第百五十技 色々祝おう
キリトSide
昨日のボス戦(あと夜)の疲れもあってか、目を覚ましたのは午前九時。
丁度アスナも目を覚ました。アスナが朝食を作っている間、俺は新聞を読んでいた。
俺達の時同様に、シャイン達のことが載っている。
『新たなユニークスキル、今度は五人!』、『またもや黒衣衆、彼等は最早希望の星!』というのが書かれていた。
そこで朝食を作り終えたアスナが料理を運んできた。それらが置かれて彼女が隣に座る。
「それじゃ、いただきます」
「いただきま~す」
朝食を取り始める。アスナは俺にピッタリと寄り添いながら食事を進めていく。
さすがに昨日の今日では、まだ中々離れるのは難しそうだと思い、
アスナに気付かれないように思わず苦笑する。
その時、≪記録結晶≫による写真が添付されたメッセージが届いた。
送り主はハクヤ。アスナと一緒にメッセージを開くとそこには、
―――『俺達、結婚しました』
この言葉と共にハクヤとリズが腕を組んでいる写真が出てきた。
「まったく、ようやくか…」
俺は二人の想いが繋がったことに安堵した。
この二人は随分と遠回りになったが、これで大丈夫だろう。一方で…、
「………」
アスナは呆然としていた。
「おい、アスナ?」
「キリトくん……夢じゃないよね?」
「あ、あぁ、現実だな」
「……った、よかった…」
「アスナ…」
彼女は泣いた。だけどそれは悲しみからではなく嬉しさからだと分かる。
かつて俺がアスナにプロポーズした時のように。アスナは親友の夢が叶ったことが嬉しいんだ。
「そうだな…精一杯、祝ってやろうな」
「(ぐすっ)うん♪」
俺達はすぐさま食事を終えて、みんなに連絡を取った。
第25層にある黒衣衆の隠れ家・『隠の家』、そこに俺達は集まった。
25層といえばかつて『軍』が多大な被害を被ったことで有名だ。
死者が多数出たこともあり、ここに近づきたいと思うものは少ないだろう。
それを隠れ蓑にして、俺達黒衣衆はこの層のフィールドにある一部だけモンスターが出現しない
森の中に隠れ家を構えたわけだ。
とまぁ、そんな話は置いておこう。折角の祝いだからな。
この場には毎度お馴染みのメンバーが揃っている。
俺達黒衣衆、アスナ、リズ、シリカ、クライン、エギル、黒猫団という面々だ。
ちなみにこの場には≪回廊結晶≫を使って移動してきた。
この家がバレるわけにはいかないからな。
「みんな、飲み物は行き渡ったな? よし、そんじゃ、今回も俺が音頭を取らせてもらうぜ」
シャインの言葉に、全員で笑みを浮かべて頷く。
「みんな知っての通り、今回のメインはハクヤとリズちゃんの結婚祝いだ。
それと一緒に俺はいくつか祝いたいことがある。
まずは76層の突破。ボスを打ち倒せたんだ、俺達自身も祝っていいことだと思う。
んで、もう一つは……キリト、ハジメ、カノン、そんで今回の主役の一人でもあるハクヤの生還だ。
四人が生きていたからこそ76層の突破、そんで今回の二人の結婚も為せたと思うんだ。
だから……76層突破、四人の生還、ハクヤとリズちゃんの結婚を祝して、かんぱーい!」
「「「「「かんぱーい!!!」」」」」
それぞれが持つ飲み物が入ったコップをぶつけて宴会が始まった。
「リズ、おめでとう!」
「おめでとうございます、リズさん」
「おめでとう、リズ」
「リズさん、良かったですね」
「おめでとう。ホントに良かったわね」
「ありがとう、みんな///」
アスナ、シリカ、サチ、ティアさん、カノンさんの女性陣はリズに祝いの言葉をかけていく。
かくいう俺以外の男性陣もハクヤと肩を組んだり、背中を叩いたりと言い方は悪いが群がっている。
俺は暑苦しいのは面倒なので離れてその様子をみている。というのも、どうにも嫌な予感が拭えない。
いまこの時にではなく、すぐに訪れることになるであろう77層に対してだ。
75層に比べ、圧倒的に強くなった76層のボス。
乱入してきた堕天使モンスター達、それ自体は構わない。
ボス戦に取り巻きのモンスターがいることは多々あった。
だが今回の問題点はその強さだ。攻略組でも手を焼く能力を持つ取り巻きなどさすがにいなかった。
特に50層を越えた辺りからは取り巻きモンスター達は出現しなくなったと言っても過言ではない。
だがそれも、四分の三を越えたからかもしれないという推測ができる。
それでも茅場が少し手を加えたのではとも考えられる。そして一番気に障るのが…。
「(ボソッ)根深い悪意……」
武を身に着けたことで、最も役に立ち、最も察知したくないものだ。
俺は笑顔を浮かべている仲間達に目を向ける。そうだな、例えなにがあっても…、
「守る為なら……頑張るしかないよな…」
みんなを守ってみせる…そう心に誓った。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
キリトさんのハイスペックぶりを発揮しました(悪意探知)w
まぁ、これが新ストーリーに繋がるんですけどね・・・。
新ストーリーはずばり「悪意の騒乱編」・・・またの名を「ラフコフ騒乱編」ともいいます。
次回から始まるラフコフの行動、それを追うキリト達。
是非お楽しみに・・・。
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第百五十話です。
最後の部分は、タイトルに反してキリトがシリアスを醸し出します。
どうぞ・・・。