No.466983

真・恋姫無双 刀蜀・三国統一伝 第二節・ハムと常山の昇り龍と盗賊討伐 ~盗賊討伐から独立へ・・・はわわ!あわわ!編~

syukaさん

何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。

2012-08-08 03:56:29 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:11637   閲覧ユーザー数:8541

まえがき コメントありがとうございます。今回は本格的な戦闘に入ります。Wikipedia大先生とにらめっこしながらぼちぼち執筆します。一人オリキャラっぽいのが出てきますが、のちのち分かるのでそれまではオリキャラと考えていただいて構いません。ではごゆっくりしていってください。

 

盗賊討伐当日、愛紗は少し早めに起床し体をならすために少し外で槍を振るったあと一刀を起こすために一刀の部屋に向かった。

 

「ご主人様、朝です。ご起床ください。・・・っ!」

 

愛紗の視線には一刀しかいないはずの寝台になぜか桃香も横たわっていた。それを見た愛紗の顔をみるみる真っ赤になっていき口をパクパクさせていた。

 

「な!なななな!ななななななな!」

 

結構な声量に一刀は目を覚ました。一刀が目を覚ましたことを確認した愛紗はなおも落ち着かない状態だった。

 

「あ、愛紗、起こしに来てくれたんだ。おはよう。」

「おはようございます、ご主人様。」

 

何事もないかのように挨拶してきた一刀に愛紗も普通の反応をしてしまった。

 

「ではなく!何故ご主人様の寝台に桃香様が眠っていらっしゃるのですか!」

 

そういえばそうだったな。といった顔をする一刀。

 

「昨日の夜さ、俺が考え事・・・というか今日のことが少し不安で寝付かなかったんだ。そこで桃香が来て俺が不安にならないように落ち着かせてくれたんだよ。俺が誰かが傷つくのは見たくないんだ。って言ったら、私のことは愛紗ちゃんやみんながいるからご主人様は何も心配しなくていいんだよってね。まぁ、そのまま俺の部屋で桃香が寝ちゃって、昨日はいろいろとあったからさ。そこから起こすのもかわいそうだから俺の部屋で寝てもらったんだ。」

 

そんなことがあったのか。ご主人様の穏やかな表情から見てなにかあったようには考えられないし特に問題はないでしょう。

 

「そのようなことがあったのですか。桃香様はよくご主人様のことを見ていらっしゃる。」

「桃香がなんで俺の部屋に来たかは分からないけどね。」

「とりあえずはご安心ください。私や鈴々、星に白蓮殿もいるのです。桃香様には指1本触れさせません。それにご主人様もいるのです。私たちの手で桃香様をお守りしましょう。」

「そうだな。みんなで頑張ろう。」

「はい。」

 

俺と愛紗、お互いに微笑んだところで俺は桃香に視線を向けた。まだぐっすり眠っている。

 

「愛紗が来たってことはもう朝なんだろ。俺も桃香を起こしたら支度をして広間の方に向かうから先に行ってて。」

「分かりました。では失礼します。」

 

愛紗は一礼すると部屋を出て行った。さて桃香を起こそうかな。起こす前に体を起こそうとすると何かに手を引っ張られる。桃香に左手を握られていた。体を起こす前に桃香を起こさなければいけないらしい。少し役得だな。

 

「桃香、朝だぞ。起きろー。」

「んー、や。」

 

やって、そんなふうに言われてもな。寝ぼけて反射的に言っているのだろう。しょうがない、少しいたずらっぽいが。桃香の耳に息を吹きかけてみる。

 

「ひょわ!」

 

桃香は素っ頓狂な声を上げて起き上がった。

 

「おはよう、桃香。」

「あ、おはよう、ご主人様。ごめんね、この部屋で寝ちゃって。」

 

少し申し訳なさそうに言う桃香に一刀はいいよいいよ。と笑顔で言った。

 

「桃香の寝顔も見れたしね。」

 

そういうと桃香の顔が真っ赤になる。

 

「わ、私もご主人様の寝顔見たもん!ご主人様の寝顔、なんか小さな男の顔みたいで可愛かった♪」

「うっ!」

 

そういう返しが来るとは思わなかった。っていうかいつの間に寝顔見られたんだろう?

