まえがき コメントありがとうございます。反董卓連合戦も終わりを迎えましたので、今回で第四節は終了となります。さーて、第五節のこと全く考えてないわけではないのですが、構想が上手くまとまらない・・・。どうしたものかな・・・。とりあえず、フラグ量産する一刀に頑張ってもらいましょうw それではごゆっくりしていってください。
俺たちは連合を打ち倒し、彼女らを捕虜扱いとして手首に枷をはめて中央を歩かせている。暴れられても対処できるようにね。捕虜にしてからしばらく歩いてるからもうすぐ洛陽につくな。
「兄貴、袁家の連中はどうする?洛陽の中に入れるのか?」
「うーん、とりあえず中には入ってもらう。部屋はどこかの宿に泊まってもらうことにするよ。勿論お金は向こうの負担でね。」
「了解。」
・・・
「御使い様、お帰りなさい!」
「劉備様、お疲れ様~!」
「張遼様、良い酒入ったよ~。」
市の皆が俺たちの帰りを祝福してくれた。これは嬉しいな。いろんな人の温かみを感じる。頑張った甲斐があったなぁ。
「ご主人様、私たちが頑張ったからこんなに喜んでもらえるんだよね?」
「勿論。俺たちの努力は無駄にならなかったんだよ。だから、もっと胸を張って。」
「うん。そうだね。」
俺たちは人々の歓声を後に城への道のりを進んだ。
・・・
「皆さん、お疲れ様でした。」
「よくやってくれたわ。あの連合の連中相手は厳しいと思ってたんだけど。どうやってあの軍勢を押しのけたの?」
「それはね、ご主人様が一人でやっちゃったの♪」
「??」
二人ともどういう訳か分からないって顔してる。というか、俺一人でやったんじゃないんだが・・・。
「北郷、何をしでかしたの?」
「袁家以外の人たちを説得しただけだよ。そしたら連合を抜けてくれたから。」
「ご主人様にしか出来ないことですよ。」
「一刀のお手柄やな。」
「いやいや、連合の人たちが話を聞いてくれただけだよ。孫堅様や曹操さんはすんなり引き返してくれたし。」
「江東の虎に覇王を引き返させたなんて、よほどの傑物でない限りできる芸当ではありませんよ・・・。」
「そうなの?孫堅様に孫策さん至っては真名も預けてくださったし、良い人だと思うんだけどな~。」
「・・・。」
「・・・。」
ありゃ?何か皆固まっちゃったんだけど・・・。もしかして言ったら駄目なことだったとか?
「一刀も大層なやつらに気に入られたもんやな~・・・。逆に心配になるっちゅうもんや。」
「なんで?」
「孫堅さん、孫策さんは無類の戦上手で戦好きと有名なのです。真名を預けられたということは向こうから仕掛けられることはないと思いますが・・・何でしょうね。ご主人様のお体が心配になってくるのです。」
「ご主人様、孫策さんたちのところに行かないよね?」
皆の視線が俺に集まる。なるほど、『心配』って俺がどこかに行ってしまわないかってことだったんだな。
「そこは心配しなくていいよ。俺はいつまでも桃香たち皆の仲間だ。伊達に皆からご主人様って呼ばれてないからね。自分でこういうのも恥ずかしいけど。それに何より、桃園の誓いもしたし星のお兄さんとの約束もある。清羅は俺がこっちに誘ったわけだし流琉は曹操さんの友達のことよりも俺たちと一緒にいたいって言ってくれた。朱里や雛里はわざわざ水鏡塾から俺たちのところまで来てくれたんだ。そんな人たちの・・・俺の大切な人達の下を易々と離れるなんてことはありえないから。俺が死ぬまで皆を守ってみせるから。俺の剣と誇りと魂と・・・天に誓って。」
俺が皆にしてもらったことを恩返しし終わるまで・・・し終わっても離れる気はさらさらないけどね。
「ご主人様、私も大好きだよ~~~!!」
桃香が俺に抱きついてくる。俺は桃香を抱き寄せると彼女の頭を撫でた。なんか心地いいな。
「お兄ちゃ~ん!!」
「うおっ!?」
鈴々が俺に抱きついてきた。いつものことながら低空ながらタックル並に。思わず尻餅をついてしまったよ。桃香と鈴々の頭を撫でる。俺もちょっとほっこりしてきた。
「ご主人様~!」
「ご主人様~!」
「兄様~!!」
「ごふっ・・・。」
朱里に雛里に流琉まで俺に抱きついてきた。朱里に雛里までどうにかなったけど流琉の勢いのある抱きつきが鳩尾に・・・。ちょっと苦しくなってきた・・・。
