「あっ、織斑くーん。」
一夏のもとへ走ってきたのは黛薫子であった。
「どうしたんですか?」
「これこれ、オッズなんだけど。」
「はあ。」
今回の大会で賭けと言ってもいいことを楯無は提案していた。
「ちなみに一夏君は楯無ちゃんと同じ一位よ。」
「でもこれはあくまで人気の方でしょ。実際に戦って勝たないと意味ないじゃないですか。」
「そんなことは言わないの。それに皆織斑君を倒そうと思っているのよ。」
「そうなんですか?」
「そりゃそうよ。全戦無敗の生徒は織斑君だけよ。」
「偶然ですよ。偶然。」
「そう言って自分に己惚れないのはいいところなんだけどね。」
その時であった。
―――ズドォォォォォォォォンッ!
「「!?」」
突然、地震のような大きな揺れが襲う。
「きゃっ!!」
「危ない!!」
連続して続く振動に黛は体制を崩す。一夏は倒れそうな黛を反射的に左腕で支える。
「うっ!」
一夏は肩に痛みが走った。
「だ、大丈夫ですか?」
「う、うん。それより・・・・・・何が起きているの・・・・・?」
あちらこちらに『非常事態警告発令』の文字がディスプレイに浮かんでいた。
『全生徒はシェルターに避難!繰り返す、全生徒は―――きゃぁぁぁぁっ!?』
緊急放送をしていた先生の声が突然途切れる。続けてまた大きな衝撃が校舎を揺らした。
「先輩は避難してください!俺は状況を把握してきます。」
一夏は白式を展開して飛翔する。
「あ、あっ・・・あっ・・・・」
突然の襲撃者に簪はろくな対応も出来ず、未だにISの展開をしていなかった。簪は怯えながら後ろに後ずさりする。
(なに・・・・・これ・・・・?なん、なの・・・・)
恐怖が簪の思考を遮断する。
後ろに後ずさりをしていると簪は壁にぶつかった。簪は震える目で一度壁を見て、そしてゆっくりと前を向く。
「―――――」
漆黒の機体、『ゴーレムⅢ』が簪の待機中のISを見つけ迫ってくる。
(た、助・・・・・・・けて。誰か、助けて・・・・・・)
簪は祈るかのようにひたすら目を閉じて念じる。
一歩、また一歩と『ゴーレムⅢ』は迫ってくる。
「・・・・・・り・・・・・む・・・・ら・・・く・・・ん・・・」
ゆっくりと伸ばされる『ゴーレムⅢ』の左腕。
簪は全力で叫ぶ。
「織斑君っ!!」
その瞬間、赤い発光体が『ゴーレムⅢ』に体当たりする。
「簪!」
「お、織斑君!」
「ISを展開しろ!このままだとお前が怪我をする!」
「う、うん。」
簪はISを展開する。
『ゴーレムⅢ』は高密度圧縮熱線を放つ。一夏はパーティクル・フェザーを放ち相殺する。
「簪、援護射撃!」
「う、うん!」
簪は一夏の後ろから荷電粒子砲を放つ。
が、しかし、『ゴーレムⅢ』の可変シールドユニットが集中防御で完全に防ぐ。
「簪、下がれ!」
「どうするの?」
「ここだと『打鉄弐式』の能力は発揮出来ない!」
「で、でもどうするの?」
「俺の『零落白夜』でアリーナのシールドを切り裂く。その隙に出て外で戦うんだ。他のやつらとも合流していけば勝てる!」
「わ、わかった・・・・・・・」
一夏はクロスレイ・シュトロームを『ゴーレムⅢ』に向け放つ。『ゴーレムⅢ』は防ごうとしたが反応が遅く、弾き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
一夏と簪は急上昇。一夏は雪片をコールし、『零落白夜』を発動させ、アリーナのシールドを切り裂く。
「今だ!」
「うん!」
二人はアリーナから脱出した。
「織斑君。」
「なんだ、簪?」
「助けてくれて・・・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・・」