 

「とりあえず支度してから広間に向かうことになっているからさ。そろそろ桃香も部屋に帰って支度しておいで。」

「んー、もうちょっとご主人様とこうしていたいけど時間ないしね。じゃあご主人様またあとでね。」

「おう。」

 

桃香が出ていくと、俺は寝間着を脱ぎお婆ちゃんにもらったかたびらを着込み制服に着替え籠手をはめる。かたびらを初めて身に着けたが予想以上にしっくりくる。籠手は徒手を習う際に何度か身に着けたが以前使ったものより大分使いならされているように感じた。俺は部屋の隅に置いていた刀を腰に携え部屋を出た。どうか、この刀を抜くようなことになりませんように。俺が広間に入ると中には愛紗と星、それに白蓮がいた。桃香と鈴々の姿が見えない。

 

「あれ?桃香はさっき俺の部屋から出て行ったから分かるけど、鈴々は?」

「あやつはご主人様の部屋を出た後に起こしに行きましたがぐっすり寝ていましたよ。ったく、あまりに起きないのでたたき起こしてやりました。」

 

その光景が容易に想像できる。少し微笑ましい光景だなぁ。おおよそ十分後、桃香と鈴々が慌てて入ってきた。

 

「遅れましたー!」

「遅れたのだ!」

「鈴々、まだ寝癖が残っているぞ。少しじっとしていろ。」

「うにゃ。」

 

愛紗は鈴々の寝癖を手慣れた手つきで直していく。なんか本当の姉妹のように見える。鈴々の横にいた桃香も少しながらまだ寝癖が残っていた。

 

「桃香も他人ごとのように見てるけど寝癖、残ってるぞ?」

「えー!?結構頑張ったのにー。どうしよう・・・。」

 

俺は苦笑いすると桃香にこっちに来てと手招きする。桃香は恥ずかしそうに俺の横に来る。

 

「俺が直すからじっとしててな。」

 

俺は手櫛で桃香の寝癖を直していく。見た目通りサラサラで綺麗だ。

 

「おや、一刀殿はやけに手慣れているではないか。」

「まぁね。俺のお婆ちゃんが朝弱い人でね。度々寝癖が残ったまま居間に来るんだ。だから俺が結構髪を梳いていたんだ。お婆ちゃんっていっても見た目は二十代半ばって言われてもおかしくないくらいなんだけどな。よし、こんなものかな。」

 

一刀が話している間に髪を梳き終えたらしい。

 

「ありがとうご主人様。またお願いするね。」

「このくらいお安い御用だよ。いつでもどうぞ。」

 

空気がほどよく和んだところで白蓮が真剣な顔をして話を切り出した。その姿に俺たちは彼女に視線を移す。

 

「今日の盗賊討伐だが、敵勢力五千、こちらの勢力三千だ。数だけ見ればあちらの方が有利に見えるが向こうは作戦や陣形などないに等しい。こちらが敗れることなど皆無だろうが気を引き締めておくに越したことはない。では今から一刻後に出立とする。何か質問は?」

「異論なし。」

「では一刻後に門の前に兵を集合とする。解散。」

 

そう指示が飛ぶと、それぞれが行動に移った。そして一刻後、兵を引き連れ盗賊討伐のため俺たちは街を出た。俺たちは荒野の真ん中あたりまで来ていた。

 

「緊張するね~。」

「そうだな。でも大丈夫。みんながいるから。桃香が言ってくれたことだろ?」

「だね。」

「そうなのだ。鈴々がぶっとばしてお姉ちゃんたちを守るのだ!」

「俺も前線に出るからな。よろしく頼むよ。」

「我が軍の左翼、任せましたぞ。」

「おう!」

 

それから一刻後、伝令から報告が来た。

「伝令です。おおよそ一里先に賊と思われる集団を見つけました。」

「分かった。下がってよい。」

「では、失礼します。」

 

伝令が下がると白蓮が兵たちに通達をした。

 

「これより各隊に分かれ行動する。もう一度確認しておく。我々公孫軍は前線より突撃。敵の部隊と突撃した瞬間、両翼からの挟撃。これからの指令は各隊の隊長に任せる。それでは武運を祈る。」

 

