No.512460

~サクラチル~ 「1話 ユメミルオトコ」

タカさん

どうも皆さん、タカと申します。

プロローグに続いて、とりあえず一話めも投稿しますww

挿絵はおまけ程度なのであまりお気になさらず 汗

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2012-11-26 18:18:03 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:786   閲覧ユーザー数:742

 

◆まえがたり

 

『やぁやぁ、久しぶり・・・・かどうかは人によるか』

 

『前回のプロローグでは、少し物足りないと思った者も多いだろう』

 

『だが今回からは、いよいよ本当の意味で物語のはじまりだ』

 

『前回桜の下で約束を交わした二人はいったい誰なのか・・・・・それもいずれ明らかになる』

 

『想像するのは勝手だが、あまり考えすぎず物語を楽しむと良い』

 

『さぁ、あまり俺の話を長くして読む気を無くしてもらっても困る』

 

『前口上はこのくらいにして、そろそろ語り始めよう』

 

『ではでは、物語の始まりだ』――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

◆1話 ユメミルオトコ

 

―――――――夜。

 

深い深い森の奥で、男が倒れていた。

 

 「・・・・・ゲホッ!!」

 

咳と共に、口から血がほとばしる。

 

しかしそんな者は些事だと思えるほど、男は既に自らの流した大量の血の池の中に倒れていた。

 

手も足も、腹も背中も傷を負い、そこから次々と自分の血液が失われていくのを感じる。

そんな状況でもなお、男は生きる事を諦めなかった。

 

 「・・・・・・く・・・・・・そッ」

 

自分に迫っている結末を拒むように、力を振り絞ってなんとか右手を夜空へと伸ばす。

 

こんな時だというのに空には雲ひとつなく、満点の星と月が浮いていて、男にはその美しさが恨めしくさえ思えた。

 

 「・・・・・死ねるかよ。 こんな、ところで・・・・・っ」

 

血だらけの手を、震えながら夜空へ伸ばす。

 

既にその指先には、ほとんど感覚は残っていない。

 

 「守、るんだ・・・・・。 やくそ・・・・く・・・・・・」

 

伸ばした右手の小指を力無くたてて、そう呟く。

 

しかし男の言葉とは裏腹に、意識は徐々に遠のき始めていた。

 

 「なんだぁ? まだ生きてんのか?」

 

 「・・・・・・・・・?」

 

近くから、別の男の声が聞こえた。

 

だが、それは味方ではない。

 

その声の主は倒れている男の横に立つと、その顔を見下しながらニヤリと笑った。

 

 「安心しな、すぐに楽にしてやる」

 

そういうと、男は手にしていた剣を振りかざした

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

倒れている男は、とうとう死を覚悟した。

 

しかしそれでも、伸ばした手は降ろさない。

 

そして最後まで、大切な人の為に言葉を振り絞ろうと口を動かす。

 

 「・・・・・愛してる。 ずっと・・・・・・」

 「とっととくたばれっ!!」

 

男の最後の言葉を遮るように、無情にも剣は振り下ろされた――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ――――――――――――――――   ずっと君を、愛してる   ――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――「っ・・・・・・・・!!?」

 

ある一室で、青年は飛び起きるように上半身を起こした。

 

 「・・・・・・・・・・・・・」

 

少しの動揺を浮かべながら、部屋の中を見渡す。

 

石造りの壁、木製の家具・・・・・・よく見慣れた、自分の部屋だった。

 

それを確認し、青年は少し安心したようにため息を吐く。

 

 「夢・・・・・・・・か」

 

今が現実である事を確かめるように、掌を見ながらつぶやいた。

 

この青年の名は、王允子師(おういん しし)。 真名は、史貴(しき)という。

 

“一日に千里を走り、王佐の才”と評された、後漢の名士である。

 

 「最近は、あんまり見てなかったんだけどな・・・・・」

 

史貴は頭に手を当てて、今見たばかりの夢を思い出す。

 

夢にしてはあまりにリアルな、自分が殺される夢。

 

それも、夢の中の自分は、恐らく自分では無い様な気がする。

 

