第百五十一技 悪意と対策
キリトSide
それは俺達が76層のボスを倒し、77層を解放してから二日目の朝に起きた。
「なん…だよ……これ、は…」
俺はその日の新聞を読んで驚いた…いや、驚く以外のことができない。
そこに、朝食の後片付けを終えたアスナが来た。
「どうしたの? キリトくん」
「……これ…」
俺は読んでいた新聞をアスナに渡して見せた。
「? えっと……なっ!? なん、なの…これ…」
彼女も驚愕と動揺の表情を浮かべる。新聞には三枚の写真が載っている。
一枚目の写真には『血盟騎士団』、『聖龍連合』、旧『アインクラッド解放軍』の鎧を身に纏った三人の男性が写っていた。
全員が顔を晒したまま恐怖に怯えている。
二枚目には三人の体に多量の武器が刺された写真が写されている。
そして三枚目には三人がポリゴン化して消滅していく様が写っており、その後ろに二人の男が立っている。
最悪の腐れ縁である二人だ。
「公開処刑写真ということか……PoH、ジョニー・ブラック…」
後ろに立っているのは『ラフコフ討伐戦』以来一度も姿を現さなかったPoHとジョニー・ブラックの二人だった。
またPoHの手には一枚の紙があり、そこにはたった一言『It’s show time』とだけ書かれていた。
「なんで、こんなこと…!」
「楽しんでいるだけか、或いは……宣戦布告、かもな…」
「宣戦布告?」
「楽しむだけなら別に普通のプレイヤーでもいいはずだ。
それを態々、危険を冒してまで攻略組トップのギルドと数で誇る軍のプレイヤーを選び、
公開処刑に似た方法を取るというのは、宣戦布告ともとれる」
アスナに考えを伝えてすぐに、俺は周囲に《索敵》と気配の察知を行った。
結果は問題なし。再びアスナと会話を続ける。
「可能性の話しだが、『黒衣衆』または『嘆きの狩人』への
「っ!? あいつらは、キリトくん達の正体を知っているの?」
「いや、知らないだろうな。あいつらとは両方で因縁があるだけだ」
あいつらとは黒衣衆として殺し合い、狩人として殺し合ってきた。
第2層の暗躍、睡眠PKを含むPK技の考案、『圏内事件』への介入、
『脱獄事件』そしてラフコフ討伐戦といった様々な因縁。
ラフコフ討伐戦においては黒衣衆で参加し、俺は
さらにハジメはザザを倒し、『黒鉄宮』へと送った。
幸いにも脱獄事件の時は奴の脱獄を阻止することができた。
呪いのように俺達と奴等には因縁がある。
「どのみち、一度各ギルドと集まって話し合う必要があるな…」
「そうだね……騎士団とDDAから被害が出たもの、両方とも黙っていないと思うわ。
特にこんな挑発染みたものをしていると、余計にね」
「ああ。みんなとヒースクリフ達にも連絡を入れよう」
俺は手早く、片っ端から知り合いにメッセージを送った。
無事であることと会議を行った方がいいという旨を伝えるために…。
俺の知人一同は全員無事だった。無論それは普段交流がある者だけではない。
新生『MTD』代表であるシンカーとユリエールさん、教会のサーシャさんと子供達、
カインズとヨルコさんに連合のシュミット、ラルドさんにアルゴ、マスター達も無事だった。
また、ヒースクリフやウェルガー、他の攻略組の安全も確認がとれた。
そして、『ラフィン・コフィン対策会議』が決定した。
午後一時。会議は75層、俺とヒースクリフが戦った闘技場で行われている。
メンツを紹介しよう。
黒衣衆からは俺とアスナ(最早黒衣衆扱いらしい)、年長者であるシャイン。
騎士団からはヒースクリフと護衛としてフリック。
連合からはウェルガーとDF部隊リーダーのシュミット。
新生MTDからはシンカーとユリエールさん。
各小規模のギルドからはリーダーのみが来ており、風林火山からクライン、黒猫団からはケイタが来ている。
エギルを含む攻略組のソロプレイヤー達も何人か姿を現している。
ちなみに残りの黒衣衆や黒猫団、風林火山のメンバー、
さらにリズとシリカは1層にてサーシャさんと子供達のガードを行っている。
「では諸君、これより『ラフィン・コフィン対策会議』を行う」
ヒースクリフの宣言を受けて全員が頷く。
「みなも知っての通り、あのPoHとジョニー・ブラックが姿を現した。
加えて我が血盟騎士団とウェルガーの聖龍連合、
あと元とはいえ、シンカー君の部下であった計三人のプレイヤーが犠牲になった」
シンカーの証言で軍の鎧を装備していたプレイヤーは確かに元軍の者だった。
というのも処刑された元軍の者はキバオウ一派の者だったらしい。
だからこそ、奴らの標的にされたのかもしれないが…。
「だが正直に言ってしまえば、対策というのも難しいと思う。そういうわけで、まずは基本方針を決めよう」
ヒースクリフが示した基本方針。
一つ目は攻略組以外はフィールド及び迷宮への進入禁止。
二つ目は攻略組はフィールドや迷宮に進入する際は出来れば十人、最低でも五人で行動すること。
三つ目は他のプレイヤーも圏内とはいえ決して一人では行動しないこと。
以上の三つだ。
「そして対策というわけではないが今回の一件が終息、
少なくとも落ち着くまでの間はフィールドや迷宮などの攻略を遅れさせることを提案したいのだが…」
「俺は賛成だ。攻略の勢いを保つのもいいが、攻略を進めて攻略組のみんなの命を危険に晒すわけにはいかない」
「こちらも賛成です。できれば下層の警備を強化したいと考えています」
ヒースクリフの提案にウェルガーとシンカーさんも賛成し、他のプレイヤー達も賛成した。
確かに、いまのところはこれくらいしか打てる手はないだろうな。
最終的に情報屋への情報収集依頼、各自警戒態勢を取るということで、今回の会議は終了した。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
という感じになりました~。
何故公開処刑の写真が手に入ったのかは簡単です、新聞を作るプレイヤー達にばらまくんですよ。
ちなみに、次回はキリト達仲間内での対策となります。
それでは・・・。
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第百五十一話です。
動き出すラフコフ残党に、キリト達はどうするのか?
どぞ・・・。