No.462707

真・恋姫無双 刀蜀・三国統一伝 第二節・ハムと常山の昇り龍と盗賊討伐 ~ハムと昇り龍との邂逅編~

syukaさん

何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。

2012-07-31 02:14:15 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:12902   閲覧ユーザー数:9199

まえがき コメントありがとうございます。第壱節で指摘をいただいた方は修正しました。今回はハムの人と常山の昇り龍の出番です。今回は盗賊討伐開始直前までになります。では、ごゆっくりしていってください。

 

桃園の誓いを済ませた一刀たちは、街に戻り公孫賛のところへ向かおうとしたとき一つの問題に直面した。公孫賛に会うには義勇兵を連れて行かないといけないらしい。一刀たちは四人しかいないので門前払いが目に見えている。

 

「さて、どうしたものか・・・。盗賊討伐に向けて義勇兵を集めていると情報を

手に入れたのに肝心の義勇兵がいないんだもんなー。」

「兵に志望の者たちは既に城に向かったらしく、街にはもう残っていないでしょう。」

「うぅー、お城は目の前にあるのにね。」

「お姉ちゃんの知り合いの人に差し入れで食べものを持って行って会ってもらうのはできないのかな?」

 

これを聞いた三人は揃って溜め息をついた。いや、そんなことに応じるのは鈴々くらいだよ・・・。一刀はとりあえず止まったまま何もしないのも時間の無駄な浪費になると思い今後の食費を稼ごうと鞄の中から売れそうなものがないから探していた。鈴々がいるから結構多めにいるよな。けど売れそうなものなんて・・・。

 

「ん?こんな紙いれていたっけ?」

 

現代にいるさいに翌日は休みだったので必要最低限しか入れてなかったはずだ。寝る前に鞄の中を確認した時にはこんな紙が入っていた記憶はない。しかも丁寧に四つ折りにして表に「読んでみてください。」とまで書いてあった。とりあえず中身が気になったので開いてみる。

 

「一刀さんへ 向こうに行って、お金に困ったら制服の内ポケットに入っているものを売って資金源にしてください。また近いうちにそちらに会いに行きます。 貂蝉より」

 

・・・いつの間に入れたんだ?確かに貂蝉さんを見送ったから家にはいなかったはず。というかこんなにピンポイントでこれを見つける俺も俺だけど、貂蝉さんは俺がこっちの世界に来ることを知っていたのか?・・・そういえば近い将来にここから離れて違う土地に降り立つことになります。みたいなことを言っていた気がする。それと、近いうちに会いに来るってことは彼女もこっちに来ているのだろう。会った時にどうして俺がこの世界に来ることになったのか聞いてみるか。とりあえず内ポケットに何が入っているのか見てみよう。一刀は内ポケットを確認してみると、そこには貂蝉にもらった鏡に施されていた模様があるガラス細工の指輪が一つ入っていた。確かにこれほどの物を売れば相当なお金にはなるだろう。しかし、あの鏡をもらった上にこのような指輪までもらうことになった一刀はありがたい気持ちと少し申し訳ない気持ちになっていた。

 

「今度会ったときにはちゃんとしたお礼をしよう。」

 

そう心に刻んだ一刀だったが、再び貂蝉に会った時に天地がひっくり返りそうになるほど驚くことになるとは露ほども思っていない一刀だった。

 

「ぐふふ、もう少し待っててねん。すぐにご主人様のもとに会いに行くわ。あぁ、ご主人様のことを考えただけで私のマグナムがびんびんよん!ぶるぁああああ!」

 

そんな声が天から微かに聞こえたそうだ。

 

「愛紗、これを市に行って売ってきてもらえないかな?義勇兵を今日は集められないかもしれないから、食費と宿代を確保するついでに資金を調達しないといけないからさ。」

 

愛紗に指輪を渡すとそれを見た三人が食いついてきた。

 

