No.628064

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

始動:OTAKU旅団、再集結

いよいよ更新!!

さぁ諸君、戦争の時間だ。派手に行こう―――

2013-10-14 15:30:07 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2903   閲覧ユーザー数:1903

OTAKU旅団。

 

 

 

今なお生ける伝説として、様々な次元世界で恐れられている集団。

 

 

 

彼等はかつて、第97管理外世界“地球”にてあるロストロギアを巡り戦いを始めた。その戦いは本局から大艦隊をも引き寄せてしまう程、大きな戦争へと発展した。

 

 

 

それにより、ロストロギアを地球ごと消滅させようとしていた管理局の艦隊提督“カラレス”は見事撃ち破られ、本局の艦隊は全滅。旅団は戦争に終止符を打った。

 

 

 

この戦争で、カラレスを始め多くの戦力を失ってしまった管理局は、弱体化への道を辿る。組織全体の再生には、まだ少し時間はかかるだろう。

 

 

 

戦争の勝利者である旅団の団員達は、ある者は自分の帰るべき場所へと帰り、ある者はそのまま旅団のアジトへ残り、全員がバラバラに散っていった。

 

 

 

しかし、この時はまだ、誰も想像していなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

OTAKU旅団が再び、一箇所に集結する日が来ようなど―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある管理外世界、その山脈。

 

 

 

-ブゥゥゥゥゥゥン…-

 

 

 

山の道を、一台のバイクが駆け抜けていた。

 

バイクに乗った男は黒いヘルメットを被っており、その素顔は見えない。首元に巻いている赤いスカーフが、風で大きく靡いている。

 

男は無言でアクセルを踏み、速いスピードで走り去って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、草原までやって来たところで男はバイクを停める。

 

「…この辺で構わんか」

 

男はヘルメットを取り、素顔を露わにする。目が若干細い強面で坊主頭、何処か渋さを感じさせる青年だった。

 

男はちょうど良い大きさの岩の上に座り込み、ペットボトルの水を飲む。

 

「…元気にしてるだろうか」

 

懐から取り出される写真。それには、自身が愛する妻と、その妻に抱っこされている娘の姿が写っていた。

 

「…いずれ帰る。それまで待っててくれ、二人共…」

 

男は写真を収め、またペットボトルの水を一口飲んでから立ち上がった…………その時だ。

 

 

 

 

 

ぁぁぁぁぁぁ…

 

 

 

 

 

「…?」

 

何処からか聞こえてくる声。

 

周りを見渡すが、声の正体は何処にもいない。もしやと思い、男が真上を見上げたその時…

 

「―――ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああっ!!!??」

 

「ッ!!?」

 

-ドゴォォォォォォォォォォォンッ!!!-

 

男の目の前に“誰か”が落ちてきた。

 

そう…“誰か”が。

 

「まさかとは思うが…」

 

土煙が舞う中、男は手で土煙を払ってから落ちてきた人物の正体を確認する。その人物を見て、げんぶは呆れ顔になる。

 

「…命知らずな事をするもんだな」

 

「痛テテテ……ん? おぉ、ここにいたのか! やっと見つけたぞ」

 

落ちてきた人物は男の姿を見た途端、ピョンとすぐに起き上がった。遥か上空から落下してきたにも関わらずだ。

 

「いやぁ~顔を見るのも久しぶりになるな、本郷…………いや、げんぶ」

 

「…そういうお前もなぁ、okaka」

 

男―――“げんぶ”は上空から落ちてきた人物―――“okaka”と再会した事で、自然と笑みが零れる。

 

「全く、真上から落ちてくるとは。空間転移がなってないんじゃないのか?」

 

「えぇ~…だって、自分自身を転移させるのは中々に骨なもんだからさ。転移場所までいちいち正確に定めたりすると、こっちがキツいんだよ」

 

「その結果、遥か上空から落ちてきたと……いつか死ぬぞ、お前」

 

「うん、返す言葉も無ぇや…」

 

アハハと笑うokakaに対し、げんぶは呆れた様子で溜め息をつく。

 

「…で、そういうげんぶはまだ旅を?」

 

「ショッカーの残党がまだ活動中だからな。今もこうして、旅を続けてるところだ」

 

「大変そうだな……あ、そうだ」

 

「?」

 

okakaは突如真剣な表情へと変わり、一枚の封筒をげんぶに渡す。

 

