No.520874

真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第二章『三爸爸†無双』 其の十三

雷起さん


得票数13の麗羽のお話です。
懐妊確認後+おまけです。

引き続き、どの恋姫メインの話が読みたいのかリクエストを募集しております。

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2012-12-20 23:54:13 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3903   閲覧ユーザー数:3097

 

 

第二章  『三爸爸†無双』 其の十三

 

 

プロローグ

【エクストラturn】

「よろしいですか、麗羽さん。貴女は名門袁家の跡取りとなるため、明日からはお姉様の子として生きていくのです。」

 ド派手な縦ロールの金髪を揺らし、胸の谷間を強調するド派手でキンキラしたドレスを身にまとった麗羽の母、袁逢の話を十代前半の麗羽は大人しく聞いていた。

 伯母である袁成に子供ができないのは、今に始まった事ではない。

 小さい時から自分が袁家を継ぐのだと言い聞かされ続けた麗羽の中では、至極当然の決まり事でしかなかった。

 但し、これは後暗い陰謀とかではなく、当の伯母から言われ続けて来た事だ。

 

『わたくしは男という生き物に興味が湧きませんの。わたくしが産まなくても妹が貴女を産んでくれたからそれでいいですわ。おーーーーっほっほっほっほっ!』

 

 伯母の男に対する見識には若い麗羽も賛同していた。

 麗羽にとって男とは『自分に傅く者』であり、決して愛を語る相手ではなかった。

 とにかく、そのような理由で生まれ育った家を出て行く事になるのだが、ひとつだけ気に入らない事があった。

 それは生まれて一年足らずの妹と離ればなれになってしまうという事。

 しかも妹には、実の姉妹である事を、決して言ってはならないと念を押されている。

 何故そうしなければならないのか?

 その疑問は、そう決められているからと言われたので、そういう物なのかと納得した。

 けれど、将来は自分のことを『お姉さま』と呼ばせようと心の中で決めている。

 従姉妹同士でも別に不自然では無いから、問題は無いだろうと麗羽は考えていた。

 

「麗羽さん。貴女にひとつだけ言っておく事があります。」

 

 今日は何回『ひとつだけ』を聞かされたか。

 もっとも麗羽は最初から数えてなどいなかったが。

 

「お姉さまとよく似た趣味を持った貴女ですけど、もし殿方を好きになったら・・・」

 

 『自分が男を?そんな事が有り得ませんわ』と、麗羽は心の中で呟いた。

 

「決して手放してはいけません!相手が名門袁家に相応しくないと思われたら、貴女がその殿方を相応しい地位に就けてしまいなさい!」

 

 未だ父に対して『恋する乙女』の母らしい意見だと聞き流し、口では「はい」と返事をしながら麗羽は妹の事を考えていた。

 

 妹の美羽に色々な事を教えてあげたり、一緒に遊んだりする日のことを。

 

 

 

 

本城 執政区画 廊下             (時報:桂花 一人目妊娠六ヶ月)

【麗羽turn】

「本当におめでとうございます、麗羽さま♪」

「いや~、あたいらの中で一番最初におめでたになるなんて。さすが麗羽さま!」

 斗詩さんと猪々子さんったら、さっきから何度も同じことをおっしゃって♪

「おーーーっほっほっほっほっ!この袁本初にかかれば、子作りなんて朝飯前の簡単なことですわ~。おーーーーーほっほっほっほっ!!」

「麗羽さま・・・・・その言い方は誤解を招くので止めた方が・・・」

 斗詩さんったら何を言ってるのかしら?

「ですけどあの華佗という医者、見直しましたわ。普段は『はあああああああ』とか『ひいいいいいいい』とか言っている変人で、一刀さんたちのそばにいるのはどうかと思っていましたけど。」