あの夢を見るのは、今回が初めてでは無かった。

 

 「・・・・・・・・・・」

 

顔を下げると、自分の髪が降りてきて邪魔だった。

 

背中まで伸びた、赤い長髪。

 

いつもそうするように、史貴はそれを後ろでひとつにまとめた。

 

 「史貴・・・・・起きて、る?」

 

 「?」

 

 

突然、部屋の入り口の方から声が聞こえた。

 

目をやると、ドアの隙間から知った顔がひょっこりと顔を出していた。

 

ピョンと飛び出た触角の様な髪が特徴の少女だった。

 

 「ああ、恋。 おはよう、起きてるよ」

 

 「・・・・起きてた」

 

史貴が起きていると見るなり、トコトコと歩み寄って来る。

 

恋と呼ばれたこの少女の名は、呂布奉先(りょふ ほうせん)。

 

恋は寝台に上がると、いまだに座った状態の史貴の足にまたがって馬乗りの様な状態になった。

 

 「おいおい恋。 これじゃ起きれないぞ?」

 

恋の行動に史貴は苦笑い。

 

それでもお構いなしと、恋は足の上に居座る。

 

 「・・・・・・・・・?」

 

 「ん? どうかした?」

 

どうやら恋が、自分の顔を不思議そうにのぞきこんでいるのに気づいて訪ねた。

 

 「史貴・・・・・泣いてる?」

 

 「え・・・・・・?」

 

恋の言葉に少し驚きつつ、自分の頬に触れる。

 

すると確かに、かすかだが濡れていた。

 「泣くのは、悲しい時・・・・。 史貴は、何か悲しかった?」

 

心配そうに、恋が眉を寄せている。

 

史貴は、笑って首を振った。

 

 「心配しないで。 ちょっと怖い夢を見たんだ」

 

 「怖い、夢・・・・・?」

 

 「ああ。 でも、もう大丈夫だよ」

 

わざわざ不安にさせることも無い。

 

夢の内容は、あえて言わなかった。

 

 「よし、よし・・・・・・」

 

 「恋・・・・・?」

 

突然恋が頭を撫でて来たので、史貴はすこしとまどった。

 

まるで、泣いている子供をあやすみたいに。

 

 「恋がついてる。 もう・・・・・怖くない」

 

どうやら、恋なりに気遣ってくれたらしい。

 

それがなんだか微笑ましくて、史貴は頭を撫でている恋の手をとって握り返した。

 

 「ありがとう。 もう怖くないよ」

 

 「・・・・・ほんと?」

 

 「ああ、恋のおかげだ」

 

 「♪・・・・・よかった」

 

史貴が笑顔を向けると、お返しにとばかりに恋も優しく笑う。

 

恋のこういう素直なところが、史貴は好きだった。

 

 「それより恋、何か俺に用があったんじゃないのか?」

 

普段、恋がこうして朝から部屋を訪ねてくる事はそう多くない。

 

気になって尋ねると、恋は思い出したようにコクリと頷いた。

 

 「・・・・・月が、読んでる」

 

 「月が・・・・・?」―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――◇――

 

ここは大陸最大の都、洛陽。

 

12代皇帝であった霊帝が死去し、13代皇帝である小帝を経て、現在は14代皇帝の霊帝が擁立されていた。

 

その霊帝を擁するのは、都にそびえる城の主、董卓。

 

史貴と恋が、月と呼んでいた人物である。

 

 

部屋を出た史貴と恋は、城にある玉座の間を訪れた。

 

 「ごめん月、遅くなったね」

 

 「ううん、こちらこそごめんね史貴。 今日はお休みのはずだったのに」

 

史貴が頭を下げると、まけじと申し訳なさそうに首を振る少女。

 

この少女こそこの城の主、董卓仲頴(とうたく ちゅうえい)である。

 

一見すれば、とても一城の主とは思えないほど華奢で、可憐な女の子だ。

 

 「まったく、休みだからっていつまでも寝てるんじゃないわよ」

 

月とは対照的に、隣で眉をつり上げているメガネの少女。

 

