No.583047

IS インフィニット・ストラトス BREAKERS 第五話 模擬戦終了。そして――。

raludoさん

IS インフィニット・ストラトス BREAKERS 第五話 模擬戦終了。そして――。

2013-06-03 01:17:40 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1659   閲覧ユーザー数:1611

「なあ、千冬姉。なんで俺負けたんだ?」

 

俺――織斑一夏はセシリアとの戦闘を終え、ピットに戻ってきていた。そして、千冬姉を見つけるなり開口一番にそう尋ねた。

 

なぜなら先ほどの戦闘の結果に納得がいかなかったからだ。あと少しのところでセシリアを倒せたのに。

 

あのアビリティー、零落白夜のことは昔、一度だけこっそり見た千冬姉のモンドグロッソでの決勝の実況映像である程度把握していた。

 

零落白夜――俺の知識が正しいなら、確か触れるだけで相手のシールドエネルギーを消し去る最強のワンオフ・アビリティーだったはずなんだけど。

 

そう、その認識は間違ってはいない。触れれば即エネルギーを消滅させられる。接近戦をする身としてはとんでもない代物だ。しかし、やはり相応の代償があることをこの少年は分かっていなかった。

 

そして彼の姉がそれに答える。

 

「それはお前が〝バリアー無効化攻撃〟を使用したからだ」

 

千冬姉の答えは簡潔だった。

 

「いや、バリアー無効化のアビリティーを使ったのは分かっているんだ。俺が聞きたいのはなぜいきなりシールドエネルギーがなくなったのかで――」

 

俺は要領の得ない答えに反論するが、

 

「はあ、馬鹿者。ワンオフ・アビリティーのメリット、デメリット位きちんと把握しておけ」

 

「デメリット?」

 

俺は訳が分からず聞き返す。

 

「そうだ。まず、お前のワンオフ・アビリティーについて整理するぞ。零落白夜――お前の知っている通りバリアー無効化攻撃を行うことができる。相手のシールドエネルギーに関係なく直接本体にダメージを与えることができる。その場合どうなる?篠ノ之」

 

千冬姉は隣にいた箒に問題を投げかけた。

 

「は、はいっ。ISの絶対防御が働き大幅にシールドエネルギーを削ぐことができます」

 

「その通りだ」

 

「ああ、それは俺もわかってる」

 

「では、デメリットだがこのアビリティーを使用するには膨大なエネルギーを必要とする。しかも、普通のエネルギー区分ではなく、シールドエネルギー区分だということだ」

 

「シールドエネルギー区分?」

 

「そうだ。基本的にスラスターやエネルギー兵器に使われるエネルギーはシールドエネルギーではなく、駆動系のエネルギーだ。まあ、瞬時加速等は別だがな」

 

千冬姉はそのまま続ける。

 

「だが、零落白夜を振るうにはシールドエネルギを転化しなければならない。いわば諸刃の剣だ」

 

あー、納得した、つまり――。

 

「あの時、セシリアに斬りかかる前にシールドエネルギーが尽きちゃったってことか」

 

「その通りだ。まあ、次からはしっかりとエネルギー配分を考えるんだな」

 

「はい……」

 

そうか、諸刃の剣か……。ちゃんと考えて使わないとな。

 

「そら、次は黒咲との試合だ。さっさとエネルギー供給に向かえ」

 

そうだった。次は紅牙との試合だった。

 

「今の俺じゃまだあいつには届かない。だけど、やれるだけやってやる」

 

俺はそれを胸に秘め、エネルギー供給に向かった。

 

 

 

 

「さてと、そろそろ行きますかな」

 

一夏達がいたピットの反対側のピット。そこに俺はいた。

 

隣には刀奈がいる。ピットまで見送りについてきてくれた。

 

「ふふ、油断しないでよ?あの子、火事場力は強そうだから」

 

バッと扇子が広げられ、そこには〝油断大敵〟と書かれていた。

 

