No.622758

リリカル幽汽 -響き渡りし亡者の汽笛-

竜神丸さん

第12話

2013-09-26 14:16:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2075   閲覧ユーザー数:2035

「見つけましたよ」

 

海鳴公園。

 

その公園内のベンチに座っている髭の生えた男性を、遠く離れた距離からシアンが鋭い視線で見据えていた。

 

「ターゲットは、誰一人逃してはならない…」

 

独楽が真上に投げられ、それにシアンが鞭で打つ事で独楽が複数に分裂。複数の回転する独楽からスケルトンイマジン達が次々と出現する。

 

「全ては、永遠の輪廻の為に」

 

『『『『『クカカカカカカカッ!!』』』』』

 

召喚されたスケルトンイマジン達はそれぞれカトラス剣や弓矢などの武器を手に持ち、ターゲットのいる海鳴公園へと進行していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方、街の路地裏にて…

 

 

 

 

「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」

 

剣と剣がぶつかり合い、火花が飛び散っていた。

 

幽汽とシグナムが戦闘を開始してから少し時間が経つが、実力は互角のようだった。単純なパワースペックでは幽汽の方が圧倒的に上だったが、戦闘経験が豊富であるシグナムの方が技量では幽汽に勝っているらしく、それにより互いに一歩も譲らぬ状況となっているのだ。

 

「だらぁっ!!」

 

「フッ!!」

 

幽汽の横に振るった剣をシグナムがしゃがんで回避、素早く幽汽から離れて一定の距離を測る。

 

(思ってた以上に厄介な奴だな……どうにかして、ここからトンズラしたいところなんだが…)

 

幽汽はそう考えていたが、シグナムと対峙している今の状態だと逃走は難しいだろう。ジリジリと距離を保ちつつ、二人はゆっくりと武器を構え直す。

 

「―――ハァッ!!」

 

先にシグナムが動いた。速いスピードで幽汽に向かって駆け出す。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

幽汽もそれに応戦するかのように、シグナムに向かって剣を突き立てる。

 

「せやぁっ!!」

 

「何、ぬぐぅ!?」

 

しかしシグナムは頭を僅かに反らす事で攻撃を回避、すれ違い様に幽汽の腹部を斬りつけた。一瞬姿勢が崩れそうになった幽汽だったがすぐに体勢を立て直し、シグナムの繰り出す二撃目は防御、力ずくでレヴァンテインを弾く。

 

「チッ、やってくれるな…!!」

 

腹部から僅かに感じる痛みに、幽汽は仮面の下で小さく舌打ちしつつも何度も剣を振るい、シグナムに襲いかかる。剣筋も何も無い力任せな攻撃だがパワーは強く、シグナムも次第に押され始める。

 

「そぉらぁっ!!」

 

「くっ!?」

 

幽汽の剣をシグナムがレヴァンテインで受け止め、壁まで押し付けられる。

 

「手こずらせやがって……こっちは色々と忙しいんだよ、とっとと俺に負けてこの場から消えてくれると嬉しいんだがなぁ?」

 

「悪いがそうはいかんのだ、貴様には聞きたい事が山ほどある…!!」

 

シグナムのレヴァンテインと幽汽の剣が互いを押し合い、拮抗状態になる。

 

「お前は本当に、あのリインフォースなのか!? だとすれば、何故お前はこの街にいる!!」

 

「リインフォースだぁ? さっきから一体何の事……ん?」

 

シグナムの問いかけに訳が分からず首を傾げる幽汽だったが、一瞬だけ自分の身体に目を向けてからようやくシグナムの意図に気付く。

 

「…はっはぁ、なるほどな」

 

幽汽は仮面の下でニヤリと笑う。

 

「お前等……どうやら“こいつ”の事、色々と知っているみたいだなぁ?」

 

「ッ…本当にリインフォースのようだな……答えろ!! “貴様”は何者なんだ!? 何故リインフォースの姿をしている!?」

 

「答える義理なんざ無ぇなぁっ!!」

 

