真・恋姫†無双~だけど涙が出ちゃう男の
[第43話]
「ゴホンッ。では、これからどうして行くべきか、それを話し合いたいと思います。各自、
ボクが指令所用の天幕へ戻って来た後、時を経ずに将軍たちも連れだって入室して来ました。
彼女たちの顔は笑いが収まり切らないためなのか、少し
その事が少し
それを受けて彼女たちは、ボクと対面するような場所へ思い思いに移動して行く。
将軍たちがそれぞれの位置に着いたのを確認して、ボクは皆に向かって話しかけていきました。
「今現在の分かっている事は、広宗の街を占拠している黄巾党は極度の食糧難に
首領格と
その老公の協力者である商人と
この3人が朝廷の討伐対象である天公などの
王朝打倒の
ボクは少し間を空けてから、最優先事項を告げていきます。
「そしてなにより、老公は洛陽に居る誰かと連絡を取り合っていたと云う。それに、ボクたちに渡ってくる情報も選別されている可能性もある。
ボクは前面に並んでいる将軍たちを見回してから、続けて話しかけていきます。
「とりあえず、少なくとも渡って来る情報は制限されていたんだし、黄巾党にもこちら側の情報が渡っていた可能性もある。だから、黒幕が居るかどうかは別にして、朝廷に居るであろう内通者を探っていく。それは明命に任せるから、”草”などから情報を集めさせておいてくれるかな? ボクへの報告は、いつも通り朱里たちに知らせた後で構わないからさ」
続いて諸葛亮を始めとした軍師たちに視線を向けていくと、彼女たちも同意を示してくれました。
「内通者の件はこれで良し、と。じゃあ、次に天和たちをどうするか、それを決めていこうか。これから裏付けは取っていくつもりだけど。とりあえず、彼女たちの話しが事実であると仮定して考えて欲しい。なにか意見はあるかな?」
ボクは顔を正面に向けて、皆に意見を求めました。
「私は処断すべきと考えます」
「その理由は何かな?」
ボクは郭嘉に詳細を確認するべく話しかけました。
「理由は簡単です。助ける必要性を感じないからです。彼女たちは犯罪者。しかも、今回の反乱の主要人物でもあります。相応の刑罰を受けるべきと考えます」
「ふむ」
「また仮に、刹那様の
「なるほど、ね」
郭嘉は不確実性の存在は排斥すべきと主張してきました。
たしかに彼女の主張する方法を取れば、
天和たちの事を無かった事にすれば、これまで通りにやっていけるからです。
「ただ、刹那様の
「うっ……。そ、そうかな?」
「ええ、そう思います。私が賊側の人間として今回の反乱を計画したなら、各地で複数の軍勢を同時期に決起させて朝廷の目を向けさせているうちに、時機を見計らって首都でも反乱を起こさせます。むしろ老公とやらの連絡の件も、その可能性の方が高かったと思います。なにより、
「な、なるほど」
理路整然な郭嘉の話しを聞いている内に、ボクもそうではないかと思い始めました。
「この策での利点は、首都での反乱が成功するかどうかは問題ではない事にあります。成功して中枢を占拠できたならば、それはそれで
「はい、先生。良く理解できました……」
まるで学校の先生が、出来の悪い生徒に分かりやすく説明するかのように、郭嘉は自論を展開させていきました。
彼女の考えを聞いていくうちに、やっぱり考えすぎていたんだなと、そう思うように成っていきます。
それからボクは、気を取り直して他の将軍たちに意見を聞いていく事にしていきました
「え~。では他に、意見のある人はいるかな?」
「私は反対です。むしろ、保護する方向で考えた方が良いと思います」
ボクの問いかける言葉を受けてか、諸葛亮が反対意見を具申してきました。
「何故でしょうか?」
郭嘉はそう言って、自分の意見に反対する諸葛亮に挑戦的な視線を向ける。
彼女は自分の献策に何の不備があるのかと、そう言わんばかりの態度を
「たしかに、
諸葛亮がそう主張すると、ボクを含めた全員が『?』と云った疑問符を頭の上に浮かべたような表情を見せました。
周泰は他の諸侯に知られないように、この陣営まで天和たちを連れて来た。だから、この場で人知れず彼女たちを処断しても、世間に流布してボクの威光に傷がつくとは考えられなかったからです。
「どういう事でしょうか? 彼女たちがこの陣営に居る事は、他の諸侯には知られていない筈だと思いますが」
郭嘉は皆の疑問を代表するように、諸葛亮へと質問を投げかけました。
「違います。他の諸侯の事ではありません」
そう主張する諸葛亮に、さらに困惑してしまうボクたちでありました。
「明命さんの機転のお陰で、他の諸侯には知られていないかも知れません。でも、この陣営に一緒に来た密偵さんたちは知っていますよね? その人達も一緒に処断するのでしょうか?」
そう諸葛亮に言われて、やっと彼女の言わんとする事がボクたちにも理解できました。
たとえ
