No.518384 IS x アギト 目覚める魂 07: 決闘i-pod男さん 2012-12-14 09:15:04 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:3410 閲覧ユーザー数:3272 |
そして決闘当日。ピットで一夏は待っていた。
「・・・・・何やってんだよ、運送業者は?!」
一夏は苛立ちながら手近なコンテナを蹴り飛ばした。
「一夏、落ち着け。」
秋斗が肩を叩く。
「俺が先に行って場を繋いでやる。それまでに届いたら、パーソナライズとファーストシフト終わらせろ。」
「・・・・うーっす。」
「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な、て・ん・の・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り・・・・決まりだ。」
指を鳴らし、光に包まれると、即座にISが展開され、長髪が揺らめいた。
「さてと。行くか。」
カタパルトに足を乗せると、アリーナに飛び出した。
「何と言う速度だ・・・・あそこまでのスピードを出してGの影響を受けない筈が」
「大丈夫だ。あの人は並大抵の人間じゃ無い。代表候補じゃ、相手にもならないさ。あの人が本気を出したら、そうだな・・・・・うん、二分もかからない筈だ。」
箒の言葉を遮り、一夏はそう言い切る。相変わらず指でテーブルをトントンと叩いているが。
「良く来ましたわね。逃げたかと思いましたわ。」
「時と場合によるが、九割の確率で俺は逃げも隠れもしない。じゃあ、始めようか?」
「貴方に最後のチャンスを差し上げますわ。このまま戦えば貴方の負けは目に見えています。今この場で許しを乞うなら、まだ許して差し上げない事もなくってよ。」
「チャンス、ねえ。んー・・・・断る。悪いが、投了する事になるのはお前の方だ。」
武装も展開せずにきっぱりとそう言い切る。
「そう、でしたら・・・・」
『警告:敵武装安全装置解除、確認。ロックされています。』
「お別れですわね!」
セシリアの六十七口径レーザーライフル、スターライトmkIIIが火を噴いた。だが、突如左腕に現れた丸鋸の様な緑色のシールドが現れる。レーザーが当たった瞬間それが消えた。
「なっ!?何ですのその武装は?!」
だが、次の瞬間、答えの代わりに羽のデザインが付いた防具型武器ユニット、インパクト・アーマーを使った左ストレートの一撃が正確に彼女の腹に命中した。
「アッ・・・カハッ・・・!?」
「一に衝撃、プライム・インパクト。」
更にその場から後ろに回り込み、イグニッションブーストで飛び蹴りを背中に叩き込む。
「二に撃滅、クラッシュ・インパクト。」
「アウッ!?」
初撃以外は全く手を出せない状況に陥ったセシリアのシールドエネルギーはどんどん削られる。二撃目で空に打ち上げられるが、まだ意識は保っている。
「ブ、ブルー・ティアーズ!」
腰のフィン型アーマーの四つが外れ、レーザーを撃って来る。
「おっと。」
だが、その内の二つは秋斗がガードディバイダーを展開して、投げ放つ事によって真っ二つに切り裂かれ、撃墜されてしまった。
「教科書通りのビット運び・・・・学校の匂いがプンプンするな。自分なりの戦い方を見つけてみろ。俺が何の予習も無くノコノコと戦いに来たと思ってるのか?ご自慢の弾道ミサイルをまだ残してる事は、知ってるよ?さっさと使ったらどうだ?切り札は最後に取っておく物、と言うが、使い所を誤らずに使いこなせてこそ初めて切り札と呼べるんだ。」
「凄い・・・・本当にISを動かしたのが二回目とは思えない・・・代表候補を相手に互角以上に渡り合うなんて・・・」
「篠ノ之、正確には三回目だ。確かに、門牙の実力もあるが、オルコットの慢心も奴の勝因だ。素人と思ってなめてかかったのが運の尽きさ。しかし、あいつの適応能力、反応速度は確かに異常だ。アリーナの監督を昨日やっていたので見たが、あの時一度だけしかISを起動していなかった。それにとても素人の動きとは思えない。あいつは、一体何者なんだ・・・?」
箒と千冬はこの圧倒的な力量の差を見て舌を巻いていた。もっとも、千冬はそれを表に出してはいないが。一夏は腕を組んだままスクリーンを見ていた。
「お、織斑君!来ました、来ましたよ!織斑君のIS!」
「待ちくたびれた。待ってる間に勝負がついちまったら何にも出来なくなる。」
大きなコンテナが中に運び込まれた。それを開くと、一夏は直ぐにそれに搭乗した。
「フォーマットとフィッティングが早く終われば良いが・・・」
「よいしょっと!」
バスタークリムゾンで残りのビットを全て切り落とす。秋斗のシールドエネルギーは全く減っていない。大してセシリアは半身不随、ボロボロだった。ISも所々装甲が剥がれている。
