「ちょっとよろしくて?」
「駄目。今忙しい。区切りがつくまで出直して欲しい。」
一夏は現在パソコンを開き、ノートに片手で持ったペン二本で色々と書き込み、参考書を空いた手で開き、付箋を付けたりしていた。
「貴方の意見等聞いていませんわ。」
だが、一夏は作業の手を止めず、三十秒後にようやく区切りがついたのか、手を止めた。
「で、何?用事があるなら十秒以内に言って。セシリア・オルコットさん。」
「何ですの、そのお返事?!私が」
「イギリス代表候補生に対して何て口の聞き方をしてるんだ、とでも言いたいのか?悪いけどいきなり喧嘩腰で話しかけて来る相手が反発しないと思う方が可笑しいぞ?」
セシリアを遮り、言葉を続ける。
「それに、代表候補生なら一般生徒なんて歯牙にもかける必要が無いだろう?理由は分からないけど、ワザワザ俺の所に来るなんて、もしかして暇?」
「なっ・・・」
そしてタイミング良くチャイムが鳴る。
「くっ・・・・また来ますわ!逃げない事ね!良くって?!」
「言われるまでも無い。俺は逃げも隠れもしないさ。」
「新入生の事で騒ぎがあったから忘れていたが、クラス対抗戦に向けて、代表を決めねばならない。言ってしまえばクラス委員みたいな物だ。自薦他薦は問わない。」
授業が始まって千冬がそう言い渡した。そして、
「はい、私は織斑君を推薦します!」
「私も私も!」
「じゃあ、私は門牙さん!」
僅か一分半。ほぼ真っ二つにクラスの意見が割れた。
「ちょっと、俺やるとは一言も」
「自薦他薦は問わないと言った。推薦された以上は腹を括れ。」
舌打ちこそしなかったが一夏は顔を顰め、忌々しそうにデスクをトントンと指で叩く。面倒ごとは出来る限り避けたいのだ。只でさえ肩身が狭い生活が待っていると言うのに・・・・
「んじゃ、俺はセシリア・オルコットさんを推薦しよう。彼女だって代表候補だ。それに、専用機を持ってるんだから、勝率は高いと思うしね。」
後ろで足を組んでのんびり座っていた秋斗は手をヒラヒラさせて能天気に口を開く。
「・・・・馬鹿にしてますの?」
「流石代表候補生、良くお分かりで。」
それを聞いて、一夏は不覚にも思わず笑ってしまった。そしてセシリアの顔はたちまち怒りと羞恥で真っ赤に染まる。
「け・・・・・決闘ですわ!貴方の様な極東の猿に侮辱されて引き下がっては英国淑女の名が廃ります!」
「英国淑女が怒鳴り散らすなんて、大人気無いな。良くそれで淑女なんて呼べるもんだよ。それに、もし俺が極東の猿なら、君は只の暴君だね。まるでアメリカを植民地化して虐げていた
「なっ、何と言う事を・・・!!」
遂に耐え切れず、一夏は爆笑し始めた。
「だめだ・・・・ウケル・・・・・!」
「門牙、そこまでだ。それ以上オルコットを刺激するな。(流石に哀れだ。)」
「これは失礼、先生。でも、決闘、ねえ。古いけど、面白そうだ。俺は受けるよ。一夏はどうする?」
笑いの発作がようやく治まり、一夏は息を整える。