「主は人気者だな。愛紗は行かなくていいのか?」
「私はこの光景を見ているだけで満足だ。」
「なら私はご主人様に抱きついてこようかしら♪」
うっ、清羅まで・・・。もう、駄目・・・。あ、目の前が真っ暗になって・・・・・・
「私はご主人様の行くところにどこまでもついて行くけどねん♪」
「儂はダーリンについて行くぞ♪」
「おう、お前がいれば大助かりだ!」
「いや、あんたたちのはいいから。って、北郷、動いてないじゃない!」
「一刀さん!一刀さーん!」
・・・
「はっ!」
ここは・・・月の部屋か。俺、確か桃香たちに抱きつかれて・・・それから記憶がないぞ?気を失ったのか。抱きつかれるのは嬉しいんだけど今回のはかなりきつかった。
「一刀さん、もう大丈夫ですか?」
「あ、月。もう大丈夫だよ。」
今気づいたけど、俺の頭が乗っているのって・・・月の膝の上!?なんか柔らかい感触だと思ったら。
「月、なんで膝枕してくれているの?」
「一刀さんへのお礼です。洛陽を守ってくれましたから。私がしたかったのもあるんですけどね。・・・へぅ///」
自爆しちゃった。可愛いなぁ。
「なんか連合の一件からそんなに経ってないのに久し振りな気がする。ほんの一週間前にもこんなことしていたのにね。」
「そうですね~。私も同じこと考えていました。だから今日は一刀さんを独占しちゃいます♪」
月が俺の頭を軽く撫でると膝枕を止めて寝台に入ってきた。
「はぁ~、一刀さんの香りがします。落ち着きますねぇ♪」
「俺の匂いって落ち着くの?」
「はい♪」
「俺より月の方が良い香りがするよ。」
「へぅ///」
月がすごく恥ずかしがっている。いや、俺もかなり恥ずかしいんだけどね。
「そういえば月、今何時くらい?」
「今お昼前です。」
「じゃあちょっと寝ようかな。戦中はあんまり寝てなかったからね。」
「はい。私もお供してもいいですか?」
「うん。じゃあ、お休み。」
「お休みなさい。」
・・・
「愛紗、そういえば袁家を捕虜にしたって聞いたけどそいつらはどこにいるの?」
「私は牢屋に放り込んだ方が良いと思ったのだが、ご主人様が市の宿に泊めると言ってな。金は向こう持ちだ。」
「あいつもお人好しね。」
「ご主人様のそういうとこも人徳が成せることよ。私もそのお陰でここにいさせてもらえるんだから。」
「一刀、優しい。だから、セキト懐く。」
「そうね。恋も懐くくらいだもの。」
「一刀といると、嬉しくなる。だから、一緒。」
「全く・・・分かりやすいのやら分かりにくいのやら。」
まぁ、恋の言いたいことは分からないじゃないけど。そういえば、月はどこ『ぐぅ~~~』・・・今の音は恋からのやつね。
「お腹空いた。」
「そういえば昼食がまだだったな。愛紗、主に良いとこを見せる絶好の機会だぞ?」
「・・・私が料理を作れないと知っているだろ?」
「うむ。」
「じゃあ私も作るから愛紗ちゃんも一緒にやろうよ~。」
「わ、私は結構です。」
「そんなこと言ってると、私がご主人様もらっちゃうんだからね?」
「うぐっ・・・。」
桃香、あからさまに挑発するわね。誰でも気付きそうなものだけど、愛紗ならこの手の挑発は・・・きっと乗るわね。
「愛紗ちゃんがしないなら私が手料理を振舞って差し上げましょう。町の散策をして、そうね、川の木陰とか良さそうよね♪」
「う~~~。や、やってやる!朱里、雛里、頼めるか?」
「はいです。」
「私でよければいつでもお教えします。」
「よし、早速厨房に向かうか。」
愛紗が朱里と雛里を連れて厨房に向かっていったわ。・・・愛紗の作る料理が人の食べられるものだったらいいのだけど、それはあの軍師二人の手腕に掛かってるわね。
「じゃあそろそろご主人様の様子見てくるね。」
「それならば私も行こう。」
「星ちゃんが行くなら私も行きましょう。」
桃香はともかく星と清羅は絶対面白がってるわよね・・・昼食の前にできるだけ竹簡を片付けとこう。
・・・
「ね、ねぇ星ちゃん、なんでこそこそ行く必要があるの?」
「この方がいざという時にすぐに対処出来るではありませんか。」
「なるほど~。」
「桃香様、何に対してなのか全く理解されていませんよね・・・。」
まぁ、これはこれで面白いので深くは気にしないでおきましょう。
「お姉ちゃんたち、何をこそこそしてるのだ?」
