No.600087 超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編2013-07-21 19:58:40 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:647 閲覧ユーザー数:622 |
「おぉー!ここが一人ぐらいの男の子の家……全然、想像と違う…!」
「紅夜の家……ものすごく謙虚ね」
「なんだか、寂しい感じがするです」
ネプテューヌ達は、俺の家を見え上げながらそう言った。
二階建ての木造建築、家の周囲には邪魔にならない程度に抜き取られた雑草、これといって特徴的な物は置いてなく、街の片隅にありお隣さんは少し離れた場所。
故に、影が差しこんでしまえば無人と思われてもおかしくないほど、改めて自分の家を見ると虚しく見えた。
『君って、この家で寝泊まりするより他国の宿屋で泊まる方が圧倒的に多いからねー』
「……言うな」
頭に手を置く。出張依頼が多い俺にはあまり自分の家でゆっくり過ごした記憶があんまりない。
基本、長時間開けることが多い、帰ってきたらまず掃除から始めて布団とおまけに元から少ない服を洗濯して干して、配達物を確認して、パソコン開いてメールを確認して、栄養バランスとか考えて料理を作って、時にはベールとかケイブ先輩とか来てくれるし、ちゃんと家として機能しているぞ!
『………強がらなくていんだよ?』
「さて、つまんない家だけど入りな」
「「「おじゃましまーす」」」
デペアの心に突き刺す慰めの言葉を無視して、俺は懐から鍵を取り出して差し込みドアノブを回した。俺に先導されるようにネプテューヌ達も家に入る。
家の中は、少し前に掃除したこともあって埃が見当たらない程、綺麗だ。
『(元から家財が少ないから綺麗に感じるって見かたがあるんだけどなぁ……)』
「………ものすごく、少ないね」
「ねぇ紅夜。お金とかないの?」
「……えぇっと…すごくシンプルな部屋で、過ごしやすそうです!」
「…………ぐすっ」
思わず泣きそうになった。確かに俺も思う様なところあるよ?ぶっちゃけ俺の家って生活に必要なもの以外はほとんどない。
二階は別だが、居間は飾り気ないのは自覚している。お金はかなり余裕あるが買う暇があんまりない、使う機会もほとんどないと考えているので、俺は必要以上の物は買わない様にしている。……まぁ、ベールがあれはオススメ、あれを買わないと人生損するとかでとりあえず買った物はちらほらあるけど。
「んー……ねぇねぇ、こぅちゃん。寝室ってどこにあるの?」
「そこの階段を上って真正面だ。…なんでそれを聞くんだ?」
言った直後に疑問を言うが、既にネプテューヌの姿はなく階段を登る音が聞こえた。
俺の寝室にはベットとパソコンと本棚ぐらいしかないのに。
……とりあえず、アイエフとコンパを立ちっぱなしだと失礼なので、俺は居間の椅子に座る様に指示をして紅茶を出すようにした。
「なぁ、アイエフ、コンパ。紅茶には何を入れる?」
「そうね……私は、レモンでお願いするわ」
「私は、ミルクでお願いします」
「OK……ネプテューヌは砂糖でいいか」
見た目もそうだが、舌も子供寄りだと思うし。
そんなことを考えながら、炎の魔法の応用で直ぐに水を沸騰させティーカップに紅茶を注ぎ、アイエフ用に薄く切ったレモンを乗せて、コンパ用に小さなカップにクリームを入れた物と一緒に机に置いた。俺とネプテューヌの分も用意して同じく机に置く。
「……いい匂いね。それにいい茶葉を使っているわ」
「おいしいですぅ」
「それは良かった」
俺は何もいれないまま、少し茶葉の臭いを楽しんで少しだけ飲む。
ベールの元で淹れ方を学んだ経験もあり、自分もおいしくできたと思う。
「こぅちゃーーん!!!!」
ドタバタと慌ただしく階段から降りてくる音、ネプテューヌは驚愕の表情で机をバンっと叩いた!
「おかしいよ!」
「…なにが?」
いい気分だったのに、と俺は少し飲もうとティーカップに口を付けて紅茶を飲もうとしてーー
「ベットの下に薄い本とか、いかがわしい本が無かった!!」
ーーー盛大に吹いた。
「~~~~ッ!!。お前は一体何を調べているんだ!!!」
「だって、年頃の男の子ってそういうところに隠しているんでしょ!?本棚も調べたけど、漫画すらないってどういこうこと!?」
「あー、もうー……!!」
思わず頭を抱えた、一体何が目的かと思えばそんなことか!