「今回、俺はお前にこれを渡す為にここまで来たんだ。今頃、他の皆にも同じような封筒が届いてる筈だ」

 

「…だろうな。お前からコードネームで呼ばれる辺り、そんな気はしていた」

 

げんぶは受け取った封筒から、無地の白い手紙を取り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次元世界、ミッドチルダ…

 

 

 

 

「ふぁぁ…」

 

とある民家。

 

二階から、一人の青年が欠伸をしながら一階へ降りてきていた。髪の毛は寝癖がついてたりと、何処かだらしなさそうな雰囲気がある。

 

「あ、おはようございますキリヤさん」

 

「あぁ、おはようリリィ……ふぁ…」

 

ちょうど一階では、黒髪ストレートヘアの女性―――リリィ・マッケージが、テーブルに朝食の料理を並べているところだった。彼女は青年―――“キリヤ”に気付いて挨拶し、青年も挨拶を返すが、やはり眠たそうにしている。

 

「あ、もう…また寝癖がついてますよ」

 

「ん? おぉ、ホントだ」

 

「座って下さい、私が直しますから」

 

「あ~良いって、これくらい自分で直せるから」

 

「そう言って、いつも適当に済ませてるのは一体何処の誰ですか。最近、少しだらしないですよ?」

 

「うぐっ」

 

リリィにジト目で見られ、反論出来なくなるキリヤ。一応、自覚はあるのだろう。

 

「ほら、じっとして下さい」

 

「む…」

 

結局キリヤは椅子に座らされ、リリィが彼の寝癖をヘアブラシで直し始める。

 

「悪いね、いつもこんな事させちゃって」

 

「全くです。悪いと思っているなら、少しくらいは改善して下さい」

 

「ぐ、何も言い返せん…」

 

「…でも」

 

「ん?」

 

リリィの手が一瞬だけ止まる。

 

「こういった事が、今はとても幸せに感じる……私はそう思っています」

 

「…あぁ、それは俺だって同じさ」

 

「ふふふ♪」

 

リリィは微笑みながら、キリヤの髪型を綺麗に整える。

 

「はい、直りましたよ」

 

「おぉ! いつもありがとな、リリィ」

 

「どういたしまして」

 

「さて、せっかくリリィの作ってくれた料理が冷めちゃいけない。早く食べちゃおうか」

 

「はい、そうしましょう」

 

キリヤと向かい合わせになるよう、リリィも椅子に座る。

 

「それじゃ…」

 

「「いただきます」」

 

そして二人は、朝食を食べ始めようとした…

 

その時だ。

 

 

 

 

-ピンポーン-

 

 

 

 

玄関の方から、インターホンの音が聞こえてきた。

 

「…チッ」

 

キリヤが小さく舌打ちする。朝食を食べようとしていたところを邪魔されたのだ、イラついてしまうのも無理は無いだろう。

 

「誰でしょうか…?」

 

「俺が出るよ」

 

キリヤが玄関に向かい、ドアを開ける。

 

「はいはい、どちらさ……あれ」

 

ドアを開けたのは良いが、そこには誰もいなかった。キリヤがキョロキョロ見渡すが、辺りには誰も見当たらない。

 

「ただのイタズラか……ん?」

 

ふと見てみると、ポストに一枚の封筒が突っ込んであった。

 

「誰からだ?」

 

ポストから封筒を取り、差出人の名前を確認しようとして………………キリヤの表情が変わった。

 

「これは…!!」

 

キリヤが手にした封筒。

 

それには…

 

 

 

 

『OTAKU旅団リンクス、ロキ君へ』

 

 

 

 

自身のコードネームが、記されていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、クラナガンのとある路地裏…

 

 

 

 

「ぐほっ!?」

 

「おごわぁっ!?」

 

二人のチンピラが、一人の男によってボコボコにされていた。その後方で一人の女性がオロオロしている辺り、彼女にナンパしようとしたチンピラ二人をこの男が成敗しているところなのだろう。

 

「く、くそ!!」

 

「覚えてやがれ!!」

 

敵わないと判断したのか、チンピラ共はその場から逃げ去って行った。

 

「はん、おととい来やがれってんだ。このユージン様を嘗めんじゃねぇ」

 

男―――“ユージン”はズボンの汚れを払いつつ、地面に唾を吐き捨てる。

 