そう言うと白蓮は賊の方へ直進していった。

 

「それでは北郷殿、桃香殿、愛紗、鈴々、我らも配置につこう。右翼は責任を持って私が指揮をとらせてもらう。武運を。」

 

星も自分の持ち場へ駆け出して行った。

 

「ご主人様、私たちも移動しましょう。」

「そうだな。」

 

俺たちも早速移動し各配置についた。挟撃にいく関羽隊七百、後方で桃香を守りつつ敵の脱走兵を逃さないための張飛隊百、敵将が待ち受けているであろう本陣に向かう俺の北郷隊百の配置。この兵の配置に俺の隊に兵が少ないと愛紗から抗議が来たが一つ俺に考えがあったためここは我慢してもらった。もし、もしも賊の将と話ができたら無益な殺生をせずに済むかもしれないと思ったからだ。

 

「ではご主人様、行ってまいります。」

「あぁ。愛紗、気を付けてな。武運を。」

「はい!」

 

愛紗も関の牙門旗とともに兵を引き連れて前線へ進行していった。

 

「鈴々、後ろの守備と桃香のこと、まかせるよ。」

「心配ないのだ!敵が来ても賊の百や二百、鈴々がこの丈八蛇矛でぶっとばしてやるのだ!」

 

鈴々が思いっきり蛇矛を振るった。振った勢いで砂塵が起きる。鈴々のコンディションも良さそうだな。これなら心配も杞憂というものだ

 

「ご主人様、ちゃんと戻ってきてね。」

「桃香も俺たちのこと、そこから見守っていてくれ。」

「分かった。」

 

俺も愛紗の部隊が前線の敵部隊と衝突したのを確認すると敵本陣に向けて出発した。その頃、盗賊の本陣は予想以上に前線が苦戦していることに、大将こと韓飛葉蓮(かんひ ようれん)が頭を抱えていた。大将といっても女性である。

 

「姐御!前線が押されてますぜ!どうしやすかい?」

「こちらからでも分かっています。少し落ち着きなさい。」

 

葉蓮は今起こっている可能性がある事柄を頭の中で整理していく。あちらの敵の部隊に相当な将がいるのかもしれない。集まった情報によれば向こうの部隊はこちらの半数しかいない。本陣に千人残していてもこちらの方が多いのは数字に表れている。さて、どうすればいいか・・・。いざとなれば私も前線に出るしかないか。腰に差している一振りの剣に手をかけたとき一人の兵が慌てて葉蓮のもとに駆け出してきた。

 

「姐御!もうすぐ前線が崩れる!俺たちも前線に向かおうぜ!」

「分かりました。」

 

葉蓮が前線に向かおうとするともう一人こちらに向かってきた。

 

「伝令!本陣に向かってくる少数の隊がこちらに向かってきます!」

「こちらにですか。旗印は?」

「十文字です!」

「十文字・・・聞いたことないですね。前線は後です。そちらに向かいましょう。」

 

葉蓮は兵とともに本陣に向かってくる少数隊の方へ向かった。その頃の北郷隊は・・・

 

「伝令です。賊の本陣が動きを見せました。こちらに向かってきます。」

 

「分かった。みんな!賊の部隊とぶつかったら三人で一人とあたって。自分が戦っているときに他の人が助けてくれるから。」

「御意!」

 

そうして賊の部隊と激突し戦闘が始まった。一刀も刀は抜かず拳で敵兵を屠っていく。しかし一刀が気絶させても他の兵たちはそうはいかない。味方の兵が、敵の兵が、それぞれの命を掠め取っていく。首が飛び、胴が分かれ、地面が血で染まり死体の数がどんどん増えていく。嫌でも視界に入り、吐き気と眩暈に襲われるがこんなときに倒れるわけにはいかない。倒れた時には俺も死体の仲間してしまうことになる。一刀は歯を食いしばり拳で敵の意識を奪う。そうして敵兵も減り、残りの敵兵が二百程度になり、こちらの部隊兵も五十程度になってしまったところで敵の大将と思われる人が出てきた。明るい緑の長髪で身長が俺より少し高い女性。俺はその人のところに向かった。一刀はその人物の正面に立つと口を開いた。

 

「あなたがこの賊たちの大将か?」

「そうよ。」

 

