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EP6 初デートは家で
和人Side
「はぁぁぁぁぁっ!」
「っ、てぇぇぇいっ!」
俺とスグは裂孔の声を上げながら互いの手に持つ竹刀をぶつけ合わせる。
スグは俺に攻めさせないようにする為に、苛烈な攻撃を続けている。
面や小手、胴を狙った連撃を行ってくるが、俺はそれらを全て捌くか回避していく。
どこか攻めあぐねるスグはお得意の小手面を駆使してくるが、俺はその一撃が繰り出される初動を狙い、
上段からスグの竹刀に叩きつけて弾き飛ばした。
「ま、参りました…」
「ふぅ、お疲れ様…」
降参したスグに笑みを浮かべて声を掛け、俺達は居住まいを正すと一礼をした。
「あぁ~…やっぱりお兄ちゃん強いね。2年間も体動かしてなかったなんて思えないよ~」
「実際、SAOの中は実戦だったからな。今は体さえ動かす事が出来ればなんとでも出来るよ…っと、そうだ。
スグ、先にシャワー浴びて来いよ。暖かくなってきたとはいえ、さすがに風邪を引くかもしれないし。掃除は俺がしておく」
「それじゃあ、お言葉に甘えるね。ありがとう」
スグは俺に礼を告げてから道場を後にした。
俺はまだ全盛期まで取り戻せてはいないので、出来るだけ体を動かす為に道場の掃除は基本的に1人で行うようにしているのだ。
まぁ雑巾掛けや箒掛け、窓拭きをするくらいだけどな。
掃除を終えた俺は家の中に戻った。スグはシャワーを浴び終わって朝食の用意をしていたので、俺もシャワーを浴びる事にした。
それも終わって浴室から出て普段着に着替え、リビングに行く。
スグと2人で朝食を取り、俺は自室に戻った。
自室で充電していた携帯端末を確認してみると、明日奈からの着信メールに気が付いた。
―――おはよう、キリトくん。あのね、もし良かったらなんだけど、今日一緒にお出かけ出来ないかなぁ?
これは魅力的なお誘いだなぁ、俺は早速明日奈に電話を掛ける。
2回目のコール音が鳴り終わる前に明日奈から応答があった。
『もしもし、キリトくん? おはよう♪』
「おはよう、明日奈。いまメールを確認したよ。勿論そのお誘いを受けさせてもらうよ」
『ホントに!? やったぁ///♪』
電話越しに嬉々とした声を上げる明日奈。その様子が頭の中に思い浮かび、俺は苦笑する。
「それで、どうする? どこかに出かけるか、それとも一度俺の家に来るか?」
『キリトくんの家///!』
「(くすっ)あぁ、了解した」
訊ねてみて即答した彼女の可愛らしさといえば…。
そういえばと思い、明日奈に他にも聞いておきたい事があったのだ。
「家への着かたは分かるか? 駅とかそういうの…」
『大丈夫だよ。地図のアプリとか一応持ってるから』
「そっか。それじゃあ気を付けて、また後でな」
『うん、すぐに行くからね♪』
会話が終わり、通話が途切れる。
俺は携帯端末をポケットに仕舞うと外出着に着替えて部屋から出て、リビングへと下りた。
テーブルの椅子に座ってテレビを見ているスグに声を掛ける。
「スグはこの後何か用事があるか?」
「うん、もう少ししたら友達とちょっと出かけてくるつもりだよ。お兄ちゃんも?」
「まぁな。すぐに帰ってくるつもりだから、ちょっと行って来る」
「いってらっしゃ~い」
妹に見送りの言葉を掛けられてから俺は家を後にし、自宅近くの駅へと徒歩で向かった。
駅についてから30分程待っていた俺は現在3人の女性(多分大学生くらい)に囲まれている。
そう、逆ナンというやつだ。
「ねぇ、私達と一緒に出掛けようよ~」
「お姉さんが奢ってあげるよ~」
「ちょっとの時間だけでもいいからさ、ね?」
「俺、彼女がいるからお断りするよ」
正直に思うとウザい。俺には愛する女性がいるのだ。
誰がこんな人を外見だけで判断するような尻軽女達の相手をしなければならないのだと、
そう考えながら愛想笑いを浮かべていたら…、
「……………(ゴゴゴゴゴッ!)」
その表情は笑顔を浮かべているものの冷たく、さらに目が笑っていない。
彼女の背後には何かの影が見える、まさかあれが噂に聞く阿修羅というやつか!?
