No.637311

ポケモンになってしまった俺物語 IFエンド

ネメシスさん

お久しぶりです、ネメシスです。
リアルで忙しく、ネタも思い浮かばず、小説もろくにかけないネメシスです。
このままずるずると長引くのもどうかと思ったので、とりあえず昔なろうで作ったIFエンドを載せて一応の締めとしておきます。
……なろうの時から応援してくれた方には本当に申し訳なく思う次第です。
時間ができて何かアイディアが浮かべばチビチビと書いて投稿していくかもしれませんので、その時は一読いただければ幸いです。

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2013-11-16 10:47:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3912   閲覧ユーザー数:3842

 

 

 

……音が聞こえる。

真暗な闇の中に、ブクブクと泡がはじける小さい音が。

 

(……ここは、どこだ?)

 

閉じられていた眼を開けてみると、どうやら俺は何かの液体の中にいるようだ。

透明でほのかに暖かく、どこか安心するそんな液体の中に俺はいる。

母体にいる胎児はもしかしたらこんな感じなのかもしれない、そんな安らぎを俺は感じていた。

ならばここは誰かの子宮の中なのだろうか、そう思うもどうやらそうでもない。

もし俺が体内にいるならこれほどまでに明るいはずもなく、身体にコードのようなものがいくつも繋がれているはずもない。

 

 

 

――― 俺は、一体 ―――

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

俺はこの見知らぬ場所で意識を取り戻す前の記憶を辿ってみた。

ここにいる前、そう俺が人間からポケモンへと姿を変えてしまいポケモンの世界へと降り立った時のことだ。

俺は長い間共に旅をしたこの世界で唯一俺の事情を知る、いろんな意味で特別な存在といえるイエローと共に彼女の生まれ故郷であり俺たちが出会った思い出の場所、トキワの森に戻ってきていた。

トキワの森は古くからこの世界に存在している、神秘的な力を持ち人間たちにたくさんの恩恵を与えてきた大森林だ。

トキワの森はその神秘性ゆえか珍しいポケモンが度々訪れるようで、かの幻とされているミュウも過去何度かこの森で見かけられている。

そして今回俺たちがこのトキワの森に戻ってきた理由は、最近またここに幻のポケモンミュウが目撃されたと情報があったからだ。

恐らく、この世界で俺を元の世界に戻すことのできる唯一の手段はミュウにあるのではないかとにらんでいる。

全てのポケモン達の原初にして、全ての力を行使することができるこの世で唯一無二の存在。

噂ではこの世界が誕生した時から存在していて、場所によっては神として崇めていることもあるほどだ。

おそらくミュウにもできないのなら、この世界のどこを探しても俺が元の世界に帰る方法など存在しないだろう。

俺としては今ではこの世界が好きになっているし何よりイエローと共いることに安らぎを感じることができたときから、元の世界に戻ることの重要度は俺の中ではかなり低くなっていた。

だからもし戻れなくてもこの世界で彼女と一緒に旅をしたりのんびり過ごすのもそれはそれでいいかもしれない、そう思っている。

それでも、やはり前の世界に対し未練もあるわけで、重要度が低くなったからと言って帰りたいという思いがなくなったというわけではないのだ。

なので、この森に来たのは最後の賭けとしてミュウと会うためである。

これで戻れるならそれでよし、戻れないならそれはそれで諦めがつく。

 

森の最深部、トキワシティでは聖域とされている神聖な場所。

今までの目撃情報からしても、ミュウはその最深部にいる可能性が高い。

そこにいるポケモンは他以上に力のある存在ばかりで一流と呼ばれるトレーナーでも苦戦するという、そんな場所だ。

確かにトレーナーとして力をつけてきた彼女だし、最初のころと比べると段違いの力を持つことができた俺である。

しかし、結局彼女は「戦う者」としての才能は低く、俺自身も力を上げたといっても主人公であるサトシのピカチュウに若干劣るくらいだ。

そんな俺たちは二人合わせてもとても一流と呼べるものではなく、そんな俺たちで聖域に入るなど無謀もいいところかもしれない。

それでも今ここにミュウがいる可能性が高く、そしてこれを逃せば次の機会に巡り合える可能性は果てしなく低い。

帰還を若干諦めているとは言ってもそれでも完全に諦めきれているわけでもない。

そんな俺の心情をくんでか、こんな危ない場所にもかかわらずイエローも仲間のポケモンたちも一緒に来てくれた。

……俺は本当にいい仲間たちに巡り合えたものだ。

 