「うひゃあ!!」
「鈴々ちゃんだったのね。それに流琉ちゃんも。こんなところで何してるの?」
「厨房に行って月さんの手伝いをしようと思ったんですけど、愛紗さんたちが使っていまして・・・。朱里ちゃんと雛里ちゃんでは手に負えないので月さんと兄様を呼んできてほしいと言われて来たのです。」
「愛紗ちゃん・・・、結構器用だと思ったのだけど。」
「あやつはなかなかに不器用だぞ。特に色恋沙汰はな。」
「じゃあ早く月ちゃんのお部屋に向かおうよ♪」
「そうなのだ!早くしないとお昼の時間が短くなるのだ!」
「あはは、鈴々ちゃんはお昼の時間の方が大事なんだね~。」
私たちはこそこそするのを止め月ちゃんの部屋に向かいました。
・・・
「ご主人様~、月ちゃ~ん。」
・・・あれ?反応がない。確かに寝台にいるのは見えるんだけど・・・。
「桃香様、ご主人様たちは?いないんですか?」
「いや、いるのは分かるんだけど反応がないの。」
星ちゃんたちも部屋に入ってきてご主人様たちの様子を見ることにした。
「うっ!」
「ご主人様・・・。」
ご主人様は月ちゃんに抱きつかれて眠っていた。月ちゃんもどこか幸せそうな表情で眠っている。
「主は気が多いからな。これは諦めるしかないな。」
「ご主人様~、お~き~て~!」
「zzz・・・。」
「月ちゃ~ん!」
「zzz・・・一刀さーん・・・ふふっ♪」
「これは諦めるしかなさそうね。」
「そんなー・・・。清羅ちゃん!私もご主人様たちと寝ておくから愛紗ちゃんのことお願いね!」
「そういう訳にはいきません。」
「流琉、鈴々、桃香様を厨房まで運んでくれ。」
「了解なのだ!」
「桃香様、失礼します。」
「ちょ、ちょっと、流琉ちゃんに鈴々ちゃん!あ、あ~、あ~~れ~~~。」
桃香様は鈴々ちゃんたちに厨房まで連行されました。たしかこういう時は・・・ドナドナね。よく意味は分からなかったけどご主人様がそう言ってたわ。
「しかし、こうも気持ちよさそうに寝ていると少し妬けてくるな。」
「そうね。けど、今回は見逃してあげましょう。ご主人様も戦中はほとんど休憩なされていなかったから。」
「そうだな。よし、私たちも厨房まで行くか。愛紗が暴走していたら私が止めないといけないからな。」
「分かったわ。」
まぁ、私も少し妬いてはいるのだけどね。機会があるときにうんと甘えてあげるんだから♪
それから私たちの向かった厨房が大惨事になっていたのは今や語るのも恐ろしいこととなった。話したら愛紗ちゃんが怒るからね。
・・・
翌日、朝廷から一人の使者が来た。なんでも反董卓連合を退けた俺たちに話があるらしいのだ。まぁ、それは置いておこう。ただいま俺の隣に口をぽかーんと開けて固まってしまっている男、蒼。使者の人の顔を見た途端にこうなってしまった。
「お・・・お・・・。」
「お?」
「お袋!?なんでここにいるんだよ!?」
「お袋・・・ということは、馬騰さん!?」
「ほう、私の名を知っておるのか。いやはや、いつの間にか私も有名になったものだな。」
あはは。と笑う馬騰さん。何で馬騰さんが使者を?・・・そういえば馬超さんが母様が朝廷にいるって言ってたな。
「私の名を知っておるなら自己紹介はいらんとは思うが一応しておこう。私は馬騰。西涼領主をしている。そしてそこのバカ息子の母なんかもしている。」
「私は北郷一刀です。劉備たちの大願成就の為、共に行動している者です。そして天の御使いなんて呼ばれています。」
「お主だったか。うちのドラ娘二人を説得したというのは。その説は大変迷惑を掛けた。申し訳ない。私の躾がなっていなかったな。」
「あ、頭を上げてください。二人とも良い子でしたよ。ちょっと血が頭に上るのが早いのがたまに傷なくらいで。」
「それは私に似たんでしょうな。私も戦闘になってはすぐにカッとなる癖があるので。」
俺と馬騰さんが談笑していると蒼が横から口を挟んできた。
「そういうのは後でいいんだよ!お袋!なんであんたが朝廷の使者なんかしてるんだ!?西涼に戻らねえと翠や蒲公英に住んでいる民が心配するだろうが!!」
「相変わらず五月蝿い子だねえ。もう少し落ち着いて話せないのかい?それに、私が戻るまでは翠に全て任せているんだよ。」
「あいつはまだそんな年じゃねえ。もっと経験を積ませてからでないと無理だ。」