一刀は目の前にいる人物に少し違和感を覚えた。賊のわりにはあまりにも雰囲気が違いすぎる。そこで一刀は話し合いで解決できないか試みた。もし、何か理由があってこのようなことをしているのなら救ってあげたいから。しかし、どうしようもない外道ならこの刀、切り捨てる覚悟もできている。

 

「一つ交渉をしたい。どうかな?」

「?」

 

葉蓮は交渉を持ちかける目の前の青年に疑問を持った。私たちのような賊には問答無用で切りかかってくるものだ。私が逆の立場でもそうするだろう。しかし交渉を受ける価値はあるわね。

 

「まず聞きましょう。」

「ありがとう。」

 

一刀は頭を下げると交渉に切り出す。

 

「俺たちの部隊に降ってほしい。」

「・・・仮にも私たちは賊よ?裏切るとは考えないのかしら。」

「その考えもないわけではなかったよ。あなたを見る前はね。」

「どういうことかしら?」

「あなたの雰囲気があきらかに賊のものではないんだよ。街にいる女性と変わらない。何か賊にならないといけない何かがあると踏んで交渉を持ちかけたってわけ。」

「・・・そうね。私は・・・私たちの何人かはもとはある村の人間だったわ。」

 

悲しげな表情を見せた彼女に話を聞かせてくれないかと聞いた。

 

「私はあなたの敵よ。早く私たちの部隊を討伐した方がいいんじゃないの?」

 

一刀は持っていた刀を地に置いた。

 

「俺はこの間、あなたに攻撃しない。これでどうかな?」

 

そういうと葉蓮はため息をついた。

 

「はぁ。あなたって相当変わっているわね。」

「そうかな?困っている人がいると手助けしたくなる性分だから。」

「それが私みたいな敵にもそういうことをしているからよ。」

 

そう言うとかの葉蓮は思い出すかのように語りだした。

 

「私たちはある村で普通に暮らしていたわ。私は村長の娘で村の中ではそれなりに裕福だった。村人も畑を耕したり、家畜を育てたりで生計を立ててた。しかしある日、一年前くらいに朝廷の方から使者が来たわ。この村から立ち退けと。もちろんそんなことは出来ないと反発したわ。そのときは使者もすんなり帰っていったわ。」

 

そこから葉蓮の表情が苦虫を噛み潰したような表情に変わった。

 

「それから一月後にまた同じ使者がやってきたの。次は武装した兵を連れて。ここから出て行かないと村人を数人傷つけるのも厭わないと言い出した。ここは立地が良いから、朝廷直々の食料生産場所がほしいからと。書状まで持ち出されたわ。私は村の人たちを傷つけられるのは嫌だったから荷物をまとめて村を出ようとした。けど他の人たちはそうはいかなかった。当たり前よ、他の村や街に行ってもまた畑や家畜が手に入るとは限らないから。使者に抗議にいった人たちは問答無用に兵に殺されたわ。私の父と母も・・・。私は残った人たちを連れて他の村をあたったわ。けど他の村は規模も小さくもう入る場所もないと言われて。行き場もなく、お金も食料も限りはある。運よく知り合いが他の村にいる人たちはそちらに行ったけど、行き場所のない私たちは飢えでどんどん弱っていった。そんな状況がずっと続くとこんなところで死ぬわけにはいかないと旅人を襲ってお金と食料を盗んで帰ってくる人たちが出てきたわ。私はその人たちに言ったわ。そのようなことをしていたら私たちの村に来た使者たちと一緒だって。けど極度の飢えは人をも変えるものだった。それから一月も満たないうちに盗みを働く集団、賊に成り果ててしまったわ。賊になればそれだけで討伐隊が組まれ私たちを駆除しようと動きが生まれる。あなたたたちのようにね。」

 

「あなたは、今のままでいいのか?討伐隊に狙われ、逃れても盗みを働くしかない。こんな状況で・・・。」

「いいわけないじゃない!」

 

葉蓮が叫ぶ。その瞳には涙が浮かんでいた。こんな話を聞いていても一見冷静な一刀だが、心の中でやり場のない怒りを覚えていた。その使者たちに、今の朝廷に。なんて腐った世の中なのだろうと。しかしここでこの怒りをぶつけるべきは彼女たちではないと必死に堪えている。ここで一刀が激昂しては交渉が水の泡になってしまうから。