「そのことは後にしろ。それよりいいか?」
「な、なに?」
「楯無さんのことだ。」
「っ!?どうして今!?」
「特に理由はないがな。昨日お前俺の部屋の前で盗み聞きしていただろ。」
「どうしてそれを!?」
「ちょっとな。今言うことじゃないかもしれないが、言わせてもらうぜ。」
「な、なに?」
「お前はお前だ。あの人じゃない。」
「・・・・・・」
「それに、あの人はお前に同じ道を歩んで欲しくないからあんなこと言ったんだと思うぜ。」
「・・・・・・・そんなの・・・・・・わかるわけないじゃない・・・・」
「そうだな。だから話してみたらどうだ。一度でもいいから?」
「・・・・・・これが終わってから考えてみる。」
その時、第三アリーナから大きな爆発音が響き渡る。
「まさか、箒達が!」
「どうするの?」
「合流する。その方が懸命だ!」
だがその時、下から高密度圧縮熱線を『ゴーレムⅢ』が発射してくる。
「しつこい奴だ!簪、ここは俺が抑えておくから行け!」
「う、うん。」
簪は箒達の方へと飛翔した。
『ゴーレムⅢ』がブースターを使い急接近、ブレードをコールし振り下ろす。一夏は雪片で受け止めるが『ゴーレムⅢ』の一撃が重く、一夏は苦戦する。
こいつ、なんて思い一撃をぶつけてくるんだ。あいつら大丈夫なのか?
一夏は『ゴーレムⅢ』と距離を置き、左手を胸にかざし振り下ろす。一夏の白式はアンファンスからジュネッスに変わる。一夏は『ゴーレムⅢ』にオーバーレイ・シュトロームを放つ。『ゴーレムⅢ』は可変シールドユニットで防ぐが、可変シールドユニットの許容範囲を超えておるためか爆散する。
『ゴーレムⅢ』は急加速、急接近しブレードを振り下ろす。一夏は雪片で受けるが『ゴーレムⅢ』はもう片方の手で至近距離で高密度圧縮熱線を放つ。
「ぐああ!」
一夏は弾き飛ばされ、箒の方へと飛ばされる。
「!一夏!」
「ほ、箒・・・・・・・大丈夫か・・・・・」
「なんとかな。だが・・・・・・」
箒は目をよそに逸らす。その先には傷ついている楯無の姿があった。
「っ――――――――!!」
その途端、一夏の脳裏に蘇えってくる記憶があった。決して忘れてはならないあの記憶。
そこへ『ゴーレムⅢ』が接近し、一夏を殴る。
「ぐあっ!!」
「一夏!!」
一夏は『ゴーレムⅢ』に頭を掴まれる。
頭を掴まれながらも聞こえてくる爆音や悲鳴。
「・・・・・・させるものか・・・・・」
「織斑・・・・くん・・・・・」
「もう・・・・二度と・・・・・・命を見捨てるものか!!」
その途端、IS学園のあちこちで不思議なことが起こった。
「ぐ、こいつなかなかやるわね。」
「そのようですわね。」
「っ!なんで!」
「急にISが!!」
「どうなってるの!?」
「シールドエネルギーはまだ残っているぞ!!」
学園内にある全てのISのシールドエネルギーが0となり、光としてある場所へと向かっていく。
「織斑先生!?」
「一体・・・・・・何が起こってるんだ・・・・・・・」
集まっていく光。学園内にはびこっていいる四機の『ゴーレムⅢ』はその光の集まるところへ向かって行く。
「一夏・・・・・・君・・・・・・・?」
「一夏・・・・・・・・」
「織斑・・・・・・・・君・・・・・・・・?」
光は一夏の元へ集まり、光の柱が出来てゆく。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
光により『ゴーレムⅢ』は粉々になる。
光が晴れ、そこにいたのは・・・・・・・・・
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黛に呼び止められた一夏。話していると突如・・・・・