「麗羽さま・・・・・ぎっくり腰とかで散々お世話になっているのにそんな事思ってたんですか・・・・・」

「それに『ひいいいいい』とは言ってないんじゃ・・・・・」

「天才とナントカは紙一重と言いますし、多少の変な行動には目をつむりましょう♪」

「・・・・・・・・・・・」

「どういたしましたの、斗詩さん?」

 なんかタメ息なんか吐いて。

「いえ、なんでもありません・・・・・・・あ、ここがご主人様たちの執務室ですよ、麗羽さま。」

 初めて来ましたけどなかなか良い扉を使ってますわね。

 そう思って眺めていたら猪々子さんが扉をドンドンと叩き始めましたわ。

「猪々子さん・・・・・・『のっく』とはもっと静かに、優雅にやるものですわよ。」

「え?そうなんすか?」

「一刀さんがそう仰ってましたわ。」

 猪々子さんは一刀さんたちの話をよく聞いてませんのね。

「ご主人様も麗羽さまに話を聞かせるコツを掴んだんですね・・・・・」

「斗詩さん、何か仰いまして?」

「い、いいえ!べつに・・・・・」

 あら?扉がゆっくり開いていきますわ?

 

 

 

 

皇帝執務室内

【緑一刀turn】

 廊下からあの特徴ある高笑いが聞こえた瞬間に、麗羽の姿が脳裏に浮かんだ。

 それは赤と紫も同じ。そして、とても複雑な顔をしていた。

 きっと俺も同じ表情をしているんだろうな。

 麗羽本人か斗詩、猪々子の誰かが懐妊の報告に来たのは間違いないだろう。

 子供が出来たのは素直に嬉しい。

 だけど翠とたんぽぽの懐妊が解ってからまだ十日しか経っていないぞ。今までにこんな事は無かったのに。

 しかも今この部屋には俺たち三人以外に朱里と雛里、そして華琳が居る。

 彼女達はあの高笑いを耳にした瞬間、それまでの笑顔から一転して眉間に皺を寄せていた。

 斗詩と猪々子ならまだなんとかなるだろう。しかし麗羽だったら・・・・・。

 

執務室(この部屋)に似つかわしくない声が聞こえて来るわね。」

 

 華琳・・・・・既に戦闘態勢か・・・・・。

「か、華琳・・・斗詩と猪々子はこの都に来てから頑張ってるし、麗羽も成都の頃に比べると大人しくなってるんだから穏便に・・・・・朱里と雛里も・・・」

 俺が三人をなだめ始めたところで、いきなりドカンドカンと扉が叩かれる音がした。

「「「な、なんだいったい?」」」

 俺たち三人は扉を振り向くが、それ以降何も聞こえてこない。

 俺は扉に近付き、恐る恐る開いて隙間から覗いて見ると扉の向こうにはやはり麗羽と猪々子と斗詩が立っていた。

 そして麗羽と目が合う。

「ごいきげんよう、一刀さん。どういたしましたの?その様な隙間から。」

 俺は覚悟を決めて扉を開いた。

「ごきげんよう、麗羽・・・・・いや、扉から凄い音がしたんで、何かぶつかったのかと思って・・・・・」

「えー!?アニキがノックを教えてくれたんじゃんか。」

「なるほど、猪々子だったのか・・・・・まあ、春蘭よりはマシか。あいつは以前、紫の部屋の扉を叩き壊したらしいから。」

「なにい!それじゃあ、あたいは壁ごとブッ壊して」

 

「対抗する方向が違うっ!!」

 

 これから寒くなるのに、そんな風通しのいい部屋にされてたまるか!

「猪々子さん、貴女も名門袁家の家臣なら『のっく』も華麗に、優雅にしなければいけませんわ。」

 おお!あの麗羽が俺の言った事を覚えている!

 やはり『優雅』とか『華麗』って言葉を付けるといいんだな。

 まあ、華麗で優雅なノックってのが想像できないけど。

 

「ちょっと、麗羽。貴女遊びに来た訳ではないのでしょう?早く要件を言いなさい!」

 

 うわっ!早くも華琳がキレた!

