第百十八技 黄金林檎
キリトSide
ヨルコさんは小さい声ながらも、かつてギルドで起こった出来事を語り出した。
彼女達が所属していたギルドの名は『黄金林檎』。
総勢八人で、攻略目的ではなく、一日を生きる為のギルドだったらしい。
しかし半年程前に、あるサブダンジョンに入ったところでレアモンスターと遭遇したという。
そのレアモンスターを運良く倒し、アイテムをゲットしたようだ。
アイテムは指輪で敏捷力を20も上げるというものだったのだ。
現在でもそれほどのアイテムは滅多にないだろうな。
「もしかして、その指輪が……」
「はい…。その指輪こそがギルド解散の原因なんです…」
指輪の用途を巡ってギルド内で意見が別れたらしい。
かなりの言い合いをしたが結局は多数決で決まったという。結果は5対3で売却。
ギルドリーダーが泊まり掛けで最前線の競売屋にアイテムを委託しに行ったようだが……待ち合わせの時間である、
次の日の夜になってもリーダーは帰って来なかったというのだ。
位置追跡に反応はなく、メッセージを送っても返信すらなかった。
そして『生命の碑』に確認を行いにいったところ、リーダーの名前が消失していたらしい。
「死亡時刻は…リーダーが指輪を持って最前線に行った日の夜中でした…。
死因は……『貫通属性ダメージ』だったんです…」
ということはあのPKの手口には意味があったということだ。しかし、そこでまた謎が浮上してくる。
「だが、そんなレアアイテムを持った状態で最前線のフィールドに出るとは思えないな。
『睡眠PK』か……いや、半年前ならまだ手口が広がる前だしな…」
「その時期なら、宿代を節約する為にパブリックスペースで寝る人も多かった頃だもの」
「偶然、ということもないだろう。リーダーを狙ったのは指輪の事を知っていた人物……つまりは…」
俺とアスナはその時期の様子を交えて会話をしていく。
そして俺は犯人についての目星をつけてヨルコさんに視線を向けると、彼女は頷き返した。
「残りの七人の誰か……私達もそう考えました。
だけど、その時間にそれぞれがどこで何をしていたかなんて事は証明のしようがなくて…。
お互いに疑心暗鬼になってしまって…、ギルドの崩壊に時間は掛かりませんでした」
たった一つのアイテムで仲間の輪が崩壊。
それ自体は少ない事ではないが、ここまでの内容ならばシュミットが話したくないのも肯ける。
そこで俺は気になっていたことを聞いてみることにした。
「指輪の売却に反対した三人っていうのは…?」
「前衛を担当していたカインズとシュミット、あとは私なんです。
実はその…、当時私とカインズは付き合いはじめたばかりで、私は彼の気持ちを優先しました」
そういうことか。まぁ、好きな人の為にというのは女性ならばそうするかもしれないな。
「だけど…ギルドが解散したことで、私達の仲も自然消滅したんです。
事件の事を思い出してしまうから…。でも、近況報告とかはしていたんです」
なるほど、それで昨日も二人で会っていたのか。そんな時に事件に巻き込まれた、と。
「それじゃあ、グリムロックはどんな人だったんだ?」
「彼はギルドのサブリーダーで、リーダーのグリセルダさんの旦那さんでした…」
黄金林檎のリーダーは女性のグリセルダさんという人だったそうだ。
片手剣の使い手でそれなりの実力もあったという。
グリムロックは彼女の夫でいつも笑顔を浮かべている優しい人だったそうだ。
しかし、妻であるグリセルダさんが亡くなったことで荒んだようになり、今はどこにいるのか分からないらしい。
愛した女性が殺されればそうなってもおかしくはない。
「最後に一つ…。凶器に使われた短槍の製作者はグリムロックだった。
彼が今回の事件の犯人という可能性があるんだが、どう思う?」
「……ありえると思います。昨日の事件の犯人がグリムロックさんだとしたら…、
指輪売却に反対した私達三人を殺すつもりなんでしょうね…」
そう言ってヨルコさんは雨が降りしきる外の景色を眺めた。
その後俺とアスナでヨルコさんを昨日の宿に送り、食料を渡した。
ついでに宿も数日間泊まれるように俺達で支払っておいた。
部屋からは絶対に出ないようにと、強く言い聞かせた。事件を早急に解決することを約束して。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
次回はみなさんお待ちかねのヒースクリフ登場。
そのさらに次はなんと、あの偽ラーメンことアルゲードそばの登場だw
是非まっていてくださいねw
では、また・・・。
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第百十八話です。
この話しは原作でも重要な部分ですので、自分はキリト視点で描かせていただきます。
どうぞ・・・。