「あの子はあんたが考えているほど弱くはないよ。あんたがうちを出て行ってからあの子は変わった。蒼兄様を早く西涼に連れて帰ってくるんだってね。」
「・・・。」
「まぁいいさ。ところで北郷殿、董卓ちゃんはどこにいる?」
「月だったら今厨房にいますよ?」
「厨房?あの子、料理なんて作るのかい。」
「上手ですよ。ここではほぼ毎日月がご飯を作ってくれるんです。俺も手伝いますけどね。」
「ほう、それは一度二人の合作料理をご相伴に預かってみたいものだね。」
「はい。機会があれば腕によりをかけてご馳走しますよ♪」
俺が答えると馬騰さんが少し可笑しそうに微笑んだ。
「北郷殿はまるで自分のことみたいに嬉しそうに言うんだね。」
「自分の大事な仲間のことを褒められるのは俺も嬉しいですから。」
「そうかい。」
「ええ。」
俺はそれから馬騰さんに頼まれて月を厨房まで呼びに行くことにした。さっき作りに行ったからまだ作ってる途中だろうなー。
・・・
「月、ちょっとお邪魔するね。」
「一刀さん?お昼ご飯はもう少し待ってくださいね。もうちょっとしたら出来ますから。」
その言い方だとご飯が待ち遠しくて来たみたいに聞こえる。鈴々や恋じゃないんだから。
「いや、ご飯のことじゃなくて・・・朝廷から使者の馬騰さんが来てるよ。月を呼んできてって頼まれたから来たの。」
「馬騰さんですか?突然どうしたのでしょうか・・・。」
「とりあえず伝えないといけないことがあるから来て欲しいって頼まれてるんだけど・・・どうする?」
「分かりました。ですが、まだお料理の途中ですね。うーん・・・。」
「それは私がやりますよ。」
厨房の外から流琉がこちらに話しかけていた。
「いるなら言ってくれればいいのに。」
「たまたま通りかかっただけですよー。そして話は聞かせてもらいました。お料理は私が作っておきますので月さんと兄様はその使者の方のとこに向かってください。」
「流琉ちゃん、お願いできる?」
「はい。お任せ下さい!」
俺たちは厨房を流琉に任せて謁見の間へ向かった。
・・・
「馬騰さん、お待たせしました。」
「いや、別にいいさ。久しぶりに息子と水入らずで話せたからね。」
「ったく、そういうことなら早く言えっての。心配して損したぜ。」
「ところで、お話とは何でしょうか?もしかして、朝廷で何か動きがあったのですか?」
「いや、そういうことではない。劉協様が今回の一件であんたと北郷殿、劉備と話がしたいと言われてね。朝廷まで連れてきて欲しいと頼まれたのさ。」
「劉協様がですか。私は構わないのですが、一刀さんたちはどうしますか?」
「俺はいいよ。劉協様直々に呼ばれたなら行くしかないし一度お会いしてみたいとは思っていたからね。桃香には俺から聞いてみるよ。」
「よろしくお願いします。」
「今から聞きに行ってもらっていいかい?早いほうがいいからね。」
「分かりました。では行ってきます。」
一刀さんはそう言うと謁見の間を出て行きました。
「あんたにもうちの娘たちが迷惑かけたみたいで申し訳ないね。全く、私の娘ならもう少し察しが良いと思っていたのだけどねぇ。」
「いえいえ。洛陽はこうして無事ですし、一刀さんたちが助けに来てくれましたから。馬騰さんが謝ることはないんですよ。」
「ありがとうね。それはそうと・・・。」
馬騰さんがにやにやしながら私を見ています・・・何でしょうか。特に何かしたとは思えないですけど・・・。
「あんた、北郷殿に真名を預けたんだね。どうしたんだい?自分の家臣でもない男に真名を許すなんて、特別な理由があるとしか思えないんだけど。」
「一刀さんは私にいろんなことを教えてくれたんです。天のこと。料理のこと。何より、私は戦う力がない、皆さんが無事に戻ってきてくれることを祈ることしかできない。お役に立てないって言ったんです。そしたら、祈って待つことは月にしかできないことなんだよ。待っててくれる人がいるから俺たちは戦えるんだよって言ってくれたんです。それから自分の中にあったモヤモヤが晴れてスッキリしたんです。それからでしょうか。一刀さんは私の心の拠り所になってたんです。」
「なるほどね。惚れちまったってことかい。」
「ほ、惚れ・・・へぅ///」
「そこまで言っておいて気付かなかったのかい・・・。」