「あら、華琳さん?なんで貴女がこの部屋にいらっしゃるのかしら?」

 麗羽は素直な疑問を口にしただけなのだろうが、嫌味にも聞こえる言い回しをしてしまうのが麗羽クオリティだな。

「私は仕事でここに居るの!」

 華琳は眞琳を後宮の乳母さん達に任せて、今日は魏の内政の話し合いをしに来ていたのだ。

「あら?それはご苦労さま。ですけど、室内に招かれていきなり要件を口にするのは、淑女として如何なものかしら?」

「貴女が一刀たちに早く祝ってもらいたがっていると思って、気を利かせたつもりなのだけど?」

 華琳が攻撃的な口調で麗羽に言ったが、果してこれが嫌味なのかツンデレ的表現なのか・・・・・・俺には華琳の本心を測りかねた。

「お気遣いは嬉しいですけど、わたくしとしては少々一刀さんたちとお話を楽しみたいですわ。」

 今日の麗羽は余裕があるな。

 いつもなら『きーーーっ!』とか言ってキレる所だぞ。それが、落ち着いた感じで華琳の言葉を受け流してる。

 その余裕の態度で俺たち三人に向き直ると、麗羽は笑顔を見せた。

「一刀さん、今日は重大なお話がありますの。実はわたくし、先程華佗さんの診察室に行きまして・・・」

 おお!麗羽が空気を読んで本題に入ってくれたか。

「そう言えば、華佗さんって名医でしたのね。」

 と、思ったら早速脱線した。まあ、これくらいならいいか。

「そりゃあ華佗は」

 

「いつも『はああああ』とか『ひいいいいい』とか言って、一刀さんたちが後ろから挿されているから心配していましたのよ。」

 

「俺たちが出会った最高の・・・・・って、おい!」

 大事な部分が省かれている上に表現が変だろう!!

「麗羽さん!今の話を詳しくっ!いえっ!続きをお願いしますっ!!」

 朱里っ!解ってて言ってるだろっ!!

「華佗さん×ご主人様・・・・・」

 やめてええええ!雛里っ!!その掛け算はやめてええええ!!

「麗羽っ!肩こりの治療で華佗に鍼を挿されているのを心配してくれてありがとうっ!!だけど『ひいいい』とは言って無いから!華佗は最高の名医だよっ!!」

「ええ!わたくしも今日、そのことを認識いたしましたわ。」

 つ、疲れた・・・・・・麗羽に悪気がないと解るので余計に疲れる・・・・・。

 

「先程、華佗さんから懐妊したと診断されましたわ♪」

 

 今度は唐突に本題を言われた。

 俺たち三人はとにかく深呼吸を五回ほど繰り返し息を整え、麗羽の前に立ってその手を取った。

 

「「「ありがとう、麗羽。元気な子供を産んでくれ。」」」

 

「お任せなさい!これ以上ないくらいの元気な赤ちゃんを産んでみせますわ!おーーーーーーっほっほっほっほっほっ!!」

 

 どういう根拠が有るのかはさて置き、覚悟だけは充分あるのが伝わってくる。

 そういえば、斗詩と猪々子も後宮に部屋を移さないとダメだな。

 俺が二人を見ると揃って苦笑していた。

 この二人が居ないと後宮がどんな騒ぎになるか・・・・・・想像したくないなぁ・・・。

 

「やっと言ったわね、おめでとう、麗羽。」

「「お、おめでとうございます!麗羽さん!」」

 

 華琳はさっきまでの険しい表情を緩め笑顔でお祝いを言い、朱里と雛里も慌ててお祝いを口にした。

「私が言うのも何だけど、私塾時代の貴女を思い出したら、貴女が懐妊するなんて想像できないわね。」

 そういえば華琳と麗羽は私塾時代に一人の女の子を巡って争うほどガチ百合だったって聞いた事あったな。

「そうですわね・・・・・わたくしもあの頃は男のどこがいいのか分かりませんでしたけど、・・・・・今ならお母様の気持ちが分かりますわ・・・」

 麗羽の母親か・・・・・以前、美羽の母親の事は大喬と小喬、それに祭さんから聞いたことがあったけど・・・・・やっぱり麗羽のパワーアップバージョンなんだろうか?