とくに天和たちに同情して、独断で動いた密偵などは要注意かも知れません。その密偵にすれば、自分は正しい事をしたのだと、そう判断していると考えられるからです。
それらを
でも、それをしてしまっては、ボクたちを信じて従ってくれている将兵たちを裏切る結果に成る。
それは、これまでやって来た事を、否定する事にも繋がってしまうのです。
諸葛亮は、その危険性を問いかけるようにして、ボクたちを
「朱里は、どうすれば良いと思うのかな?」
ボクは諸葛亮に善後策を聞いてみる事にしました。
反対するからには、それなりの策を用意している必要があると思うのです。
そうで無ければ、それは単なる文句に過ぎないのですから。
「そうですね……。まずは、名前を変えてもらった方が良いと思います」
「名を変える?」
「はい。張角・張宝・張梁という名前は、少し大きく成り過ぎました。ですから、変えてもらった方が良いと思うんです」
「ふむ……」
ボクは諸葛亮の話しを聞き、自分の
「それから?」
「はい。出来れば、その、真名も変えてもらえれば一番良いんです。けど、それは無理だと思います。ですから、暫く偽名で過ごしてもらう必要があります」
「暫くと云うのは、ボクたちの影響力が大きく成って、彼女たちが真名を使用しても支障が無くなるまで、という事かな?」
「はい、そうです」
ボクが確認するように諸葛亮に問いかけると、彼女は
今現在のボクの勢力基盤は益州のみ。しかも
これから意中の人物を太守などに指名して行き、それを朝廷に認めてもらって始めて、ボクは州全体を統治下に置く事が出来るのです。
今の益州各地の太守などは、父・
ボクの本拠地である華陽国(旧・漢中郡)との交易や、父の跡継ぎとして益州牧に就任したなどの経緯があるため、各地の太守は表面的に従ってくれているだけ。
だから旗色が悪くなれば、ボクに反旗を
そんな不安定な今の状況では、郭嘉の献策を選択した方が
でも、それをする訳にはいきません。それでは何のために、これまでやって来たのか分からなく成るからです。
そしてなにより、
だからボクたちは、それらを理解して尚、あえて苦難の道を選んで行くしか無かったのでした。
「その後、3人には一人ひとり分かれてもらって、私たちの監督下に置かせてもらいます」
ボクが色々考え込んでいるのを
「一人ひとり分かれさせる? ……それで彼女たちを、どうするの?」
「はい。私の見たところ、彼女たちはとても仲が良いように見えました。3人が一緒だったら、他は何もいらないと思っているみたいです。ですから、彼女たちには分かれてもらって、それぞれ自分自身に問いかけてみて欲しいと思ったんです」
「なにを?」
「自分たちが何をしてきたかを。そして、自分たちが何をしてこなかったかを、です」
「ふむ……」
諸葛亮の言わんとするところは結局、自分の
一人ひとりを分けて監督下に置くといっても、それだけで済む話しではありません。
監督している人物に対して、それぞれの将軍たちが新しい概念を、それぞれのやり方で伝えていく事なのだと思われる。
さらには、3人を別々の所に分ける事で、脱走するのを阻止する狙いもあるのかも知れません。
そして、それなら他の諸侯の目も
たしかに、張角たちが老公とやらと出会った当初は、その心中を理解できずに従って来ただけだったでしょう。
ですが、将来に不安があったり、厳しい監視もあったかも知れませんが、その後も従って来たのは彼女たちの意思で決めた事。
だからボクは、それらを諸葛亮に確認してみる事にしました。
「一人ひとりを分てそのまま、という事ではないよね?」
「はい。それぞれ監督している将軍の皆さんが、それぞれ責任を持って指導していきます」
ボクの質問に、諸葛亮は肯定の意を表してきます。
やはり彼女は、張角たちを
「でも……さ。それで、天和たちは納得するかな?」
「それは、分かりません。でも、そうしないと……」
「だよねぇ~」
「はい……」
ボクたちは一応、出来る範囲で張角たちを助けたいと考えています。
ですが、それをどうするかは、張角たちが選択して決める事。
条件付きでも受け入れるならば、それで良し。そうで無ければ、郭嘉の献策を採用せざるを得なく成る。
張角たちが自分たちの主張を
互いに歩み寄って、互いに納得する落しどころを一緒に探していく、それしか取れる道はないのです。
だからボクは、後は張角たちがどのような選択をするかを、見定めていくしかありませんでした。
「ボクは朱里の策を採用してみたいと思うんだけど、
ボクはふと、
ですが、
「……ぐぅ」
といった感じで、程昱は眠りの世界へと旅立っている御様子でした。
彼女の鼻から
ボクは思わず『寝てんのかよ?!』と、心の中でツッコミを入れてしまいました。
「……あー、風さん? 気持ち良く寝ているところ悪いんだけど、ちょっと起きてもらえるかな?」
「……すぅ……すぅ……」