俺は冷や汗を流しながらこちらに近づいてくる彼女を見つめる。
周囲も彼女の威圧的な空気に道を開けていくが、3人の女性は気付いていない。
そして彼女が俺の前、3人の背後に立った。
「こんにちは、キリトくん…(ゴゴゴゴゴッ!)」
「や、やぁ……明日奈…」
「なによ、ぴぃっ!?」
そう、俺の恋人である明日奈。
彼女のあまりにも恐ろしい空気に3人の女性は凍りついたようにその場で硬直したようだ。
敢えて言おう、さすがの俺も怯んだ。
「彼、私の恋人なんです。彼に何か御用ですか?」
「い、いい、いえ!? ちょ、ちょっと道を教えてもらっただけですから!? し、失礼します!」
「「ま、待ってよ~!?」」
彼女の威圧と笑顔に圧倒された1人が早口で答えるとそのまま走り去り、置いて行かれた2人もすぐさま後を追いかけて行った。
周囲の通行人達は関わらないようにする為にさっさと通り過ぎていく。
向かい合うように立っている俺と明日奈、笑顔が怖い…。
「それじゃあキリトくん、行こうか?」
「あ、あぁ…」
笑顔のままの明日奈の隣に並び、俺達は歩き出した。
簡単に言えば、俺の家には何もなく辿り着いた。
そう、何もなく、だ。会話という会話が一切ない、俺が声を掛けても相槌だけというものだった。
かなり気まずい空気だったと言えよう。
取り敢えず明日奈には俺の部屋に上がってもらい、俺はお茶を用意して持っていく。
スグは既に出掛けたようなので救援は求められない、まぁ求めたところで逃げると思うけどさ…。
「麦茶だけど、いいかな?」
「ぁ、うん、ありがとう」
部屋に入ってみれば明日奈はキョロキョロと室内を見回していた。
やはり男の部屋は初めてなのだろう。出しておいた折りたたみの小さなテーブルにお茶を置き、
彼女には持ってきた座布団の上に座ってもらい、俺は自分の机の椅子に座った。
「「………」」
珍しく空気が静かなものになる。俺は一先ずお茶を飲み、明日奈も少しずつ飲んでいく。
「キリトくん……ここに、座って…」
「ん…」
短く言った彼女の言葉に頷き、示された場所―明日奈とベッドの間―に胡坐をかいて座る。
そして何かを決め込んだ明日奈は俺の前で正座をし、
「……ぎゅって、して…///」
「……え?」
「っ、だ、だから…ぎゅって、して…きゃっ//////!?」
一度目は耳を疑ったものの、彼女が二度目を完全に言い終わる前に今度は抱き締めてあげた。
最初は驚いたようだけど、すぐに俺に身を預けてきた明日奈。
「はは、どうしたんだよ、明日奈…」
「だ、だって…キリトくんが、女の人に囲まれてて、その、あの…//////」
「ヤキモチ?」
「ぅ……うん//////」
「明日奈、可愛い…」
「ぁぅ…/////////」
アレがヤキモチだという事に察しは付いていたけれど、
前までの彼女であればヤキモチは焼いてもあんな風に怒り?はしなかった。
そこで思い至った……俺達は2ヶ月の間、離れていたと言ってもいい。
その寂しさがきているのかもしれないな…まぁ、それは俺も同じだけど。
だから俺は左手を明日奈の腰に、右手を頬に添えてから彼女の唇に自分のものを押しつけた。
「ん、ちゅっ…ぅん…」
「んん、ちゅっ…はぁ//////」
遠慮がちに唇を合わせようとする明日奈だったけれど、すぐに自分から求めるように舌を絡ませてきた。
俺が離すと不満そうにしながらまた唇に合わせてくる。
それに対して彼女の頬に添えていた右手を後頭部回し、明日奈が離れられないように押さえつける。
突然の事に明日奈は驚いた為に抵抗しようとしたが、俺は彼女の腰に回していた左手を背中に回して肩をがっしりと掴み、
それにより明日奈は一切抵抗が出来なくなった。
次第に呼吸が苦しくなってきたようで、ぐったりとし始めた明日奈…やりすぎたか?
そう思ったので唇を離すと、そのまま俺に身を預けるように倒れ込んだ。
「ふぅ~……大丈夫か?」
「はぁ、はぁ…っん、はぁ、はぁ……はぁ、大丈夫、はぁ…じゃない、よぉ…/////////」
息も絶え絶えに愛らしい抗議を行う明日奈だがその声に怒りの色は無く、むしろ嬉々としたものがあるのが窺える。
そんな彼女の頭を優しく撫でてあげ、呼吸が整うのを待つ。
「もぅ、キリトくんってば…//////」
「ごめんごめん。でも、嬉しかっただろ?」
「それは……うん、凄く//////」
その返答が嬉しくて、俺はまた強く抱き締めた。
表情をゆるゆるにして俺の胸に顔を埋める明日奈。
俺達はしばしの間、そのまま抱き合っていた。
和人Side Out
To be continued……
後書きです。
ふぅ~、久々の極甘だったような気がします・・・。
どうでしたか、明日奈のヤキモチは? 可愛いでしょうw?
次回もこのデート?話は続きますよ~。
そして、そろそろストックが底を尽きそうです・・・なんとかしなければ!
それでは・・・。
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EP6になります。
退院から数日後、ある日の和人と明日奈です。
どうぞ・・・。