「さて、それでは後宮に行きましょうか。後宮での決まり事とか妊婦の心得とか色々と・・・・・」

 華琳は麗羽に話していたが、一度言葉を止めて斗詩を見た。

「斗詩に教えておくから麗羽は斗詩から聞きなさい。」

「やっぱりそうなるんですね・・・・・覚悟はしてましたけど・・・・・うぅ・・・」

 この華琳と斗詩のやり取りで、既に今後の後宮の様子が伺い知れるな・・・・・。

 

 

 

 

十日後

後宮 麗羽個室               (時報:桂花 一人目妊娠七ヶ月)

【緑一刀turn】

 俺たち三人が仕事を終えて後宮に行くと、麗羽本人から大事な話が有ると言われた。

 生後四ヶ月の眞琳、香斗、蓮紅、烈夏、そして生後一ヶ月の愛羅の様子を見たり、母親や妊婦みんなの話を聞いたりした後でようやく麗羽の部屋にやって来た。

 部屋の中には麗羽しかおらず、斗詩と猪々子の姿は無い。

 お茶の用意はされている処を見ると、多分さっきまでは居たんだろう。

「「「ごめん。待たせたね、麗羽。」」」

「いえ・・・・・わたくしも心を落ち着かせるのに丁度良かったですわ。」

 感情が素直に出る麗羽がこう言うということは、相当な覚悟での話なのだろう。

 俺たちは畏まって席に着いて、麗羽を見つめた。

「お話というのは・・・・・わたくしの身の上のことですわ。一刀さんたちには知っておいて欲しかったので・・・」

 この間はいきなり本題に入らないのが淑女のたしなみと言っていた麗羽が、今はすぐに本題を切り出した所からも、その緊張の度合いが伺い知れる。

 俺たちは黙って頷き、麗羽が語りだすのを待った。

 

「・・・・・わたくしと美羽さん・・・・・・実は同じ両親から生まれた実の姉妹なのですわ。」

 

 え?・・・・・今まで麗羽も美羽も従姉妹だと言い続けていたから、てっきりそうだと思ってたけど・・・・・・そうか・・・。

「袁家前当主の袁成、わたくしの伯母ですが、子供を成そうとはしませんでした。そこで妹である母の袁逢の所からわたくしが養子に行きましたの。」

 正史の資料では袁紹と袁術の関係が従兄弟だったり兄弟だったり曖昧だったから色んな説が有ったっけ。

「美羽はその事を・・・・・」

「知りませんわ。」

「それじゃあ、斗詩と猪々子が今ここに居ないのも、二人には教えていないからなんだな。」

「さすが一刀さんですわね。察しがよろしいですわ。」

 麗羽は嬉しそうに答えた。だけど俺たちにはまだ幾つか疑問がある。

「えっと・・・・・ちょっと訊きたいんだけど・・・まず美羽にはどうして教えてないの?」

「家訓だからですわ。」

 ・・・・・・簡潔に言われた。

 まあ、お家騒動を避けるための名家ならではの知恵という所なのか。

「じゃあ、袁成さんが子供を作ろうとしなかったっていうのは?」

「あの方は男性に興味が無い方でしたから。」

 成程、ガチ百合だったってことか・・・・・・なんでそんな人を当主に選ぶんだ?最初から養子をとること前提だったのかな?・・・そうか、宦官と同じだと考えればいいのか。

「最後に・・・・・なんで俺たちにその秘密を教えてくれたの?」

「それは一刀さんたちの秘密をわたくしが教えていただいたからですわ。一刀さんたちがどれだけの想いでこの大陸を救おうとしているのか・・・・・・それを知ってわたくしは・・・その・・・ますます一刀さんたちの事を・・・・・す、好きになってしまって・・・・・」

 う・・・・・あの麗羽が顔を赤らめてこんなしおらしい態度を取るなんて・・・・・今の麗羽は可愛すぎる・・・。

 このままでは流されてしまいそうなので、俺たちは視線を逸らし部屋の中を見回した。

 すると本棚に収まった大量の本に目が止まる。

「す、すごい本の量だな・・・・・麗羽は普段そんなに本を読んでたんだ。」

「え?あぁ、あれは娯楽本ですわ。一刀さんたちに出会うまで、わたくし男性に興味が有りませんでしたから、そのお勉強も兼ねて読み始めたらすっかり虜になってしまって・・・」

 俺たちは本棚に近付いてタイトルを確認した、

 なになに?『波荒女王浪漫』・・・・・・・・?なんだこりゃ?