 

「私だって・・・私たちだってしたくてこのようなことをしているわけじゃない!人だって殺したくない!でもこうでもしないと私たちは生きていけない!それに、賊上がりの人間なんか受け入れてくれるわけないじゃない!」

 

一刀は彼女が揺らぎ始めたのを感じた。もう一息だと。

 

「なんで私たちがこんな目に合わないといけないの!?ただ村で平凡に暮らしたかっただけなのに!なんでみんなが死なないといけなかったの!?悪いことなんて一つもしていなかったみんなが!なんで!?なんで!?」

 

葉蓮の瞳から涙が零れ落ちた。堤防が決壊したかのようにとどまることを知らないといわんばかり彼女の涙は止まらない。ずっと悩んでいたんだろう。

 

「なんで、なんで・・・」

 

傍観に徹すると決めていた一刀が自然と体が動いた。もう見ていられないと一刀は彼女が敵の大将ということを忘れて彼女を正面から抱きしめた。

 

「ならこんなこと止めて俺たちに降ってくれ。捕虜じゃなく、俺たちの力になってくれ。この賊の部隊で生き残っている人たちと。」

 

この距離なら丸腰の一刀を殺すのも容易なはずの葉蓮だったが、今の、戦意の削がれた彼女にそのような考えはない。

 

「けど私たちは賊で、人を殺め、物を盗んだ。そんな資格はない・・・。許されないことをした。だから・・・。」

「そう考えがあるならさ、人助けをしてちゃんと償わないといけないよね。俺も協力するから。それに、このままこんなことを続けても村で抵抗して亡くなった人たちは喜ばないと思うよ?それより他の人たちを助けて誰かの役に立った方が喜んでくれるんじゃないかな?誰かの役に立って、亡くなった人たちの分まで生きて、幸せになってさ。」

「みんなの分まで生きて、幸せになる・・・。」

「そうだよ。みんなで笑い合って、おいしいものを食べて、ちゃんとした寝台で寝て。普通の生活だけどこれだって立派な幸せのはずだよ。将来は誰かと結婚して、子供ができて。亡くなった人たちに胸を張ってみんなの分まで幸せになりましたって言えるように。俺もみんなが幸せになる手伝いをするから。」

 

一刀たちが話している途中から両方の隊は争いを止め、こちらの話に耳を傾けていた。

 

「俺今兵を集めているところなんだ。だからさ、ここでこっちの兵もそっちの兵も減らすのは惜しいっていうか・・・、戦っていても誰かに傷ついてほしくないって思ってるところが正直あるわけで。一生懸命戦ってる人たちから見れば甘いって言われそうだけどさ。」

 

葉蓮を抱きしめたまま一刀は苦笑する。葉蓮は不思議と自分の中のもやもやが晴れていくように感じていた。このままこの人とともにいれば彼の言う幸せになれるのかなと。

 

「・・・もう大丈夫だから、離してください。」

「あっ、ごめんね。」

 

一刀が手を放すと葉蓮は一刀から少し距離をとった。

 

「一つ確認したいことがあります。私たちがあなたたちについたとして、その期待を裏切らないと誓えますか?」

「その期待の形はそれぞれだと思うけど、分かった。もし期待を裏切ったらあなたの手で俺の首を刎ねるといい。」

「その言葉を信じましょう。誰か、こちらに来てください。」

 

そういうと伝令と思われる人が彼女のもとに来た。

 

「前線に伝えてください。私たちはこの方たちの部隊に降ると。」

「すみません、あとでこちらから直々に話に行くと伝えてください。」

「御意。」

「北郷隊の伝令さん、いいですか?」

「はい。」

「白蓮、星、愛紗と鈴々たちの部隊に戦闘を止めるように伝えてください。」

「御意。」

 

彼女のとこの伝令は前線へ。俺のとこの伝令は数人に伝え、それぞれの部隊に向かって駆け出して行った。

 

「そうだ、俺たちまだ自己紹介してない!」

 

ふと思い出したかのように言う一刀に葉蓮は苦笑した。

 

