No.632901

真・恋姫†無双 巡る外史と仮面の魔神 三話

XXXさん

魔神編

殺せばよかった

2013-10-31 21:28:54 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2442   閲覧ユーザー数:2219

大地が黄巾党の証である黄色で覆われ、混雑する。

だが、その中心で黄巾党の兵に囲まれながらも戦う、二人の少女と数百人の兵がいた。

 

「くっ…!数が多すぎる!」

 

「にゃ~~!しつこいのだ~~!!」

 

二人の少女は関羽と張飛。

彼女達は義勇軍として黄巾党と戦闘を行っていた。

だが、予想外にも黄巾党は戦闘している最中にその数を増やし、囲まれている状態だ。

それ故に、軍師の諸葛亮、鳳統の指示が通らずにいる。

関羽と張飛の実力はかなりのものだが、この数を相手にすると流石に疲労が見られてきた。

 

「関羽様、ここは我等に任せて一旦退却を!」

 

「馬鹿を言うな!お前達を見捨てて戻ったのなら、桃香様に顔向けできん!!」

 

「でも、もうお腹ぺこぺこなのだ~…」

 

兵の一人が関羽だけでも逃がそうとするが、関羽はそれを拒否。

一方の張飛は体力の限界が近いのか、弱音を吐いた。

 

 

(まさか、ここまで数が増えるとは…!奇跡でもない限り突破は…)

 

 

難しい、そう考える関羽の顔はお世辞でも良いとは言えない。

最悪自分が殿をするか…そう思い始めた、その時だった。

 

 

「………ん?」

 

「…にゃ?どうしたのだ、愛紗?」

 

「気のせいか…何か音がしないか?」

 

 

そう、関羽の耳には微かだが、音が聞こえた。

ひゅ~~、というまるで何かが落ちるような音。

次第にその音は大きくなり、張飛、周りの兵や黄巾党も次第に気付き始める。

いつしか戦闘をしなくなり、彼らは周囲を見回すがどこもおかしくない。

 

そして、関羽は自分の周りの影が広がることに気づく。

いや、違う。

この影は自分の真上から…何かがあるということ。

ばっ、と素早く上を見上げると、そこには太陽を背に、自分の近くに落ちてこようとする人影があった。

しかもその人物は、黄色いハンマーのような物を持っている。

 

 

「な!?ぜ、全員避けろっ!!」

 

 

関羽が大声を上げ、その場にいる張飛と兵達に逃げるように言う。

張飛達は言われた通りに逃げ、空いた場所に…誰かがそのハンマーを打ち付けた。

 

 

『大ッッ…粉ッッッ砕ッッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

打ち付けた直後、その人物…魔神を中心にクレーターが大地に形成される。

しかもそのクレーターの欠片は黄巾党の兵に当たり、一瞬だが怯ませた。

「!!今だ、進め!!」

 

「「「オオオオーーーーーーー!!!!」」」

 

関羽はその隙を見逃さず、兵に突撃を指示。

油断していた黄巾党の兵達はそれに圧倒され、囲んでいた枠を崩す。

そしてすぐさま撤退していった。

 

『…行ったか』

 

「おい、てめぇ!何上から降ってきてんだよ!」

 

「ちょ、ちょっと待て…こいつ、魔神ってやつじゃあ…」

 

「はっ!関係ねぇ!こちとら七千人いんだ、勝てるわけがねぇ!」

 

黄巾党の一人は魔神のことに気付き、怯え始めるが別の一人がそれを否定。

この場にいる黄巾党の数は七千人強…勝てないと思っているのだ。

気付いた一人もそうだな、と薄ら笑いを浮かべる。

 

「やっちまえっ!」

 

「「「うりゃあああ!!」」」

 

『どうやら、俺は軽く見られているようだな。なら…』

 

アイズと共に襲いかかってくる黄巾党の兵。

一方の魔神は冷静に腕に持っているハンマーをクルリと回す。

すると、黄色いハンマーは漆黒の大鎌に変わった。

 

 

