No.589845

司馬日記33

hujisaiさん

その後の、とある文官の日記です。

2013-06-21 23:03:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:13073   閲覧ユーザー数:8067

12月5日

昼休みに会議室へ士載と士季を呼び、券を一枚づつ渡してこの札は将来のあるお前達で有意義に使うようにと諭した。

士載は私が使うようにと固辞していたが、士季は見覚えの無い笑顔を見せると直ぐに戻ると言って出て行くと、子丹御嬢様を連れてきた。

御嬢様はいつか見たような笑顔で「馬鹿ね、仲達は…」と言いながら私を抱きしめられた。…と思ったら背負い投げで投げ飛ばされた。受身は取ったが、見上げた御嬢様は引き攣った笑顔で顔を青ざめさせており、怒っておられるのが一目で判った。

そのまま御嬢様に一刀様のお部屋に引きずって行かれると、

「もう駄目駄目ですこの馬鹿娘!一刀様、こ、このっ…敗北主義の塊みたいな仲達にちょっと根性というものをずぶっとどばっと注入して下さいっ!いえ、もういっそ調教!凌遅で調教して下さい、私桐花様に反対でしたけど気が変わりました!この娘の馬鹿はそれくらいしなきゃ治りません!」

ととんでもない事をまくし立てた。

私が何を言っても御嬢様は聞く耳を持ってくれず、一刀様が御嬢様から経緯を聞き出して「とりあえず券は俺に預けてくれ、二人共に悪いようにはしないから」と宥められてその場は収まった。

 

二人で御部屋を出ると御嬢様ははあぁぁぁと大きく息を吐いて肩を落とし、

「…少し言い過ぎたわ、ごめんね仲達。でもね、貴女美人だし良い娘だし一刀様だって貴女の事満更じゃないんだから、もう少し自信持って甘える事も考えてみてね」

と言われた。

無関係の御嬢様にも、一刀様にも御迷惑をかけてしまった。

 

…やはりあの券は私の身には過ぎたものだったのだろう。

 

12月6日

後宮の移転に伴い、庁内協同組合の店舗が拡大したので定時後に行ってみた。

以前は多少の食料品程度であったのが残業・宿泊用なのか生活用品が多数取り揃えられ、出張用品や図書も充実した。しかし協同組合の代表達で検討する事となっていた部分は外部から見えないように壁で囲われており、入り口は別になっており更に『女性専用』の張り紙がされていた。

入ってみると驚いた事に、先に子丹御嬢様らに連れて行かれた衣料店でみたようないかがわしい下着等が所狭しと展示されていた。また書籍も置かれており、どのようなものかと『今売れてます』と札の立っている平積みの本を手にとってみた。

 

『「阿蘇阿蘇特別号」 一刀様御意匠 展示会では発表出来ないっ!官能下着特集』編:展示会実行委員会

『「まあまあ眼鏡どうぞ」 外して良し、かけて良し!理知の光と背徳感で魅了する』監修:三国眼鏡党

『「はじめての被虐プレイ」被虐プレイは痛くも怖くもありません。これは一刀様との愛のかたちなのです』著:荀攸 公達

 

…頭痛を起こしていたところ、後方から遠慮ない様子で扉が開かれて入ってきた人物が居たので誰かと思ったら孫尚香様だった。すたすたと勘定所へ行かれ、『出来上がったって聞いたから取りに来たんだけど』と勘定担当の女性に申し出られると、慣れた様子で試着室と書かれた小部屋へと入って行かれた。

孫尚香様は少なくとも叔達よりは年下だと聞いていたがこのような所へ日常的に出入りされているのだろうかと唖然としていたが、

「ねえこれ外し方分からないんだけど!」と言いながら出てきた姿は明らかに透けてしまっている下着のみで、しかも胸の方は下半分しかなく先端が完全に見えてしまっているもので呆然と見つめてしまった。

暫く店員と外し方について話されていたが、私がじろじろと見てしまっていたのに気づかれたようで、なに見てんのよあんたと言われてしまい、慌てて失礼しましたと謝って他のものを物色した。

みてみると先の陳琳殿の小説が全巻置かれていたり、どうやらこの店はそういった事に特化した店舗であるようだ。孫尚香様は店員に包みますかと聞かれていたが、今夜これから使うからこのままで良いと言って服を着られて出て行かれた後に間をおいて出て行こうとしたところ、顔良殿が入ってこられた。

大人しく慎みもある方だと思っていた為意外ではあったが、私に気づかれてあ、どうもと会釈されるとこれまた慣れた様子で勘定所へ行き、取りに来ましたと言われて勘定台にごろごろといくつも置かれたものは黒革に金具がじゃらじゃらとついたもので、明らかにそういう用途としか思えないものであった。店員に試着されますならお手伝い致しますがと聞かれ、平然とじゃあお願いしますと言って試着室へ入っていったのを見はからって、逃げるように店から出た。

 

…この国は優秀な方々で支えられていると思っているが、たまにひどく不安になる事がある。

 