「ああ、さっきの試合でそのあたりはよくわかったよ」

 

確かに、あの一夏の追い込みは素人じゃなかったからな。

 

そんな、他愛無い話をしていると、控室から瞳を濡らしたセシリアが出てきた。

 

そして、俺たちの前まで来ると、唐突に頭を下げた。

 

「申し訳ありませんでした」

 

俺達はそのあまりの変わりように唖然とする。その間もセシリアは頭を下げ続ける。

 

「何もわかっていなかったのは私の方でした。それなのにあなた方には大変な非礼をいたしてしまいました。本当に申し訳ありませんでした」

 

ただひたすらに自分の過ちを認め頭を下げ続けるセシリア。

 

「……いや、君はちゃんと目を覚ました。それだけで充分だよ」

 

俺は笑いかけながらそうセシリアに語り掛ける。

 

この子はちゃんと自分で間違いに気付けた。それだけで充分だ。

 

「……ありがとうございます。あなたと、そして一夏さんと戦えて本当に良かったですわ」

 

っそう、笑顔で話すセシリア。……この様子ならもう大丈夫そうだな。

 

「どういたしまして。かた、楯無もそれでいいよな」

 

「ええ、まあ紅牙が許すなら私は別に気にしないわよ、セシリアちゃん」

 

そう笑みを返す刀奈。

 

「ありがとうございます。……もしよろしければお名前をお聞かせ願えないでしょうか?」

 

「私?私は更識楯無。この学園の長よ」

 

そう言い、扇子を広げる。そこには〝学園最強〟と記されていた。

 

「え?ええええええっ!?」

 

セシリアが驚愕する。

 

まあ、それも仕方ないだろう。何せ、自分が貶した相手が学園最強だったのだ。驚かないほうがおかしい。

 

「申し訳ありませんっ!そうとは知らず私は――」

 

「ふふ♪もういいのよ。水に流しましょう?」

 

そして刀奈は手を差し出す。

 

それをセシリアはしっかりと握る。

 

「ふふ、これからはお友達ということで♪」

 

「ええ、お願いしますわ」

 

こうして友情が芽生えていくのであった。

 

……なんて馬鹿言ってる場合じゃない。一夏との模擬戦があるんだった。

 

「セシリア、後で一夏にもちゃんと謝っておけよ」

 

「ええ、分かっていますわ」

 

「良し、それならぼちぼち行きますか」

 

そう言い、俺は〝ミスティック・クラッド〟を展開し、纏う。

 

「紅牙、行ってらっしゃい♪」

 

刀奈はそう言いながら俺に近づくと、頬にキスをした。

 

流石の俺も行ってらっしゃいのキスは恥ずかしく、頬を赤らめる。

 

セシリアも顔を赤くし、俯いている。

 

よく見ると、刀奈の頬も若干、朱に染まっている。キスをした本人も照れているのだ。

 

「……行ってきます」

 

俺はそそくさとカタパルトに行き、足を固定。カウントがゼロになると同時に出撃した。

 

え?どうしてそそくさ移動したかって?あのまま刀奈の照れた顔を見ていたら理性の限界だったからさ。俺は悪くない。

 

 

 

 

アリーナ中央に行くと、一夏が〝白式〟を展開し待っていた。

 

「おっ、来たな紅牙」

 

一夏がそう言い、〝雪片弐型〟を両手持ちにし、中段に構える。

 

箒との稽古は効果があったようだな。

 

俺はそう思いながら、右手に〝ミスティックセイバー〟を展開する。自然体で構える。

 

「おう、来てやったよ。……手加減はしないからな」

 

「ああ、全力で来い!」

 

試合開始のカウントが始まる。

 

「零、一応〝ミスティック・クリスタル〟の準備をしておいてくれ。あと〝イグニス〟も」

 

『了解です、マスター。くれぐれも零落白夜には気を付けてくださいね』

 

「分かっているさ」

 

零と話しているとちょうどカウントが一秒になり、……ゼロになった。

 

「「はあっ!」」

 

俺と一夏はカウントがゼロになると同時に斬り込む。

 

ガギンッ!