『教えてやろう。この場で誰が、絶対者なのかを』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刻後、関羽達は一旦劉備のもとに戻った。

その際、関羽と張飛は劉備に泣きながら抱きつかれ、その生還を祝われたそうだ。

だが、関羽が戦場に一人残されている者がいる、と劉備に伝え、劉備は放って置けないと思い、準備ができしだいに行くことになった。

だが、その戦場にあった光景は…

 

「うあ…ぁ…」

 

「いでぇ!いでぇよぉ…!」

 

「何……これ…?」

 

 

四肢と頭部が切り取られ、蠢く黄巾党の山。

しかしながら、その全ては生きている。

その光景に劉備はただ呆然と、状況を理解できずにいた。

 

「これは、一体…!?」

 

『戻ってきたのか…』

 

関羽までも状況を理解できずにいると、山の後ろから魔神が姿を現す。

関羽と張飛は劉備と諸葛亮、鳳統を守るように前に立ち、武器を構えた。

この山を作ったのが目の前の人物だと判断したのだろう。

 

「貴様がこの山を作ったのか!!」

『そうだが?』

 

「面妖な仕業…妖術か!」

 

「愛紗さん!たぶん目の前の人は…」

 

「占いの…魔神さんじゃあ…」

 

「にゃにゃ!?この真っ黒いのが魔神なのだ!?」

 

敵意を剥き出しにした関羽に気を付けるような声で、諸葛亮と鳳統は言う。

その風貌と目の前の山を見て、魔神だと判断したのだろう。

それに対し、張飛は魔神に指を指して驚いた。

 

「何で…」

 

「桃香様…?」

 

「お姉ちゃん?」

 

「何でこんなに酷いことをしたんですかッ!?こんなに痛がってるのに、こんなに苦しがってるのに何でこんな…苦しめるようなことを!」

 

突然の劉備の悲痛な叫び。

その内容は黄巾党の兵の状態について。

何故このような状態にしたのかを感情に任せて叫んだ。

 

 

『何故?酷いこと?…可笑しい事だ。逆に問うが、貴様はこのような状態に済まさずに黄巾党を静められるとでも言うのか?』

 

「そ、そんなこと、話し合えば…」

 

『できるとでも言うのか?では、今まで貴様はそれが成功した事があるのか?無いだろう?そうでなければ貴様はこの場で兵を引き連れていない。武将と共にいる筈がない』

 

「それは…」

 

『それに劉備、貴様がさっき言った言葉は俺に黄巾党達を苦しめずに殺せばよかったのに、と言っているようなものだ』

 

「…!?そんなつもりじゃ…」

 

『言い訳してもいいぞ?それともできないのか?話し合えば相手は理解できると考えているのに、兵を引き連れ、戦をすると言う矛盾を持っている貴様だからな』

 

「………」

 

魔神は問いかけられ、逆に劉備に問い返す。

話し合えば納得するという考えの劉備の言葉に対し、魔神はそれを現在の状況で否定。

さらには矛盾を引き出し、とうとう劉備は黙ってしまった。

 

「それ以上桃香様を批判するな!貴様のやっていることは、桃香様の善行の足下にも及ばない!」

 

『善行…それも可笑しい事だ。善行は他人の命を奪うことか?他人の人生を奪うことか?』

 

「愚行を働く者はもはや獣。人としての扱いはもはやない!」

 

『だとしても、まだ有余はあるはずだ。それに劉備はさっき何故黄巾党を苦しめるのかと言った。それは少なくとも、劉備が黄巾党を人として扱っていることではないのか?』

 

「そ、それは…」

 

『だとすれば、これは善行ではなく愚行。話し合いをせず、自分達が悪と呼ぶ者達を虐殺する愚行だ。自分達が常に正しいと思うな、この未熟者共が!!』

 

「ぐっ…」

 

『貴様達の正義が全てだと思うな。人には人の正義がある。黄巾党には黄巾党の正義がある。それを貴様達は悪とした。押し付ける正義はもはや正義とは言わない。それなのに貴様達は黄巾党を殺した。それしか方法がないと考えた結果がこれだ』

 