いざ聖域に足を踏み入れてみると予想していたそこのポケモンたちの猛襲はなかった。

道中ではポケモンの中でも獰猛なポケモンの一体と知られるニドキングに遭遇もしたのだが。

通常のニドキングよりも一回り大きく威圧感も半端ないその巨体に若干引け腰になっていると、そのニドキングはイエローを一瞥すると踵を返して去ってしまった。

それには流石に俺も彼女も一瞬呆けてしまったものだ。

そのあとも何体かポケモンたちに遭遇したのだが、そのどれもが最初のニドキングと同じようにイエローを一瞥した後に興味ないかのようにその場を去ってしまう。

どうしてか、そう頭をひねっていると俺はふとイエローの力を思い出した。

 

“ポケモンの意思を読み取り、傷を癒す力”

 

それはこの森の恩恵を受けて生まれた、イエローが持つ特殊な力。

そして、あのポケモン達もどれほどかはわからないが、この森の恩恵を受けて生きているのだろう。

恐らくだが恩恵を受けた者同士で何か伝わるものでもあったのかもしれない。

この聖域に住むポケモンたちにイエローがこの聖域に入ることを認められたということだろうか。

だが、もし恩恵を受けた者が悪者だったらどうするのだろうか、そう思ったが以前イエローに「恩恵を受けた人たちの中で悪者になった人は存在しない」そう聞いたことがある。

そういえば、ポケスペで数多くの騒動を起こした四天王、そのなかでもイエローと同様にトキワの森の恩恵を受けて生まれたワタルも、その根元はポケモンを想いポケモンのために涙した心優しい者だったのを思い出し、なるほどと納得した。

 

そうこうしているうちに辿りついた森の最深部。

そこで俺たちはとうとうミュウに会うことができた。

そして聞いた、俺の知りたい全てのことを。

……それを聞くと俺は呆れてしまった。

俺がここに来たのは俺が何か特別な存在だったからというわけでもなく、死んで転生したというわけでもなく、ただ単に巻き込まれただけだったようだ。

ミュウと、ミュウを基に作られたミュウと同格の力を持つ存在であるミュウツー。

最強のポケモンともいえる二柱の戦い、その戦いは苛烈を極めその強力な力のぶつかり合いは空間を歪め、そして世界を超えて偶然俺を巻き込んでしまったそうだ。

ポケモンに姿が変わってしまったのはそれもまた混ざり合った二つの力による影響らしく、もしかしたらピカチュウ以外に変わってしまっていたかもしれないという。

つまりこれは映画版でサトシが石化してしまったことと似た現象というわけだ。

それを聞くと、まぁ不幸中の幸いなのだろうか、納得できないところもあるが納得するしかないだろう。

死んだわけでもないのだから、そこはいいとしておこう。

そして、肝心のもとの姿へ戻ることともとの世界への帰還についてだが、それもどうやら問題ないそうだ。

まぁ、サトシも元に戻ることができたのだから、それと同じ現象が俺に起きて元に戻ることができないということはないと思ってはいたのだが、それでももしもということがあるからな、それを聞けて俺は心底安心した。

 

と、いうわけでさっそく俺を元の姿へと戻してもらうことにした。

ミュウは一鳴きすると光の玉が前に現れ、それが俺の体に吸い込まれるように入ってきた。

すると、俺の姿が一瞬光り、その光が収まるとピカチュウではなく元の俺の姿へと戻っていた。

ピカチュウのように素早く動けるわけでもなく、強力な電撃を操ることができるわけでもない人間という不便利な体だというのに、とても懐かしくとてもうれしく知らず知らずのうちに俺は涙を流していた。

