No.575561

司馬日記 支援の五

くらげさん

今回は気になるあの子で頑張りました。

2013-05-12 15:17:00 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:13686   閲覧ユーザー数:7637

どうも私はマイナー萌えらしいです。あと星さんが大変でした。

とある酒屋の前で、モジモジとしながら立ち尽くしている鄧艾さん。

 

(ど、どう、どうしよう………勢いお誘いに乗っちゃったけど、でも断るだなんて失礼極まりないし)

 

友人と食事に行ったり、お酒を飲んだりという事も、最近はようやく楽しめる様になった。

それもこれも元を正せば田舎者で打たれ弱く、教養も品性も無かった自分を取り立ててくれた、この治世に無くてはならぬもう一人の皇帝にして大陸の覇者である一刀(注:鄧艾主観=仲達主観)のおかげなのだが、今日は相手が凄かった。

 

(とに、とにかく、しし失礼の無い様にしないと………)

 

心臓のドックンドックンという音がヤケに耳に響いて、それでまたアワアワと狼狽えてしまう鄧艾。

それもその筈、なんとお誘いの相手は三国合わせても片手の指に入るであろう英雄、趙子龍からだった。

 

「おや、待たせてしまったか」

「!?」

「落ち着け」

「ほ、ほん、本日は、おさ、お誘い戴きましてて!」

「だから落ち着けと言うのに……っと、生来の物だったな、いやすまん」

「あわ、あわあわわわわ」

 

やれやれ。と肩を竦めて星は鄧艾の背を押して酒屋に入ると、寄ってきた店員に何か一言二言告げると、二階にある個室へ入って行く。

通された部屋を鄧艾はキョロキョロとつい見回してしまい、ヤケに壁が綺麗な事に気が付いた。ちなみにとある二匹の暴力わんこが暴れた部屋。

星はそんな鄧艾を急かす事無く、椅子を引いて着席を進めると向かいに座って菜譜を鄧艾に向かって広げてやる。

 

「さて、何でも好きな物を頼んでいいぞ。代金は私が全て持とう」

「そん、そんな畏れ多い!」

「いやいや、実を言えば主から頼まれておるのだよ。鄧艾を気にかけてやってはもらえぬか。とな。 本来ならば主も来る算段だったが、何分御多忙故」

(か、一刀様がいらっしゃったら……き、きっと、口移しでお酒をとか、口移しでお料理を食べて戴いてとか、それでそのまま……」

「かえってこーい」

「も、申し訳ありません!」

「いやそこまで畏まらずとも良いが……ま、適当に頼むとしようか」

 

誰か。と星が声を通すと直ぐに店員が部屋に現れ、適当な料理と多量の酒を注文した。

幾度か鄧艾に聞いてはみたが、とにかく畏まってしまうので星も苦笑しながら注文を打ち切った。

直ぐに酒は運ばれ、星は鄧艾に注いでやると乾杯。と杯を合わせ鳴らす。

 

「んー。中々良い酒だ」

「は、はい。美味しいです」

「いける口か?」

「そ、そこまでは………」

「無理に合わせずとも良いぞ。こう見えて酒豪だ」

 

存じております。とは流石に言えない鄧艾はあはは。と笑い、しかし飲みかけの杯を台に置くのは果たして気を悪くされないか。と兎に角気を回してしまう。

 

「急な呼び立てで悪かったな」

「と、とんでも、なない、です」

「ふむ。貴殿の性格では聞きたくとも聞けぬか。呼び出した要件は」

 

どきん。として思わず鄧艾は視線を正して目を丸くしてしまう。

 

(やれやれ……主の頼み故一肌脱いでは見たものの、これは骨が折れる)

「あ、あの………なにか、わわ、私が、お気に触る様な事を?」

「そういう訳でもないのだが、きつい現実だが、確かにお主をやっかんでいる者もいるな」

「た、大変、しつ、失礼を!」

「いやお主が悪い訳でもないのだが……全く恋心とは厄介な物よなぁ」

 

へ?と鄧艾が抜けた声を出すと同時に扉が開き、料理が運ばれてきた。

 

「ま、とりあえずは食べるとしようか」

 

 

非常に静かな食卓だった。

星は下品にならない程度に話題を変えつつ話掛けるのだが、返ってくる返事ははいとかええとか、その程度の単語だけだった。

若干イラついてきた星だったが、瞼を閉じれば手を合わせて頼み込んできた一刀の顔が浮かんで来る。

 

(ええぃ、愛とは本当に厄介だ)