「董卓ちゃんは初心なんだ。そのくらいにしておいてやれ。」
「そうだね。」
そんな話をしているうちに一刀さんが桃香さんを連れて戻ってきました。今、一刀さんのお顔を見れる自信がありません・・・へぅ///
・・・
「初めまして、劉玄徳です。」
「ご丁寧にどうも。私は馬騰。いつも蒼が世話になってるね。」
「蒼さんは働き者ですからとても助かってます。」
「使い倒してやってくれていいからね。力と体力だけがこれの取り柄だから。」
「頭が固くて悪かったな。どこぞの誰かさんに似たんだろうよ。」
「まぁこの馬鹿は置いておいて、劉備さん。北郷殿から話は聞いている?」
「はい。私も行きます。同じ劉姓を持つ人ですし、何よりご主人様が行くのに私が行かない理由がないので。」
「ご主人様?北郷殿のことかい?」
「はい♪」
「ふーん♪」
え?馬騰さんがにやけ顔で俺のことを見てくるんだけど・・・。いや、その呼称が原因だって分かっているんだけどね。今更変えさせるわけにもいかないし。
「まぁ、それは置いておこう。では三人とも朝廷まで来てくれるということで良いのかい?」
「はい。」
「同じくです。」
「私もです。」
「分かった。一応護衛と軍師も一緒に連れてくるといい。何が起こるかわからないからね。」
「分かりました。」
「では、お昼ご飯を食べてから出発しましょう。馬騰さんもご一緒しませんか?」
「是非いただくよ。」
「じゃあ私は愛紗ちゃんたちにこのことを知らせてくるね。」
「うん、お願い。」
俺たちは昼食を済ませると馬騰さんと共に朝廷へ向かうことにした。行くのは俺と桃香、その護衛に愛紗、軍師として朱里。月にその護衛、恋、軍師として詠だ。まぁ、出発したときに少し離れたところからあからさまに尾行してるのが二人ほどいるのは気にしない。あの存在感は貂蝉と卑弥呼。もしものときのためだろうから。・・・朝廷内では騒動を起こさないように後で言っておくか。
・・・
俺たちが朝廷に到着した翌日、俺たちは曹操さん、孫堅さん、孫策さん、馬超さん、白蓮に昨日貂蝉と卑弥呼が連れてきた袁紹と袁術と共に謁見の間で待機していた。袁家二人は俺が連れてくるのを忘れていたから連れてきてくれたらしい。ちなみに、貂蝉と卑弥呼は外で待機してもらっている。流石に城の中に入れるわけにはいかないからね。
「漢王朝皇帝、劉協様、ご入室!」
俺たちはその場で臣下の礼を取り片膝をついた。皇帝の入場だけで場の空気がこんなにも変わるのか。・・・予想以上だ。
「皆の者、面を上げて良いぞ。」
その言葉に俺たちは立ち上がり顔を劉協様へ向けた。この方が劉協様か。幼帝と言われていても纏っている雰囲気は皇帝そのものだ。幼帝とは言っても見た目は俺の三つから四つ下くらいに見受けられる。しかし、どこか無理をしているように見えるのは気のせいだろうか・・・。
「董卓よ、此度の件は大変だったな。まぁ、無事でなによりじゃ。」
「私には呂布さんに張遼さんがいます。それに、劉備さんや北郷さんが助けに来てくださったので。」
「報告は真であったか。ところで、その劉備と北郷という者はどこにおる?」
「はい。」
「は、はい!」
俺と桃香は一歩前に出た。桃香は相当緊張しているようだ。手と足が同時に出てるし。
「ただいま董卓様より紹介を受けました、北郷一刀です。こちらの劉備様の下で武官をしております。」
「劉備玄徳です。ご主人様と共に平原の相をしています。」
「ご主人様?」
「あ・・・やっちゃった。」
「し、失礼しました。この北郷一刀と共に平原の相をしています。」
「? 劉備、北郷はそちの臣下なのであろう?」
「形式上はそうなっていますが、私たちは二人で相をしていますのでどちらも同じ立場だと考えています。」
「そうか。おっと、話が逸れてしまったな。では、本題に入ろう。まずは劉備に北郷、朕の友、董卓の危機を救ってくれたことに礼を言う。ありがとう。」
劉協様が俺と桃香に頭を下げた。皇帝に頭を下げられては流石に俺も焦った。桃香も同じようだ。
「劉協様、頭をお上げください。私たちは董卓たちが友で大切な仲間だから救ったのです。当然のことをしたのですから礼を言われることなど何もしていないのです。」
「そうです。皆大切な仲間で友達なんです。助け合うのが当たり前なんですから。」
