世界樹大戦参加者が頑張っている一方、代表候補生たちも頑張っていた
ラウラはドイツ軍の部下に依頼して、福音の位置を探してもらっている
セシリアは本来福音討伐の作戦で搭載しようとしていたパッケージをインストールしている
シャルロットや鈴、簪も同様にインストールしている、それと同時にリオンから先ほどの福音との戦いで何が起こったのか、これからパートナー達が何をするのかを聞いた
他のパートナーたちもそれぞれ戦いの準備をしている
「……わかったよ。その巨大魚はジェイたちに任せればいいんだね」
「それよりも……大丈夫なの? クンツァイトって確か……」
「今回の事では信用して大丈夫だろう。お互いに目的が一致しているからな」
鈴の質問にリオンが答える
しかし彼の話を聞いていた簪が少し震えていた。というよりも何かに怒っているようだ
様子を見に来たヒューバートが落ち着くようになだめた
「簪、気持ちはわかります。ですが、今はISの準備中。それが終わってからでもいいと思います」
「私も言いたいことあるし後で行こう」
鈴の言葉に簪も頷いた
(私のせいで……一夏は……もう、ISには……)
しばらく箒はうなだれていていると、部屋に二人の少女が入ってきた。鈴と簪だ
それを見た鈴は呆れたような顔をした
「あ~あ、予想通りね」
「……」
一方、簪は箒を睨みつけるように見ていた
「あんたのせいで一夏がこうなったのよね? で、落ち込んでいますってポーズ?」
鈴の言葉に箒はうつむいたままだった。その態度に簪は苛立った
「ふざけないで! そんな風に俯いて何か変わるの?」
いつもはおどおどして、物静かな印象を持っていた彼女の言葉に二人は驚く
「あなたは……そんな人なの?」
「私は……もうISには乗らない……」
箒の言葉を聞いて鈴は箒の頬を叩いた
「専用機を持った人間はね……そんな弱音を吐いちゃいけないのよ! ましてや戦いたくないなんてわがままも言えないの!」
「あんたは……ただの臆病者で腰抜けよ!」
「もし……これ以上戦いたくないなら……今すぐその専用機を篠ノ之博士か織斑先生に返却して」
二人の言葉に火がついたのか箒は立ち上がった
「ど……どうしろというのだ!? 私だって敵は討ちたい! だが、敵の場所が分からないのではどうしようも……」
「安心しろ、もう場所は分かった。シャルロット達の準備も終わったうえ、作戦も大体決まっている。最終調整だけだ」
ラウラが乱入して報告する。それを聞いて箒はよりやる気を出した
次こそは負けない、そう意気込もうとした
「……戦力は多い方がいいけど……あんまり浮かれないで……あなた自身じゃなくて機体を頼りにしている部分の方が多いから」
簪はそう吐き捨て、部屋を出て行った
その発言に対して箒は怒りたくなったが、鈴が制止した
「言い方は悪いけど、事実よ。あんたはまだ実戦での経験がどの専用機持ちよりも少ない。機体に助けられている部分が多いことを自覚しておいた方がいいわ」
そう言って鈴は簪を追いかけた。部屋に残った二人……しばらく黙ってしまった
(く! ……だが、確かに否定はできない)
箒は怒りを抑え、深呼吸してすぐに作戦の内容をラウラに確認し始めた
部屋から少し離れたところ、鈴は簪に追いつき彼女の先ほどの発言の真意を問いただした
「事実だけどいいすぎじゃないの?」
「……そんなことない……と思う」
(いえ、まだましな方よ。もっと厳しい人なら彼女を参加させることすらさせないわね。軍とかならクビになるわね)
彼女をジュディスがフォローしていた。彼女は一夏が目覚めるまで、作戦には参加しない
(一夏がけがした原因を作ったのは箒の慢心、簪にとってそれが何より許せないのよね?)
「私は……織斑君と似ている所があるから気になる。何より彼は大切な友達。だから……勝つ」
その発言を聞いて鈴はここ最近のことを思い出していた
最近、一夏と簪が一緒にいることが増えている気がする
もちろん、自分やシャルロット達も含め、いろんな人と話している
けど、二人の関係は本当に仲の良い友達のように見える。少なくとも鈴にはそう見えている
「……ねえ、あんたって一夏のこと……好きなの……その」
この状況で何を聞いているんだ。鈴自身そう思いながらも聞かずにはいれなかった
彼女は少し考えた後、答えが返ってきた
「私にとっては……初めての男の子の友達。でも……鳳さんの考えている意味での好きかどうかはまだ……分からない」
(ライバルというわけじゃなさそうだネ、良かったね、鈴)
いつの間にかやってきたマオにからかわれた
ちょっと怒りたくなったが、ここでいうと余計に自分が不利になりそうな気がした
(まあ、そういう話は終わってからにして、福音……だっけ? 対策はあるの?)