「あ、あの、趙雲様」

「ん?」

「わ、私が、その……」

「あぁ。 完結に言えば一部の者に“羨ましがられている”というだけの事だが、相手が厄介でなぁ」

「わ、私が、でしょうか?一体、どな、どなたが?」

「恋。 呂布と言った方が分かり易いか?蜀で言えば雛里や焔耶もそうだな。 お主の所で言えば華琳殿、秋蘭、流琉。凪や桐花も怪しいな」

「そ、そんなに大勢ですか?!」

「一番羨んでいるのは蓮華殿と小蓮殿か。一番が二人いるというのも可笑しな話だが」

 

鄧艾の顔色が明らかに変わったが、酒に酔ったのではない事は確かだ。

恐らく頭の中はどうしようで一杯なのだろうなぁと星は思いながら、紫苑辺りでも連れてくるべきだったか。と思案する。

 

「一つ理解しておいて欲しいのだが、別にお主を嫌っている。という訳ではないぞ。そこは間違えるな」

「は、はい………」

「出会いなど最早どうにもならんだろうに。なぁ?」

「で、出会い、ですか?」

「うむ。 元直から聞いたのだが、お主が泣いている所を主が見つけ慰められ、熱心に口説かれ。という出会いだったのであろう?」

「は、はい。 あ、でも、その前に一度、勉強会で。あ、でも、一刀様は私の事などは」

「案ずるな、覚えておられるよ。 それゆえますます惜しくなったのだ。と言っておられたのだが、それもあってなぁ」

「そ、それ、それは本当でしょうか?!」

 

今日一番の笑顔を見せた鄧艾に星も笑顔で頷いてやると、照れた様に、しかし嬉しい様に顔を伏せて喜んでいる。

ようやく取っ掛りが出来たな。と星は少し肩の力を抜いて、酒に手を伸ばす。

 

「あの、それで何故わた、私が………」

「ん? 打ち拉がれ、膝を抱えて泣いている所に颯爽と現れ、『君が必要なんだ』と言って涙を止めて、自分を肯定してくれる。

客観的に見れば物語の様な出会いであろう?」

「そ、そんな事は……それ、それでしたら、皆様の方が……」

「いやいや。我ら古参陣も劇的な物語こそあれど、出会いと言えば平々凡々。特に蓮華殿はお主の様な、云わば“運命的”とも言える臭い展開を未だに夢見てる節があってな」

 

まぁ云わば無いもの強請りだよ。と言う星の言葉に、鄧艾はどう反応していいか解らず、しかし自分が褒められ?、羨ましいと思われているという事は解ったのでお酒に手をつい伸ばしてしまう。

滅多にやらないのだが杯をくいっと一気に傾けて飲んでいる所に、声がした。

 

「良かった、間に合ったかな」

「おや、主ではありませんか」

「?1>W>DQdqdw???」

 

げほっ!げほっ!と咳き込む鄧艾を見て、あータイミング悪かったかなー。と一刀は零しながらも、鄧艾に近づいて背中を摩ってやる。

 

「ごめんね、大丈夫?」

「げほっ!ずびばぜん……ごほっ!」

「後は私にお任せくだされ。 さ、こちらに」

「あー、その方が良いかな」

「ほら、水だ。 政務は片付けられたので?」

 

星に貰った水をコクコクと飲みながら、何とか涙目で一刀を見ると、先程まで自分の背中を摩っていた星まで一緒に見えた。

星は自分の座っていた席を一刀の譲ると、一刀から上着を預かって壁掛けに吊るし、自分の懐から金の杯を出して新しい酒の封を切って注ぐ。

 

「片付いたっていうのかな………後は任せて良いって言われたんでお願いしてきたんだけどさ」

「確か、稟と朱里が相談役だったと記憶しておりますが」

 

一刀が口を酒で湿らせている間に、星は食台に乗っている料理の箸を付けていない部分から料理を取り分けると一刀に差し出す。

 

「あんがと。 まぁ元々全部俺にやらせるつもりは無かったらしいよ。 珍しい案件だったから、良い機会だったんだって」

「料理が少ないですな。 しばしお待ちを」

「あー、良いよ良いよ。直ぐ来るから」

 

水を飲み干し、ふう。と一息付けた鄧艾だったが、扉の外から「おーい!あけんかー!」という芯の入った声にまた背筋がビクン!となる。

 

「……祭殿ですか?」

「ん? あぁ、出るトコ見つかってね。 引き摺り込まれそうになったんだけどこっち優先させてもらったら付いてきちゃった」

「おーい!北郷!」

 

鄧艾は知らずの内に左に身体を傾けていた。

だって右側を通って扉を開けに行った星が明らかに不機嫌になっているんだもの。仕方ない。

 

「さっさと……おや星ではないか」

「あまり大きな声を出すな」

「何を不貞腐れておるんじゃ?」

「メンマが切れたのだ!」

「そりゃ一大事じゃ」

 

