「桂花。一刀を呼んで来てくれないかしら」
「…北郷をですか?」
「ええ。一刀と租税について相談したいことがあるのよ。
自室に居ると思うから、頼めるかしら」
「わかりました。直ぐに北郷の部屋に赴きお呼び致します」
「……待ちなさい、桂花」
「どうかなさいましたか、華琳様?」
「……やけに嬉しそうね。前に一刀に街の事で相談したら、貴方は真っ先に、
異を唱えたじゃない。なのに今は分け隔てなく一刀を呼びに行こうとしている。
まるで、一刀に会えるのが楽しみにしている様にね」
「い…いえ!その様な事は決して思っておりません。
華琳様の命でなければ、かず……北郷などと口も聞きたくありませんし、
か、顔も見たくないです!」
「…そうよね。貴方は男に嫌悪を抱いてるし、
一刀を好きになるなんて、ないわよね」
「は…はい。私には男を好きになる理由がございません。…………一刀以外は…ね」
「何か言ったかしら?」
「い…いえ、何も。…それでは行って参ります。華琳様」
「宜しく頼むわね………なんか引っ掛かるのよね…」
「…ふぅ。危うく華琳様に一刀との関係を洩らす所だったわ、
気をつけなくっちゃ。…もし華琳様に知られたら、お仕置きと称して、
私を動けなくし、目の前で一刀と
華琳様とはいえ口を閉ざさないと。…それにしても、朝から一刀に会えるなんて幸運だわ。
…ふふ。いけない、おもわず笑みがこぼれちゃう。早く一刀に会いに行こうっと♪」
「…おや、桂花殿ではないですか」
「あら、稟じゃない。私に何か用なの?」
「いえ、見かけましたので挨拶でもと思いまして。桂花殿は随分とお急ぎの様で、
何処かに向かわれるのですか?」
「華琳様の命を受けてね。か…北郷の部屋に行く途中なのよ」
「一刀殿のお部屋ですか?」
「そうよ。…何か言いたそうな顔をしてるわね、稟」
「ええ。気のせいかもしれませんが、桂花殿があまりにも嬉々とした表情を
浮かべていますので、一刀殿に会うのが嬉しいのかと思い……」
「なっ!?そ、そんな訳無いじゃない!!これは……そう!
命を終えれば華琳様がご褒美をくれると仰ったのよ!
私が…北郷なんかと会って嬉しいと思う訳ないじゃない!!」
「…そうですよね。失礼しました」
「わ、判ればいいのよ。判れば……」
「長く引き留めて申し訳ございません。では、私はこれで……
………しかし、一刀殿を呼ぶだけで褒美を貰えるものでしょうか?」
「ええ、それじゃあ。……私って顔に出やすいのかしら?
そうなら、注意しなくちゃね。でも、稟で助かったわ。
もし風だったら、誤魔化すのが困難だったわ。…いけない。
華琳様を待たせる訳にはいかないわ。急いで北郷の部屋に向かいましょう」
「一刀いる?部屋に入るわよ。……見事にもぬけの殻ね。
…がっかりだわ。せっかく一刀に会えると思ったのに。
……はぁ。仕方ないわ、華琳様に報告を…」
「ん?これって一刀が何時も着ている上着よね。…何だか落とし穴の一件を
思い出しちゃうわ。あの時この上着を貸してもらったのよね。少し恥ずかしいけど、
今となっては良い思い出だわ。…素直になってたら、もっと良い思い出になったのかしら。
…そんな事ないわね。天邪鬼だったからこそ、一刀から告白されたんだもの。
きっと、これからも今以上に素敵な思い出を、一刀と共にたくさん作れるに決まってるわ」
そう言うと、桂花は徐に一刀の制服を手に取った。
「………誰も…居ないわよね。……すぅ~~。
…この上着から一刀の匂いがする。この匂いを嗅いでいると、天にも昇る心地良さだわ…。
癖になっちゃいそう…♪……すぅ~」
……ガチャ。桂花が一刀の制服の匂いに没頭している瞬間、
唐突にドアが開いた。
「いけね、上着を忘れて……桂花?」
「か、かかかか一刀!!!?」
「俺の部屋で何をしてるんだ?それに、その手に持ってるのは俺の制服……」
「これは、その、ち…違うのよ!