「面倒事は出来るだけ避けたいんだけど・・・・ま、良いか。肩ならしにはなるだろうし、一々ピーピー言われ続けてたら俺も頭が痛くなる。来るなら全力で来い。手加減したからこっちが勝ったなんて負け惜しみは聞きたくないからな。」
「織斑君、それ本気で言ってる?」
「ああ。俺は本気だ。門牙さんも俺も、勝つ確率は十分にある。」
「減らず口を・・・!!負ければ貴方達二人を私の小間使い、いえ、奴隷にしますわよ!」
「では、決まりだな。三日後に、第二アリーナでクラス代表決定戦を始める。」
「そんな後ですか?俺は、今でも行けるんですけど。」
「何・・・?どう言う事だ。」
秋斗は左手首のバングルと、右手の指に嵌ったアーマーリングを見せる。
「な、専用機・・・・・それも、二つ・・・?!」
「どこでそれを手に入れましたの?!」
「それは教えられない。後、織斑先生、それは半分正解です。左手のコレは、厳密に言うとISに近い物、モドキですよ。詳しい事は機密事項なので話せませんけどね。今からでも、始められますよ?織斑先生♪」
そんな屈託の無い笑顔に、千冬は何故かゾクリと背筋に鳥肌が走り、悪寒を感じた。その笑顔は、明るくも、どこか冷たい。
「アリーナの都合がまだついていない。それまで待て。」
「了解で〜す。」
「ふう・・・・」
食堂で向かい合って座る一夏と秋斗。食後のアイスコーヒーを飲んでいた。
「門牙さん、本当の所どうなんですか?」
「勝つ自信はあるよ?けど、問題は、俺はまだこのどちらも起動していないと言う事。ま、行き当たりばったりも楽しそうだけど。」
「何と言うか・・・門牙さんらしいね。」
「一夏、一体どう言うつもりだ?!」
食べ終わったらしい箒がズカズカと歩み寄って来る。
「どう言うつもりって、何が?」
「相手は代表候補だぞ?!決闘等と・・・・何故そんな安請け合いをする?!お前はISに乗ったのは入試の時たった一回だけだ!連続稼働時間も向こうが圧倒的に上だ!どう考えてもお前に勝ち目は」
「「だったら何さ(何だと言うんだ)?」」
二人が箒を遮る。
「連続稼働時間の比較は確かに力量と経験を計る為には最も簡単な数値だ。だが、所詮はデータだ。データの上を行けば、そんな物只の数字・・・・いや、ゴミでしか無い。経験は当然大事だが、それが全てとは限らないんだよ。」
「それに、シンクロ率が高ければド素人が経験者を倒す事だってありえる。俺達二人の適性ランクは、Aを超えてるらしいからな。正確には、一夏がA+、俺がS-って所だ。何の考えも無しに俺達が何かをすると思うな。策は常に打っている。」
「う・・・・」
「心配するな。死にはしない。」
一夏は微笑を浮かべて箒の頭を撫でてやる。
「言いそびれていたが、久々に会ったけど・・・・・綺麗になったな。ポニーテールも相変わらずだ。」
「ば、馬鹿者!いきなり何をする!?」
ザザザザザ・・・ザザザ・・・ザザザザザザ・・・・
「「っ?!」」
二人は突如顔を上げる。頭の中で聞こえるノイズ。それは・・・・
((アンノウン・・・・!))