調達してくる。と星は扉の外に出て行き、変わって祭が湯気の立つ料理を両手に持って入ってくる。

 

「おや、お主が鄧艾かい?」

「は、はひ………」

「なんじゃその気の抜けた返事は」

「祭さん、それぐらいにしといて」

「お主はさっさと台の上を片付けいよ。女を待たせるでないと教えたじゃろうに」

「酔っ払ってなくてこれだもんなぁ……」

「か、一刀様私が!」

 

いーよいーよー。と一刀は箸を咥えたまま大皿を片付け始め、それを見かねた祭は右手に載せた皿を置くと同時に箸を抜き取る。

 

「何時までたっても行儀の悪い小僧じゃの」

「なんだろう、鄧艾が見ていると気恥かしさが半端ない」

「ほれ、口開けぃ」

「いや流石にあむっ?!」

「誰が見とろうと、ワシにしてみりゃヒヨっ子のままじゃ」

 

んー、情けない。と言いながらも一刀は祭に食べさせられた料理を咀嚼し、祭は左手の皿も置いて一刀の左隣の椅子に腰掛ける。

 

「今日はワシを振ってコヤツと懇ろか?」

「ね、ねん!ねんごろ………」

「ほ。こりゃ初い娘じゃのぉ」

「別にそういうのじゃないって。 俺が無理言って中央に引き止めちゃったから」

「あぁ、では例の」

 

祭の値踏みする視線に思わず縮こまってしまった鄧艾だが、最近はどう?と一刀に声を掛けられると、考えるより先に言葉が出るのは仲達の教育の賜物だろうか。

 

「と、とう、鄧艾と申します。お噂は予々!」

「おう。ワシも色々聞いとるぞ」

「祭さんはあんまり口煩くないから、そんなに緊張しなくてもいいよ?」

「そ、そう言われましても、黄蓋様にお目通りするのは初めてなので……」

 

ビビられてら。と一刀が祭に向かってそう言えば、祭はニッコリ笑って頬っぺたをぎにゅ~っと抓り上げる。

何て暴挙を!と鄧艾は血の気がサーッと引いていくのを感じたが、仲達さんじゃあるまいし、祭に向かって小言を挟む勇気は無かった。

 

「いふぁい」

「ワシに口答えとは随分偉くなったのぅ?」

「口答えはしてないと思うよ?」

「昔はもう少し可愛気もあったのに、育て方を間違えたかもしれん」

「あ、あの、黄蓋様はそんなに前から、一刀様と?」

「あーそっか。 統一後に知り合った子とかはそういう認識になるか」

「付き合いで言えばワシは古い方じゃの」

 

昔話に花が咲く直前で、扉が開いて星がメンマの入ったツボを抱えて返ってきた。

自分が座ろうとしていた椅子に祭が座っている事に眉を釣り上げそうになるが、何とか堪えてその反対側、鄧艾の右側の椅子を引いて座る。

 

「失礼しました。 なんの話でしたかな?」

「祭さんは重臣の中でも付き合いがかなり長いけど、鄧艾とかはその辺りが結構アヤフヤなのかなって話」

「あぁ成程。 祭殿は一昔前からの将軍ですからな」

 

岡目八目。鄧艾は祭の視線が一刀の前に置かれた、中身が空になった金の杯に一瞬向けられたのが解った。

恐らく、祭は一刀に酒を注ごうとしたのだろう、酒瓶に手を伸ばしたが、祭が腕を動かした瞬間にそれよりも早く星が動いた。

 

「空ですよ、主?」

「あんまり飲ませ過ぎないでよ」

「心得ておりますよ」

「お前はちっとも酒量が増えんのぉ。 男ならワシ程度潰せんでなんとするか」

「祭さんに飲み比べで勝てたら負ける事は無くなると思うよ」

「つまらんのぅ。 鄧艾、お主はどうじゃ、イケる口か?」

「うぇ?! わ、私はそん、そんなには」

 

祭は両手を振って否定する鄧艾の横まで椅子を滑らせて移動すると、酒を注いでやる。

どぷ~ん。という効果音が聞こえてきそうなぐらい豊かな胸を横目で見ながら、伯達様とどちらが大きいんだろう。とちょっと現実逃避しだした。

 

「祭さん。 ホントに飲ませすぎちゃダメだよ」

「解っておるわい!」

「ホントに解ってんのかなぁ……」

「まぁまぁ。 此処は祭殿のお手並みを拝見させてもらうとしましょう」

 

大好物のメンマを食べながら、しかし注意の殆ど全てを一刀に向ける星。

視線の動きで何を食べようとしているのか解るのだろう。この後一刀が料理を取る事は全く無く、星がその都度取り皿に料理を取り分けては酒を注ぐ。

 