べ、別に上着に残ってる。一刀の匂いを堪能してるんじゃないんだからね!!」
「………………」
「……………あぅ~」
「…で、桂花は華琳の命を受けて、俺の部屋に来たと…」
「………うん」
「けど、部屋に入ったはいいが俺の姿はなかった。そして、寂しさのあまり、
机に置いてあった俺の上着が目に入り、残り香を堪能していた、と言う訳か」
「……………うん」
「……寂しいなら俺に一言いってくれよ。時間を作って直ぐに会いに行くからさ。
そしたら、俺なんかの制服の匂いを嗅ぐ必要はないだろ。
別段、良い匂いなんてしないんだから」
「良いとか悪いとか、そんな事は関係ないの。
……一刀の匂いなんだもん。愛しいから服に顔を埋めてしまうんじゃない」
「…桂花は変わったよな。前は俺に対して荒かったけど、今はなんて言うのかな。
…深切で柔らかな印象になった。そんな感じがするんだ」
「……こういう私は嫌い?」
「いや全然。むしろ、ますます好きになってるよ」
「ふふ、良かった。
……私ね天邪鬼に戻らないって決めたの。色々あって、一刀と結ばれたんだもの。
これからは、素直に貴方に尽くしたいと思ってるわ。……一刀の事が誰よりも好きだから…ね」
「…凄く嬉しいよ。俺も桂花が好きだ……」
「…嬉しい。……ねぇ、一刀。
私を優しく抱きしめて。会えなかった分だけ優しく……」
「わかった。……ギュッ。
……桂花、一つだけ言いたい事があるだけど」
「……何かしら?」
「俺の服の匂いを嗅いだら、妊娠しちゃうんじゃなかったけ」
「なっ!?そ…それは、あの時の私は一刀が好きだって気持ちに気付いてなかったし、
今は心地が良いって言うか、いつまでも嗅いでいたいし。
それに、何時かは一刀の子を…………あぅ~」
「くっくっく。あっはっはっはっは!!」
「もう!そこまで笑わなくたっていいじゃない!!」
「くく、…ゴメンゴメン。桂花があまりにも可愛かったから。つい…」
「………いじわる」
「ゴメンって。…やれやれ、拗ねちゃったか。
では、お姫様の機嫌が良くなる魔法を掛けてあげようかな」
「ふんっ!一刀なんて…知らないんだから。
………一刀?」
「好きだ桂花……んっ……」
「えっ!?ちょっと、かず……んん!…んむ……ぅん…ふぁ……」
「ん……ちゅう…んむ…………ふぅ。如何でしたか、お姫様」
「……はぁ、はぁ。あ…朝から激しいわよぅ。……ばかぁ」
「でも機嫌、良くなったろ?」
「…………ばか」
「まぁ、馬鹿だけどね。………ヤバ!桂花!!俺、華琳から呼ばれてるんだよな!!
急いで用意しないと……桂花?どうしたんだ。寝床に座ってないで準備しなくちゃ」
「それが…その……今の口付けで腰が抜けちゃったみたい」
「…じゃあ、俺がなんとかして華琳を誤魔化しておくからさ。
桂花は俺の部屋でゆっくりしてなよ」
「……ありがとう、一刀。宜しくお願いね」
「うん、了解。…行ってくるよ、桂花」
「行ってらっしゃい、一刀」
「…………」
「どうかした?」
「いや……なんか夫婦みたいだなって思って」
「なっ!?~~~~~~~っ!!」
「桂花、顔が赤いぞ」
「…………一刀。私が顔を赤くするってわかった上で言ったわね」
「うん、わかってたよ。桂花の照れた顔は、俺の給金以上の価値があるからね」
「バカっ!!早く行きなさいっ!!」
「くく、それじゃあ行ってくるよ」
「もうっ!!一刀ったら!!…………夫婦かぁ。
……行ってらっしゃい…貴方。…………キャー!!、キャーッ!!」
桂花は一刀の枕に顔を埋め、喜び悶えるのであった。
「夫婦だって!…夫婦だって!!……ふふ。ふふふふふふ」
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こちらは真・恋姫†無双の二次創作になります。
最初に犬騒動の方をお待ち頂いてる人、申し訳ございません。
展開と台詞に悩んでいますので、もう少々お待ち下さい。
さて、桂花との甘いシリーズ第二段です。
前回、砂糖を吐いたり、河を渡った方が多数居ましたw
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