「な、ぐはっ!?」

 

幽汽は剣を持っていない左手でシグナムの右腕を掴んで左横へ投げ飛ばし、シグナムは地面へと叩き付けられる。その際、レヴァンテインがシグナムの手から離れてしまう。

 

「生憎、俺も他人にベラベラ喋ってやれるほど親切じゃないんでな」

 

倒れたシグナムに幽汽が歩み寄り、彼女の腹部を右足で踏み付ける。

 

「そんなに知りたいなら、力ずくで俺の口から吐かせてみろよ。まぁ、出来ればの話だがなぁ?」

 

「ぐ、が、はぁ…!?」

 

幽汽の踏み付ける力が少しずつ強くなっていき、骨の軋む音がミシミシと鳴り始める。何とか脱出しようとシグナムは右手を伸ばすが、先ほど手離してしまったレヴァンテインは届きそうで届かない絶妙な位置にある為、反撃すら出来ない。まさに万事休すだ。

 

「無関係者はむやみに殺すなと言われてるんでな。多少痛めつけるだけで済ませてやるから、それで安心する事だなぁ」

 

「ハハハハハハッ!!」と大きく高笑いする幽汽。右手の剣をシグナムの顔に近づけ、そのまま大きく振り上げようと―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シュワルベフリーゲンッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

―――した直後だ。突如幽汽に向かって、鉄球状の魔力弾がいくつも飛んで来た。

 

「な…うごわぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

想定外の攻撃に幽汽は防御体勢を取る事が出来ず、攻撃がまともに炸裂して吹き飛ばされる。

 

「シグナム、無事か!!」

 

魔力弾を飛ばしたのはヴィータだった。ヴィータは地上に降り立ってからシグナムの下に駆け寄る。

 

「ヴィータ、何故ここに…」

 

「はやてに頼まれて追いかけて来たんだよ! シグナム一人じゃ心配だからって」

 

「…そうか、心配かけさせてしまったか」

 

シグナムは自身の主に心配をかけさせてしまった事を内心で申し訳なさそうに思いつつ、立ち上がってバリアジャケットの汚れをポンポンと払う。

 

「たく……で、大丈夫なのかよ?」

 

「何、これしきでくたばる私ではないさ」

 

そして二人は、先程吹き飛ばされた幽汽を見据える。

 

 

 

 

 

「くそ……よくもまぁ、面倒なマネをしてくれやがったなテメェ等…!!」

 

吹き飛ばされて地面を転がっていた幽汽は、魔力弾の命中したアーマーから煙の上がっている状態で何とか立ち上がる。口調からして怒っているのは明らかだ。

 

「絶対に許さねぇ……行けぇ!!!」

 

『『『『『ケタケタケタケタッ!!』』』』』

 

「「!?」」

 

左手で何枚かの御札を取り出し、それを空中に放つ。空中に放たれた御札に砂が纏われ、複数のスケルトンイマジンが出現する。

 

「召喚しただと…!?」

 

「な、何だコイツ等!?」

 

突然の召喚に二人は驚くものの、すぐにスケルトンイマジン達と応戦する。

 

「そうだ……そのまま相手していろ…!!」

 

シグナムとヴィータが戦っている中、幽汽は離れた位置でパスを取り出し、ベルトのバックル部分に翳す。

 

 

 

≪Full Charge≫

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…!!!」

 

「!? 何だ!?」

 

「まずい…!!」

 

幽汽の行動に気付いた二人だったが、スケルトンイマジン達の妨害で逃げられない。

 

「―――ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉあああああああああああああああああああああっ!!!!!」

 

そして、強力な一撃が地面に放たれた。

 

地面に叩き付けられた剣から衝撃波が地面を這い、スケルトンイマジン達ごと巻き込みながらシグナムとヴィータに迫っていく。

 

 

 

 

 

 

-ドガァァァァァァァァァァァァァンッ!!!-

 

 

 

 

 

「「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま、シグナムとヴィータは衝撃波に飲み込まれてしまうのだった。

 


 
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