相変わらず(ry
今回は陳琳さんの出番です。ひぁうぃーごー。
お勉強用の教材を両手で抱え、トコトコと上品に歩く美羽。
兵士や女官の皆さんにごきげんよう。とにこやかに微笑む事も忘れない、だって淑女なんだもの。
「美羽お嬢様」
「もう七乃!だからその呼び方はやめてって……先生?失礼しました!」
背後から掛けられた声に、反射的にそう言ってしまった美羽だったが、相手の顔を見て慌てて頭を下げる。
しかし喰って掛かられた女性は穏やかな微笑を崩す事無く、いえいえとんでもない。と美羽の頭を上げさせる。
「励まれておられるようですね、結構結構」
「時期が遅かったものですから……付いていくのでやっとです」
「名門袁家の御息女がその様な事でどうします」
「お願いですからそれはやめてください……それより、陳琳先生は何か御用があるのでしょうか?もしよければ、ご指導を賜りたいのですが」
ふーむ。と陳琳は顎に手を当て、美羽の顔をじーっと見て考え込む。
服の袖に手を入れず、懐から腕を出しているのでたわわな胸と、華麗な意匠のブラが思いっきり見えて美羽は視線を背けてしまう。
全く、袁家の関係者は皆何処かずれているから困る。無論自分以外by美羽。
陳琳は音に聞こえた詩家でその文学の評価も非常に高いし、教養の高さから時折家庭教師の様な事をしてもらっているのだが、自分の身なりに無頓着だから困る。
この前だって一刀と一緒に“他人の華麗な罵り方”という勉強をしていたとき、ミニスカなのに思いっきり胡坐をかいていたのだ。
「あ、もしかして執筆でお忙しい所でしょうか? でしたら無理には」
「……実はこれより、とある“派閥”へ講義を行う事になっておるのですが、よろしければ見学されていかれますか?」
「え……その様な事、一存で決めてしまって宜しいのですか?」
「まぁ構わないでしょう。美羽お嬢様でしたら時間の問題かと思いますし」
は?と呆ける美羽に、講義場所を告げ、一応七乃に断ってからお越し下さい。逆恨みは厄介ですし。と言うと鼻歌を歌いながら陳琳はその場から離れていく。
なんのこっちゃ?と思っていた美羽だったが、先達の教えには逆らうまい。と七乃と楓に断りを入れに行く事にした。
陳琳に聞いた会場?に着いた美羽は、出入り口の前に立っていた陳琳に出迎えられると、身体全体を覆うほどの大きさの黒い布を手渡された。
聞けば、この派閥は素性を明かしたり、相手の素性を探ったりする事は御法度らしい。
貧乳党とはまた違った派閥の在り方に戸惑っていた美羽だったが、まぁそういうものか。と納得した。長いものには巻かれる美羽ちゃんマジ天使。
では行きますか。と陳琳が扉を開けると、真っ暗な中に、下に向かう階段があった。
壁に備えられる灯りに火を灯すとそれなりに明るくはなり、美羽が入って直ぐに閉められた事によってもう少し明るくなった。
それでも眼を凝らさなければ踏み外してしまいそうな暗さの中、黒布を全身につけた美羽は必死に一段一段降りていく。
七乃に相談した時、何を持っていけばいいか聞いたら「あー、手ぶらでいいんじゃないですかー?」と言われたのを信じて良かった。手ぶらじゃなかったら転んでた。
長いようで短い階段を下りると、また扉があった。どれだけ厳重な施設なんだ。と思わずには居られない。
「講師として招かれました、陳琳でございます」
「入って、どうぞ」
失礼します。と陳琳が扉を開けると、そこには美羽と同じ様な格好の人が五人座っていた。
私はどうすれば。と美羽が戸惑っていると、陳琳がすっと手を引いてくれたので、逆らわずに促されるまま歩いていく。
「お待たせしました。 本日は私が時折指導している子を見学させて頂きます」
「よ、よろしくお願います!」
「そう。 同じ志を持つ者を遠ざけたりはしないわ。 何と呼べばいいかしら?」
「では―――蜂蜜とでも。 さ、あちらの席に」
は、はい。と美羽がおっかなびっくり歩いていると、被っていた長い布をふんずけてしまって転んでしまった。
すかさず座っていたウチの一人が手を貸してくれ、大丈夫か?と身を案じて示された席へ一緒に歩いてくれる。
「お前には少し丈が長かった様だな」
「す、すみません」
「いや、謝る事などないぞ。 次までに寸法を合わせておこう」
「“汜水関”が縫う訳ではないだろうが」
「それは“錦帆賊”とて同じだろう」