「…さて。あんた、怪我は無いか?」

 

「あ、ありがとうございます! 助かりました!」

 

女性はユージンにペコペコと頭を下げて礼を言う。

 

「最近はここらも治安が悪いからな、女性が一人で出歩くと危ないぞ? んじゃ、そういう事で」

 

「あ、あの、待って下さい!」

 

「あ?」

 

立ち去ろうとしたユージンを、女性が引き止める。

 

「何、まだ何かあんの?」

 

「そ、その……あなたがユージン・S・スズキさんで、間違いありませんか?」

 

「? あぁ、そうだが…」

 

「あぁ、良かった! ずっとあなたの事を探してたんです!」

 

「俺を…?」

 

「はい! 実は私、あなたにこれを渡すように頼まれまして…」

 

女性は持っていたカバンから一枚の封筒を取り出し、ユージンに渡す。

 

 

 

「やっと見つけました、miriさん!」

 

 

 

「…!?」

 

ユージン、もとい“miri”は、女性に対して驚いた表情を見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷。

 

それは、現実世界から忘れ去られた存在が流れ着くであろう世界。

 

もちろん、例外もいる。

 

非常識が常識と言えるようなこの世界にも、旅団の一員は存在していた…

 

 

 

 

 

「これで買出しは終わりか?」

 

「はい、これで一通り買い揃えました」

 

「んじゃ、早く帰ろうぜ。早苗」

 

「はい、裕也さん♪」

 

幻想郷の人里にて、二人の男女が歩いていた。巫女服を着た緑髪の女性は“東風谷早苗(こちやさなえ)”、紺色の着物を着た黒髪の男性は“東風谷裕也(こちやゆうや)”である。

 

「ん~…最近はあんまり異変とか起きないな。何か、面白い異変が起きないもんかね~」

 

「いやいや裕也さん、そういう事は口にするものではありませんよ」

 

「大丈夫だって。俺の能力、どれだけ反則的か知ってるだろ?」

 

「もう、裕也さんったら…」

 

裕也の自信あり気な言い方に、早苗は思わず苦笑する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら、異変を解決して貰いましょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「へ?」」

 

一瞬だった。

 

突如、裕也の足下に現れた目玉だらけな紫色の空間―――スキマによって、あっという間にその場から姿を消してしまったのだ。

 

「…あ、あれ!? 裕也さん!? 裕也さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!?」

 

早苗の叫びも、人里に虚しく響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――へぶしっ!?」

 

人里から離れた川原。

 

スキマからほっぽり出された裕也は、地面に向かって顔面スライディングをする羽目になった。

 

「…最近、俺の扱いが妙に雑じゃないかね? 紫さんよぉ」

 

裕也の前にまたスキマが発生し、ミステリアスな雰囲気を持った金髪の女性が姿を現した。彼女の名は“八雲紫(やくもゆかり)”。この幻想郷では最古参の妖怪であり、また『賢者』の異名も持っている謎だらけの女性である。

 

「あら、ごめんなさい。気を悪くしたかしら?」

 

「はぁ……今更そんな怒りはしないさ。段々慣れていってる自分がここにいる」

 

「そう。本当にごめんなさいね」

 

彼女自身は謝罪しているものの、明らかに胡散臭そうな笑みを浮かべている為、本当に悪いと感じているのかどうかは怪しいところだ。

 

「それで? わざわざこんな所に連れて来てまで、俺に解決して欲しい異変ってのは何なんだ?」

 

「その異変の事なんだけど、依頼主は私じゃないわ」

 

「? どういう事だ…」

 

「団長さんからよ」

 

「!?」

 

裕也の表情が一変する。

 

「OTAKU旅団に召集がかかってるわ。FALKEN……いや、今はガルムって偽名を使っているんだったかしら?」

 

紫は不適に笑いつつ、真剣な表情になった“ガルム”に対してそう告げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷とは違う次元世界。

 

そのとある街の酒場にて…

 

 

 

 

「フォーカード」

 

「「「何……だと…!?」」」

 

「はい、これでまた僕の勝ちですね」

 

一人の少年が、ポーカーで無双を繰り広げていた。この時点でその人物は対戦相手達からかなりの資金を巻き上げており、今度は対戦相手達の服や荷物まで奪い始めていた。

 

そしてその勝負を、一人の男が離れた席で見守っている。

 

「す、凄ぇ…」

 

「あいつ、これでもう15連勝してんぞ!?」

 

「とんでもねぇギャンブラーだな…!!」

 

周りで野次馬達が驚いている中、現在進行形でパンツ一丁になってしまっている対戦相手達は、目の前の少年に聞こえないよう小さい声でコソコソ話し出す。

 

(おい、どういう事だ!? 確かに俺が奴のカードを摩り替えた筈だぞ…!!)

