのだ。戦う力のない主のために、その刃を振るうのはわかる。だが、張遼は思うのだ。

 

「(それを修羅って言うんやったら…なんちゅう哀しい修羅やろな…)」

 

修羅ではない、とは言わない。だが、修羅と言うにはあまりにも―いや、今それを考えても詮無きことだ。そう思い直し、張遼は孫策との

 

戦いに引き続き集中する。王という括りで見れば、この女は三国の中では最強だろう。いくら非情を装っていても非情になりきれないまま、

 

年相応の少女としての一面も持つ曹操。元より非情な考えなど持てず、優しすぎる劉備。孫策の妹である孫権もまた、悩み多き年頃。脆い

 

一面も強く残っている。

 

だが、孫策は違う。脆い一面が無いと言うことはできない。しかし、考えようによっては王として最も完成されている女だ。

 

誰よりも国を、民を愛し、国や民のためなら己すら捨て駒にすることを厭わない。それでいて、己の意地を通す事には拘らない。

 

「(一刀と似てるんやろうな、雪蓮は。だからいざとなった時でも脆さを見せず、誰よりも強く在ることができるんやろうな…)」

 

そしてだからこそ、揮われる力は鮮烈なのだ。張遼はそれを肌で感じ、思わず己の血の滾りに身を任せてしまいそうになる。

 

しかし、今は作戦通りに動かなければならない。だが、手加減して勝てる相手でもない。

 

―ならば!

 

「これでも喰らいや!」

 

息を吸い込み、腕と脚に氣を流しながら、張遼は吶喊し―

 

 

『―烈風(れっぷう)百撃槍(ひゃくげきそう)!!』

 

 

恐るべき連続付きを繰り出す。その神速の連撃の前に、さしもの孫策も防戦態勢を取らざるを得なかった。張遼は構わず突き続ける。

 

「そらそらそらそらそらそらぁぁぁぁぁぁぁああああああっ!!」

 

「あっはは!いいわ張遼!すごくいい!」

 

この状況にあってなお笑う孫策。しかし攻撃に転じることができずにいる。両者の戦いは、まだ続きそうであった。

 

 

□楽進隊(対孫策軍先鋒・甘寧隊)

 

―その頃、楽進は甘寧と対峙していた。

 

「我が名は楽文謙!我が主の命により、貴様らをここから先へは通さん!」

 

拳を握り、銀色の三つ編みを揺らして楽進は名乗りを上げる。『今回』はこれが初陣となる楽進だったが、かつての記憶が甦ったため

 

武将としての経験は目前の甘寧より豊富だ。長く培ってきた武人としての力、指揮官としての技術。かつて義勇軍を率いていたことも

 

ある楽進は、指揮官としての能力に秀でていた。そして、兵に指示を出し終えた今、武人として甘寧と対峙する。

 

「我が名は甘興覇!この鈴の音を貴様の黄泉路への手土産にしてやろう!」

 

「あいにくまだ黄泉路に歩を進めるつもりはないのでな…だが、なんとしても貴様を止めさせてもらう!」

 

「ふん、やってみろ」

 

甘寧の切れ長の目が、楽進を見据える。怜悧な光を湛えたその瞳を、楽進は睥睨する。

 

「(高速戦闘では私は分が悪い…だが、隊長から教えていただいた『あの技』がある。それがあれば、お前とも戦えるぞ…思春)」

 

静かに構える楽進。確かに目の前の甘寧は強敵だ。暗殺者型の武人である甘寧と、正面突破型の武人である楽進では、一見相性としては

 

最悪の部類に入ると見られるかもしれない。しかし、今の楽進は、甘寧がどう動こうと、それを完璧に捉えることができるという自信が

 

あった。尊敬する上官であり、かつて愛した男から託された新たな力。それが今の楽進に力を与えていた。

 

「貴様、武闘家か…」

 

「ああ。そう言う貴様は高速戦闘を得意とする、一撃必殺の将だな…暗殺を得意としていると見た」

 

「よく見抜いたな。その通りだ。だが、だからと言って正面からの戦いが苦手ということはない」

 