 

俺のミスティックセイバーと一夏の雪片弐型がぶつかり、火花を散らす。

 

俺は一度間合いを取り、居合いの構えで一夏に接近し、横一閃を放つ。

 

「おわっ!?」

 

一夏は雪片弐型で受けるも、反動で後ろに飛ばされる。

 

「まだまだっ!」

 

俺は斬り込んだ勢いを利用してさらに斬り込む。縦の両断斬りを繰り出し。そのままの勢いで一回転し、踵落としを放つ。

 

「のわっ!?」

 

両断斬りは防いだ一夏だったが、踵落としに反応できずもろに食らって地面に叩き付けられる。

 

そこをさらに追撃。ミスティックセイバーを逆手持ちにし、突き刺すように地面に急降下。

 

一夏はそれをギリギリ避け、カウンターとばかりに雪片弐型を横に振るう。

 

「ちっ」

 

俺は地面に突き刺さったミスティックセイバーを放棄し、急上昇。斬撃を躱す。

 

そして、俺は〝シュナイダーナイフ〟を両手に展開。そして同時に〝セムテック〟をそれらに付着させ、投擲する。

 

一夏はそれを知らずに雪片弐型で弾く。すると――。

 

ドガアアアンッ!!

 

爆発した。

 

もくもくと煙が漂う中、俺は決めに入るため、零に呼びかけた。

 

「零、 イグニスを」

 

『了解です』

 

すると、俺の右手には大型エネルギーライフル〝イグニス〟が握られていた。

 

それを構え、煙の中心へと銃口を向ける。

 

そしてすぐさまトリガーを引いた。

 

イグニスから膨大なエネルギーが発射され、一夏へと向かう。

 

が、いきなり一夏が俺に向かって急加速。そして零落白夜を起動させ、高出力エネルギーを〝斬り裂いた〟。

 

「なっ!?」

 

俺は唖然とした。イグニスは高火力のエネルギーライフルだ。それを零落白夜があるからと言って、刀一本で斬り裂いたのだ。ただのエネルギー弾を弾くのとはわけが違う。

 

エネルギー弾を斬り裂いた一夏はそのまま、俺に斬りかかってくる。

 

「まったく、お前には毎回驚かされるよ!」

 

俺はすぐさまシュナイダーナイフを両手に展開。それを交差させ、雪片弐型を受ける。

 

バチバチッ!!

 

打ち合うと紫電が奔り、火花が盛大に散る。

 

しかし、さすがにナイフでは分が悪く、押され始める。

 

「くそ、あれの一撃をもらうわけにはいかない!」

 

俺は振りかぶってくる雪片弐型を蹴り上げ、またもやナイフを投擲。

 

蹴り上げられた衝撃で隙ができてしまった一夏は投擲したナイフに直撃し、少なくないダメージを受け、大きな隙を作る。

 

俺はそれを見逃さなかった。

「零!ミスティック・クリスタル起動!出力は四十%、形状はナックル!」

 

『了解!ミスティック・クリスタル起動。出力は四十%、形状はナックルで形成します』

 

零の呼称が終わると、両腕の赤いクリスタルが輝き、そこからビームのナックルが形成された。

 

「うおおおおおっ!」

 

俺はスラスターを最大にし、一夏に迫る。

 

「うわあああっ!?」

 

一夏の悲鳴が聞こえるが知ったこっちゃない!

 

俺は一夏に肉薄すると右ストレートを繰り出し、そのまま一夏を壁まで押していく。

 

「くそっ!」

 

一夏はせめてもの抵抗として零落白夜を振るってくる。

 

だが、どんな凶悪な武器でも、当たらなければ意味がない!

 

俺は左手のナックルで一夏の雪片弐型を振るっている右手を殴りつけ雪片弐型を落とさせる。

 

「あっ!」

 

しまったとばかりに顔を歪ませる一夏。

 

――取った!!