「うわぁ~、綺麗~」

「これ、めちゃ高そうなのだ。」

「ご主人様、これほど立派なものなのです。大切なものではないのですか?」

「確かに貰い物だから大切なものだけど、お金がないと食事にすらありつけないのも事実だろ?だから、ね?それに俺たちはもう仲間なんだから。それでみんなの助けになるなら軽いものだよ。」

 

「・・・分かりました。関雲長、できるだけ高値で売ってきます。」

 

そういうと愛紗は市の方に駆け出して行った。

 

「ご主人様、ごめんね。私たちのために・・・。」

「お兄ちゃん、ありがとうなのだ!」

「ほら、鈴々みたいにお礼は言われても、謝られる必要はないからさ。そんなに気を遣わなくていいよ。」

 

俺は桃香と鈴々の頭を撫でると二人とも擽ったそうに目を細めた。

 

「うん、ご主人様ありがとう!」

 

満面の笑みで桃香はお礼を言ってくれた。やっと笑ってくれた。愛紗の帰りを待つこと三十分、こっちでは一刻だっけ?愛紗が帰ってきた。

 

「お疲れ様、どうだった?」

「予想以上の成果でした。旅でこの街にきていた者が土産にと結構な高値で買い取ってくれました。」

「そっか。じゃあ愛紗が休憩してから俺たちも市を見に行こうか。」

「お気遣いありがとうございます。しかし私も武人です。これしきの事、体力を使った内に入りませんよ。」

「分かった。でも休憩したくなったら言ってね。」

「分かりました。」

 

そうして、俺たちは食料を求め市へ向かった。市に入るやいなや、

「私、ちょっと市の中をお散歩してくるね~。」

「鈴々も行くのだー!」

「あ、二人とも!・・・もう、ご主人様、私は二人を追いますのでまた後で!」

 

・・・俺はお惣菜屋のような店に向かった。まぁ落ち合う場所は決めているから問題はない。着いた総菜屋に入ると店主と一人の女性が話し込んでいるのを見つけた。

 

「メンマが売り切れた・・・だと?」

「へい、先ほど来たラーメン屋の店主が買っていったので最後でした。次に行商人が来るのを待つか先ほど買っていったラーメン屋で食べてもらうしかないですな。贔屓にしてもらっている趙雲様には申し訳ねぇのですが。」

「うむ・・・。メンマを買う金しか持ってこなかったのが仇になったか。あそこの店主は頑固者ですから一定の量しか出してくれなんだ。」

 

見た限りなにやら深刻そうな顔をしてるな。メンマがどうとかっていうのは聞こえたんだけど。

 

「えと、何か困りごとですか?」

「あ、いらっしゃい。いえですね、こちらの趙雲様がいつもお求めになっているメンマが売り切れて今度の行商人が来るか、さきほどラーメン屋の店主が買われていったのでそちらで食べられるかしかないのですよ。」

「しかしそこの店主が頑固者でな。特定の量しかだしてくれんのだ。おまけに持ってきた金も微量しかなく今日は諦めなければならないのだよ。」

 

それにしてはどうしても諦めきれそうにない顔をしている・・・。・・・ん?この人の名前、趙雲様って言ってなかったか?もしかすると公孫賛と繋がりがあるかもしれない。

 

「一つ提案があるのですが、いいですか?」

「聞きましょう。」

「ラーメン屋で俺たちのメンマを趙雲様に譲りましょう。」

 

そういうと趙雲さんの表情が一変した。何か輝いているように見えるぞ?

