真・恋姫†無双~だけど涙が出ちゃう男の
[第44話]
気落ちしてばかりも居られないので、ボクは
「ねえ、
程昱に言われるまで、ボクは橋頭堡に居る忠義心に厚い捕虜たちの事を失念していました。
張角たちの助命
でも彼女は、その重要性を理解していた。そして、諸葛亮の張角たちを更生させようとする案に、消極的にではあるものの同意を示してくれた。
そんな程昱の事ですから、張角たちを説得できる材料なども考えているかも知れないと考えたのです。
「おい兄ちゃん。ついでって言いぐさは、ねえだろうよ。人に物を聞くなら、丁寧に頼むってのがスジってもんじゃねぇかい?」
いきなりガラの悪い男が使うようなしゃべり口調が、程昱の方から聞こえてくる。
ちょっとの間を置いて、ボクは程昱の頭上に居る
意表を突かれて出鼻がくじかれた今の体験から察するに、これが人との会話で主導権を握る為の彼女なりの方法ではないかと愚考する。
それならそれで仕方がない。という訳で、ボクは暫く程昱に付き合って宝譿との会話を楽しむ事にしました。
「なんだ宝譿じゃないか、久しぶりだね。元気にしていたかい?」
長年の友人に逢えたような
「おっ? おお、久しぶりだな……って、ちげえーよ」
「おや、そうかい? でもまあ、久しぶりに会ったんだ。まずは、
「むぅ。そりゃあ、そうかも知れな……でも、ねえー。まったく、
「いやだなぁ~、宝譿。ちゃんと、こうやって君と会話しているじゃないかぁ~? それと君、人じゃないからね。うん」
程昱の調子に合わせる事をせず、自分の流れで会話を交わしてきたボクに、彼女は意表を突かれたようでした。
『士別れて三日なれば、
そうそう、皆にからかわれてばかりでは無いという事ですよ。(キリッ)
ボクだって日々成長しているのだと思い知れば良いのです!
「「フフッ……、フフフフッ……」」
ボクと程昱は互いの心情を理解してか一歩も
「やめんか! この馬鹿どもが!」
「ふごうっ?!」
「ふみゅう?!」
程昱と不敵な微笑で
そのゲンコツの痛さのあまり、ボクと程昱は地面にしゃがみ込んで
久しぶりに厳顔のゲンコツを喰らいましたが、幼い頃の記憶に
ボクは、これでも元服を済ました成人男子。それに、華陽王・益州
火に油を注ぐようなものですから面と向かっては言えませんが、
暫くそうして頭の痛みが
「なにすんだよ、
目に涙を浮かべて文句を言い放つボクに、厳顔は腕を胸の辺りで組ませながら小馬鹿にしたような視線で話しかけてくる。
「痛くしたのですからな、痛いのは当たり前でありましょう」
「は? なにそれ? そういう事を言ってるんじゃないよ?!」
「ふむ。では、何を言っておられるのですかな?」
「いや、だから。なんでゲンコツかまされるのかって、それを聞いてるんですけど?!」
「なんじゃ、そんな事ですか。そんなもん、わしに聞かれても知らん! ご自分に聞かれたら
「はぁああ~?!」
なんか全然、会話が
ボクの方が、なんか間違ってるんでしょうかぁ~?
ゲンコツで殴られた痛みに加え、厳顔と会話が成り立たない事へのある種の痛みが混じり合って、なんだか頭がものすごく痛くなってくるボクでありました。
「やれやれ。風が悪い訳ではないですのに、えらい目にあったのですよ」
いつの間にか復活している程昱が、そんな事をぼやくように
「いつまでも若で遊んでおるからじゃぞ。気持ちは分からんでもないが、軍師なら軍師らしく、さっさと策の一つでも進言せい! まったく、これでは寝る時間がのうなって肌が荒れてしまうではないか。わしの肌は、お
厳顔が程昱の言葉を聞き
でも、彼女の話す前半は納得できる部分もあるのですが、後半部分は納得できないと思うのです
むしろ後半部分の本音が原因で、殴られる事に成ったと思うのはボクの気のせいでしょうか?