「そちたちは謙虚なのだな。そして仲間を大事にしておる。良いことじゃ。それでじゃ、此度の活躍を評して太傅。そして太師をやってみぬか?」
「え!?」
劉協様の発言にその場にいる皆が驚いた。相から太傅、太師なんて絶対に有り得ないものだから。太傅、太師は太保とならんで名誉職にあたる役職だ。三公の上に位置する非常置官で、天子が幼年の場合に代わって政治を司り、同時に天子の教育に当たる。臣下の官職の最高位だが、非常設の名誉職に過ぎず、同じく非常設の大司馬、大将軍を除き実際は三公が中央政権の頂点になるものだ。三公よりは格下とは言ってもいきなり朝廷の一角を担うことになるなんて前代未聞だ。
「朕も考えなしに言っているわけではないぞ?そちらのことは董卓からよく聞いておる。劉備は中山靖王劉勝の末裔というではないか。身分には何も問題はない。それに、たくさんの家臣や民から慕われておる。今の朝廷には無いものじゃ。しかも、何進が死んでからは朝廷の内部は安定しておらんからの。誰がどの役職に就いておるとかはハッキリと決まっておらんのじゃ。北郷の身分は分からぬが、家臣や民に慕われておる。他にも武官として実力もあり、聞けば文官としての仕事も出来るらしいの。朕は皇帝じゃがまだ幼いのは重々自覚しておる。経験が足りんこともな。そこで朕に情勢や勉学を教えて欲しいのじゃ。頼めないだろうか?」
「・・・すみません。私たちにはまだやるべきことが残っておりますので。失礼を承知ながら断らせて頂きます。」
「私もご主人様と同じで断らせてください。私の思いから始めた旅に賛同してくれて私に力を貸してくれる人たちがいるんです。そんな人たちがいるのに私がそれを途中で諦めるわけにはいきませんので。」
「そんなに頭を下げんでも良い。朕も強制しておるわけではないのでな。それならばたまに朕の話し相手になってくれまいか?朕の話し相手はこの馬騰と董卓くらいだしの。これは朕からのお願いじゃ。」
「それなら私は全然構いませんよ♪劉協様とお話したいな~って思ってましたので。ね、ご主人様。」
「勿論。私も友達が増えるのは嬉しいので。」
「いや、朕は話し相手にと・・・。」
「? それは友達と変わらないんじゃないんですか?」
「ご主人様は上下関係なく友達なんです。だから私たちは臣下であり仲間であり友達なんですよ♪」
「友達・・・か。うむ。悪くない。劉備、北郷、そちらは朕の二番目の友達じゃ。一番は董卓じゃ。」
「ありがとうございます。」
劉協様は結構親しみやすい人みたい。これからも仲良くなれたらいいな。
「よし、次じゃ。曹操、孫堅、孫策、馬超、公孫賛。そなたらは連合側じゃったが途中で連合の間違いに気づき脱退したと聞いておる。よって・・・お咎めなしじゃ。」
「ほっ・・・。」
どこからか安堵の溜息が聞こえてきた。おそらく馬騰さんが根回ししたんだろうな。
「次、袁術。そちは袁紹と結託し洛陽を攻め自分のものにしようとした。そちは一月間、荊州での謹慎処分に処する。」
「ま、待って欲しいのじゃ!妾は麗羽姉様に騙されただけなのじゃ。洛陽を手に入れたら分け前を与えると言われて・・・。」
「分け前に目が眩んだというのが一目瞭然じゃ。罪状は変わらぬ。これ以上物申すことはあるか?」
「・・・。」
「ないようじゃな。」
袁術は特に考えなく賛同したんだろうな。軍師の張勲が止めるところじゃないんだろうか・・・。
「最後、袁紹。そちは自分の至福を肥やすために洛陽を狙い自分のものとした。朕と董卓の仲を知っておいてじゃ。そちの罪は重いぞ。豫州、州牧の役を罷免とする。一度己のしてきたことを反省すると良い。」
「なっ・・・。」
袁紹は顔色が真っ青になりショックが隠せないようだ。ここからどう改心するか、見所だな。
「これにて連合での件の会議を終了とする。」
その言葉に俺たちは城を後にしようとすると劉協様が俺に声をかけてきた。
「北郷、そちに話がある。一緒に部屋まで来てくれぬか?」
「? 分かりました。」
「劉備よ、少しの間北郷を貸してもらうぞ。」
「はい。じゃあご主人様、私は朱里ちゃんたちにこのことを報告してくるね。」
「うん、お願いね。」
俺は劉協様と共にお部屋までついていく事にした。それにしても、なぜ俺だけなんだろう?