「おーい、ふぅーさぁーん。聞きたい事があるんだけどー……って、聞いてませんね、この調子じゃ」
ボクは色々言って、程昱に起きてもらうように願ったのですが、残念ながら彼女は目を覚ましてはくれません。
このまま時を浪費していても仕方がないので、ボクは座っていた
「あの、刹那様? 何をしていらっしゃるのですか?」
郭嘉がボクの行動を不審がって、そう発言してきました。
ですが、ボクはそれに答えることなく、しゃがみ込んだ姿勢を維持しながら、程昱の
「おおっ?! なにやら、こそばゆいのですよ」
「目覚めてくれたかな、お姫様?」
ボクは目を覚ました程昱に向かって、満面の笑顔で問いかけてみました。
「これはすみません。風としたことが、つい暖かい陽気に誘われて眠ってしまったようです」
「いや。今、夜だから。暖かい陽気なんて無いから。むしろ寒いくらいだよ」
「そうですか? まあ、あまり
「いやいや。細かくないよ? 気にした方が良いよ?」
確信的なのか、それとも天然なのかは分かりませんでしたが、程昱はしきりにボケをかましてくる。
思わずそれに付き合ってしまい、ついツッコミを入れてしまいます。
そんな
「さて。目を覚ましてくれた所で改めて聞くけど、さきほどの件を風はどう思うかな?」
椅子に座り直して、ボクは改めて程昱に問いかけていきます。
彼女は、おっとりした雰囲気を
「そですねー。こういう策を採用しようと考える辺り、お兄さんは
「……えらく、ぶっちゃけてくれるね? っていうか、やっぱり起きてたんだ。そうじゃないかって思ってたけど」
おっとりした雰囲気とは違い、程昱の言葉は毒入りでした。
まあ、自分が人の上に立つ者として甘いのは知っていましたけども、こうハッキリ言われてしまうと酷く落ち込んでしまいます。
それとも、さきほどのボクの行動への仕返しでしょうか?
「まあ一応、それで良いんじゃないでしょうか?」
「そうかな? そう思う?」
程昱も郭嘉と同じように反対するかもと思っていたので、そうならなかった事を不思議に思って問いかけてみました。
そんなボクを程昱は、たいした問題でもないと思っているような顔付きで話しかけてきます。
「ええ、まあ。他に取れる道も、ありそうにないですしねー」
「なんかさ。君にしては、
「おや? お兄さんは反対して欲しかったんでしょうかー? それでしたら、ご期待に
「いやいやいや。そうじゃないから。無理に反対しなくて良いから」
おもしろがって反対意見を言おうとする程昱に、ボクは
そんなボクの態度を見て、彼女はちょと楽しそうです。
そしてやっぱり、ボクが彼女をくすぐった事に対する
まったく。人をからかうなんて、本当に程昱は困ったちゃんですね。
くせがあり過ぎるんじゃないかと思います。
「風、
程昱とのやり取りでゲンナリしていたボクの耳に、郭嘉の非難するような声が聞こえてきました。
どうやら、郭嘉は程昱が反対しなかった事に疑問を抱いているようです。
「まあ、稟ちゃんの言うことも一理あると思うのですよ。でもですね、稟ちゃんは忘れてはいませんかねー?」
「何が言いたいのです、風。私が、何を忘れていると言うのですか?」
「もしもですよ、もしも3人を処罰したのが漏れてしまった場合はですね。橋頭堡にいる忠義心の厚い捕虜の皆さんが、黙ってはいないと思うのですよ。それは少し、問題があるんじゃないでしょうかー?」
「そっ、それは……」
郭嘉に程昱が話す言葉を聞いて、ボクたちもその危険性を考えていなかった事に気が付きます。
橋頭堡に居る捕虜たちの総数は、今現在では10万人近くに
もともと、張角たちの人気で集めた集団が核に成っていたのだから、それも仕方がない事かも知れません。
ですが、その5万人もの捕虜が一応従っているのは、ひとえに張角たちの
それでもし、ボクたちが張角たちを処罰したのが漏れてしまった場合、一斉に反旗を翻してくるかも知れないのです。
戦場での事ならば話しは違ってくるかも知れませんが、今回の件は助命
自暴自棄になっている武器を所持していない捕虜たちを、軍事力を持って
ですが、それをしてしまっては、わざわざ助けて捕虜にした意味が無くなってしまうのです。
それに、彼らを新しく
まして、武器を持たない捕虜を
とてもじゃないですが、それは許容できる事ではありませんでした。
(となると……。ここは
ボクは溜め息をつきたくなるような心境でそのように思い、張角たちがここに連れて来られた時点で、取れる対策は一つしかなかったと考えざるを得ませんでした。
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無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。
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