 まさか『ハーレクインロマンス』か?誰だよこんなの書いてるの・・・・・・作者は『阿瞞(あまん)』・・・・・・・・・阿瞞って確か華琳の子供の頃のあだ名じゃないか?

「麗羽・・・・・この本の作者って・・・・・」

「なかなか洒落た文号でしょう。敢えて『うそつきちゃん』と名乗ってその物語が作り話であると表現してますが、わたくしは実際にあったことだと思いますわ。」

 本を開いて内容を少し読んでみると・・・・・何やら身に覚えのある出来事が書かれていた・・・・・後で華琳に確認しに行こう。

「(おい、緑。こっちの本の作者・・・・・)」

 紫が指差した本は他の本の後ろに並べられていた。

「(作者は・・・・・戯志才って稟じゃないか!)」

「(タイトルも『白百合抄』って、開かなくても内容が想像つくぞ。)」

「(おい、緑、紫。こっちの作者・・・)」

 今度は赤が見つけた本を見る。

「「((程立・・・って、風!全然隠す気ねえ!!))」」

 こっちは怖くて内容が確認できないよ・・・・・・。

「あまり見られると恥ずかしいですけど、その本のおかげで亡き母の気持ちが今では良く理解できますわ。」

 麗羽は俺たちが隠してある本を見つけた事に気付いていないみたいだ。

 

「母は父を深く愛していました。そしてわたくしも今は・・・・・」

 

 麗羽の笑顔に、この程度の本の趣味には目を瞑ろうと思う俺たちだった。

 

 

 

 

おまけ壱

麗羽の娘 袁譚 真名 揚羽(あげは)

五歳

本城 中庭

【緑一刀turn】

「よろしいですか、揚羽さん!この程度でヘコタレては、名門袁家の名がすたりますわ!」

「はい!おかあさま!」

 俺が中庭を通り掛かると麗羽と揚羽の声が聞こえた。

 何だか熱血っぽい事を言ってるけど、鍛錬でもしてるのかな・・・・・・・麗羽が?

 愛紗や思春ならともかく・・・・・。

「こんどこそ、烈夏おねえちゃんをみつけますわ!」

「その意気ですわ!揚羽さん!」

 ・・・・・・・えぇと・・・・・ああ!かくれんぼか!

 数日前に烈夏の凄さは身を以て知る事になった俺だが、あれでは他の子達が面白くないだろうからルールの追加を提案しておいた。

 具体的にこうしなさいとは言わず、みんなで考える様に言ったので、眞琳にはいい経験になるはずだ。

 果してその結果はどうなったのか?

 丁度、揚羽と麗羽がその成果を見せてくれそうだ。

 さて、ここで疑問に思った人も居ると思う。

 何故麗羽が子供と一緒にかくれんぼをしているのか?

 それは・・・。

 

「香斗さん、見つけましたわよ♪」

「ふえ!?また、麗羽せんせいにみつかっちゃったよぉ・・・・・」

 

 柴の中に隠れていた香斗を見つけ出した麗羽は、得意そうに胸を張っていた。

 麗羽はこの間から保母さんをしていたのだ。

 数日前にも子供達と遊んでいる麗羽を見た俺たち三人は『麗羽って保母さんみたいだよな』と呟いたのを華琳に聞かれ、今までこれといった仕事をしていなかった麗羽を華琳は保母さんに据えてしまった。

 さて、かくれんぼの方は、やはり烈夏だけが見つからず、麗羽と揚羽が中庭を走り回って探している。

 そこでカンカンと木を叩く音が聞こえてきた。

「時間だよー!おわりー!」

 鬼に見つかった子供達が木の板を木槌で叩いていて、その横には俺たちが真桜に作ってもらった『砂時計』が置いてあった。

 成程、隠れられる範囲を狭くした代りに時間制限を取り入れたか。

 飽くまでも公平なルールで、より面白くする工夫が見られる。

「あれぇ?烈夏ちゃん、いつ戻ってきたの?」

 香斗の声にみんなが振り向くと、無表情でピースサインを出している烈夏がいた。

 俺も気が付かなかったぞ・・・・・。

「きいぃーーー!また見つけられませんでしたわっ!!」

 なんか、麗羽が一番悔しがってる・・・・・保母さんと言うより体の大きい園児が居るようにしかみえないな・・・。

 