・・・
「ここが朕の部屋じゃ。馬騰、少しの間二人っきりにさせてくれぬか?」
「分かりました。北郷殿なら心配いらないので、ごゆっくりしていていいですよ。」
「は、はぁ。」
「では入って良いぞ。」
「失礼します。」
部屋に上がらせてもらうと予想したほど部屋は広くなかった。今平原で使っている俺の部屋と大して変わらない広さだ。それにしても殺風景な部屋だな。テーブルと椅子、それに本が数冊に水差しに寝台。窓は締め切られていて少し暗い印象を受けた。
「何もない部屋で退屈じゃろうが、まぁ椅子にでも腰掛けてくれ。」
「はい。」
おぉ、少し緊張してきたぞ。何を聞かれるやら。聖桜をテーブルの上に立てかけて椅子に腰掛けた。
「いきなり呼び出してすまないな。いくつか聞きたいことと頼みたいことがあっての。」
「私でよければお答えしますよ。」
「そうか。ありがたい。では、その・・・友達とは何をすればいいのじゃ?」
「・・・はい?」
思いもしなかった発言に素っ頓狂な声が出てしまった。いけないいけない。
「朕には劉弁・・・兄しかいなくてな、それほど仲の良い人物がおらぬのじゃ。身分の問題もあっての。董卓とは他と比べて仲の良いのに変わりはないのじゃが、少し話をするくらいで他に何をすれば良いのか思いつかなくて困っておるのじゃ。」
「なるほど。特に深く考える必要はないのですよ。その人と気兼ねなく話したり一緒にご飯を食べたり、一緒にいて楽しいと思える人は友達と思っていいでしょう。劉協様の身分で遊びに行くというのは少し無理があるので割愛させていただきました。」
「ふむ。では次じゃ。先ほど謁見の間で言ったことじゃが、太傅をそちに任せようとしたのは覚えておるか?」
「はい。」
「そのことじゃが、太傅にはならんでもよい。じゃが、たまに・・・時間のあるときでよいのじゃ。朕に勉学と武術を教えてくれぬか?皇帝になっても経験が足りん。このようでは十常侍たちに利用されるのは目に見えておるのでな。」
「分かりました。それでよければ私がしましょう。しかし、私は少しばかり厳しいですよ?」
「そちらの方が朕にもやり甲斐があるというものじゃ!」
後に一刀のかなりのスパルタに何故こんなことを頼んだのかと後悔しかけるのはまだ先のおはなし。
「では最後じゃ。最後は頼みなんじゃが、朕の兄、劉弁は今十常侍に監視されておる。日に数回は目にしておるのじゃが日に日に弱っておるのが分かるのじゃ。出来れば、十常侍の手から兄を救ってくれまいか?」
「それは少し時間が掛かるかもしれませんがよろしいですか?もちろん早いうちに救い出す努力はしますが。」
「そうか、よかった。城内の者ではいつ、やつらの耳に入るか分かったものではないのでな。悩んでおったのだ。礼を言うぞ。」
「いえいえ。ところで、一つ質問をしてもよろしいでしょうか?」
「うむ、良いぞ。」
「劉弁様が兄ということは普通ならば劉弁様が皇帝に即位されるのではないのですか?」
「それは・・・いろいろと理由があるのじゃ。」
劉協様が言葉に詰まった。何か深刻な問題があるようだ。深くは詮索しない方がいいよな。
「そうですか。ですが、相談したいときは遠慮なく私に言ってください。一人で抱え込むよりは誰かと考えたほうがいい案が生まれるものですから。」
一刀が劉協に微笑んだ。劉協はその笑顔にドキッとしてしまった。そのように言ってくれた人がいなかったからだ。少しばかり劉協の顔が赤くなった。
「どうしたのですか?お顔が赤いですよ?」
「!・・・なんでもない!」
? まぁいいか。
「話は以上じゃ。そちと話せて有意義であった。機会があれば次はもっとゆっくり話そうぞ。」
「はい。楽しみにしときますね。」
俺は劉協様の部屋をあとにした。
「あ、馬騰さん。待ってたんですね。」