しかも不穏な言葉が混じってるし、何をどうする気持ちが分かると言うのでしょうか。
ちょっと聞くのが恐い気がします。
(それにしても、なんだよ。そんなの、桔梗の肌が曲がり
自分の思いを言葉にすると角が立ちそうだったので、身の安全を考慮して内心で毒づく事にしました。
でも何故か、そんな心の叫びが聞こえてしまったようで、厳顔がボクを睨みつけてくる。
そんな恐い彼女の顔を見て、ボクは幼い頃の体験を思い出し、ちょっぴりビクついてしまいます。
「何か言いたそうで御座いますなぁ?」
「い、いや。なんでも無いですよ? ほんとですよ?」
「ふん! でしたら、さっさと席に戻ってはいかがですかな?」
「は、はい。そうします」
厳顔の言葉を受けたボクは、そそくさと自分の席に戻る事にしました。
ボクはそれを了承して
「え~、風さん? 改めて聞くけど、天和たちに協力してもらえるような案はあるかな?」
「そですねー。まあ、彼女たちには暫く我慢してもらうしかないでしょうね」
「うっ……。やっぱり、それしかないのか」
「まあ、あとはですね。いずれは歌い手として身が立つように、後援する事を条件にするしかないと思いますね」
そんな事態に失望したボクに、程昱はどうでも良いといった感じを匂わせながら代案を出してきた。
「ああ、そうか。そういえば天和たちは歌い手だったっけ。すっかり忘れていたよ」
程昱の進言を聞いて、そういえば張角たちは歌い手だったと思い出します。そして、それを老公に上手く利用されたのだと。
ボクにとって張角たちは、取扱い要注意の
「まあ、あれですね。お兄さんは人の上に立つ者として、配下の献策を選べば良い立場ですけども。それにしても、押さえておいた方が良い情報は、もうちょっと覚えておいた方が良いと思いますよー?」
「うぐっ……。そうだね。今後は、そう出来るように留意するよ」
さきほどの程昱との
休戦はどうした? と思わないでもないのですが、そこはそれ。また冷戦を始めると厳顔が黙っていないという事で、ボクは差し
(でも、そうか。天和たちの協力を得られれば、捕虜たちを
ボクはそのように思い、張角たちを厄介者として見定めていたから、そのように見えていただけだと理解する。
だから、彼女たちを協力者として見定めてみると、それに
後は、どの道がボクの望みへ繋がるのかを見定め、それを選択していくだけでありました。
今現在の漢王朝の統治方法は、実際には各地に点在している城郭都市を統治しているに過ぎません。
多くの場合、街に住む農業を営む者は、朝方に都市を出て近隣の農地を開墾し、夕方には都市に戻ってくるという生活をしている。
それは何故かと問われれば、そうしないと夜盗などに襲撃されて命の危険などがあるからです。
つまりは、領地にある都市と領民の総数が重要なのであり、領土の広さが即、国力に直結しているのではないという事。
統治する領土が広かろうと領民の総数が同じであれば、むしろ領土の広い方が交通が不便な分で不利だからです。
だから国力を上げていく為には、それに見合った領民を集めて都市を建設していく必要がありました。
そこでボクは、手始めに統治する華陽国(旧漢中郡)の
人は利に
だから南鄭だけでなく、華陽国の他県の都市、続いて益州各郡の都市に広がっていくのも時間の問題でした。
でも、それだけでは、今度は富を
だから軍の下部組織である警察隊の設立や、都市間の街道警備もかねての乗合馬車、それに華陽国だけでも学校を各県に建設して道徳を学んでもらう事で、それらを回避して来たのです。
また、
いずれ開墾した農地近郊に都市を建設していけば、すぐにでも領民を養っていけるからです。
これらの政策のお陰で益州、取り分け華陽国はこれまでにない発展をしていく事が出来ました。
でも本来、他州へ無許可での移民や流民になる事は御法度。
領民の人数が税収と軍事力に直結するのですから、増やしたいと思うのは誰もが同じであり、当然と云えば当然の事かも知れません。
だから、今以上の州の発展を望むには、自然増加以外の方法として、他州から合法的に領民を集める必要があった。
そういう意味では、皇帝から黄巾党の討伐の
皇帝の
でも、それも一時の事に過ぎません。今回の乱が終結してしまえば、また頭打ちの状態に
ですが、もし張角たちの協力が得られるならば、少しずつではあるかも知れませんが、これからも領民を増やしていく事が可能になる。
それはすなわち、国力の増加が今後も見込めるという事。
いずれは益州全土の許容人数に
だから、領民の人数が増える事に何の問題もありませんでした。
それどころか、望むところだといっても過言ではないでしょう。
ボクはいずれ益州だけで無く、他州にも影響力を持ちたいと考えていました。
そうすれば、これまでより早く望みが叶うと思うからです。
でも、そうボクが思っているからといって、その望みが必ずしも叶うとは限らない。
だから最悪、益州と涼州。それに
そうすれば、なんとか他の勢力からの侵攻を阻止していく事が出来るし、
そうして
益州は他州との
そして、州境にある関などの出入り口を重点的に押さえておけば、人の出入りが制限できるというのが
それに華陽国から見い出される富などの利益や、娯楽としての張角たちの歌い手としての人気などがあれば、仮に史実のように曹操が北域を統治して安定させたとしても、孫権が統治する地域から領民が逃げ出したようには成らないと思うのです。
自分や家族が幸せであり、そして経済圏が確立しているなら、たとえ望郷の念が
