『さてさて、先鋒戦からいきなり波乱の幕開けとなりました、埼玉県地区大会決勝戦!前半戦終了時は残り点数19900点、絶対絶命と思えた月宮女子高校!しかし現在のトップはその月宮女子です!』
『月宮女子、綺羅星選手が意地を見せましたね、開幕の連続和了は凄まじかったです』
『そうですね、驚異的でした!おっとそろそろ次鋒の選手が入場してきますね』
---対局室
いち早く到着し、場決めを済ませたあかりが既に席についている、引いたのは西だ。
(な、なんだかドキドキしてきましたぁー…)
じっと待っていると他校の選手も続々とやってきた。
『よろしくなー』
『宜しく』
『…』
最後の名細の子は会釈だけで答える、それに気づきあかりは席を立ち
『あっ、よ、よ、宜しくお願いします!』
緊張丸出しだった。
東家 3年
南家 2年
西家 1年 棗 あかり(月宮女子)
北家 2年
『次鋒戦も各選手出揃いました!それでは、対局開始です!』
第15局 洗礼
東一局 親・日和見 静
(…とりあえず、様子見、かな)
日和見静は各選手を表情を伺う、初日の対局のビデオを見たりして多少なりとも打ち筋は研究してはいるが、実際に対峙した時の印象はまた違うことを静は知っている。とりあえず最初は出方を伺う事に決めたようだ。
『チーです!』
あかりが越谷女子、河野蘭子から3筒をチーする。
『ポンです!』
次順、静の打牌した7萬も鳴く。
『ロンです!えっとー、2000です!』
『あ、はい』
同順に当たり牌である2索を打った赤星來夢から2000点を和了した。
和了時のあかりの手牌
五五⑥⑦⑧34 ロン2 七〔鳴七〕七 〔鳴③〕②④ ドラ②
『おおっと!最初の和了りは月宮高校、棗選手です!喰いタンドラ1、2000点の和了でまずは軽く起家の親を流しました!次鋒戦はなんとも地味な立ち上がりです!』
『月宮高校、棗選手は1年生で公式大会初出場みたいですね、初日の対局でも鳴きを絡めた速度重視の手主体の打ち手の様です』
『ほほーそうなんですか!』
『公式戦で満貫以上の和了りしか無い先鋒の綺羅星選手とは全く対照的で、棗選手は満貫以上の手を一度も和了してません』
少し思わせぶりに、和がそう言う。
『原村プロ、それにはどのような意図があると思われますか?』
『はい、一つは彼女自身のプレイスタイルである可能性、もう一つは、ポイントゲッターである綺羅星選手の後続であるから、という可能性がありますね』
そう和に言われて、小考し、答える松浦。
『んーそれはつまり、彼女は自分は得点を稼ぐ役回りでは無いと、そう考えているという事でしょうか?』
『えっと、まあ大体その通りです、先鋒である綺羅星選手の作る大量リードを維持する為に早和了りで他家の逆転手を仕上がる前に予め潰す、といったリスクブレイクを行っているものとも推測出来ます』
『なるほどー、初日も綺羅星選手が大量リードを作り、棗選手が繋ぎ、中堅である折原選手が〆るといった理想的な流れでここまで来てましたしね、納得です』
『まあ勿論断定は出来ませんが、その様な印象を私は受けましたね』
そういって画面に視線を戻す和。
『しかし…今回はちょっと棗選手、初日の様にはいかないかもしれませんね』
『おお?それはどういった理由でそう思われたのでしょう?』
『初日の月宮高校は、先鋒綺羅星選手の活躍により、各試合、先鋒戦のみで2着の高校と10万点以上の差をつけていました。その場合、2着以降の高校の選手達はどう考えるでしょうか?』
質問に質問で返す和、松浦が考えた末こう返す。
『んー、もう無理だーって諦めるか、逆転目指してド高い手を仕上げようと思いますねー』
『最初のはどうかと思いますが…、後半の答えがまさにその通りです』
そのまま和が解説を続ける
『各家逆転目指してそれだけ重たい手を作っていれば、速度重視の彼女の和了速度に追いつける訳がありません。さらに言うと、和了チャンスも限られてる月宮以外の3校は容易にオリる事も、彼女の副露(ふーろ)牌を抑える事もままなりません』
『んー確かにそうですね』
『しかし今回は違います、確かにリードしているとはいえ、今回の和了りを含めても2着の越谷と22500点の差しかありません。それこそ12000点を直撃してしまうとあっというまに逆転されてしまいます』
そして更に続ける。
『もう一つ、ここが決勝の舞台であるという事、名門2校を含むここまで勝ち上がってきた強豪校の選手達相手にそれが通じるか、その辺りが注目点になりえるでしょう』
『なるほど、原村プロ、ありがとうございます、次鋒戦も目が離せませんね!』
東二局 親・河野 蘭子
『ポンです!』
1順目、蘭子の打った中をいきなり鳴いたあかり。
(んー、よく鳴く子だなあ…調子狂う)
んーっと唸って頭をかく蘭子。
『チー!』
更に鳴く。
『それもチーです!』
3副露もした甲斐あって聴牌したあかり。
(早く他家さんの親番を流さないと…!)