「でも、それ以外にも方法がきっとあるはずだよ!」

 

関羽が魔神を批判し始めるが、逆に魔神がそれを否定。

“押し付ける正義”について劉備は再び叫びだした。

その目尻にはうっすらと涙さえ浮かんでいる。

 

『では何故しなかった。さっきから貴様が言っている事は絵空事だ。それか、理想…夢。夢ならば寝てみればいい』

 

「理想で…夢で何が悪いんですか!皆が幸せに暮らす事を考えて何が悪いんですか!」

 

『成功するかしないかでは価値が全く違ってくる。ここにいる兵や武将、軍師は貴様の志に共感してついているのだろう。だが、それがこの大陸全ての人間が共感できると思うのか?違うだろう…貴様の志は笑われて、それだけで終わる』

 

 

劉備の意見を次々と否定していく魔神は、彼女等にとってどのように写るのだろうか。

ある者は怒り、ある者は思っていた事を言われ、意気消沈。

そして、劉備はとうとう反論する気が無くなってきた。

 

「…じゃあ…どうすればいいんですか…」

 

「桃香様…」

 

「お姉ちゃん…」

 

「私が間違っていたんですか…?皆が幸せに暮らせるようにしていきたいって、考えちゃいけないんですか……」

 

『―――自分ではどうなんだ、劉備』

 

「…えっ?」

 

顔を俯かせ、歯を食い縛るようにしている劉備。

だが、そんな彼女に囁きかけるような、優しい声がした。

その声はどう考えても魔神の声。

劉備は自分を否定した人物が出したと思えず、顔を上げる。

 

『正しい事と間違いは、人それぞれで変わってくる。考えを否定した後に、やはり正しいと考える者もいる。その逆もしかりだ。貴様の理想が誰にどう言われようが、貴様がそれをどう判断するかで決まる』

 

「私の…判断……」

 

『貴様は自分自身の理想を正しいと判断するのか?それとも間違いだと判断するのか?』

 

「私は…」

 

『…少し話しすぎた。もうここで、帰るとしよう。……劉備、答えを急ぐ必要はない。再び会った時に、答えを聞かせてもらう』

 

そう言って魔神は空の彼方へ飛び去る。

関羽は追いかけようと考えたが、それをやめた。

相手は空を飛んでいった…追いかけようがない。

その後、街に戻るまで誰も一言も喋らなかったそうだ。

 

 

 

少し時は進む。

朝廷からのかなり遅めな黄巾党討伐の指示を受け、各諸侯は動き始めていた。

各地の黄巾党を討伐しながら進んで行くうちに、全ての黄巾党は党首の張角を匿いながら山に立て籠る。

そして、その党首…張角含めた三姉妹はというと、

 

「あ~~~~も~~~~!!どうするのよこれ~~~~!!」

 

「ちょっ、ちぃちゃん落ち着いて…」

 

「そうね…どのみち、私達はここで生き残るか、討伐されるかの二択しかないのよ。どうするも、こうするもないわ…」

 

天幕の中で次女の張宝が叫び、それを落ち着かせようとする張角。

だが、三女の張梁は顔を青くさせながら、諦めがちに呟く。

心の中では、自分達は討伐されるということを確信しているかのようだ。

 

「大体ちぃ達何も悪いことしてないのに~!!」

 

「お姉ちゃんだって同じだよぉ!」

 

「でも、なってしまったからにはしょうがないじゃない。姉さん達も私も…罰を受けるべきだわ」

 

『――それは困るな』

 

今度は一緒に騒ぎだし、混乱する。

だが、その間に見慣れぬ人物が天幕の中に入っていた。

――魔神だ。

 

「「ひっ…!?」」

 

「あ、あなたは…まさか魔神…?」

 

『いかにも』

 

「な、何でこんな所にいるの!?」

 

「まさかちぃ達を殺しに!?」

 

『いや、交渉に来た』

 

交渉、という言葉を聞き、張三姉妹は一瞬警戒心を緩める。

 

「交渉…と言うのは…?」

 

『簡単な事だ。俺の要求は、貴様達を逃がすこと。ただそれだけ』

 