 

(なぁこれ、もしかして俺等の方がカモられてるんじゃ…!?)

 

(どれだけイカサマしても全く通じやしねぇ……あいつ、ある意味化け物だ…!!)

 

どうやら対戦相手達は途中からイカサマもやり始めたようだが、そんな小細工は目の前の少年には無意味な事だった。どれだけズルしようとも、気付けばこの少年の一人勝ちなのだ。

 

「く、くそ!! もう一回勝負だ!!」

 

「えぇ、構いませんよ。いくらでも相手して差し上げます」

 

「この、嘗めやがってぇ…!!」

 

こうして、再びポーカー勝負が繰り広げられる。

 

 

 

その結果…

 

 

 

「はい、ロイヤルストレートフラッシュです」

 

「「「何ィィィィィィィッ!!?」」」

 

やっぱりイカサマは通じないのであった。

 

「さて、今度は何を賭けましょうかねぇ~?」

 

「「「すいません、もう勘弁して下さいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」」」

 

流石にもう心が折れてきたのか、とうとう対戦相手達はその場で土下座までし始めた。

 

「あれれ、もう終わりですか? つまらないですね」

 

「…その辺にしてやれ、ウル。そろそろ私の良心も傷んできた」

 

流石に見兼ねたのか、先程まで見ていた男が止めに入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~儲かりました儲かりました♪」

 

「…やれやれ」

 

“ウル”と呼ばれた少年は札束を持って機嫌良さそうに歩く中、その隣を歩く男はそんな彼を見て呆れ果てる。

 

「よくもまぁ、あんな事をしていたものだな。君はまだ未成年だろう? 警察に見つかるような事があったらどうする」

 

「えぇ~…だって酒場の方で楽しそうな事をしていたから、僕も混ぜて貰ったんですよ。酒場にいた人達は皆、優しい人達ばかりでしたよ?」

 

「優、しい…?」

 

「ほら、負けた時は素直に賭けてた金をくれるじゃないですか」

 

「…そんな優しい人達から、大金を巻き上げる人間が一体何処にいるのだ」

 

「え? いるじゃないですか、ここに一人」

 

(…どうしよう、また胃薬が必要になるかも)

 

黒い笑顔を浮かべるウルに対し、男は胃がキリキリ痛むかのような感覚に陥る。

 

そんな時だ。

 

 

 

「おい、お前達」

 

 

 

「「?」」

 

フードを被った怪しげな人物が、二人に話しかけてきた。

 

「誰だ?」

 

「何か用ですか」

 

「お前達なんだろう? かつて“闇の書”を巡って、管理局とド派手に大喧嘩しやがった身の程知らずってのは」

 

「「!?」」

 

『闇の書』という単語に、二人は警戒心を強める。

 

「ヒッヒッヒ……そう警戒しなさんな。俺は、お前達みたいな身の程知らずが大好きでなぁ」

 

フードの人物は不気味に笑う。

 

「ウルティムス・ファートゥム・レオーネ・マクダウェル……ミロシュ・バーフォード……確か、それぞれディアーリーズ、awsって偽名を名乗ってるんだったな」

 

「何故僕達の名前を…」

 

「伝言を頼まれたのさ。お前さん達を従えている、団長さんとやらにな」

 

「…貴様、何者なんだ?」

 

ウル―――もとい“ディアーリーズ”と、ミロシュこと“aws”は警戒しつつも彼に問いかける。

 

「俺か? 俺は…」

 

フードの人物が自身のコートをバサッと広げると、その内側には拳銃や弾薬など様々な武器が揃っていた。ディアーリーズとawsは驚きの表情を見せる。

 

「ただのしがない、武器商人さ」

 

「「…!!」」

 

「よろしくな、OTAKU旅団の勇者さん達」

 

フードの人物―――武器商人は、マスクの下でニヤリと笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球、海鳴市…

 

 

 

 