「やれやれ。 鄧艾よ、どう思う?」

「な、何がでしょうか?」

「アレじゃよ。 ワシが横から居らん様になった途端にニコニコと上機嫌じゃろうが」

「は、はぁ……そう、なのでしょうか」

「……あぁ、そういやお主の里親はアレじゃったな」

 

何故か、何故か遠い目で彼方を見る祭に何と声を掛ければ良いのか解らず、鄧艾は一刀の邪魔にならない程度に料理を食べ、酒を飲みながら一刀と星を観察してみる。

 

「星とも出会ったのは早かったけど、一緒に行動する様になったのは少し後からだったよな」

「そうでしたな。 あの当時は引き止められず、随分寂しい思いをした物です」

「あ、それ言う?」

「冗談ですよ。 今こうしていられるのですから、必要な別れだったという事でしょう」

(うわーいいなー……一刀様と趙雲様、御夫婦みたい。 実際そうなんだけど)

「あ、そうだ。 鄧艾?」

「は、はい!」

「朱里―――ええっと、諸葛亮ね。 姜維と仲良くしてくれてありがとうってさ。 一度お礼がしたいって言ってたよ」

「も、勿体無いお言葉です!」

「星、頼んどいていいかな?」

「お任せを」

「祭さーん。これおかわりー」

「やれやれ」

 

 

飲み会は結構遅くまで続き、まぁ三人は美味しくいただかれ、その翌日。

 

「帰ったか」

「お、おお、遅くなりまして、もう、申し訳ありません」

「いや、その様な事で謝罪する必要は無い。 汗を流して早く寝る事だ」

 

司馬家に帰らずそのまま出勤し、仕事を終わらせようやく帰宅した鄧艾は仲達の自室まで帰宅の挨拶を告げに行った。

彼女は机に向かって書物をしながら鄧艾に声を掛けていたが、ふと気になった事がありそれを聞いてみた。

 

「確か、星殿と交流を深めたのだったか。 彼女は酒豪との事だが、変に飲まされ過ぎなかったか?」

「は、はい。 か、一刀様が「?!」お、おい、おいでに、なったので………あの、すみません………」

 

すげぇ。ホントに首だけで真後ろ向いた。

思わず謝ってしまった鄧艾だったが、射殺す様な視線を向けられたら仕方ないと思うんだ。

 

「そうか。一刀様がいらっしゃったのか。それは良かったではないか。僥倖という物だ」

 

首を捻ったまま喋るのは苦しくはないのだろうか。

 

「と、所でだ。 その、昨日、だな。あの、その、帰って来なかったと言う、事はだぞ? あの、その……ご、御寵愛、戴いたという事か?」

 

あれ、吃りって伝染る物だっけ。

 

「いやそのだな?! 決して無理に聞き出そうとしているのではなくてだな? しかし我らは一刀様に喜んで戴く為に細心の注意を払うべきだ。そうだろう?」

「は、はい!勿論です!」

「であれば、だ。 その、どの様な奉仕を行って、その際に一刀様がどの様に喜ばれたかは非常に重要な情報であると私は思う訳だ!」

「す、すみません……その、私は、可愛がって戴くだけで、その、御奉仕は黄蓋様と趙雲様が……」

「構わん!続けろ!」

「か、畏まりました!!」

 

駄目だこの師弟、早く何とかしないと………

あとがき。

 

鄧艾にチャレンジ。あと良妻星さんが難しい事。

色々確認はしたのですが、鄧艾の真名を確認出来なかったっす。見落としてたら恥ずかしい。

 

あと鄧艾のキャラが掴みきれなかったのでほとんどオリキャラになってしまった。まぁ桐花で大分やらかしているんで今更なんですけどね……

お礼返信。

 

叡渡様   三国一斉は地獄絵図だと思います。いやマジでワロえない。

 

ハセヲ様  不幸だー!!

 

月光鳥~ティマイ~様  肉体言語(下)万能説を長そうと思うんだがby一刀

 

hujisai様  桐花OKもらえましたー!!やったねオイラ!!

 

happy envrem様  ところがどっこい!これが現実!!

 

七夜様    サーセンww

 

HIRO様    どうしてこうなった………どうしてこうなった………

 

ちきゅさん様  いやっふーぅ!

 

ミドリガメ様  月は許されるヤンデレ。異論はあんまり認めない。

 

D8様      てへっ

 

悠なるかな様   経験が行きました。

 

shirou様    わるぎはなかった。いまははんせいしている。

 

観珪様    一刀「俺は悪くねぇーーー!」

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
42
3

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択