「さあ、どうする?ビットは消え、君の機動力も下がった。残りの武器はそのライフルと、弾道ミサイルのみ。シールドエネルギーもかなり減ってる。どう見ても起死回生の一手なんて物は無い。切り札があるなら、もうあの時点で使っていた筈だ。降伏した方が懸命じゃないの?これ以上続けたいなら、怪我だけじゃ済まないよ?これを決闘と君は呼んだ。決闘とは命のやり取り。つまり、勝つ為には君の命を奪う事になる。」
「お黙りなさい!男の癖に・・・男の癖に!」
「三に抹殺、ジェノサイド・インパクト!」
碌に狙いもつけずに乱射されるレーザーの雨をかい潜り、右アッパーで打ち上げる。
「四に、落下、ドロップ・インパクト!」
イグニッションブーストで再び空に飛び上がり、空中で前転しながら勢いを付け、踵落としを決めた。そのままPICを切り、重力に従って落下して行く。そしてセシリアを地面に叩き付けると同時に自分はギリギリの所で再び空に舞い上がり、着地した。
『シールドエネルギー、エンプティー。勝者、門牙秋斗!』
「勝利は射程内だった。結局負けを認めなかったその度胸は認めざるを得ないな。ま、精々その『楔』の痛みにもがき苦しむが良いさ。」
バスタークリムゾンを肩に担いで拳を突き上げた。歓声が爆発する客席。だが、秋斗の表情は依然として変わらない。セシリアが担架で運び出されるのを尻目にアリーナで待っていると、専用機、白式を纏った一夏が飛来した。赤いバイザーに隠れて目、口元はクラッシャーに隠れて見えない。名前に白が入っているのに、ウィングバインダーや手足が深い緑色だった。
「ほう。それがお前のISか。」
一夏は右手に雪平をコールし、振り下ろす。
「遠慮は無しです。俺も、強くなりましたから。」
実際そうだった。何度も死にかけたが、再三再四試した甲斐有って、遂に一夏は生身でフレイムセイバーを自在に扱う事に成功し、それだけに留まらず下級アンノウンを何体か葬っている。剣一本でも、充分戦えるだろう。
『試合開始!』
ブザーを皮切りに、バスタークリムゾンと雪平が火花を散らしてぶつかり合う。だが、近距離からもう一方の手でUZIの形をしたソウブラスター・ネオをコールし、至近距離で連射した。だが、それを予測していたのか、スラスターを吹かしてハンドスプリングをするかの様に後ろに回り込んで回転をしながら斬りつける。だが、やはり後ろに持って行ったバスタークリムゾンに防御された。
カシャコン!
本能的にマズいと感じたのか即座に離れる。バスタークリムゾンが振り下ろした刃は、地面を抉っていた。蒸気の様なもやが上がる。
「勘が良いな。」
「一応、ね。」
正に一進一退の戦い。観客は固唾を飲んで見守る。
「強い・・・・あれで、本当に機動が二回目なんですか・・・・!?」
「一夏が、あれ程までに・・・・」
山田先生と箒はただ、そうとしか言えなかった。十六歳位の男子が臆せず退かず、まるで歴戦の猛者の様に立ち回っている。それも、たった一つしか無い武器で。
「しかし、どう言う事だ・・・?何故ファーストシフトをした後に、いきなり色が変色してバイザーやマスクが現れた?それに、あの戦い方・・・まるで得物を持った野獣だぞ。動きは速い。無駄も無い。が、滅茶苦茶だ。だが、その滅茶苦茶さ故に動きの予想もつかない。」
「ウオォオオオオオオオオオオオオ!!!」
「ハアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ぶつかり、ぶつかり、ぶつかり、離れる。お互い一歩も退かず、攻防を繰り広げていた。だが、息があがっているのは一夏のほうだった。
「あの楯と槍みたいな武器・・・・何なんだ?!」
「こいつか?トライランサーは伸縮する槍、トンファー、薙刀に変わる武器だ。まあ、少々扱い難いが。」
「言ってくれるな・・・・扱い難い割には随分上手い事使ってるし。」
ソウブラスター・ネオの銃撃を回避し、再び特攻しながら攻撃を仕掛ける。そして、目を見開く。そしてイグニッションブーストを使って加速。
『ワンオフアビリティー:零落白夜発動』
更に加速。錐揉み回転も加え、遠心力によって一撃を強化する。
「ウォリアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
そして、一閃。空間を切り裂くのではないかと言う程の勢いの付いた振り。その一撃は、秋斗のシールドエネルギーを瞬く間に奪って行く。更にその零落白夜が足にまで広がり、後ろ回し蹴りを叩き込んだ。
『両者、シールドエネルギーエンプティー。引き分けです!』
「やっぱりか・・・・全力で使ってみたが、エネルギーの効率が悪過ぎる。これ欠陥機だな。(不完全なアギトである俺には丁度良いかもしれないが。)」
(そうだ・・・・あれは絶対そうだ・・・・見つけた・・・一夏・・・・!!!)