両者の、多分暗号にゑ!?と声を出してしまった美羽だったが、まさか自分の素性がバレているなどとは夢にも思っていない二人はどうした?と美羽の奇声の意味を問いかけてくる。
「二人とも静かになさい。 私は此処では“奸雄”と名乗っているわ。宜しくね、蜂蜜」
「は、はぁ…ご丁寧に…どうも…」
曹操様。と言ってしまいそうになって、それをグッと堪えた美羽は偉い。
美羽が席についたのを確認して、陳琳が口を開く。
「ではこれより、講義を開始します。 先日の宿題はお持ち頂いていますか?」
「そこにあるわ」
「では拝見―――ふむふむ。 良く書けています、と判断して差し上げたいのですが、残念ながらこれでは不十分ですね」
二つ折りに出来そうなぐらいの大きさの木簡にスーッと目通しした陳琳だったが、口を歪めながらそう言い切る。
「まず“汜水関”さんと“錦帆賊”さんですが、両者とも内容が非常に似通っています。 これは何故ですか?」
「系統が同じと言いますか……その……」
「両者が互いに不足している所を補い合っただけだ」
「これは馴れ合いと言うのです。 一刀様の犬にして貰いたい。という情熱だけは非常に感じられますが、それだけですね」
あーきちゃいけない場所にきちゃったんだなー。と美羽は天井を見ながら思った。
これはどう考えても場違いだ。しかし途中で席を立つのは後々の事を考えれば得策ではない。と思う。
「『ろーるぷれい』を一刀様にお願いする以上、半端な物ではいけません。物語として完成していなければならないのです。
“秘書”さんに“戯志才”さんは物語という点においては優秀ですが、いざこれを下敷きに愛を交わそうというのであれば設定に酔っているだけとも取れますね。
“奸雄”さんはどちらも高い水準を保ってはいますが―――この内容、一刀様に気取られず、全身全霊を込めて役になり切る自信はお有りで?」
美羽以外の全員がうぐっと詰まってしまう。それぞれ思い当たる節はあるのだろう。
「貧乳党を例にすると良く分かる通り、排他的な思想は凝り固まる事が多々にしてあります。
一刀様が仰られた天の国の言葉に『額縁を外す』というのがあります。 一刀様の場合は突飛すぎてよく叱られていますが。
さて、そこで新しい風である“蜂蜜”さん?」
「は、はい?!」
「先日は随分と可愛がっていただいた。と聞き及んでおりますが、一刀様を滾らせた要因を是非、拝聴いたしたく存じます」
「えぇー……」
分かっている。もう美羽は「うははー」と笑って蜂蜜をねだるだけの困ったちゃんではないのだ。
何処の誰とは言わないが魏の覇王よりも背丈は伸び、明言は避けるが呉下の阿蒙よりも胸は育ち、比べた訳ではないが何処ぞの二枚看板よりもお尻がきゅーと。
この集団の眼光から逃げられないなんて、分かってしまうのだ。
「あの……その、ですね」
「是非」「是非」「是非」「是非」「是非」
「……華美で妖艶な下着は、私には似合いませんし、その、皆さん沢山持っていらっしゃるので……普通のを着て、恥ずかしかったので、なるべく顔を手で隠して、おねだりしました……」
「そ、それで……どう、だったのだ…?」
「ゴクリ……」
「……ほ」
「や?」
「本当に……朝まで寝かせて貰えません、でした」
「「「「「ちょっと普通の下着買いに行って来る!!いや別に深い意味はないんだけど!!」」」」」
さようなら純真、こんにちわ穢れ。
大人になるって、悲しいことなの……
五者五様の賛辞を受けた美羽だったが、これっぽっちも嬉しくない賞賛だった。
だいたいあの時の事は噴飯物なのだ。先ほど思い出してからというもの、美羽は頬っぺたをぷくーっと膨らませてつかつかと歩く。
美羽の脳内では桔梗の様に際どく、祭の様に華麗に一刀を煽ってうんぬんかんぬんというストーリーがあったのに、いざ結構しようとすんごい下着を身に着けた鏡の中の自分は微妙。
せめて紫苑の様な妖艶な清楚さを持てないものか。と普段のおこちゃま下着を身に着けるとばっちりはまって、それを思い人に見せなければならないという結末。
やる事が恥ずかしいというより、こんな下着で主様をお誘いするのか。という方の恥ずかしさが勝っての『顔を手で隠して、脚をジリジリ広げての“可愛がってください”』だったのだ。
けだものになった一刀さんは決して悪くないと思うの。
「ただいまっ!」
「あれ、随分お早いお帰りですね、美羽様」
「作戦会議にも誘われたけど、辞退してきたのっ!」