「えーと、ほんのさっきまで戦っていたんですよ?自己紹介も何もないじゃないですか。」

「それもそうか。」

 

二人でくすくすと笑うと葉蓮が一歩前に出た。

 

「私は、姓は韓、名は飛、字は葉蓮。真名は清羅(せら)と言います。」

「俺は北郷一刀。姓と名だけで字と真名はないんだ。それと、みんなからは天の御使いって呼ばれてる。よろしく、清羅。」

「はい。よろしくお願いします。一刀様。」

 

一刀は様付けで呼ばれたことに少し違和感を感じ頬を掻いた。

 

「もう仲間なんだから様なんて付けなくてもいいのに。」

「仕える身としてはこちらの方が私なりにも落ち着くのでご了承ください。」

「んー、まぁいいか。」

 

お互いに自己紹介を終えてしばらくすると伝令に出た人たちが戻ってきた。

 

「公孫賛様のところにそちらの部隊の方々とともに至急戻ってくるように言伝を預かりました。」

「分かった。ありがとう。」

「では。」

 

伝令の人も部隊の方に戻っていった。

 

「じゃあ清羅、お互いに隊をまとめて俺たちの本陣に向かおう。」

「分かりました。」

 

俺たちは隊をまとめると桃香たちが待つ本陣の方に向かって歩き出した。そのころの本陣は白蓮、星、愛紗が隊をまとめて本陣に集まっていた。

 

「まさか一刀殿が賊を仲間に取り込むとは思わなかったな。」

「ご主人様が言っていたの。話し合いで解決できたらいいのにって。相手の方がそれを了承してくれたんじゃないかな?」

「あの方だからできることでしょうね。私なら賊と判断した時点で斬りかかってしまいますから。」

「それにしても、大将だけならまだしも部隊まるごとこちらに引き込むとは・・・。大丈夫なのか?」

「ご主人様にも何か考えがあると思うから大丈夫じゃないかな?」

「何を根拠に?」

「え?ご主人様だからだよ~。」

 

それを聞いた面々はぽかーんとした表情を見せた。

 

「いやいや、それじゃ説明になってないから。」

「いえ伯圭殿、あの方ならそれで説明もつくかもしれもせんぞ?私たちより多くの考えていらっしゃるからな。」

「そんなものか?」

「そういうものです。」

 

それから一刻後、遠方からこちらに向かってくる部隊が見える。

 

「あ!お兄ちゃんたちなのだ!」

「ご主人様~!おーい!」

 

鈴々が一刀たちが本陣に向かってくるのを見つけると桃香たちも一刀たちが入れるように準備に入った。

 

「みんな、ただいま。」

 

一刀たちが到着し、みなが無事だったことに安堵していると後方から清羅が出てくる。

 

「はじめまして。この大将をしていた韓飛葉蓮といいます。」

 

清羅が出てきたことにより場の空気が少し固くなった。

 

「はじめまして。ご主人様と一緒に旅をさせてもらってる劉備玄徳です。えーと、これからよろしくお願いします。」

 

ぺこっと桃香が頭を下げると清羅もそれに倣って頭を下げる。お互いに頭を上げると清羅が口を開いた。

 

「・・・今さらですが、賊の私たちを引き入れることに反対はしないのですか?不安要素があるのは後々やっかいになる可能性もありますし・・・。」

「葉蓮さん。私は、こうやって私たちのところに降ってくれて嬉しかった。私たちが旅をしているのは大陸のみんなが笑顔で暮らせるようにしたいからなんです。賊とは言っても人間です。それぞれ事情がある方もいますし自ら進んで罪を犯すような人もいます。けど、ご主人様が認めたってことは少なくともあなたが悪い人じゃないって思ったからだと私は思うんです。」

 

桃香は笑顔で清羅の目を見て話す。

 

「前線にいた方たちと少し話をさせてもらった時に、勝手に話を聞いちゃいました。あなた方がいた村で起きたこと、なんで賊なんかにならなければいけなかったこと。みなさんそれはかなり辛かっただろうなって思います。けど、村にいたころの話をしているみなさんはみんな楽しそうで、悪い人たちには見えませんでした。それにあなたのことを聞くと、とても良い人だと口をそろえて言うんです。そんなみなさんが不安要素になるなんて私は思いません。だから、私たちの力になってくれませんか?」