「そうだろうな」

 

重々承知していた。過去の世界で、武道会でやりあったこともあるのだ。勝った時も、負けた時もある。だが、今の甘寧はその時よりも

 

明らかに未熟。経験がまだ足りないのだ。自分と同年代の少女でしかない甘寧を、楽進はかつての同一人物と同等とは見做さなかった。

 

「最後通告だ。道を開けろ」

 

「…それは拒否させてもらおう。我が主との誓いがあるのでな」

 

「では貴様の命を奪ってやる」

 

甘寧が曲刀『鈴音』を後ろ手に構える。楽進も構えを崩さないまま、氣を溜めはじめた。甘寧がそれに気づいた様子はない。

 

「…ふっ!」

 

甘寧がその姿をくらます。だが―

 

「―そこだ!」

 

あらぬ方向に、顔を向けもせず蹴りを繰り出す楽進。しかしその蹴りは甘寧の腹を捉えていた。

 

「なにっ!?」

 

跳び退る甘寧。確実に死角を突いていたはずのその攻撃は、しかし楽進の的確な迎撃によって防がれた。それも、突発的な対応になると

 

威力が鈍るはずが、まるで最初から狙っていたかのような威力ある迎撃。楽進は手応えを感じ、再び構えを取る甘寧を見据える。

 

「(『掌間術(しょうげんじゅつ)』…周囲に氣を放出することで感覚を拡大する技だ…私の周囲の空間は、私の肌も同然)」

 

楽進は本来、自身の氣を破壊力へと転化する使用法を得意としている。気配にも人一倍敏感だ。だが、それだけでは説明がつかない程の

 

鋭敏な感覚を発揮することができるようになるこの技は、甘寧のような暗殺者を敵に回しても互角以上に渡り合うために必要だ。

 

修行によって氣の増大が見られたこともあり、有効範囲は四半里程度という広さを誇っていた。楽進を中心としたこの範囲内で何かあれば

 

それは楽進にとって自分の肌の上を誰かの指が撫でるように感じられ、手に取るようにわかるのだ。

 

幾度となく向かって来る甘寧の気配を感じ、最低限かつ効果的な迎撃を繰り返す楽進。

 

「(隊長や朱里が使うそれは段違いに有効範囲が広い…だが、有効範囲がせいぜい四半里程度の私のこれでも、十分に有用らしい)」

 

相手の感情までもわかる。甘寧は苛立っているな―楽進はそう感じていた。

 

未熟さは罪ではない。だが、未熟故の焦りというのは往々にして生じるものだ。そしてそれが決定的な隙を生むことになる。

 

「取った!」

 

今までにないほど鋭く、素早い一撃。だが、相手がどれほど微妙な動きをしようと手に取るようにわかってしまう今の楽進にとって、その

 

攻撃は蚊が止まって見えるほどに遅かった。相手が動こうとした瞬間、それは楽進に非常に微妙な感触を与える。動けばすぐにわかる。

 

「…残念だったな」

 

「なっ!?」

 

楽進の右脚に強烈な氣が集まり、それは刃となって甘寧を襲う―

 

 

『―脚刃閃(きゃくじんせん)!!』

 

 

甘寧の曲刀によって蹴り自体は受け止められたが、氣の余波が甘寧の肩に到達し、ざっくりとその肉を切り裂く。

 

「ぐあっ!?」

 

再び飛び退る甘寧。しかしその動きは先ほどよりも鈍い。楽進はさらに相手の焦燥を引き出すべく、挑発的な言葉を口にする。

 

「どうだ、私の刃の如き蹴りの味は?」

 

「…見事だ。まさかこれほどの強者だったとはな」

 

「私などまだまだだ。この先、私などよりはるかに強い者が揃っている…私すら打ち破れないようでは、ここを通っても意味が無いな」

 

「貴様を破らねば通れないのではなかったか?」

 

「そうだ。つまり貴様は弱いということだ」

 

「…その口をこの私が閉ざしてやる!」

 

甘寧は傷に構わず再び襲い掛かってくる。普段は冷静な甘寧だが、意外に頭に血が上りやすい―楽進はあの男からそう教えられたし、

 