その隣でイエローもともに喜びを分かち合ってくれたのか俺を見て涙を流していた。

それがまたとてもうれしく、俺は彼女を抱きしめていた。

彼女はそれに一瞬驚いたようだが、彼女も俺の背に腕を回し抱きしめ返してくれて「よかったね、よかったね!」そう何度も言ってくれた。

しばらくして俺たちが離れると、先ほどまでの行為による気恥ずかしさでお互いに顔をうっすら赤くしていた。

そんな俺たちをミュウはニヤニヤしながら見ていたが、はっきり言ってかなりむかつく。

とりあえず一発殴ってやろうと拳をふるうが、人間に戻り身体能力も戻った俺の拳などミュウにとってはコイキングの体当たり以下、クスクスと笑いながらひらりと躱してしまう。

それがまたいやに俺をイラつかせ、俺は半ばヤケになり拳をふるい続けた。

拳をふるっては躱しふるっては躱し、そのやり取りを何度も繰り返す。

そんな俺たちを見てイエローはクスクスと笑っていた。

流石俺の相方、こいつと違って控えめでかわいいらしく笑っている!

そんなイエローの姿に俺の心は何度癒されてきたことか。

 

……そんな楽しい時間ももう終わってしまう。

確かに俺はこの世界でイエローと共に生きていくのもいいかもしれない、そう思ったがそれは元の世界に戻れなかったらの話だ。

そして、今俺の前に俺を元の世界に返すことができる存在がいる。

ならば俺は帰らなくてはいけない、俺の世界はここではないのだから。

 

そして、とうとう元の世界へと帰る時が来た。

イエローも俺との別れを惜しみ涙を流している。

今までの旅の中で喜びを分かち合ってきた時の温かい涙と違い、今流している涙は俺の胸を苦しいくらい締め付けるほど嫌な涙だ。

だが、彼女は俺を引き止めない。

引き止めたい、もっと一緒にいたい、そう思ってくれているのは俺にだって解る、だがそれでも彼女は引き止めない。

俺が元の世界に帰りたいという思いを彼女は知っているからだ。

俺だって、イエローと一緒にいたいと思う、もっと一緒に旅したいと思う。

それでも、この機会を逃したらもうないかもしれない元の世界へと変える手段。

この世界は確かに好きだ、だけどそれと同じくらい元の世界に愛着があることにここにきていろいろと旅をしている間に気付かされた。

だから、帰れるとわかったのなら俺は帰りたい。

イエローを見つめる、彼女は袖で涙をふくと一生懸命無理をして俺に笑顔を向けてくる。

そして一言「さようなら」そういった。

それに俺も答え「さよなら」そう返すとミュウに向き直る。

ミュウは俺に「いいの?」と視線を向けてきたが俺はそれに頷いて返す。

それを受けると、ミュウは先ほどと同じように一鳴きする。

すると、俺の周りの空間が大きな力により歪み始める。

 

 

 

……そして

 

 

 

ドカァァァァァァアァァァァン!!!

 

 

 

俺がそこから姿を消す瞬間、ミュウの技の影響下にある俺をも巻き込む大きな爆発が起きた。

いったいなんだというのか、爆発の衝撃か薄れゆく意識の端に見たのは上空に浮かぶ一隻の飛空艇。

そしてその側面には大きく「R」のマークが描かれていた。

それを見たとき、ちょうど俺の意識が途切れた。

 

『……あ、やば』

 

……そんな、ミュウの声が頭の中に響いたような気がした。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

……それで、今に至るというわけだ。

あの最後に見た飛空艇、あの「R」のマーク、恐らくロケット団だろう。

たぶん俺たちと同じようにミュウの情報を聞きつけ捕獲しに来たのだろうな。

まぁ、ミュウの事だから心配はいらないか。

俺が今心配しているのはあそこに残ったイエローの事だけだ。

仲間たちも高レベルの敵と戦っても多少は競り合える力はあるだろうことは、今まで一緒旅をしてきた俺には分かる。

それでも相手はあのロケット団だ、どんな手を使って襲ってくるかわかったものじゃない。

幹部クラスの実力もポケモンリーグの上位入賞者並にあるし、さらにポケモンの力だけでなく高度な技術を用いたメカまで使ってくる。

……その力や科学力を他に使えよといいたくなるな。

あいつらには何度か接触する機会があったため、目的のためには手段を選ばない非道さも相まってあいつらの怖さは理解している

しかし、いくら俺が心配してもすでに俺にはどうすることもできない。

ピカチュウとしての力もなくなり、恐らくだがミュウの力で世界を移動してしまっただろうから。

 