「逃がして…くれるの?」

 

『交渉次第によってな。条件は三つ、まず始めに黄巾党の兵達に完全な降伏を宣言させろ。俺としては一人でも多く死なれたら困るからな』

 

「それなら…できるよね?」

 

『二つ目は、貴様達が持っているであろう太平要術を今すぐ処分することだ』

 

「これなら…必要なものしか使っていないので、どうされても構いません」

 

『よし、最後の一つだ。貴様達が逃げる場所は曹操の所。それ以外に要求はしない』

 

曹操、と聞いて三姉妹は体をビクッと震わせる。

それもそうだろう、噂でも聞いた通りの人でもあり、今まさに討伐をしている人物なのだから。

 

「曹操のもとに…?」

 

『袁紹と袁術のもとへ行けばまず命はない。劉備、公孫賛はどうだかわからんが、曹操ならば貴様らの力を欲しがるだろう。そうなれば、最低でも名を捨てて真名のみで暮らすだけしか不利益はないはずだ』

 

「それもそうね…」

 

『それで…どうする?このまま、自らの運命を待つか、それとも無駄な命を救って自らも生きるか』

 

「……後者でお願いします。私達はまだ生きたいし、黄巾党の皆の命を危険にはできない」

 

「ちぃも賛成!!」

 

「お姉ちゃんも!!」

 

張梁は交渉を承諾し、張角と張宝も元気に腕をびっ、と挙げる。

理由は説明した通りだろう…自分達の身勝手で他人を見殺しにしたくはないそうだ。

 

『交渉成立…だな。天幕の裏から出て真っ直ぐに降りれば曹操の兵がいるはずだ。そいつに面会を求めろ』

 

「解りました…その……」

 

『…なんだ?』

 

「ありがとう…ございました…」

 

「今度歌ってあげるからね~!」

 

「感謝しなさいよね!」

 

なんだかおかしな事を言いながら、三姉妹は降りていく。

その際、兵の一人に言伝てを忘れずに。

 

『…さて、黄巾の乱は終わるだろう…。だとすれば、次は…』

 

魔神はこの時代では珍しい細身の剣を取りだし、そう呟く。

まるで次の目標を見つけたかのようだ。

 

『反董卓連合…だな』

 

次の瞬間、魔神の姿は跡形もなく無くなる。

空を飛んだ訳でもなければ、走り去った訳でもない。

全く別の、何かだ。

 

こうして黄巾党は次々と降伏し、黄巾の乱は終焉を迎える。

万単位での降伏は、近年に極々まれにしか見られないものだ。

その事を、一部の諸侯は不気味がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

XXX「作者…と……」

一刀「一刀の…って何で倒れてんだよ!?あ、後書きコーナー!」

 

XXX「いやね…今週忙しいけどちょくちょく書いてたから…疲れちゃって」

一刀「まあ、うん…お疲れさん…」

XXX「ああそうだ、前回のコメントで魔神の元ネタマジンカイザーSKLかってコメントあったんだけど、大体そうです。武器的な意味でも、戦闘スタイル的な意味でも」

一刀「魔神だけに…?」

XXX「あとはもう一作品だけ元ネタあります、ロボット関係で」

 

一刀「そう言えば今回桃香のことけっこう批判してたよな」

XXX「まあね、俺自身桃香嫌いじゃないけど魔神的な意味では愛の鞭かな?」

一刀「てか天和達出るなんて聞いてないよ!」

XXX「前回お前言わせてくれなかったからじゃん」

一刀「あと最後に言ってたけど次は反董卓連合?」

XXX「うん。あ、そうだ、次回から魔神のチート能力がちょくちょく出てきますので。それにプラスαの武器も」

一刀「もうネタバレしていいや…」

 

一刀「次回、真・恋姫†無双 巡る外史と仮面の魔神 四話!」

XXX「魔神編 “綺麗にスパッと”」

一刀「なにそれ凄い不吉!」

XXX「次回は無双しちゃう…かもよ?」

 

再見ΟωΟノシ


 
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