「だからこそ、麗羽姉さまは子供達に人気が有ると思うのじゃ。」

 

「え?美羽?いつの間に・・・・」

 それに俺は無意識で呟いてたみたいだな。

「たった今じゃ。何やら木を叩く音が聞こえてきたから何事かと思うての。」

 あ~・・・こりゃまずいかな?緊急事態と勘違いされないように何か手を打っておくか・・・鐘を鳴らしたら愛紗が飛び出して来て、みんなで『げぇ!』とか叫ぶ事になるかも。

 

「あっ!美羽おばちゃんと緑おとうさまですわ!いっしょにかくれんぼしましょー!」

 

俺と美羽の存在に気が付いた揚羽が手を振って声を上げると、他の子供達も一緒になって俺達を呼び始めた。

「おっと、見つかっちゃったな。」

「この歳でおばちゃんと呼ばれるとは・・・・・実際に叔母なのじゃから仕方がないかの・・・」

 俺はその美羽の苦笑混じりの呟きに驚いて振り向いてしまった。

 それに気付いた美羽が小声で囁く。

「やはり主さまは知っておったのじゃな。妾と麗羽姉さまが実の姉妹だという事。」

「・・・・・えっと、美羽はどうして・・・・・」

「妾が知ったのは揚羽が産まれた頃じゃ。この城の使用人の中に昔お母様に仕えていた者がおって、教えてくれたのじゃ。」

 四年も前から知ってたのか。

 子供達の所へ向かう途中なのでこれ以上の話は出来なかったが、麗羽と美羽が口には出さなくてもお互いを姉妹だと思っている事が解って俺は嬉しかった。

 

「さあ、烈夏さん!美羽さんも加わりましたから、今度こそ名門袁家の誇りに賭けて見つけて差し上げますわ!おーーーーーっほっほっほっほっほっ!!」

 

 子供相手のかくれんぼに賭けられる名家の誇りというのもどうかと思ったが、今はむしろそれが優しく温かな物に感じられた。

 今のこの空気を素直に楽しむ事にしよう。

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

まずは投稿が遅れましたことをお詫び申し上げます。

 

さすがに年末で仕事が忙しくなり

その上、雷起の棲む札幌で大雪のため、雪かきなどに時間を取られ

輪をかけて小説を書く時間が削られてしまいましたorz

次回の投稿も年明けになりそうですけど、お許し下さい。

 

 

さて、麗羽のお話という事で

書き始めるまではドタバタする話になるかと思っていたのですが

意外と静かにまとまりました。

ただ、麗羽の母親とか伯母とかが出てきて

麗羽増殖状態になり頭がパンクしそうになりましたがwww

 

麗羽と美羽の関係は恋姫公式では従姉妹となっていますが

敢えて正史の解釈のひとつを取り入れました。

色々な三国志のマンガ等でも袁紹と袁術を

兄弟として描いている物が有りますしね。

 

 

《次回のお話&現在の得票数》

 

☆桂花   17票

 

という事で次回は桂花に決定しました。

以下、現在の得票数です。

 

桔梗   12票

蓮華   10票

凪    9票

七乃   8票

朱里+雛里7票

猪々子  7票

白蓮   7票

流琉   7票

詠    7票

月    6票

穏    5票

亞莎   5票

ニャン蛮族5票

数え役満☆シスターズ5票

小蓮   5票

明命   4票

焔耶   3票

秋蘭   3票

斗詩   1票

二喬   1票

春蘭   1票

 

※「朱里と雛里」「美以と三猫」「数え役満☆シスターズ」は一つの話となりますのでセットとさせて頂きます。

 

リクエスト参戦順番→ 蓮華 凪 朱里+雛里 猪々子 桂花 穏 桔梗 白蓮 亞莎 流琉 七乃 ニャン蛮族 小蓮 詠 焔耶 明命 数え役満☆シスターズ 秋蘭 月 斗詩 二喬 春蘭

 

引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。

リクエストに制限は決めてありません。

何回でも、一度に何人でもご応募いただいても大丈夫です(´∀`)

よろしくお願い申し上げます。

 

 


 
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