 

「いいのですか!?あのメンマですぞ!とんまではないのですぞ!」

「そ、そうです。」

 

なぜとんま・・・。

 

「ありがたい。あなたは恩人ですぞ。」

「そのお礼と言ってはなんですが一つ頼みごとを聞いてもらってもいいですか?」

「私のできる範囲ならしてさしあげよう。」

「趙雲様と聞いて、公孫賛様と知り合いではないかと思い申し上げます。公孫賛様のところまで連れて行ってもらえませんか?」

「なんだ、伯圭殿の知り合いでしたか。」

「はい。正確には俺ではなく劉備という俺の仲間がなんですけどね。けど会う方法がなくて立ち往生してたんです。」

「私は客将ですから立ち会えばすんなり通ると思いますぞ?まぁお仲間の方々はラーメン屋で拝見させてもらいましょう。一応、人を見る目はある方だと自負してますので。あなたは人徳があると見える。」

「ありがとうございます。それでは仲間の方に案内します。店主、また近いうちに来ます。」

「了解した。店主、世話をかけたな。また寄らせてもらうよ。」

「はい。お待ちしております。」

 

まさかメンマで公孫賛に会えることになるとは思わなかった。メンマ恐るべし・・・。趙雲さんを落ち合い場所に向かう途中、彼女が口を開いた。

 

「私の名を知っているのだからあなたの名前を教えていただきたい。その方が親近感も沸くというものだ。」

 

そういえば名乗ってなかったな。俺だけ知っているのも不公平だし、ちょっと気が利かなかったかな。

 

「気が利きませんでしたね、すみません。俺は北郷一刀。北郷が姓で一刀が名です。字と真名はありません。よろしくお願いしますね、趙雲さん。」

 

そういうと趙雲は突然笑い出した。

 

「くくっ、北郷殿が気が利かないとな。そのようなことをいうなら大抵の者が気の利かないもの扱いになりますぞ?北郷殿が私の歩幅に合わせてくれたりさりげなく話しかけてくれたり。こちらとしてはとても接しやすいし親しみやすいのでありがたいのですよ。」

「そうですか、良かった。」

 

一刀は無邪気に笑った。なんだ?この違和感というか、どこか懐かしい気がするのは・・・。この趙子龍に惹かれるものを感じさせるとは・・・。このお方、何か不思議なものをお持ちのようだ。一見しっかりしているように見えて、あのような幼子のような表情も出るのか。はてさて、次は何が出てくるやら。歩くこと数分、桃香たちとの落ち合う場所についた。

 

「ご主人様~、こっちこっち~。」

「ご主人様、こちらです。」

「お兄ちゃん遅いのだ!」

 

桃香たちが先に着いているのを確認するとそちらに少し早足で向かった。

 

「ご主人様、そちらの方はどなたですか?」

「こちらは趙雲さん。公孫賛さんのところで客将をしている人だよ。ラーメン屋でメンマをご馳走する代わりに公孫賛さんのところに連れて行ってくれる約束をしたんだ。」

「姓は趙、名は雲、字は子龍。伯圭殿のところで客将をやっている。」

「私は劉備玄徳。ご主人様たちと一緒に旅をしてます。大陸のみんなが笑って生活できる世の中にするために。」

「私は関羽雲長。このようなところで常山の昇り龍と出くわすとは、世の中何が起きるか分からないものですな。」

「鈴々は張飛翼徳。早くラーメン屋に行くのだ!」

「じゃあ改めて、俺は北郷一刀。天の御使いなんてものをやっています。」

 

それにしても鈴々、自己紹介の時まで食べ物の話をしなくても・・・。まぁ、鈴々らしいからいいか。

 

「天の御使い、あの管轤の占いに出ているあの御使いか。北郷殿の恰好と性格、それに、あの立ち振る舞いを見て相当な手練れとお見受けした。確かにこの大陸に安寧をもたらすにたる人物なのは理解した。」

「趙雲殿はこの短い期間でそこまでご主人様を見抜いていらしたか。」

「それはそうでしょう。美髪公殿と張飛殿も相当な手練れとお見受けしたが、北郷殿は何かそれに加えて何か不思議なものを感じ取ったのですよ。人を見る目はあると自負してはいるが、ここまで私の感性を刺激する人物はなかなかいませんので。」

 

なんかえらく過大評価されている気がする。確かにこと細目に気を配るようにはしているけど、武の方はそれに愛紗や鈴々、趙雲さんの方が優れていると思うのだけどなー。

 