(あの聖域のポケモン達とミュウを信じるしかないか)

 

あそこに住むポケモンたちと実際に戦ったわけではないからどれくらい強いのかはわからないが、それでも遭遇した時に感じたあの圧倒的な威圧感は一流のトレーナーであってもそうそう敵うものではないだろうというと感じられた。

いかにロケット団といえども、仮に“あの”サカキが来ていたとしても、あの聖域でそう簡単に目的を達成できるとは思えない。

故に、今俺にできるのはイエロー達が無事でいてくれることを信じるだけだ。

 

それでここからが本題だ。

俺がいるこの場所、ここはどこなのだろうか。

ミュウに間違いがなければここは俺の家の俺の部屋であるはずだが、間違っても俺の家はこんなどこぞの研究所のような内装はしていない。

そして俺の体だが、あまり満足に動けない身で確かなことはいえないが、元に戻った体より若干小さくないか?

 

(もしかしてミュウの奴、送る場所間違えた?)

 

……いや、間違えたというよりあのロケット団の介入によりいろいろとずれたと考えた方が正しいかもしれない。

流石のミュウもあのいきなりの介入で正確に送ることはできなかったのかもしれない。

そしてこの若干小さくなった体、もしかしたらミュウの力がロケット団の介入により暴走……かどうかはわからないが、そんな感じのことが起きて以前のように体が変質してしまった可能性も否定できない。

 

(……くそっ! あいつら、もし今度見つけたら問答無用で十万ボルトぶち込んでやる!

 ……あ、俺もうピカチュウじゃないんだった)

 

『……実験体の起動を確認』

 

と、そんなことを考えていると、どこからか機械的な男性のものとも女性のものともわからないような声が聞こえてきた。

 

『……心拍、脳波共に正常……精神状態……安定域を維持……暴走の危険性軽微……』

 

どこから聞こえてくるのか、体を自由に動かせないから確認もできないのが歯がゆいが、その声は俺の気持ちなど気にするはずもなくただ淡々と言葉を紡いでいく。

 

『……規定された最低条件クリア……実験体の完全起動を承認………培養液…排出……』

 

その声の後に、俺につながっていたコードが外れ、俺を包んでいた液体が無くなっていく。

そして、その液体が完全になくなったとき、目の前のガラスのようなものが開かれた。

薄暗い室内を警戒しながら外に一歩足を踏み出す。

 

……フラッ

 

(うわッ!?)

 

いきなり体の力が抜け俺は前のめりに倒れた。

再び立ち上がろうとするが、なぜか体全体に力が入らずうまく立ち上がることができない。

俺は近くにある台に手をかけてふらふらとしつつも何とか立ち上がる。

何とか立ち上がることができたものの膝にはあまり力が入らずガクガクとふるえ、まるで生まれたての小鹿のようだ。

何とか体勢の維持をとろうと四苦八苦していると、俺が手をかけていた台に数枚の紙が乱雑に置いてあるのに気付いた。

どれほど前に放置されたものだろうか、うっすらと埃がかぶっていた。

その紙に書かれていた文字は見たこともないような文字だったというのに、なぜか俺にはその文字が理解できた。

何が書かれているのか見てみると、その紙の中の一枚に書かれていたものに目が留まる。

 

<人造魔導師『エリオ・モンディアル』のクローン体、№36号の強化実験>

 

聞き覚えのある単語を発見し、頬がヒクッとひきつったが、とりあえずそのあとにいろいろと書かれているのを斜め読みする。

どうやら、ここで研究されていた検体―――培養液に入って放置されていたことから恐らく俺のことなのだろう―――の実験書類のようだ。

一通り読み終わった後、とりあえず深呼吸をして一息つく。

とりあえず、今俺が最も言いたいことを言わせてもらおう。

それは……

 

「……リリなのかよ!?」

 

誰もいないのをいいことに、思いっきり叫んでみた。

この日、俺は元の世界に帰還することはできず、何の因果か『魔法少女リリカルなのは』の登場人物の一人であるエリオ・モンディアルのクローン体に憑依してしまったようだ。

……あぁ、無性にイエローに会いたい。

 

 

 


 
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