自室の寝台に飛び乗ると、枕に顔を埋めて『私怒ってます』のポーズをとる美羽。
淑女としてあるまじき行為だとわかっちゃいるけど、やらずにはいられない。少しでも毒を出さなければ。
「七乃、貴女どういう集まりなのか知ってたんじゃないでしょうね?!」
「え?そんなの勿論知ってましたよ?」
「な……なーー!!」
「一刀さんにいぢめられたい人達が陳琳さんにしちゅえ~しょんの構想練ってもらってるのって有名ですよ?」
何で知らないんですか?と逆に攻められてううっと唸ってしまう美羽だったが、美羽ちゃんは悪くない。
「……聞いてはいたけど、ただの馬鹿な噂だと思っていたんですもの」
「まぁ普通はそう思いますよねー。 私も最初に聞いた時はアホらしくて笑っちゃいましたもん」
「でも私が行く前に教えてくれたっていいじゃない!!」
「えー。それだとこうやってぷんすか怒る美羽様を見れないじゃないですかーやだー」
「ああもうすっごいぶちたい!」
「ねぇねぇ美羽様。一体どんな事話し合ってたんですか?言い触らしますから教えてくださいよー」
「畜生!悪意しかない!」
「ほらー、美羽様って司馬懿さん並にちょろ可愛いんですから、無駄な抵抗はやめましょうよー」
「……ちょろくないもん。絶対ぜぇーーーーったい教えない」」
「あらこんな所に蜂蜜が」
「ねぇ七乃、本気でそれで私が転ぶと思ってるの?七乃の中の私は何時までもうはは幼女のままなの?」
「おや、こんな所に一刀さん直筆の『一日何でも言う事聞きます券』がー」
「えっとね、詠さんなんだけどね、詠さんは一刀さんの侍女って所までは今と同じなんだけどね、詠さんは一刀さんに求婚されるんだけど身分の違いが―――」
「美羽様ったらちょろーい」
「それでね、詠さんの妄想では主様に強引に迫られて、何度も拒否するんだけどもう身体は正直になっててね。
『詠の仕事は俺に可愛がられる事だろ?』って言って欲しいんだって!
それでねそれでね、最後は主様と二人で駆け落ちして、誰も住んでいない廃村で、二人だけの結婚式を挙げるんだって!
それとね、愛紗さんなんだけどもう人間やめたいらしくて―――」
「美羽様ちょっと待って下さいね、今文字という形に残しますから」
後日、七乃の記した美羽のぶっちゃけトークは王粲の手に渡り、王粲の手によってめっちゃどぎつい一と八が禁な小説となり、特殊な性癖を持つ乙女達を湧かせた。
反省。
何故か仲達さんが出せない。どうも私はクーデレを書く力量が無いみたいです。
何となく美羽ちゃん出したくなりました。
私の頭の中の陳琳さんは「あっぱれ!天下御○」の眠利さんです。眠そうな半眼だと萌える。
お礼返信
七夜様 桃香「私西日除けになります」
hujisai御大 近いうち法正さんと張松さんを出そうと思うのですが、容姿や性格など考えておられましたら教えて頂けると幸いです。陳琳さんはノーカン!ノーカン!
月光鳥~ティマイ~様 く、くやしいっ!!でも(ry
ちきゅさん様 司馬犬は可愛いですよね。私も銀髪の司馬犬が大好きです。
朱月 ケイワ様 番犬(華雄)ぐらいしか思いつかなかった。くやしい。
叡渡様 愛紗&思春「「私は人間をやめるぞー!!」」
D8様 なんか華琳様って弄りやすいんですよねw
happy envrem様 これは孔明の罠だ!ですね、わかりますw
よしお。様 それやっちゃうと司馬日記の支援になりまへんがなw
呂兵衛様 一刀は時折桔梗のおっぱい枕で昼寝しているに違いない!
ミドリガメ様 流石は天下の飛将軍です。
shirou様 イラッとされたら飛びますからね。色んなものが。
悠なるかな様 どうしても弄りたかったんや……
SRX-001様 hujisai様の発想に全俺がS・H・I・T!!
zero様 これは流行る!!
HIRO様 いや、彼女達がこのまま終わるわけがない!!
前原 悠様 華琳「二本足で立つのが人間、見得と意地と根性で立つのが乙女」
メガネオオカミ様 気づいていただけただけで満足です。いやホント。
観珪様 譲った分だけ踏み込まれますからw
kaz様 うーん、愛紗と思春でドMが被ってしまった。
Alice.Magic様 感想感謝です!(>Д<)ゞ 何故か華琳ちゃん出すといじりたくて仕方ないんですよねw
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淑女な美羽ちゃんを書きたくて。