「さて、自転車のパンクも直して貰ったし。後は家に帰るだけだな」

 

一人の少年―――“アキヤ”が、自転車に乗りながら家まで帰宅していた。

 

先程までは自転車がパンクしてしまっていたのだが、近所の自転車屋の店員さんに直して貰った為、こうして快適に乗りこなしている訳である。

 

-Prrr♪-

 

「ん?」

 

携帯の着信音が鳴り出し、アキヤはその場に止まりポケットから携帯を取り出す。

 

「はい、もしもし」

 

『あ、アキヤ? 私よ私』

 

「…申し訳ありませんが、大金を振り込む気はありませんよ?」

 

『オレオレ詐欺じゃないわよ!! アリサよアリサ!!』

 

即座に突っ込みが返ってきた。携帯から響く怒号に、アキヤも苦笑する。

 

「はいはい。分かってるよ、アリサ」

 

『…もう、分かってるなら変な返し方するんじゃないわよ』

 

「いやいや。あんな挨拶が来たら誰だって詐欺だって疑うでしょうに」

 

『あぁもう、それはそれ!! これはこれ!!』

 

「どれなのさ」

 

アキヤも冷静に突っ込み返す。

 

『それはともかく、今日アキヤは時間空いてる?』

 

「? うん、今日はもう用事は無いけど…」

 

『あ、じゃあ今日はうちに来ない? 菓子でも用意するわよ?』

 

「菓子くれるの? じゃあ、今日は行こうかな」

 

『か、勘違いすんじゃないわよ!? 別に私はアンタがうちに来るくらいで、嬉しいだなんて思ってる訳じゃないんだからね!!』

 

「はいはい。じゃあ今から…」

 

言いかけたところで、アキヤの台詞が途切れた。

 

 

 

 

アキヤの前に、帽子にサングラスもかけた黒服の男が現れたからだ。

 

 

 

 

男は指でこっちに来るようにアキヤに促してから、路地裏へ入っていく。

 

「…ごめん、アリサ。まだ用事が残ってた」

 

『え?、ちょ、アキヤ―――』

 

ピッと携帯を切り、アキヤは黒服の男を追い始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

ある建物の屋上まで来たアキヤは、改めて黒服の男と対峙する。

 

「…何者ですか、あなたは」

 

アキヤは目の前の人物に対し、警戒を解かない。それを見た男はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「元気そうで何よりだ」

 

「!」

 

男は帽子とサングラスを取り、顔の斜め傷と、紅と蒼のオッドアイが露になる。

 

「え…支配人さん!?」

 

「よ、久しぶりだな。ルカ」

 

黒服の男―――“支配人”は気楽な様子でアキヤに挨拶する。しかしこの時、彼はアキヤの事を本名ではなく“ルカ”と呼んだ。

 

「え、何であなたがここに…」

 

「我等が団長から、召集がかかったんだよ」

 

アキヤの疑問に支配人が答える。

 

「アジトに残っていたメンバーで分担して、アジトを離れているメンバーに呼びかけて回ってるのさ。俺はロキとお前に呼びかけようと思っていたんだが、その途中で…」

 

「俺が支配人に連行されたって訳だ」

 

「!」

 

アキヤの後ろに、また一人別の人物が現れる。

 

「蒼崎さん!?」

 

「ヤッホー、久しぶりー」

 

現れた人物―――“蒼崎夜深(あおざきやみ)”は、ホットドッグを食べながらアキヤに挨拶する。

 

「ここへ来る途中、たまたま見つけてな。俺が無理やり連れて来た」

 

「本当だよ。人が妻達と楽しくやっていた所にいきなり現れといて、俺の返事も聞かずに無理やり連行しやがったんだ」

 

「お前の妻達には事情説明しただろうが。お前もいい加減、ワガママ言わずに付いて来やがれ」

 

「い~や~だ~!! 俺はもっと妻達と楽しみたかったんだ~!! 妻達と一緒に、もっともっと熱い時間を過ご―――」

 

「シャラァァァァァァァァップ!! そこまでにしとけ!! アキヤはまだ未成年だ!!」

 

さり気なくとんでもない事を言いそうになった蒼崎の口を、支配人が無理やり塞ぐ。ちなみにアキヤは何の事かサッパリ分かっていない。

 

「ゲフン……とにかく、ルカにも声をかけとこうと思ってな。ロキには俺から手紙を送っておいたから、今頃招集に応じてる筈だ」

 