自身もかつての経験から多少はそう判断していた。だが、未熟さというのはかくも厄介なものか。今の甘寧は完全に頭に血が上って

 

冷静な判断ができていないように思える。

 

「(さて、隊長の命もある。仕留めることはできないが…この女は余程のことが無い限り撤退しようとしない。どうするか…)」

 

相手の命を奪わない程度に傷付けなくてはならない。しかしここでまともに戦えないくらいに傷を負わせてしまえば、今後の展開に

 

有利に働くことは間違いない。加えて、甘寧ほどの有力な将を無力化したとなれば、敵の士気も下げられる。楽進の心は決まった。

 

派手に打ち合うことはない。しかしその入り込む隙のない戦いは、二人の差をさらに如実なものにしていくのであった。

 

 

□于禁隊(対孫策軍先鋒・周泰隊)

 

―その一方、于禁は周泰と対峙する。

 

「于文則なの!ここを通りたかったら、意地でも斃して見せろ、なの!」

 

楽進と同じく『今回』が初陣となる于禁もまた、かつて部隊を率いる将であった。その経験が記憶と共に甦ったことで、今の于禁は

 

優秀な指揮官としての力を一気に覚醒させている。自身の戦闘能力には多少不安があったが、長く戦ってきた経験と、修行によって

 

新たに得た力を戦意の源とし、兵に指示を出した後は周泰と対峙する。

 

「私は周幼平!お相手します!」

 

「この先に進むのは正直おすすめしないの。行っても蜂の巣になっちゃうの」

 

「お気遣い感謝します。ですが、私も退くわけには参りませんので」

 

「なら、ここで止めさせてもらうの」

 

愛用の『二天』を構え、戦闘態勢に入る于禁。対する周泰もまた、『魂切』に手をかけ、互いに隙を窺う。

 

「(さすが明命ちゃんなの。隙がまったくないの…)」

 

元より暗殺者型の周泰を相手に、隙を見いだせるとは思っていない。だが、于禁もまた周泰と同じく高速戦闘を旨としている。

 

そういう意味では同類であり、負けられない相手であった。しかし今回は勝つ必要は無い…無力化すれば良いだけだ。だが、それは

 

中々困難な仕事だろう。修業を積んだ今の于禁でも、周泰を相手に「無力化するだけ」の戦いをする自信は無かった。

 

息を詰める于禁―次の瞬間、周泰が動いた。

 

「っ!」

 

背負った長刀を鞘走らせ、目にも留まらぬ速度で襲い掛かってくる周泰。それをいなし、剣を振るう。しかし当たらない。

 

「それで当てるつもりですか!」

 

「当たるなんて思ってないの!」

 

言うが早いか、連続で斬りつけてくる周泰の刀を悉く受け止め、不意に鋭い蹴りを繰り出す于禁。その蹴りは周泰の顎を捉えた。

 

「あうっ!」

 

元々小柄な周泰と、同年代の標準よりは若干高い身長を持つ于禁とでは元来の間に差がある。周泰の場合、長い刀を使うことでその

 

欠点を補いつつ、持ち前の敏捷性を活かしてまともに打ち合わない…最初の一太刀で決める、初撃必殺の戦い方をする。間合いなど、

 

素早さで詰めれば良い。それが暗殺者の戦い方だ。一方の于禁の剣はそれほど長いわけではない。しかし脚は比較的長いのだ。

 

それほど足を高く上げずとも、小柄な周泰の顎を捉えるには十分であった。

 

「(顎に打撃を加えれば、脳に一時的な衝撃が加わり、短い時間だけど酩酊状態になるって隊長から聞いたの)」

 

さらに言えば、于禁の蹴りは周泰の顎を斜め下方から捉えていた。これが周泰の脳を揺らし、動きを鈍らせることになる。もちろん

 

僅かな時間しか効果は期待できないが、今はそれで十分なのである。

 

「ええぇぇえええいっ!!」

 

気合を吐き、脚に氣を流して瞬時に間合いを詰め、連撃を加える。その隙のない連撃に、今度は周泰が防戦することになる。

 