「鈴々、チョー強いのだ!」

「私も武には誇りを持っていますが、一つ気になることを聞いた。その美髪公とは私のことですか?」

 

それを聞いた趙雲さんは意外そうな表情をした。確かに愛紗の黒髪はサラサラして綺麗だけど美髪公とな。まぁ、正史の関羽は美髯公っていう二つ名で髯を評価されたけど。

 

「結構有名ですぞ?艶やかな黒髪をなびかせ、悪を討つ正義の武将だと。」

 

それを聞いた愛紗はすっかり赤面してしまった。この類のものに免疫がないのだろう。

 

「初耳なのですが・・・。」

「私、知ってたよ?」

「鈴々も知っていたのだ!」

 

桃香と鈴々までもが知っていたことにがっくりとうなだれてしまった。

 

「知らぬは本人だけということか・・・。」

「愛紗の髪は綺麗なんだからさ。とってもピッタリな二つ名だと思うけどな。」

 

うなだれている愛紗の髪を撫でながらすかさずフォローする。

 

「あ、ありがとうございます。ご主人様にそう言ってもらえると少し自信を持てます//」

 

愛紗の髪から手を放すと少し照れながらお礼を言ってくれた。愛紗の元気がないところは見たくないからな。お礼なんて言わなくてもいいのにね。

 

「さて、愛紗も復活したことだしもうすぐお昼時だ。さっきメンマを買っていったラーメン屋の店主のところに食べに行こう。趙雲さん、案内してもらっていいかな?」

「御意。」

 

五人でラーメン屋に向かう途中で出てくるメンマを趙雲さんに譲ることを桃香たちに伝えるとすんなり了承してくれた。そして、なんでメンマなのかと疑問符を浮かべていたのは言うまでもない。鈴々の食べっぷりに、趙雲さんが不思議そうな顔をしていたのも語るところのない話である。食事も終わり鈴々が、お腹いっぱいで元気百倍なのだ!と微笑ましい光景を横目に見ながらも俺たちは公孫賛さんの城へ向かった。公孫賛さんの書斎へ向かう際は趙雲さんがいることですんなり通ることができた。趙雲さんが書斎の扉を開けると赤い髪の人がおそらく公孫賛さんだろう。

 

「伯圭殿、客人を連れてきた。」

「星か、入っていいぞ。」

 

書斎に入るや否や桃香が公孫賛さんのもとに駆けて行った。

 

「白蓮ちゃん!久しぶり~!」

「桃香!久しぶりだなー。盧植先生のところを出て以来か。」

「白蓮ちゃん、太守になったって聞いたよ。おめでと~。」

「ありがとう。でもこれも通過点の一つだからここで立ち止まるわけにはいられないからな。それで、あれ以来桃香は何をしていたんだ?」

「えーとね、私と関雲長と張翼徳のいろんなところに行って困っている人たちの手助けをしていたの。けど、私たち三人の力じゃできることが限られてきたから途中であった天の御使いの北郷一刀さんにご主人様になってもらったの!」

 

ご主人様になってもらったっていうと少し語弊がありそうな気がするけど、そう呼ばれているのだから気にしないでおこう。

 

「天の御使い?」

「そうだよ。流星と共に天の御使いが五台山の麓にやってくるっていう管轤ちゃんの占いの話、聞いたことない?」

「あぁ、この辺りでかなりの噂になっているな。しかし、そのようには見えないが・・・。」

 

その言葉に桃香が反論しそうになったところを趙雲さんが横から口を挟んできた。

 

「この北郷殿の力量を見抜けないのでは、お話になりませんな。」

「そういう星はこの天の御使いの力量が分かるとでもいうのか?」

「当然でしょう。武を志すもの、そこの二人や北郷殿の力量が只者ではないことくらい姿を見ただけで分かるというものです。」

 

桃香の後ろで控えていた二人がここで前に出てきた。

 