「え、直接会わなかったんですか?」

 

「いや、最初は普通に会おうと思ってたんだが……何せ、美人さんと楽しそうにしてたからよ。邪魔しちゃ悪いと思って」

 

「…あんのバカ兄貴」

 

アキヤは呆れて溜め息をつく。

 

「さて、ルカはどうする? お前も来るか?」

 

「愚問ですよ」

 

アキヤも真剣な表情に変わる。

 

「守りたい物があるから戦う……このアキヤ・タカナシがOTAKU旅団に協力する理由は、それだけで充分です」

 

「…そうかい」

 

支配人も、それを聞いてフッと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

アキヤ・タカナシ、またの名をルカ。

 

 

 

 

 

ロキ―――キリヤ・タカナシの実の弟だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、あのバカ兄貴はいつまで経っても帰って来ないと思ったら……少しお仕置きしないとこっちも気が済みませんよ」

 

「あ、それも同行する理由の一つなのな…」

 

「待っててくれ~俺の可愛い妻達よ~」

 

「お前はもう黙ってろ!!!」

 

支配人、今日もまた苦労人として過ごしそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある無人世界。

 

巨大地下研究所にて…

 

 

 

 

 

「旅団メンバーの召集、ねぇ…」

 

自身の下に届いた手紙を見て、アルファ・リバインズ―――もとい“竜神丸(りゅうじんまる)”は面倒臭そうな表情で呟く。ちなみに休憩中だったのか、白衣はハンガーにかけられており、眼鏡も外している。

 

「いかがなさいますか、博士」

 

「んん~…正直に言うと面倒臭いんですよねぇ。前回の戦争でも、私がそれほど動いてない内に気付いたら解決してましたし」

 

「は、はぁ…」

 

竜神丸は手紙をグシャグシャに丸めてゴミ箱に捨ててから、イーリスが淹れたコーヒーを手に取る。

 

「まぁ、旅団のメンバーが直接迎えに来るような事でも無い限り、私はここから動く気にはなれないでしょうね」

 

そう言って、竜神丸はコーヒーを飲み始める…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、私があなたを連れて行くには問題ない訳ね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブフゥゥゥゥゥゥッ!?」

 

いつの間にか竜神丸の後ろで、同じく椅子に座ってコーヒーを飲んでいた女性。竜神丸は飲んでいたコーヒーを盛大に噴いてしまった。

 

「あ、あなたは…!?」

 

「はぁ~い♪ 久しぶりね、イーリスちゃん」

 

驚くイーリスに対し、女性は気楽な感じで挨拶する。

 

「けほ、けほ………朱音さん、そういう神出鬼没な部分は相変わらずですね」

 

「あら竜神丸さん、私はあなたほど神出鬼没じゃないわよ?」

 

女性―――“朱音(アヤネ)”はマグカップのコーヒーを一気に飲み干す。

 

「ここは専用のカードキーが無いと入れない筈なんですがね。どうやって入って来たんですか?」

 

「あぁそれ? ここへ来る前に団長さんから『入る時はこれを使うと良い』って、わざわざこんなカードキーをくれたのよ」

 

(チッ、余計な事を…!!)

 

朱音が赤いカードキーをチラつかせる辺り、上手くサボろうとしていた事は“団長”には勘付かれていたようだ。竜神丸は聞こえない程度に小さく舌打ちする。

 

「…それで、わざわざここまで私を迎えに?」

 

「だってあなた、こっちから直接呼ばないと来ないじゃない。前回もそうだったでしょ?」

 

「まぁ、それは否定しませんが…」

 

「あぁちなみに」

 

「?」

 

「約一名、ここへ来る前に回収済みよ」

 

朱音は竜神丸の前に一人の人物を放り出す。それは、竜神丸も知っている人物だった。

 

「…Blazさん?」

 

「キュゥ~」

 

それは、同じ旅団の一員“Blaz”だった。彼は正確には旅団の正式メンバーではなく、艦隊クロガネのクルーとして活動するサポートメンバーだ。しかし任務の度に何かしら功績を残す事が多い為、いずれ正式メンバーとして迎え入れられてもおかしくはないだろう。

 

そんなBlazだが、今の彼は何故か目を回したまま気絶している。しかもよく見たら後頭部にタンコブまで出来てしまっている。

 