「くぅぅぅっ!」

 

先程の衝撃がまだ残っているのか、少し辛そうな周泰。いつもの于禁であれば気遣ってこれ以上のことはしないのだが、今は戦いの

 

中で、しかも于禁には重要な役目がある。それを果たすため、今は一人の武人として容赦はしない。まして技量ではまだ圧倒するには

 

至らないのだから、容赦などしたら于禁の方が負ける。だから攻め手を緩めないのだ。

 

だが、周泰もいつまでも防戦一方ではなかった。瞬間、その姿が掻き消えたかと思うと、少し離れた場所に現れる。

 

「仕切り直しするの?」

 

「…はい。正直、少し油断していました。人は見かけによらないものですね」

 

「そうなの。たとえば、周泰ちゃんが猫好きだったりとか」

 

「へ…はぅあ!?な、なぜそれを!?」

 

「乙女の勘は何でもお見通しなの」

 

いまいち締まらないやりとりを交わす両者。しかし、両者共に隙を見せない。その光景と会話の内容は、あまりにもミスマッチだった。

 

「私だって、それなりに長く戦場に身を置いてきてるの。甘く見ないでほしいの」

 

「…そのようですね」

 

「もう一回言うけど、ここは通さないし、通らない方がいいと思うの」

 

「…では私ももう一度。ここは通らせていただきます」

 

「どうしても?」

 

「どうしてもです」

 

「…なら、もう沙和も容赦しないの」

 

于禁の声が急に低くなったことに、警戒心を強める周泰。果たしてその警戒は正しく、于禁は四肢に氣を流し始めていた。

 

「(沙和の本領は高速戦闘…明命ちゃん相手にどこまでやれるかわかんないけど…やるしかないの!)」

 

普段は穏やかな眼が、刃の如き鋭さを帯びる。周泰が対処のため動こうとしたその時、于禁は弾かれたバネのように飛び掛かった―

 

 

『―風来二天(ふうらいにてん)百雷斬(ひゃくらいざん)!!』

 

 

目にも留まらぬ連撃が周泰を襲う。なんとか長刀で防ごうとするも全てを防ぐことはできず、それほど深くはないとはいえいくつかの

 

傷を負ってしまう。武器の取り回しの悪さも、ここにきて悪影響を及ぼしていた。周泰とてその長刀を片手で扱うだけの臀力はある。

 

しかし于禁が使う剣は、間合いは狭いが小回りが利き、連続攻撃に適している。元々二の太刀のない戦い方をする周泰では分が悪い。

 

「まだまだ行くの!」

 

ここまで凌ぎ合った経験は于禁にもあまりなかった。しかし自分の新たな力に自信を持った于禁は、周泰をさらに追い詰めていった。

 

 

(side:一刀)

 

俺達は汜水関の上で、戦闘の様子を見ていた。作戦通り、こちらが優勢のようだ。中軍の方にも動きらしきものが見られるが、前線が

 

未だ混乱状態にある現状、とばっちりを被るのを嫌ってか、曹操軍に動きは無かったし、袁紹軍は言わずもがな。公孫賛軍は沈黙して

 

様子を見ているのだろう。作戦上の出番は間もなくだから、舞台袖に控えているといったところか。

 

「いい塩梅になってきたな」

 

「はい」

 

予想以上にうまくいっている。凪に沙和、霞に華雄…全員が俺達との修行で得た力を使いこなしているようだ。ほとんどやっつけとも

 

言える修行だったけど、ここまで上手くいったのはやはり当人たちの才能が優れているためだろう。彼女達の優秀さは重々承知しては

 

いたが…これは嬉しい誤算だった。

 

「星は兵との戦いに回っているな…それ以外はかなり抑えられている。これならそろそろ、作戦を第二フェーズに進められるな」

 

「ええ…」

 

連合側の混乱はそれなりに落ち着いてきてはいるが、主力武将が抑えられている上、こちらの兵の練度の高さもあり、攻めあぐねている

 

様子だった。加えて主力が見事に抑えられてしまっているため、士気に陰りが生じている。こちらは逆に敵の武将を抑えていることで、

 