「ありがとうございます。では信頼の証として私の真名を皆さんに預けます。私の真名は清羅。これから、よろしくお願いします。」

 

それから桃香たちは真名の交換をし、俺たちは生き残った部隊を引き連れ街に戻った。この戦いで亡くなった人たちもいるがその人たちの分まで俺たちが頑張らないといけないと心に改めて刻み込んだ。それぞれの部隊の人たちもそれぞれに少しずつ打ち解けていた。良かった。街に戻って一週間後、俺たちは独立のため街を出る準備を始めた。そこからまた一週間後、さきの戦いでこちらについてくれた元賊の部隊と街から義勇兵が集まり六千もの人が集まってくれた。そこには清羅に加えて白蓮のとこで客将をしていたはずの星までがこちらについてくれた。白蓮が星に言いくるめられているのを目撃した者としては結構複雑な気分だ・・・。星は俺のことを主と呼び清羅は桃香たちと同じでご主人様と呼んでいる。少しむず痒い感じがするけど、慣れるしかないのかな。俺たちは門を出てとりあえず街の外に出た。

 

「さて、これからどこに向かおうか?」

「主も何も決めていらっしゃらなかったか。」

「どこかに行こうにもこっちに来て日が浅いからさ。」

 

俺たちがどこに向かうか悩んでいるとどこからか声が聞こえた。

 

「しゅみましぇん!」

「ん?愛紗、何か言った?」

「いえ、私ではないですよ。」

「こっちでしゅよ!」

「どこからか聞こえてくるのは分かってるんだけど・・・。」

「あわわ、朱里ちゃん、みなさん気づいてないよ。」

 

俺たちがどこからか聞こえてくる声を探していると俺の横にいた清羅が苦笑いしてその声の主を探し当てた。

 

「えーと、こんにちは。」

 

そこには二人の女の子が立っていた。黄色い髪で紅の帽子を被った少女と青い髪で大きめの青い帽子を被った少女だ。

 

「こ、こんにちは。」

「・・ちは。」

「私たちは荊州の水鏡塾の水鏡先生という方に学を学んでいました。それで、この大陸の今の情勢を知って。」

 

「それで、こちらで義勇兵を募っていると聞いてここまで来ました。」

「わ、私たちを戦線に加えてください!お願いしましゅ!」

「しましゅ!」

 

見た目は鈴々と変わらないくらいの年齢だろう。けど鈴々みたいに武に秀でているようには見えないし。

「とりあえず、名前を聞かせてくれるかな?俺は北郷一刀だよ。」

「諸葛孔明でしゅ!」

「鳳統でし!」

 

諸葛亮に鳳統・・・。蜀を代表する軍師の二人だ。この場で出会うとは思わなかったけど、ここで会ったのは運が良かった。

 

「えーと、どんなことを学んできたの?」

「孫子、呉子、六韜、三略、司馬法、九章算術、呂氏春秋、山海経ですね。あとは経済書 と民政書を読みました。」

「もしかして全部覚えてる?」

「(コクッ)」

「すごいのだー。」

「すごーい!愛紗ちゃん、この子たちすっごく頭いいよ!」

「そうですね。私たちには軍師がいませんでしたから。相当な戦力強化につながりますね。」

 

みんなの反応を見ても反対の様子は見られないな。

 

「じゃあ二人とも、よろしくね。」

「は、はい!やったね、雛里ちゃん!」

「うん。」

「私の真名は朱里です。朱里と呼んでください。」

「私は雛里です。」

「じゃあ改めて、朱里に雛里、これからよろしくね。」

「はい!」

 

俺たちは朱里と雛里を仲間にしてとりあえずは各地に散らばっている黄巾党討伐に向けて出発した。

 

あとがき 一週間の間を空けてしまいました、すみません。今回は自軍に新たに四人の仲間を加えてみました。清羅に関して言いますと、B88W58H85と結構スタイルのいい感じの人物です。一刀に惹かれていく様子を温かい目で見守っていただくと幸いです。では、 第参節・黄巾党討伐と覇王との出会い/飛将軍と御使いと でお会いしましょう。


 
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