そしてその夜。
「「「「織斑君、一組代表就任おめでとう!!!」」」」
クラッカーが鳴って一夏の周りに女子が・・・・・
「・・・・・・門牙さん、辞退しましたね。」
それは質問ではなく、確信。一夏は秋斗を睨み付ける。
「そりゃそうだろう?毎回毎回対戦相手にトラウマ植え付けてたら後々困るだろうが。それに、便宜上は一年だとはいえ、俺は十八だ。それに、お前には良い経験になるだろう?」
「・・・分かりましたよ・・・・やればいーんでしょ、やれば。」
もう投げやり感、無気力感丸出しの返事だ。
「素晴らしい戦いでしたわ、一夏さん。そして先程は失礼いたしました。」
「良いんだよ、そう何度も謝らなくても。分かれば良いんだ。男だろうが女だろうが、常に上には上がいるって事が。まあ、あれはやり過ぎたかもしれないけど。」
一夏はグラスに入っていたコーラの残りを飲み干して欠伸をする。久々に体を激しく動かして疲れている様だ。
「はいはーい、ちょっとどいてねー。新聞部の黛薫子でーす!織斑君と門牙さんにちょっと聞きたいんだけどー・・・・って、あれ?門牙さんは?」
「俺が、どうしたって?ふーっ・・・」
いつの間に背後に回ったのか、耳元でそう囁き、耳に息を吹き込んだ。
「はわひゃいっ?!」
そのリアクションに秋斗は腹を抱えて爆笑し始めた。笑い過ぎて柱に凭れ掛かったが、直ぐに落ち着いた。
「おほん!では、改めて幾つか聞きたいんですけど。」
頬を真っ赤にしてボイスレコーダーを秋斗に向ける薫子。先程の失態が余程恥ずかしかったのだろう。
「ISを起動したのってまだ三回目とかだよね?強さの秘訣は?」
「・・・・・特にこれと言って無いな。まあ、強いて言うなら見極め、位か。それしか思い付かないわ、ウン。あの時は向こうが油断してたから勝てたって言うのもあったし。後はもうホントがむしゃらに、ね。」
「ほうほう。では、次に。誰か『狙っている』方は?」
「うーんとねー・・・・本当に知りたい?」
(あ、またからかいに行くな。)
わざとらしく考え込むポーズを取った秋斗を見て、一夏はそう思いながら再びコーラを一口啜る。
「人気者だな、一夏。」
「そう見えているならお前の目は立派な飾り物だ。俺はKYにならない為に参加してるだけだ。誰が好きで来るかよ。元々クラス代表なんてやる気も無かったんだ。」
ふて腐れる箒の言葉を一蹴してこめかみを押さえる。
「勿論知りたいよ!」
「・・・・・黛さんです。」
「え・・・・・えええええええええええええええええーーーー!?!?!?!」
「どっちにします?テイクアウトか、それとも、ここか?」
秋斗はここにいる生徒達全員よりも背は高い方だ。手をゆっくりと頬から顎の下へと移動し、往復させ、唇にそっと触れた。
「キュウ・・・・・・・」
「あらら。からかっただけなのに。初心なんだから。年上をからかうもんじゃないよ?俺は年上狙いだ、と入ったけど、特に誰を狙ってるとかは無いから。」
オーバーヒートで処理落ちした薫子を椅子に座らせてボイスレコーダーを止めた。
「他に何か質問は?」
だが、全員は自分も同じ様な目にあってしまうのだろうと考えると、恐ろしくもあるが、やられてみたいと思う気持ちもある。だが、結局は笑顔に圧されて諦めた。
(何はともあれ、俺は質問攻めに遭わずに済んだな。門牙さん、グッジョブ!)