「ここへ来る途中にたまたまクロガネの艦隊とすれ違ったから、無理言って連れて来たのよ……思いっきり引き摺っちゃったものだから、今は気絶してるけど」

 

(…ドンマイです、Blazさん)

 

気絶しているBlazに対し、竜神丸は心の中で合掌する。

 

「とにかく、早くアジトまで行きましょ? 団長さんが待ってるわ」

 

「えぇ~面倒臭いですねぇ…」

 

「お願い、ね?」

 

「む…」

 

朱音にウルウルした目で見られた竜神丸は少し考える仕草をしてから、マグカップに残っているコーヒーを飲み干し椅子から立ち上がる。

 

「…あなたの事です。どうせ拒否しても、私を強制連行するつもりでいるんでしょう?」

 

「さぁ、どうかしら? そこはあなた次第よ」

 

「…本当に食えない人ですね」

 

竜神丸は苦笑しつつ、ハンガーにかけていた白衣を手に取る。

 

「イーリスさん、準備して下さい。これからアジトへ向かいます」

 

「は、はい!」

 

「あら、ようやくやる気になったかしら?」

 

「さぁ、それはどうでしょう……まぁ何にせよ」

 

竜神丸は白衣を身に纏い、外していた眼鏡をかける。

 

「面倒事は、さっさと終わらせるに限る。それだけの事ですよ」

 

赤い瞳をギラリと光らせ、竜神丸はそう言い放つ。

 

「…そう」

 

朱音もそれを見て舌舐めずりし、妖艶な笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!? ここは一体…」

 

「あら、起きたのねBlazちゃん。急いで仕度して! アジトに向かうわよ!」

 

「え、朱音さん…あれ? 何で竜神丸が? ていうかここ何処だ? 俺、さっきまで綺麗な花畑に―――」

 

「良かったですねBlazさん、下手したらそのまま昇天してましたよ」

 

「えぇっ!?」

 

数分後、気絶していたBlazが起き上がった事もここに記しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某次元世界、南国。

 

喫茶店“山猫と渡り鴉”にて…

 

 

 

 

「ふぅ……さて、今日はこれからどうしましょうか…」

 

この日、店は既に閉まっており、他の従業員は帰宅していた。喫茶店のオーナーは現在、パソコンを前に考え事をしている。パソコンの画面にはレストランのホームページやスイーツの情報などが映っていたりと、彼がどれだけグルメ通なのかがよく分かる。

 

そこへ…

 

-カラン、カラン-

 

「あ、すいません。今日はもう閉店して…」

 

「やっほ~オーナー、元気にしてた?」

 

「…あなたが来ましたか、悠舞さん」

 

やって来た客は、オーナーの知人だった。

 

悠舞朔夜(はるまさくや)。ここ最近、この喫茶店に来る事が多くなった客の一人。家系も職業も不明で、普段から何を考えているのかよく分からない男である。この喫茶店に来る事が多くなったのも本人曰く「退屈だったから」らしい。

 

「今日はもう閉店してるんですがね……今日も“暇だから”ここに?」

 

「そうなんだよ。ここ最近、面白い事が何にも無くてさ。退屈してるんだよねぇ……オーナー、お金は払うからコーヒー頂戴」

 

「…コーヒーですね、かしこまりました。今回だけですよ?」

 

「よっしゃ」

 

悠舞の注文に、オーナーはそれを拒否する事なくコーヒーを淹れ始める。

 

「いや本当、オーナーも元気そうで何よりだ……本当に“大丈夫”なの?」

 

「…えぇ、私は“大丈夫”ですよ。お気遣いありがとうございます」

 

悠舞の言いたい事を察したのか、オーナーは大丈夫だと告げる。

 

「本当に? 無茶は駄目だぞ、オーナー。過労死なんかされたら、俺はこれから一体どの店に行けば良いのさ」

 

「そっちの心配ですか……はい、注文のコーヒーです」

 

「おぉ、来た来た。そんじゃ、頂きますっと」

 

オーナーの淹れたコーヒーが出され、悠舞はそれを手に取り一口飲む。

 

「…ふぅ。いつ飲んでも、美味いコーヒーだ」

 

「ありがとうございます」

 

「さて……オーナー、ちょっと良いか?」

 

「はい?」

 

「耳に通しておきたい話があるんだ。オーナー……いや、デルタさん」

 