「一応見張りをしておかないといかんのでな。劉協様の印象はどうだった?」
「思ったより親しみやすい方でした。」
「そうか、それは良かった。あの方はたくさんのものをあの小さな肩に背負っているのでな。私や董卓もそうだが北郷殿もあの方の支えになってやってほしい。」
「分かっています。私も困っている人をほっておけるほど器用に出来ていませんので。」
「お主はやはり期待を裏切らないな。これからも長い付き合いになるだろうが、改めてよろしく頼みますぞ。」
「ええ、こちらこそ。」
俺たちはがっちりと握手すると俺は城を後にした。
・・・
「劉協様、失礼します。」
「ええ、どうぞ。」
「北郷殿の印象はどうでしたか?」
「不思議な方ね。皇帝ならもっと緊張するか媚を売ってくるのが普通だと思ったのだけど。私の質問や頼みにも嫌な顔一つせずに二つ返事で了承してくれたし、私のことを友達だと言ってくれたわ。それに・・・あの人の笑顔が素敵。」
「惚れたのですか?」
「惚れっ・・・そうね。惚れたのかも。」
話してみて分かった。私は彼に惚れてるのね。私に近づいてくる男たちは私でなく私の地位に目が眩んだ者たちばかりだったから。けど彼は『私自身』を見てくれていた。もっと話したい、もっと一緒にいたいと感じた。
「暑くて汗かいたから着替えを手伝って頂戴。さらしもきつくて息苦しいし、かつらもあまりしておきたくないの。髪が痛みそうだから。」
「分かりました。」
・・・
「ご主人様、劉協様から呼ばれたと聞いたのですが、もう要件は済んだのですか?」
「あぁ、ちょっとした相談を受けてきただけだよ。」
「そうですか。」
なかなかに有意義な時間だったな。もっと時間があれば良かったんだけど、俺たちも洛陽に戻って皆に報告しないといけないからね。
「あれ?ご主人様、腰に差してた刀はどうしたの?」
「? あ、劉協様の部屋に忘れてきた!ごめん、ちょっと取ってくるね。」
「では私たちはここでお待ちしていますね。」
「うん!」
俺は駆け足で劉協様のお部屋へと向かった。急がないと、お部屋を出られていたら聖桜を取るのに時間がかかるからな。俺はお部屋の前に到着すると軽くノックをして相手の返事を待たずに扉を開けた。
「え!?」
「・・・誰?」
そこにいたのは馬騰さんに着替えを手伝ってもらっている女の子が一人。一瞬劉協様に見えたが胸は結構ふくよかだし腰も細いし綺麗な薄桃色の長髪をしている。・・・あれ?馬騰さんが手にしているのは劉協様が着ていた服に見覚えのある髪のかつらにさらし。つまり・・・劉協様って女の子だったの!?
「は・・・は・・・」
「早く後ろを向いてください!あんまりじろじろ見ないで!」
「は、はい!」
俺はその言葉に瞬時に後ろを向いた。これが俺と劉協様・・・後の薔薇(そら)との出会いだった。
あとがき 第四節終了です!長かったー・・・。いやー疲れました。第四節ラストですので少し長くなってしまいました。劉協様、女の子にしちゃいました。ちなみに薔薇(そら)は劉協様の真名です。読み方に関しては薔薇、『ばら』の他に『そうび』『しょうび』とあったので当て字になってしまいましたが結構名前的にもキャラ的にも結構気に入ってます。理由としては、薔薇のように美しい容姿であり、空のように広く大きな心。そのようなところからこの名前にしました。次回からは第五節、群雄割拠編に突入しますが一旦、平原に戻ります。それでは次回:第五節 姜維と徐庶と奴隷解放 でお会いしましょう。
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何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。