(ふむ。そう考えると、天和たちには来てもらって良かったかな? これも天の
ボクはそう思い、張角たちを厄介者たちだと考えていた、そんな自分の思い違いに気が付きます。
自分の置かれている状況を、好機的に見るか危機的に見るかは自身の見方によって変化してしまう。
どうやらボクは、その事をつい忘れてしまっていたようでありました。
(やれやれ。風の言う通り、もうちょっと気を付けなければイケませんね)
そう思いながらボクは、つい批判的な見解に固執していた自分を反省するのでありました。
「じゃあ、とりあえず。天和たちの協力を得る為に、いずれ彼女たちが歌い手として身の立つように後援する。という条件で話しを持っていこうか。その方が、彼女たちも納得してくれるかも知れないしね。皆も、それで良いかな?」
ボクは周りに居る将軍たちを見回しながら、そう確認をした。
それを受けて彼女たちは、同意を示すように頷いてくれる。
「では次に、天和たちが協力を
ボクは張角たちに協力して欲しいと持っています。そうすれば、自身の望みが早く叶うかも知れないと思うからです。
でもそれは、ボクがそう思っているだけの事で、張角たちには何の関係もない話しでありました。
今回の場合で云えば、選択する権利は彼女たちにもあり、その選択を尊重しなければならないと思うからです。
”力”で押さえつければ、一時的には従ってくれるかも知れません。
そしてボクが望むように、張角たちは太平要術の書簡から得た知識を使って人を集めてくれるでしょう。
でも納得していない以上、反抗心は残ってしまうでしょうし、その反抗心が育つような事でも起きれば、たちまち
そう成ってしまえば、それこそ収拾がつけられなく成ってしまうのです。
そうであるならば、今ここで処断できない以上、お互いが納得できる形で何も無かったとした方が無難だと思えたのでした。
「ですが、刹那様。それですと、他の諸侯に3人が捕縛されてしまった場合、私たちが彼女たちを見逃した事が
ボクの問いかけに答えるように、
「そうだね、その可能性もあると思う。でもさ。言い方は悪いかも知れないけど、指名手配の犯罪者が言う事と華陽王・益州牧であるボクの意見、どちらが
「それは……そうかも知れませんが……」
「まあ。仮にそうなったら、その時にでも対処すれば良いさ。どこの誰が相手かも分からいうちに、対処法を決めていても仕方がないからね」
「それも、そうですね。申し訳ありませんでした」
「いや、構わないよ。どんな意見でも言ってもらった方が良いからね」
呂蒙へ自分の考えを言うと、彼女は納得してくれたようでありました。
たしかに、他の諸侯に捕縛されて張角たちを利用されると脅威に成るかも知れません。
それに、見逃した事を脅迫材料として、何がしかの譲歩を
ですが、それらは正攻法で対処していけば良いだけの事。それを可能にするだけの”力”は
正攻法は、
敵として立ちはだかると云うのなら、やってみれば良いのです。ボクは情け容赦なく相対するでしょう。それを
だから、なんの問題もありませんでした。
「ふむ。しかし、宜しいのですかな? せっかく、功績を立てる機会が向こうからやって来たというのに」
今度は趙雲が、そんな事を人の悪い微笑をそえて言ってきました。
そんな彼女の態度を見て、ボクは溜め息をつきながら話しかけていきます。
「あのね、星。そういう自分でも思っていない事を、ボクを試すように言うのは止めてくれるかなって、いつも言ってるよね? これも何回、言ってるのか忘れちゃったけどさ」
「ふふふっ……。つい、言いたくなってしまうのですよ。これも
「そんな人徳いらないから。それにね。功績なんて、これまで十二分に立てて来たと思うよ。これ以上は、他の諸侯の
「なるほど。そうかも知れませんな」
たいして気にしていない意見だったのか、ボクが返答すると趙雲は素直に引き下がっていきました。
まあ、彼女の事です。後で問題にならないように、一応そういう意見もあるという事を、ちょっと言って置いた方が良いと考えたのかも知れませんね。
「他に意見はあるかな? もしあるなら、遠慮なく言って欲しい」
ボクはそう言って、周りに居る将軍たちを見回します。
でも、彼女たちから異論は出てきませんでした。
「まあ。それもこれも、天和たちが協力を拒んだ場合の話しさ。できれば、彼女たちには協力してもらいたいと思っているしね」
ボクは誰にいう訳でも無く、そのように言いました。
自分がどうしたいかを、自身に確認するかのように。
「じゃあ、明命。悪いけど、誰かに天和たちを呼びに行かせてくれないか? それと、その時に彼女たちの荷物も一緒に持ってきて欲しい」
ボクは張角たちを呼びに行かせるよう、周泰に将兵の誰かに命じるように言いました。
彼女は了承して、天幕の外へと出かけて行きます。
(さて。望む結果だけに固執していても仕方がない。ボクたちは、自分の思う最善を尽くして行くしかないのだから。成るかどうかは天の采配次第。それは後のお楽しみ、ってね)
ボクはそう思い、後は張角たちの出方次第だと腹を
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無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。
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