最早、紅茶の吞みながらの、ほのぼのとした空気は木端微塵の修復不可能になってしまった。アイエフは苦笑、コンパは顔を真っ赤にしてこちらをチラチラと見てくる。
「俺は、そういう物はもってないし興味ない!」
「でも、隣の部屋にはすごいのがあったよ!」
ネプテューヌの言葉に戦慄が走った。
あの部屋は、ベールが休みの日に俺と一日中、遊べるようにと勝手に使っている部屋。
そこは、教会のほうにあるベールの部屋より劣るものの、R-18的な本やら、漫画やら、ゲームが置かれている俺にとって魔境の地!
ーーー僕、寝ます。
無慈悲にデペアはこれから起こるであろう惨劇を予測したように逃亡した。
ネプテューヌは俺を見て笑う。その笑顔はなんとも言い難い想いがあるように見えた。ネプテューヌは手に持つソレを俺達に見せた。
本。それもライトノベルとはより圧倒的に100ページどころか、50ページにも届かないほど薄い本で、表紙には様々なタイプの美青年が何故か半裸に近い姿で首に蝶の形をしたネクタイをしている。そしてそのタイトルは『裸の執事たち』。
「…………」
「…………」
「…………」
力ない風が聞こえるほどの静寂。
額に汗が流れて、落ちた。
「こ、紅夜!?あんたそんな性癖なの!?」
「ち が う !!!」
「ーーーーーー」
「コンパ!?」
「こぅちゃん……私は応援するよ。みんな自由な世界こそがゲイムギョウ界だから!」
「だから違う!!!それは俺の物じゃなーーーい!!!!」
ドン引きするように顔を青く染め、俺から距離を置こうとしているアイエフ。
口から魂のような物を出しながらぐったりとするコンパ。
語ったようないい笑顔でグットサインするネプテューヌ。
………どうしてこうなった。
◇
「つまり、あれは紅夜の持ち物じゃなくて、ここに通う友達が置いてきた物ってワケ?」
「全く持ってその通りだ」
ソファで気を失って横になっているコンパに団扇で扇ぐアイエフに俺は事情を伝えていた。
俺の隣の物は全て、友人が勝手に持ってきた私物であることを。
「ものすごく焦ったわよ。まさか紅夜にそんな趣味があったなんて……」
「断じてないからな?俺にそういう性癖は女神に誓ってない!」
「うぉー、そこだー、いけぇぇー!!!」
熱烈した声でテレビに映された紫色の車を手持ちのコントローラーで操作するネプテューヌ。
その楽しそうにゲームする姿に、なぜかいい気分が持てず、むしろ心の底からドス黒いが感情が溢れてくる……やっていい?やっていいよね?
「紅夜、気持ちは分からなくもないけど、とりあえずその握りしめた拳を納めなさい」
「……………」
ちっ、命拾いしたなネプテューヌ。
拳を広げ、盛大にため息を付いた。肩に重りでも付けられたように重い。
「なんだか、ゴメンね。ねぷ子なんだかあなたに会えて、いつものテンションが更に上がったみたいで」
「……いや、俺も何か一言くらい言っておくべきだった。俺にも非がある…」
ってか、ネプテューヌ。お前のテンションは天を貫くドリル並みか?底が見えないぞ。
「そうだ。お前らがリーンボックスに来たということは引き続き、鍵の欠片が目的だろ?ラステイションでのお前が行っていた守り手のモンスターってどんな姿だったんだ?」
「そうね……蜘蛛人間のような奴だったわ。武器は巨大な鍵よ」
「なるほど……そんな特徴をしたモンスターの目撃情報をこっちで探してみるよ」
「…………」
何故か、アイエフが不思議そうな顔で黙ってこちらを見つめてきた。
「アンタって本当にお人よしね」
「……いきなりどうした」
既に
「ラステイションの時、最初は一人だけでなんとかする一匹狼だった。けど、助けを求めれば直ぐに手を伸ばすし、アヴニールの事件との時だって、私たちはずっとそっち方面だったけど、紅夜だけは他にも依頼をたくさんこなしながら、私達に協力してくれた。ホント、アンタはいい人だわ」
うんうん、と思い出すようにアイエフは頷いた。
その様子を見ながら、俺は徐に自分の手を見た。
この手でーーー救えた命、守れた命。それはいい。