「一夏、行くぞ。」
二人は並んで食堂を出て走り出した。そして、グラウンドで発見する。大量の灰と、衣服が散乱している様を・・・・・
「「変身!」」
二人は窓から飛び降りてグラウンドに降り立った。丁度縞馬型のアンノウン、ゼブラロード・ノクティス、ディエスの二体が逃げを打とうとしている所だ。
「グルルォォオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ギルスに変身した一夏はギルスクローを伸長、ゼブラロード・ディエスに斬り掛かる。
『ブルルルルルゥアアアア!!!』
蹄鉄の形をした武器で応戦するが、野獣の如きパワーと俊敏さを誇るギルスには全く当たらない。寧ろ返り討ちになるばかりだ。
「ウォォオオオオオオオオオオオオーーーーーーーー!!!!」
踵から刃が伸びると、地を蹴って飛び上がり、空中で一回転しながらその刃、ギルスヒールクロウを叩き付けた。軸足で後ろに蹴り飛ばして着地すると、ゼブラロード・ディエスは爆散した。
「ふっ、はっ、ふん!たあっ!」
一方、アギトはグランドフォームのまま無駄の無い動きでゼブラロード・ノクティスを追い詰めていた。得物を失い、闇雲に攻撃するアンノウンは、成す術無しだ。
「そろそろ、終わらせてやるか。」
右腰のスイッチを叩いてフレイムフォームに変わると、フレイムセイバーをオルタリングから引き抜いた。鍔に付いたクロスホーンが展開し、刀身に熱が籠って行く。玉砕覚悟で走って来るゼブラロードを擦れ違い様に真っ二つに切り裂き、振り向きながらもう一太刀浴びせた。セイバースラッシュの炎に包まれながら頭上に発光体を浮かべ、同じく爆散した。
「けど、何でここにまで、アンノウンが・・・・?」
「ワザワザ俺達を追って来た、とか?執念深そうですしね。」
「うん・・・・けど、アギトの因子を持ってるのは俺達以外にもいると言う可能性は考慮するべきだ。特に織斑先生とかはね。」
「はい。」
二人は再び変身解除しながら校舎の中に入ると、窓を閉めた。
「あ、織斑君、門牙さん、忘れる所でした。これがお二人の部屋の鍵です。失くさない様に注意して下さいね。」
そこへ突然、狙い澄ましたかの様に山田先生が現れる。
「でも、確か自宅登校じゃなかったか・・・・・・?」
「まあ、そうじゃないにせよ、荷造りはしてあるんだ、問題はあるまい。」
鍵を受け取ると、二人は廊下を歩いて行く。
「隣だな。」
「よろしくお願いします。」
一夏は1025、秋斗はその隣の1024にそれぞれ入って行った。
「俺は一人部屋か・・・・まあ、良かった、と言えば良いのか?」
スーツケースがそこに置いてある所を見ると、荷物は無事に届いたらしい。隣はまあ大丈夫そうだ。大した騒ぎが起きている様にも思えない。
「後は・・・・」
床に触れて目を閉じた。頭の中に様々なイメージが浮かび上がる。何者かの、恐らく男の、足。それが洗面所、テーブルの前、ランプの横等に移動している。それらの場所を注意深く探ってみると、盗聴器、カメラ等が見つかった。
「やっぱりな。やるだろうと思ったぜ。そこまでして、
それらを踏み潰し、ゴミ箱に投げ捨てた。
「一夏。話してくれ。一体何があったのだ。音信不通だったこの六年間、一体何が・・・?」
「俺は変わってしまった。それだけの事だ。」
「それだけでは足りない!もっと、こう・・・・あるだろう、何か?!」
「あったさ。だが、一口には言えない。いずれ話す、それぐらいは約束する。今はそれで我慢してくれ。」
「しかし」
ダンッ!
「俺に・・・・同じ事を、二度言わせるな。過去に何があったか、それは俺の問題であり、俺だけの問題だ。俺がけじめをつける。時間はかかるだろうがな。それに、人のプライベートに無理矢理ずけずけと土足で入り込むのは、良く無いぞ。」
壁の一角を殴り付けて低く唸り、外に出た。寮長室の扉をノックすると、千冬がドアを開けた。
「・・・・一夏・・・・・・・入れ。」
言われるまま中に入ると、千冬に抱きしめられた。
「ちょ・・・・何・・・・?」
「少しこのままでいさせてくれ・・・・・昔が、懐かしいんだ・・・・」
「そう言えば、昔は一緒に寝てたんだっけ?毎回俺が悪夢を見るから・・・・でも、もう大丈夫だよ、千冬姉。俺は、強くなるから。なりたいから。」
暫くそのままでいたが、一夏は部屋を見回した。服が散乱し、ゴミが散らばり、家政婦ですら目を覆いたくなる腐海と化したその部屋を・・・・
(まずは掃除の仕方から教えなきゃな。)
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セシリア登場です。後、アンノウンとの戦闘描写はちょくちょく入れて行きます。