第八十六技 神速と竜使い
ヴァルSide
「ここにくるのも久しぶりだな~」
僕は今、第35層の主街区である『ミーシェ』の街に来ています。
というのも、今日はシリカと会う約束をしていたからです。
メッセージでのやり取りはしているけれど、
直接会うのはキリトさんとアスナさんの結婚祝い以来だから、二週間ぶりくらいかな?
待ち合わせ場所の広場に到着するとそこにはプレイヤー達に囲まれているシリカがいた。
シリカはこのSAOでは珍しい『
しかも連れているのが〈フェザーリドラ〉というこれまた珍しいレアモンスターです。
加えて、シリカは可愛い容姿をしているので周囲からはマスコットのような存在でみられています。
本人はそういう風に見られるのが気に入らないようですが…。
「シリカちゃん。今日は俺達と組もうよ!」
「いや、是非俺達と」
「お前達はこの前組んでただろ。シリカちゃん、俺達と組もう」
「男ばっかりとじゃあれだから私達と組もうよ~」
「そ~そ~。ムサイ男達よりも私達と一緒の方がいいって」
「なんだとぉ!」
「なによぉ!」
「あ、あの、みなさん。あたし今日は約束が…」
複数の男性と数人の女性に囲まれて困惑するシリカがいる。
「シリカちゃん、俺達だよね?」
「俺達だよな?」
「いや、俺達と!」
「私達よね?」
「そうそう!」
「で、ですから~(汗)」
中々聞いてくれない人達にシリカは狼狽する。
そろそろ助けてあげないと大変な事になりそうだよね。
僕はシリカのいる人混みに近づいて、中央にいる彼女に声を掛けた。
「ゴメン、シリカ。待った?」
「あ…ヴァル君! えっと、大丈夫だよ」
「「「「「な、なに~~~!!!???」」」」」
「「「「「おとこ~~~!!!???」」」」」
僕とシリカのやり取りに男性陣と女性陣、双方共に驚いている。それはそうだと思う。
いきなり現れた男が自分達の話題の渦中にいる人物と親しそうに話をすれば驚くしかないよね。
さらにシリカは僕の腕に組みついてきた。前にも似たような事があったっけ……。
「みなさんごめんなさい。あたし、今日は彼と約束しているので…」
「そ、そんなバカな…!?」
「俺達のアイドル、シリカちゃんに男だと……」
「これはきっと夢だぁぁぁ!!!」
「シリカちゃんにもようやく春がきたのね…」
「よかった~。まともな男の子で」
「そうね~(あれ? この男の子…どこかでみたような…?)」
シリカの一言に男性達はショックを受けた様子で、女性達は何処かホッとした様子。
なんだかみなさん、色々と思うところがあるみたいですね。
特に男性の方々は絶望しているようですし。でも、僕だってシリカと…。
「みなさん本当にすいません。今日は失礼しますね。いこう、ヴァル君」
「うん。それではみなさん、失礼します…」
シリカが僕の腕に抱きついて
ちなみに、シリカの〈フェザーリドラ〉ピナは上空を飛びながら僕達についてきている。
ヴァルSide Out
No Side
二人が去っていった広場にはショックを受けて固まる男性陣と
普段は大人しいシリカがとった大胆な行動に唖然としている女性陣が残された。
そこで一人の男性が動き出す。
「こ、こうなれば、奴にシリカちゃんを賭けて
「はいはい、やめときなさい。あんたじゃどのみち勝てないわよ」
それを一人の女性が諫めた。
「やってみないとわからないぞ!」
「やらなくても分かるわよ…。さっきの彼、攻略組の『黒衣衆』よ」
「「「「「へっ?」」」」」
女性のその言葉に男性陣だけでなく、他の女性達も固まってしまった。
「ヴァルっていう名前とあの黒装束でわかったの。彼は【黒き閃光】だわ」
「「「「「ということは俺達に勝ち目は……」」」」」
「さらっさらないわね」
「「「「「ちっきしょおおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
この日、『ミーシェ』の街にモテない男達の魂の叫びが木霊した。
なお、この後この男達による八つ当たりの狩りにより、モンスター達が怯えていたというが定かではない…。
No Side Out
To be continued……
後書きです。
ヴァルとシリカのお話に入りました。
今回は少しコメディタッチにしてみました。
ボス戦で少し暗めでしたからね。
では、次回で・・・。
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第八十六話です。
今回からヴァルとシリカの話しになりますので。
ちなみにですが、キリトとアスナ、シャインとティア以外は
まだ付き合っていないことをお伝えします。
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