マオの言葉に簪と鈴は頷く
「前線にあたしとラウラ、箒を真ん中にシャルロットと簪、後衛はセシリアに任せてそれぞれ役割分担を決めることにしたの」
鈴と簪は自分たちが福音戦で考えた作戦の説明した
途中、二人を呼びに来たシャルロットも一緒にパートナー達に説明をした
(そう、頑張って……一夏が目覚めるまでに決着がつけばいいけど……)
そんなジュディスの言葉に三人は静かに頷いた
「装置を設置しました。これでいいですか?」
「上出来だ」
船の整備が終了した
「それにしてもこの装置、すごいですね。ステルス機能、どこで手に入れたのですか?」
「軍が作ったと聞いた。自分のパートナーから渡されたものだから詳しくは知らない」
ジェイの質問を軽くかわすクンツァイト
これ以上聞いても何も答えてくれない。そうジェイは感じていた
同時に偵察に向かっていたチェスターも帰ってきた
現在福音と巨大魚がいる場所とそこまでのルートを確認してきたようだ。福音と巨大魚はどうやら近くにいるようだ
それを報告し、船のルートを考えることにした。勿論、作戦に参加するヒューバートやマオも一緒になって考える
「……とりあえず、このルートですね。ばれないようにするためにはこれがいいですね。時間は少しかかりますが」
「鈴たちの計画を聞いてきたけど、僕たちの到着時間が数分遅れるみたいだね」
「それはしょうがないでしょう」
こちらも作戦がたてられていく
巨大魚討伐の作戦に参加しないリオンとアンジュは別にやることがある
出てくる魔物が巨大魚だけとは限らない
そのため、旅館周辺の警戒を行い、もしもの場合は魔物の討伐をする
その間、パートナーである真耶と本音はそのサポートとして、魔物の存在を知られないようにする
「リオ君、気をつけて」
(本音も警戒しておけ、絶対に知られるな)
(真耶もよ、生徒たちは大丈夫そうだけど教員には注意が必要よ。特に織斑千冬にはね)
「わかりました」
そのまま彼らは姿を消し、外の警備に向かった
もちろんこの二人は福音の討伐に出かけることを知っている。だからこそ、そのことも知られてはいけない
知られた場合、教員が捜索ということも考えられなくないからだ
「先ほど、代表候補生以外の生徒を大広間に集めました。布仏さん、サポートをお願いします」
「了解しました~」
のんびりと、しかしその眼はしっかりと分かっているという感じだ
生徒を大広間に集めておけば、こっそり抜け出す生徒を出さない対策
そう提案して千冬に許可をもらった
もちろん本当の目的は先ほどの魔物騒ぎを防ぐことだ。生徒の相手は本音に任せ、教員は真耶が何とかする
とりあえず、これで何とかする予定のようだ
その間にも専用機持ちは飛び出し、世界樹大戦の参戦者は船を動かして目的地に向かった
こうして、それぞれの場所で戦いが始まろうとしている
スキット
そのころの一夏
「ここは……一体?」
一夏は目が覚めると砂浜にいた
いつもの異世界ではないこと、現実ではないことはすぐに分かった
ならばここはどこだ? そう思って周りを見渡してみると何やら歌声が聞こえてくる
その声の方に向かうと白い髪の白いワンピースを着た少女が歌って踊っていた
彼女にここはどこか質問しようとしたが、その考えはすぐに消えた
「……これを止めるなんて無粋なマネ……できないよな」
少女が歌っているのを止めてはいけないくらいその歌は聞いていて心地よいものだったから
静かに彼女の歌を聴くことにした
一夏を見る
簪の会話で気になったことがあった鈴
「ねえ、そういえば簪が言っていたことだけどどういう意味? 一夏と似てるって?」
「ちょっと僕も気になるな、一夏と簪さんって結構仲がいいみたいだし」
シャルロットも気になったのか質問してみた
「……あんまりこの話は他の人にしないって約束してくれるなら」
その言葉に頷く二人
「……私にも、お姉ちゃんがいるの。とっても優秀で……自慢のお姉ちゃんが」
「でもね、そういう風に思えるようになったのは去年の春頃……それまで枷って思っていたの」
「何をしても姉と比べられて……自分よりずっとできるからそういう所で劣等感を抱いていたの」
それを聞いた鈴は何となく理解できた
「一夏には千冬さんがいる……しかも男だから余計に……」
「? どういうこと?」
シャルロットはまだ理解できていないようだ
「シャルロット、一夏と初めて会ってしばらく千冬さんの弟って見て比較してた? 千冬さんに比べてどうとか」
「え!? そんなこと……」
そこで少し言いよどんでしまうシャルロット
「いいのよ、正直に言って。実際にあたしのクラスにもまだ千冬の弟って見ている人が多いもの」
それは簪のクラスも一緒だった
「でね、そういうのってやっぱり本人にとってものすごくつらいの。そういう事よね?」
鈴の言葉に頷く簪
「作戦会議の時の織斑先生のやり取りを見て……ううん、その前からわかってた。一人の人物として見てもらえないことに苦しんでいるんだなって」
「私は……ちゃんとお姉ちゃんと話し合って自分に自信を持てた……けど、織斑君はまだ話し合っていないと思う……というよりも織斑先生がそういう機会を作っていないように見える」
「確かに……なんとなくだけど、織斑先生って自分なら一夏のことは何でも分かっているって感じだもんね」
シャルロットの指摘は的確、そこにいたメンバーは全員そう思った
「似ている……というよりも似ていたって感じかな? 私と織斑君は」
「……そっか、じゃあ幼馴染のあたしから一つ。一夏と……いえ、私たちは友達でいましょう。一夏という一人の人物を見ているものとして」
鈴は簪と握手を求めた
「ずるいよ、僕も一夏や二人とは友達でいるよ」
シャルロットが慌てていた。それを見てみんな笑顔になった
感想・指摘等あればよろしくお願いします
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新年初投稿です
かなり遅れました……
このままだと月1ペースになってしまいそうです……それは避けたいですが
福音戦リベンジ前までです