士気が上がっている。それが練度以上の戦闘能力を兵に与えていた。そして各武将も敵武将を抑え込みながら、よく指揮をしている…。

 

それによって、汜水関の前にはある意味では関よりも厄介な「人の壁」が完成されていた。

 

孫策軍はそれほど焦ったようには見えないが、劉備軍はかなり焦っているようだ…彼女達の連合参加理由を考えれば、その気持ちはまあ

 

わからないでもないが…事情を知っている者からすれば何とも虚しい焦りだ。焦ったところで洛陽は平和なのだ。むしろ連合側が平和を

 

乱す側に回っている。事実とはいつだって残酷なものだ…それを残酷ととるかはその人次第だが。

 

「…朱里、虎牢関と洛陽に伝令を飛ばしてくれ。これより第二幕を開演する」

 

「御意。では、私達の隊の兵にも用意をさせましょう…誰かありますか!」

 

「はっ!」

 

「白十字隊及び黒十字隊、出陣準備。作戦を第二段階に移行します。私達の旗を持って来てください」

 

「はっ!…では、反乱軍への『おもてなし』は今この時でよろしいのですね?」

 

「今でしゅ…はっ!?もとい、今です!」

 

「はっ!」

 

兵は確認を終えると、少し破顔しながら走り去っていった。それを見送ってから、朱里はがっくりとうなだれてしまう。

 

「うう、ちょっと噛んじゃいました…」

 

「久しぶりに出たな」

 

「はい…ちょっと、緊張しすぎているのかもしれません。いよいよと思うと…震えてしまって」

 

不安げに胸に手を当てる朱里。そんな朱里を安心させたくて、俺は背後から抱き締めた。

 

「一刀様…?」

 

「…大丈夫だ。俺達には仲間がいる。大義もある。そして…未来への希望がある。恐れることはない。何より、君には俺がいる…」

 

「…はい」

 

少しの間、俺は朱里を抱きしめていたが、そろそろあれだったので朱里から離れる。

 

「…さて、一つ派手な花火を上げるとするか」

 

背に負った『開闢弓』を構え、矢を番える。氣を流し込み、弓と矢が紫電を帯び、淡く光りはじめる。

 

「狙いは…袁紹軍の陣地でいいか。ちょっと遠いが…『開闢弓』の力なら…!」

 

弦を引き絞り、風が完全に止んだその瞬間を逃さず、俺はその矢を放つ―

 

 

『―龍王(りゅうおう)轟鳴弓(ごうめいきゅう)!!』

 

 

紫電を帯びた矢が、まるで電光の如き速度で飛翔する。まもなくそれは袁紹軍の陣地に着弾し、大爆発を起こす。

 

「思ったより威力あったな…さて、いきなり大爆発が起きて腰を抜かしている間に…旗は用意できたか!」

 

「はっ!いつでも掲げられます!」

 

「よし…では俺達が笛を吹き終わったその時、旗を掲げるんだ。出陣の合図はこちらでする。いいな?」

 

「はっ!」

 

兵に旗を頼み、俺達は城壁の上、何も遮るものが無い場所に登る。俺に合わせて朱里も笛を取り出す。俺達は目配せで呼吸を合わせ、

 

同時に笛を吹き始める。

 

俺の『志音悠久(しおんゆうきゅう)』と朱里の『響音不易(きょうおんふえき)』が奏でる音は、淋漓さんが施した妖術によってその音をこの戦いの

 

喧騒の中にあっても確かに響かせる。静かに…それでいて力強く。俺達は演奏を続ける。いつしか少しずつ、戦の喧騒は収まり、敵も

 

味方も、どこからこの音が響くのかと辺りを見回していた。

 

それを見ながら、俺達は演奏を終える。笛を口から離し、懐にしまう。すると事前の打ち合わせ通り、兵が旗を掲げた―

 

 

 

 

 

―『天の御遣い』の象徴。白と黒、二つの十文字旗を。

 

 

 

 

 

俺達の心は決まっている。名乗りを上げるため、淋漓さんが用いていた『拡声術』を発動させる。息を吸い込み、連合を見据える。

 