『自漠です!300・500です!』
2局目もあかりが和了、ノミ手で蘭子の親も蹴る。
『月宮高校、棗選手!またも早い手で越谷女子、河野選手の親も流しました!』
『打点的には今ひとつですが、トップである事を考えると上々の立ち上がりですね』
東三局 親・棗 あかり
『チーです!』
親番も快調に鳴いて手を進め、断ヤオ手を仕上げていくあかり。
『ポン!』
(よし、張りましたっ!)
あかりの手牌
二二③⑤678 ⑥⑥〔鳴⑥〕〔鳴五〕六七 ドラ二
断ヤオドラ2、待ちがカンチャンではあるが親番なので打点は5800点ある。
(ふふ、ルーキーさんには可哀想だけど…そろそろ痛い目見てもらおうかなっ)
『立直っと』
同順、來夢からツモ切り立直が入る。
勝負に行けない手なのか、静も蘭子も1打目から來夢の現物を手出しで打ち出す。
(あわわ、間に合いませんでしたぁー)
あかりのツモ番、あかりは7筒をツモる。
(安牌はないし、3筒か7筒を切ってテンパイ維持しよう、6筒3枚使っちゃってるから7筒切って4筒待ちっ)
ツモってきた7筒を切り出す
『ロン!』
『ひゃうっ!』
『立直一発断ヤオ赤3枚!12000!』
『は、はいぃ』
あたふたしつつも点棒を支払うあかり。
和了時の來夢の手牌
(赤五)六七③④(赤⑤)⑦⑦⑧⑧4(赤5)6 ロン⑦ ドラ二 裏北
(6筒ポンで鳴いてるから、断ヤオ手なら筒子の上の方が溢れると思ったけど、こんなにも上手くいくとはね)
思わず頬が緩む來夢、そして手牌を卓に落とす。
『おおっとー!月宮高校、棗選手!吾野の赤星選手に一発で振り込んでしまったー!これは手痛い出費です!』
『この和了ですが、恐らく赤星選手は棗選手を狙い撃ちにした意図が汲み取れます。』
來夢の和了を見て和は何かに気づき、そう言う。
『おお、そういいますと?』
『6筒を切る段階で既に聴牌していたのに、それを鳴かれたのを確認してからのツモ切り立直、更に言うと、7筒を切った方が2,5,8筒待ちの3面張になり、平和も付きます、その待ちを捨ててのあの7,8筒シャボ待ちは、6筒ポンで喰いタンでは6筒より上が使い辛くなり、6筒より上の筒子が溢れるのを狙ったものと思われます』
『なるほどー、あの和了りにそこまでの思慮が働いていたのですね、赤星選手、見事です!月宮のルーキー棗選手、強豪校の先輩から手痛い洗礼を受けた形です!』
東四局 親・赤星 來夢
(うんうん、いつも通り…)
來夢の配牌
四(赤五)九②(赤⑤)⑤⑥(赤5)678東南發 ドラ六
理牌し、南を捨てる。
---吾野高校控え室
『この大会のルールは、赤星にはいい条件だな』
『そうだね、來夢ちゃんは赤アリルールだと一段と強いもんねー』
『赤星先輩と同卓してると、何故だか赤ドラが絶対来ませんものね』
『來夢も、月宮の綺羅星と、同じ人種だからなぁ』
(妙ね…いつも通りなようで、何か違和感を感じる、なんでだろう?)
蘭子は小さな異変に気づきつつあった。
(吾野の人が和了して…、次鋒戦で初めて赤ドラをみかけた…まさか、ね)
静はそれとなく異変に気づいている。河を見回す、赤ドラは、無い。
自分の手牌に視線を落とす、赤ドラは、無い。
『立直!』
8索を打ち出し、立直宣言をする來夢。
親である來夢の立直に全員がベタ降り、そして5順後…。
『自漠!メンタンピンツモドラ4!、8000オール!』
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---月宮高校麻雀部での城山華南と麻雀部の仲間達の紆余曲折ありながらもインターハイ優勝を目指していく、もうひとつの美少女麻雀物語---