【今回の主な登場人物】
白雪 … 沖縄に来た雪女。風乃と一緒に暮らしている。気が強くて、ツッコミ役。
風乃 … 白雪と一緒に暮らしている高校生の女の子。ボケ役。
お父さん … 風乃の父親。名前を次郎と言う。ちょっとダメな人。
お母さん … 風乃の母親。名前を風子と言う。いろいろダメな人。
【服のサイズが合わない】
「なあ、風乃。近くに服を
取り扱ってる店はないか?」
「あるけど…どうしたの?」
「服を買いたいのだ。
今はお前の服を借りているが、
いささか小さい。
ぎゅうぎゅうしててキュークツだ」
「えー?
白雪が太ったんじゃない?」
風乃はにやけ顔で、白雪の腹をさすった。
「俺は太ってなんかいない!
触るな!」
白雪は、風乃の手をはらった。
「ほんとぉ~?」
「むっ…なんだその顔は。
嘘だと思うのなら、俺をおぶってみろ!
軽いはずだ!」
「いや、軽くはないと思う…」
身長170cm以上はあると思われる白雪の体を、風乃はまじまじと見つめた。
自分のお父さんと同じか、それ以上はありそうな身長だ。軽くはなさそうな気がした。
【白雪をおんぶしよう】
「もういい。風乃がおぶってくれないなら、
お義父さんにおぶってもらう。
そして、俺が軽いことを証明してもらう」
「え!? ちょっと、白雪!」
白雪は、風乃の部屋を出て行くと、
風乃のお父さんの部屋に乗り込んだ。
「お義父さーん!」
「なんだい、白雪」
白雪に呼ばれ、お父さんは振り向く。
お父さんの名前は「次郎」と言い、白雪からは「お義父さん」と呼ばれている。
「俺をおぶってくれ」
「は?」
「俺をおぶってくれ、と言っているのだ。
だめか?」
「だめなわけじゃないけど…
どうしてだい?」
「俺が軽いということを、
風乃に見せつけてやりたいのだ!
いいから、おんぶさせろ!」
白雪は、次郎に無理やりおぶさった。
「あ、ああ、ちょっと、白雪!
そんなところに乗ったら…」
「あいたっ!」
白雪は、天井に頭をぶつけた。
次郎の身長(170cm台)と、白雪の身長(170cm以上)を足せば
天井に頭をぶつけるのは自然なことである。
「ほら、言わんこっちゃない。
天井に頭をぶつけたじゃないか。
人におぶさるのは危険だから、やめなさい」
「うう、でも降りない!」
白雪は悔しそうな表情だ。
次郎におぶさったまま、少し頭を低くし、天井に頭をぶつけないようにする。
右手でたんこぶをおさえながら。
【夫と雪女の行為が、妻に見られる】
白雪
「お義父さん、どうだ? 俺は軽いか?」
次郎
「軽いよ。
すごく背負いやすいよ、白雪は」
白雪
「ははは、そう言ってくれると嬉しいよ。
風乃が俺のことを太った、って言うから
気になってな」
次郎
「そんなことないって。
白雪は全然細いよ」
白雪
「お義父さん、最高だ!」
よほど嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべる白雪。
次郎
「白雪も…最高だよ!(いろんな意味で)」
次郎は、白雪の脚やら何やら、
いろいろとやわらかいものが当たっていて、嬉しそうな表情だった。
今、次郎は幸福まっさかりである。
しかし、その幸福も一瞬のうちに崩れ去る。
妻が、次郎の部屋に入ってきたからだ。
「ねぇ、次郎。庭で変なものを見つけたんだけど…」
雪女のやわらかな脚につつまれた夫の姿を見て、がくぜんとする。
「次郎、何…してるの?」
次郎の妻は、信じられないような表情で、次郎を問いただす。
次郎
「ふ…風子!?
いや、これはだな…!」
次郎は、白雪を背中におぶったまま、妻・風子に弁解しようとする。
風乃
(うわぁ、修羅場だよ修羅場。
って言うか、まず白雪を背中から降ろそうよ、お父さん!)
風乃は、部屋の外から、次郎と風子の修羅場をのぞいていた。
風子
「あんなに楽しそうに、白雪をおぶっていて…
どうして! どうしてなの!?
次郎!」
次郎
「…すまない、風子」
白雪をおぶったまま謝罪する次郎。
よほど白雪の脚の感触を気に入っているのだろうか。
風子
「ねぇ、次郎…
ちょっといいかしら?」
次郎
「なんだい、風子」
離婚届が出るか、包丁が出るか。
風乃はドキドキしながら、事のなりゆきを見守る。
風子
「次郎ばっかりずるい!
私も白雪をおんぶしたーい!
早く貸して! 貸して!」
次郎
「だめだ! 白雪は僕がずっとおぶっているんだ!」
「はぁ!?」と風乃はずっこけた。
離婚届も包丁も出なかった。出たのは、白雪への愛情だけ。
このあと、次郎と風子が白雪を奪い合い、
別の意味で修羅場になったという。
<おしまい>
【あとがき】
白雪の身長は、普通の女性よりも、けっこう高めに設定しています。
でかいです。
白雪のでかい図体から繰り出されるパンチに、風乃は毎回耐えているわけです。すごいですね。
おしまい。
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雪の降らない沖縄県で、雪女が活躍するコメディ作品。
南の島の雪女、第12話です。(基本、1話完結)