月の親友であり、軍師でもある賈駆分和(かく ぶんわ)だった。

 

 「もう、詠ちゃんったらまたそんな言い方して。 ごめんね、史貴」

 

 「月が謝ることじゃないよ。 それに、詠のトガリ口調はいつもの事だからな」

 

 「な、なによ! 私がわるいみたいじゃない!」

 

二人から攻められる形になり、一層眉をつり上げる詠。

 

これは、もはや日常の光景だった。

 

 「それで月。 俺に何か用かな?」

 

冗談もそこそこに、史貴が本題を切りだした。

 

 「うん。 詠ちゃん・・・・・」

 

 「ええ。 あんたと恋に、仕事を頼みたいのよ」

 

 「・・・・・恋も?」

 

史貴のとなりで、恋が自分を指さして首をかしげた。

 

どうやら、恋も内容は知らされてなかったらしい。

 

 「それは良いけど、仕事って?」

 

 「黄巾党の残党・・・・その討伐」

 

 「っ・・・・・・!」

 

聞いたとたん、史貴の表情が少し曇った。

 

黄巾党は、つい最近まで大陸全土を荒らしまわっていた反乱分子の事である。

 

そのほとんどが農民で構成されていたもののその数はすさまじく、大陸中が一時は大混乱に陥った。

 

事態を重く見た諸侯たちの手によって程なく鎮圧されたが、さすがに数百万にも上る黄巾軍を全て討伐する事は叶わず、いまだにその残党による被害が出ている。

 

だが史貴が表情を曇らせた訳は、相手がそんな巨大な反乱軍の残党だからではない。

 

彼の懸念は、違うところにあった。

 

 

 「戦い、か・・・・・」

 

 「そんな顔しないでよ。 あんたがこういう仕事嫌いだってのはよく知ってるわ。

  でも、今はあんたと恋しか城に居ないのよ」

 

史貴の表情を見た詠が、少し申し訳なさそうに言った。

 

彼の性格を、詠もよく知っていたからだ。

 

 

史貴は、優しい。 

 

優しいが故に戦いを嫌い、人を殺す事を拒む。

 

一騎当千とも言える武を持ちながら、その力を振るう事を躊躇う。

 

 そんな彼の性格を、詠だけではない、月も恋も、彼の仲間は皆知っている。

 

 「・・・・・ごめんね、史貴」

 

今日だけでもう三度目になる月のごめんねが、今回だけは重みが違った。

 

月も、史貴に戦いを強いら無ければならない事を申しわけなく思っている。

 

月もまた、優しい子だからだ。

 

そんな月に心配をけけまいと、史貴は無理やりにだが笑って見せた。

 

 「大丈夫だよ。 これが、俺の仕事だ」

 

きっとその笑顔がつくりものだと、その場にいた誰もが気づいている。

 

それでも、それ以上は誰も何も言わなかった。

 

 「それじゃあ、すぐに出発する。 行こう、恋」

 

 「・・・・・・うん」

 

踵を返し歩きだす史貴の後ろを、恋が追った。

 

 「史貴」

 

 「ん?」

 

しかし月に呼び止められ、一度立ち止まって顔を向ける。

 

 「・・・・気を付けてね」

 

 「ああ、すぐ戻るよ」

 

先ほどよりは、上手く笑えた気がした。

 

言葉と一緒に軽く右手をあげて、史貴は玉座の間を後にした――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

◆あとがたり

 

 

 『やぁやぁ、これで会うのは四度目か?』

 

 『これで一話目は終了だが、どうだったかな?』

 

 『もう言うまでも無いと思うが、史貴という男がこの物語の主人公だ』

 

 『彼が見た夢はいったい何なのか・・・・・・・?』

 

 『気になるところだが、それはいずれ明らかになるだろう』

 

 『次回はどうやら黄巾党の残党と戦うことになりそうだが』

 

 『さてさて、どうなる事やら・・・・・・・』

 

 『では、今回はここまでだ』

 

 『次の話しで、また会おう』――――――――――――――

 

 

 
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