 

 

 

 

―さあ、いよいよ第二幕の開幕だ。

 

 

□汜水関前

 

汜水関に掲げられた『董』の旗の両隣。そこに、新たな旗が掲げられる。汜水関の上に立つ二人の人物が、異様に響く声で名乗る―

 

 

 

 

 

「反董卓連合軍よ、聞け!我が名は北郷一刀!一度は名を聞いたことがあるだろう!幽州に舞い降りし『天の御遣い』とは俺だ!!」

 

 

 

 

 

「私は北郷朱里!同じく幽州に舞い降りし『天の御遣い』にして、北郷一刀が一の戦友!戦いをやめ、尋常にこの言を聞きなさい!!」

 

 

 

 

 

二人の『天の御遣い』の名乗り。それは連合に巨大な衝撃をもたらす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そんな…っ!?」

 

孔明が口を手で覆い、息を呑み―

 

 

 

 

 

 

 

「あれは…見間違うはずもない、なぜあの旗がっ!?」

 

関羽は思わず戦いを忘れ、後退りし―

 

 

 

 

 

 

 

「―お、お兄ちゃん…なんでなのだ!?」

 

張飛は本陣を守りながら、大きな衝撃を受け―

 

 

 

 

 

「―ど、どうして…どうしてなの、ご主人様ぁっ!?」

 

北郷一刀を慕う劉備は、悲痛な声をあげる。

 

 

 

 

 

 

 

連合に動揺が広がる。それを睥睨しながら、二人は尚も言い放つ。

 

 

 

 

ただ一言―連合の実態を暴く言葉を。

 

 

 

 

 

「反董卓連合軍に告げる―」

 

 

 

 

 

一刀が大仰な仕草で連合を指差す。それは不思議と、汜水関を見上げる兵や武将たちにもはっきりと見えていた。

 

 

 

 

 

連合が掲げた大義を、兵たちが信じた正義を、粉々に打ち砕く言葉。

 

 

 

 

 

そして、それは放たれた―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―貴様ら、反乱軍だな!!!」

 

 

あとがき(という名の言い訳)

 

 

大寒波の襲来に備えてエアコンを修理してました、Jack Tlamです。

 

いよいよ今回、連合との戦いが開始される運びとなりました。

 

そして、一刀達にも名乗らせてあげることができました。いやー、ここまで長かった。

 

 

群像劇っぽくなっちゃいましたけど、いかがでしたか?

 

とりあえず四人の武将がそれぞれ敵の武将と戦闘する場面を書いてみましたが…上手くいったかな?

 

新技を披露する四人と、それに押される敵将。なんだこの主人公(側)補正。沙和が明命をあそこまで

 

抑え込むなんて想像できませんでした。はい。

 

 

新技の説明はそれなりに文中に載せたつもりですので、もしわからなければ随時お訊ね下さい。

 

もうこいつらだけで十分強いじゃん…って思うんですけど、物語の都合上、桁外れに強くするわけにもいかず、

 

こうなりました。

 

 

望遠鏡が前触れも無く登場。ガラスの鏡があるし、眼鏡も現代のそれとほぼ変わらない技術だと思われるので、

 

作り方さえわかれば恋姫世界であれば作れるのではないか?と思って取り入れました。

 

どこかで望遠鏡が登場するSS見たような気がするけど…

 

 

そして、この場をお借りしまして、台詞のアイデアを提供してくださったsansin様にお礼申し上げます。

 

おかげさまで、外連味のある演出を行うことができました。本当にありがとうございました。

 

 

 

次回は二人と劉備軍が対峙するのが主な内容になるかと思います。

 

 

 

次回もお楽しみに。

 

 

次回予告

 

 

 

現れたるは『天の御遣い』。それを狙う英傑達。各々の思惑が交差する時、連合は瓦解の兆しを見せる。

 

 

次回、『悲嘆と憤怒と』。

 

 

交わされる言葉、ぶつかる激情。戦場は全てを呑み込んでゆく。欲望も、悲嘆も、そして憤怒も。

 

 

 


 
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