12月8日

後宮の運営予行が一刀様、各国王様の内覧と合わせて三日間実施されたが、概ね順調であった。

曹操様は最終日に内覧され、また何故か当日警備部でない妙才様が警備に当たられた。凪が受けた報告によると「警備上も防音上も問題無いが、使用した小道具・衣料の管理について鍵が掛かるよう変更されたい」との事だ。

 

今後は一刀様はこちらに住居を移され、重臣の方々の内覧及び個人備品の搬入後に正式開庁となるが、今後の運営は所管課に任せられそうだ。

 

12月9日

定時になると公達様宛てに荷物が届けられた。公達様は届けられた妙に大きな布袋を一瞥するとにやりと笑われ、玲紗殿と藤香殿に会議室へ運ぶよう指示された。

二人は何か察するところがあったようで瞳を爛々と輝かせながら袋を背負い、がちゃがちゃと金属が当たるような音を立てながら三人で会議室へと消えていった。

子丹御嬢様にあれはなんでしょうかと伺うと、『あの二人が公達様の御伽に興味津々なもんだから公達様御機嫌になっちゃって、「道具を見せて説明してやる」ですって…困ったものね』と士載の耳を塞ぎながら眉を顰められていた。

勤務時間外ではあるのだが、庁内であまりに明け透けな話は避けて戴きたいものだが。

 

12月10日

廊下で諸葛亮殿と行き会った為、会釈しお歳暮のお礼を申し上げようとたところ

「ひ…!ご、ごめんなしゃ…!」

と顔を引き攣らせて逃げるように行かれてしまった。

特に諸葛亮殿に無礼を働いた記憶もされた覚えも無いが、お送りしたお歳暮のお返しがお気に召さなかったのだろうか?

今度元直にそれとなく聞いてみよう。

 

12月11日

公達様が休暇をとられた。

御伽の翌日にたまに休まれる他は殆ど休暇を取られないので、そういうことでしょうかと御嬢様に伺ったところ士載の耳を塞ぎながら「昨日例の券を行使して、新後宮に設置した設備全部試すって言ってたからそういうことじゃないかしら?」と生温かい笑顔で答えられた。

 

12月12日

新後宮の清掃費は三国出資の共益費から支払われる筈だが、明後日に一刀様と内覧予定の馬超殿宛てに個人負担での清掃を求める文書が新後宮の管理部署から送られてきた。

理由が記載されていなかった為元直に聞いてみたが、「ああ…最近は治ったらしいって聞いてるんだけどね。蒲公英に確認しておくけど、必要に応じて立ち合わせて払わせるわ」と理由は答えずに処置のみを答えた。

…まあ、それで馬超殿と管理側が納得すれば構わないのだが。

 

12月13日

昨朝、いつも通り出勤したところ一刀様が職場に来られて「そろそろ出発するよ」と仰った。

何の事か分からず伺ってみると、今日が第二回一刀様御巡幸の初日で今から私と河内まで御旅行だと言う。

そもそも御巡幸の初日は明日で、私は頴川からの帰りの警備補助でまだ先であったはずなのでそのような御予定は存じあげず何かの御間違いではないでしょうかと申し上げた。すると御嬢様と公達様が連絡は受けており部の掲示板に貼ってあると言われたので見てみると、既定の行程表の一日前に「仲達さんと河内へ(一泊) 翌朝琉流と陳留へ」と書き足されており、一刀様の印も捺されていた。

毎朝掲示板は確認するようにしており見落とす筈がない、それにそのような幸せな事があって良いのかと思いながらも失念していた事を御詫びし、また何も用意出来ていない為御時間を戴ける様申し上げると、士載から「士季より預かっていた」と言ってと旅行用具一式を差し出された為、そのまま一刀様に肩を抱かれて出発出来てしまった。

 

今思えば色々出来過ぎていた、恐らくは一刀様の御配慮に公達様、御嬢様らが御協力下さったのだろう。

今朝は遅めの時間に凪が馬車でやって来て、「あの…私の経験上、今日は足腰立たないでしょうし、その…意識しちゃって当分馬にも乗れないと思いましたので、迎えに来ました」と言われた。その通り以外の何物でもなく、凪にお礼を言って馬車内で寝こけるのがやっとだった。

 

逆に昼間眠ってしまった所為で、一刀様と御話した事、して頂いた事やさせて頂いた事を思い出し、幸福に胸が極まってしまって眠れそうにない。

 

12月14日

眠い目を擦りながら出勤すると、朝礼で今夜は仲達の出張報告会を行うと言われた。

寝耳に水だった為そのような御予定は聞いておりませんでしたがと申し上げると「じゃああんた休暇届出した記憶ある?」と聞かれた。しかしあの時は、慌てており何か書類に署名はしたがそれが休暇届だったか覚えていなかった為そう答えると、「出張届は出てるんだけど。業務なら報告が必要よね」と言ってにやりと笑われた。見せられた出張届の出張内容には、御嬢様の字で一刀様との御旅行の御供と、本日その報告会を例の酒楼で行う旨が私の署名付きで書かれていた。

 

…酒席で女同士で、服の上からとは言え「この幸せおっぱいめー!」と言って胸を掴むのは、いつか一刀様が言われていた「せくはら」と言うものなのではないかと思う。

 


 
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