その後対戦相手+代表候補の写真を撮られたが、その時一夏の手を握ってセシリアは顔を赤くしていたのは、原作通りと言う事で。
そして次の日、
「今日は実技を行う。十分後に第二アリーナに集合しろ。ISスーツを着用する事を忘れずに。それが無ければ学校指定の水着で来い。それすら無ければ、まあ下着で構わんだろう。」
(良くねえよ・・・・約二名良くねえよ。)
と言う事で、アリーナに向かう事になった。アリーナに集合すると、一夏、秋斗、セシリアの三人が専用機を展開した。何でも簡単な飛行の実技を一般生徒に見せる為らしい。
「展開スピードは問題無い様だな。では、飛べ。」
「ィヤッハァー!」
「フッ!」
「行きますわ!」
一夏、秋斗は先陣を切って猛スピードで飛行していた。
「オー速い速い。」
「しかしまあ、これどうやって動いてんだ?」
「教えて差し上げるのは構いませんが、時間はかかりますわよ?反重力の論理など」
「ああ、気にするな。俺は頭で覚えるより体で経験した方が分かるんだよ。」
一夏はぶんぶんと頭を振って否定した。
『一夏、何をしている?!早く降りて来い!』
『織斑、門牙、オルコット、地上への急降下だ。目標は地表から十センチだ。』
「では、お先に失礼しますわ。」
言うが早いか、セシリアは急降下してそのまま地表から十センチ丁度の所で静止する。
「行くか。」
「へ〜い。」
二人は突然あろう事かPICを切り、そのまま頭から地上に向かって突っ込んで行った。
「「ィイイ〜ヤッハァアアアアアアーーーーーー!!!」」
迫って来る地面、顔に吹き付ける風。全てが心地良い。流石はノーヘルでバイクスタントを日夜続けていただけの事はある。変身した時のバイクのスピード(一夏は木野さんのバイクを使ってギルスレイダーを乗り回していたり、マシントルネイダー・スライダーモードに同乗していたり。)とあまり変わらない。そして地上とのさがほぼ一メートル近くになった所でPICを再び起動させた。地表との差は・・・・十センチだった。
「馬鹿者、見本にすらならない事をするな。一歩間違えば死んでいるぞ?」
「ご心配無く。成功する事は、分かっていましたから。」
「俺は数ミリのずれが生じたがな。10.7センチだ。」
「まあ、良いだろう。では、次に武装を展開しろ。まずオルコットだ。」
セシリアは左手を上げると、そこに光が集まり、スターライトmkIIIが現れた。安全装置も外れて直ぐにでもロック出来る状態だ。
「まあ、この位は当然だな。しかし、銃口を横に向けて織斑を撃つつもりか?その癖は直しておけ。」
「しかしこれはイメージを纏めるのに大事な」
「二度は言わん。直せ。」
「・・・・はい・・・・」
「織斑、門牙、お前達の番だ。」
両手の指を鳴らすと、秋斗の右手にはバスタークリムゾン、左手にはソウブラスター・ネオが握られていた。一夏は正眼に雪平を構えている。
「ふむ・・・織斑は武装がそれしか無いから良いとして・・・オルコット、近接武装を展開してみろ。」
「はい・・・・」
だが、光が点滅するだけで、何も現れない。
「ああ、もう!インターセプター!」
彼女の手に、短剣らしき物が現れた。
「遅いぞ。何をやっている。懐に入られたら終わりだぞ?」
「だ、大丈夫です!そうなる前に撃ち落としますわ!」
「ほう、年上とは言え素人と嘗めてかかった相手にボロ雑巾の様にされたと言うのにまだそんな事が言えるのか?」
「うぐ、それは・・・・」
真っ向から正論を言われて黙り込むセシリア。
「門牙、他の武装も展開しろ。」
言われる通りにインパクトアーマー、ガードディバイダーも展開した。
「ふむ、スピードはあるな。」
こんな感じで、日は過ぎて行った。
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決闘編、開幕です。お待たせしました。