 

俺は一夏を壁に殴りつけ、渾身のアッパーを放つ。

 

それが決め手となり、一夏のシールドエネルギーはゼロ。試合終了のブザーが鳴り響く。

 

『勝者、黒咲紅牙』

 

そのアナウンスとともに、試合は終わった。

 

 

 

 

ピットに戻ると、刀奈が迎えてくれた。

 

「お帰りなさい」

 

「ああ、ただいま」

 

ピットに降り立つと、俺はミスティック・クラッドを解除した。

 

「いやー、一瞬ヒヤッとした。まさか零落白夜でイグニスのエネルギー弾を斬り裂かれるとは思ってなかった」

 

俺がその場に座り込むと刀奈も隣に座る。

 

「確かに。あれには私も驚いたわ。彼、ISに触れてまだ二、三時間でしょ?それであの操縦は見事ね」

 

そう、一夏の動きはたまに素人とは思えないのだ。

 

戦い方や、戦略などは素人だが、時折見せる、〝技〟はとても素人にできることじゃない。

 

「このまま、訓練を重ねたら、下手したら追い抜かされるな、俺」

 

「ふふ、大丈夫よ。紅牙なら」

 

刀奈に笑みを向けられる。

 

「まあ、そう願いたいね」

 

俺は立ち上がろうとすると、刀奈に手を掴まれる。

 

「どした?」

 

俺が問うと、妙にモジモジしながら、

 

「その、ね。紅牙ってもしかして〝楯無〟って呼ぶのやだ?」

 

「え?」

 

「だって、いつも言いにくそうにしてるし」

 

確かに、どうしても癖で刀奈って呼びそうにはなる。

 

「その、私が言っておいてなんだけど、嫌ならみんなの前でも刀奈でいいわよ?」

 

「嫌ってわけじゃないんだが、やっぱりちゃんとお前の名前を呼びたいってのはあるかな」

 

「そ、そう、それならこれからはどこにいても刀奈でいいわよ」

 

「了解。それじゃ刀奈、行こうぜ」

 

俺は刀奈の手を軽く引き、立たせる。

 

すると、刀奈が思い出したように、

 

「あ、そういえば紅牙、今日から私と相部屋だから♪」

 

爆弾発言をなさった。

 

 

 

 

日本某所。

 

「うう~、これは不味いよー。どうしよう……」

 

薄暗い研究室にその女性は佇んでいた。

 

艶やかな紫のロングヘアー、豊満な体を押し付けるように白と青のワンピースを身に着け、さらには頭に機械仕掛けのうさみみまで身に着けていた。

 

そう、篠ノ之束である。

 

しかし、彼女はいつものはつらつとした元気はなく、おそらく親友でも見たことのない焦った表情をしていた。

 

「まずい、まずいよ……。どうしてここがばれるのさ。束さんはミスなんかしていないんだよ。まさか、私を超えるハッカー?いや、そんなの存在するはずがない……」

 

せわしなくキーボードを叩き、状況を打開しようと試みる。が、どのようにしても、打開することは不可能だった。

 

「このままじゃ、ここが襲撃される。いつもならすたこらさっさーって逃げられるんだけど、今は〝あれ〟があるから逃げられない。……一番使いたくなかった方法だけど、仕方ない」

 

そう、束は一応打開策は持っていた。しかし、それは〝彼〟を危険に晒すことになる。それをどうしても避けたかった束だが、これしか方法がない以上、仕方ない。

 

「ごめんね、コウ。本当にごめんね」

 

束はそう言いながら携帯端末を取り出し、ある番号にかける。

 

『もしもし、束さん?』

 

「コウ!助けてっ!」

 

 

 

 

あとがき

 

ISのエネルギー区分についてはこのような設定にさせてもらいました。あと、束さんですが、少し別人です。なので、こんなの束さんじゃないという方はごめんなさい。

 

 

それでは次回でお会いしましょう。

 

 


 
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