しかしだ。俺達のしたことはラステイションの大手企業を潰したこと、つまりアヴニールで働いていた従業員を路頭に迷わすことだ。
ほとんどを機械で生産、販売していとはいえ少なからずアヴニールにも働いていた人がいた、研究していた人がいた。
自分の会社が汚職に手を染めていることを知っていたアヴニールの従業員は一体、何人いたんだろうか?……いきなり、明らかになる働いている会社の闇、ラステイションが誇る大手企業はあっさりと失脚していく。
それが、どれほどの恐怖を生むか。世間からはアヴニールは悪とさせて、そこで働いてした人々は遠い目で見られながら、次の職種を探すのがどれほど大変か。自分の家族を喰わせていけるだろうか………。
「…………」
「紅夜?」
正しんだろう。
結果的に利益を独り占めしていたアヴニールを潰したおかげで、ラステイションの中小企業はこれから復活していくことが出来る。
企業同士の競争はそんなものだと、頭で理解している。
しかし、心のどこかで俺は考えている。もっといい解決策があったんじゃないかと。
「紅夜!」
「あ、…なんだ?」
「顔、暗いわ」
結局、俺達のしたことは多くを助け、少ない物を切り捨てた。それだった。
ネプテューヌは、変わらずテレビゲームに夢中だった。
女神、この世界を守護する救済する希望の導き手なる存在。……お前は、今までどうして来た。どうあり続けた。女神として、人々をどのように導いてきた。
俺には分からない。モンスターを退治すること
「一体、何を悩んでいるのよ。アンタは」
「別に……大丈夫さ。それより時間はいいのか?結構暗くなってきたか」
空を見ると太陽が沈みかけ、所々星が見え始めている。
我が家は街の片隅なので、宿屋に向かうのであらばそろそろ出ないと真っ暗になってしまう。
「…そうね。そろそろお邪魔するわ。起きなさいコンパ、ねぷ子そろそろ出かけるわよ!」
「分かった。あと1レース!」
「うぅん……何かとんでもないことを知ったような記憶があるです。薄らとして思い出せないです…」
うん、コンパには刺激が強すぎたのかあの本を見せる前まで少し記憶が飛んだようだ。良かった。
ネプテューヌの気合いの入った声とゲームのBGMを聞きながら、俺はティーカップを洗いを開始した。
◇
「……はぁ」
少し時間が過ぎて、ゲームを片付けてネプテューヌが散らかした部屋を片付けて俺はベットに座り込んだ。
あの後、実力的に申し分ないが、流石に3人(一人は女神)を暗くなっている道に送るのはどうかと思い、宿屋まで付いていき、適当に晩飯を食べて今はゆっくりとしていた。
しかし、顔を横にすれば俺が置いたたくさんの配達物があった。そのほとんどが他国からのモンスター退治の依頼だ。
明日から、リーンボックスでモンスター討伐をしながら、この依頼を見て自分ではなければ片付けられないような凶悪で緊急性のある内容であれば直ぐに飛び。ある程度放置しても大丈夫であったり、十分その国のハンターで対処可能であれば、その国の知り合いハンターに手紙を送ったりの作業をしないといけない。
まぁ、俺はハンター歴1年の新人。……色々と嫉妬の目で見られて困ることもあって、うまく仕事を頼めないこともあるが。
「………それでも、前に進むしか、ないか」
どんなに辛いことでも、どんなに悲しいことがあっても、俺には帰れる場所がある。
ベールがいて、ケイブ先輩がいて、イヴォワール教院長様がいて、このリーンボックスがいて……俺は、幸福だ。
手を見る。
何も掴んでいない。
けど、人々からモンスターという脅威から守るための力がある。
「成し遂げる。やり続ける。それが……それしか、俺には出来ないことだ」
独り言。自分に言い聞かせるように呟く。
窓を見れば雲一つない星空、星一つ一つが自らの存在を自己主張しているような綺麗な空。
俺は、それを見ながら明日も頑張ろうと拳を握った。
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その7