 

 

 

デルタ。

 

 

 

 

その名を聞いた途端、オーナーもとい“デルタ”の表情から笑みが消える。

 

「…私をその名で呼ぶという事は、またそっち関連の話ですか? 悠舞さ……いや、FalSigさん」

 

「…残念だけど、そういう事になるんだよねぇ。暇だからってのも嘘、ちゃんとデルタさんに用があって来たんだ」

 

悠舞―――もとい“FalSig”は懐から一枚の封筒を取り出す。

 

「俺のところにさ、これが届いたんだ」

 

「!! これは…」

 

「旅団のメンバーに、召集がかかってる」

 

デルタはFalSigが取り出した封筒の中身を見て顔を顰める。

 

「デルタさんの場合は身体の件があるから、最初は呼ばない方が良いだろうと俺も考えてたんだけどさ。一応、近くに来たから声だけでもかけておこうと思って」

 

「……」

 

「どうする? デルタさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来るか来ないかは、デルタの自由だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!」」

 

店内に、また一人誰かが入って来た。

 

「強制はせん。難しいようなら、私の方から団長に伝えても構わない」

 

そう言いながら現れたのは…………ピンク色のドレスを着たポニーテールの人物だった。

 

「「…え、美少女アン娘ちゃん?」」

 

「Unknown!! そして男だ!!」

 

アン娘……ではなく“Unknown”はすかさず突っ込みを入れる。

 

「え、あ、いや……何故そんな格好を?」

 

「あぁ…………ついさっきまで、アジトに残ってたメンバーで大富豪をして遊んでたんだが…」

 

「「……」」

 

「最終的に私が負けて、罰ゲームとして姉貴に女装させられ…」

 

「「あぁ~…」」

 

「その直後に団長から指令が来て、この格好のまま向かう羽目になったんだ……ここへ来る途中も、周りの男共は皆してこっちに振り向いて……何だかもう、男としての尊厳を色々と失っちゃった気がして…」

 

「「…ご愁傷様です」」

 

体育座りをして落ち込むUnknownに対し、二人はどう励ますべきなのか分からず、簡単な言葉しか出せなかった。

 

「まぁそれはともかくとして」

 

((復活早ッ!?))

 

「…どうするか決めたか? デルタ」

 

すぐに立ち直ったUnknownはその場から立ち上がり、デルタに振り返る。先程と打って変わり、その目つきは真剣なものだった。

 

「お前は私と違って、肉体の汚染がかなり悪化している。本来ならこんな形で呼びかけるべきではないんだろうが、来るかどうかは本人の決める事だからな」

 

「……」

 

「YesかNoか。答えはその二択だ」

 

「……」

 

沈黙が続く。デルタとUnknownは互いを見据え、FalSigも黙ってその状況を見守っている。

 

そして、デルタが口を開く。

 

「私は―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

OTAKU旅団アジト、楽園(エデン)

 

いつからか、名前の無かった旅団のアジトはそう呼ばれるようになった。まぁ、設備自体がそこらの組織が建ててるアジトよりもかなり充実しており、リゾート地みたいな娯楽施設になっている為、確かに楽園の名を付けるには相応しいであろう。

 

そんな楽園(エデン)の、ある一つの部屋にて…

 

「―――そうか、分かった」

 

一人の男が椅子に座り、仲間からの連絡を受けているところだった。

 

「そのまま全員集めてくれ……あぁ、頼む」

 

男は携帯を切って椅子から立ち上がり、部屋を出てからある場所へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽園(エデン)最上階、バルコニー。

 

時間帯は夜、ちょうど満月も出ているようだった。

 

「……」

 

そんな満月の中バルコニーにいたのは、黒いトレンチコートを身に纏ったシルクハットの男。彼は一本の杖を床に突いたまま、ただ静かに目を閉じている。

 

彼こそが、OTAKU旅団を率いる団長“クライシス”である。

 

「団長」

 

「…二百式か」

 

先程の男―――“二百式”が、クライシスの下までやって来る。

 

「支配人から連絡がありました。今のところ、メンバーは順調に集まっているようです」

 

「そうか……急いでくれたまえ。例の“時期”は、すぐそこまで迫っている」

 

クライシスは目を開け、満月に向かって宣言する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦の時間だ。諸君、派手に行こうではないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦争は再び、始まろうとしていた。

 


 
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