「私は関雲長。桃香様の一の家臣にして幽州の青龍刀。」

「鈴々は張翼徳。鈴々、とっても強いのだ!」

 

この流れで俺も挨拶しておいた方がいいな。

 

「俺は北郷一刀、桃香たちから天の御使いって呼ばれています。公孫賛さん、よろしくお願いします。」

「よろしく。そうか、桃香が真名を許しているなら私のことも白蓮で構わない。・・・星がそこまでにいうなら一角の人物ではないのだろうな。」

「俺は字と真名がないから一刀と呼んでください。」

 

それぞれ自己紹介も終えたところで白蓮が話を切り出した。

 

「ところで、桃香はなぜ私のところに来たのだ?世間話をするためではないだろうに。」

「そうだった。白蓮ちゃんが兵を引き連れて盗賊討伐に行くって聞いて来たの。私たちを戦列に加えてもらえないかな?」

「俺たちも行く行くは独立するつもりでいるけど、何より経験が足りないから。俺からもお願いします。」

「お願いします。」

「お願いしますなのだ!」

「頭を上げてくれ。ただでさえ相手より兵数が少ないのに兵を率いる将が二人しかいなくて困っていたところだ。是非加わってくれ。」

 

こうして俺たちが戦列に加わることが決まった。

 

「まさか左翼全体を任せてもらえるなんてな。愛紗と鈴々は兵を率いたことってある?」

「ありません。」

「ないのだ。」

「けど二人ならうまくやれると思うよ。」

 

なんせあの関雲長と張翼徳だからな。

 

「ご主人様も、他人ごとではないのですよ?」

「そうだよなー。俺も頑張ろう。」

 

俺たちは集まった兵を見に城壁の上まできていた。

 

「うはー、壮観だ。」

「ここに集まったのは正規兵半分、義勇兵半分の三千人です。盗賊共は五千ですが私たちがいますし、統率はされていません。さほど恐れなくてもいいでしょう。この中の義勇兵は街の次男や三男がほとんどです。これほどまでに切羽詰った状況になるというとは相当大陸の状況が悪化している証拠です。早急に賊を討つ必要がある。」

「趙雲殿もやはりそこまで見越していたか。我々力あるものが民の生活を守る義務がある。しかし、今の我らには民の力を義勇兵という形で借りなければならない。」

「そうですな。そこで関羽殿、私の盟友になってはくれまいか?そなたの瞳に私と同じ民を思う志の炎を見た。私にあなたの力を貸してほしい。」

 

それを聞いた愛紗は軽く微笑んだ。

 

「奇遇ですな。私も同じことを考えていた。是非、趙雲殿の力を貸してもらいたい。私の盟友として。私と同じ志を持つものとして。」

「鈴々も!」

「あー、ずるーい!私もー!」

「俺も力を貸してほしいな。同志として、友として。」

「では、あなた方に我が真名を授けましょう。姓は趙、名は雲、字は子龍。真名は星だ。」

「私は、姓は劉、名は備、字は玄徳。真名は桃香。よろしくね、星ちゃん。」

「姓は関、名は羽、字は雲長。真名は愛紗。これからよろしく頼む、星。」

「鈴々は鈴々。張飛と翼徳と鈴々なのだ。よろしくなのだ、星。

「俺は北郷一刀。よろしくな、星。」

「うむ、貴公らの真名たしかに受け取った。北郷殿のことは一刀殿と呼ばせてもらう。」

 

これからのことを込めて五人で手を取った。すると、入りにくそうに背後から声をかけられた。

 

「その、私もいることを忘れてはいまいか?確かに自分でも影は薄い方だと思ってはいるが・・・。」

 

白蓮いたのか・・・。びっくりするほど存在感なかった。

 

「白蓮ちゃんいたんだ!・・・別に忘れてなんかない・・・よ?あ、あはははは・・・。」

 

桃香、目を逸らしながら言っても全く説得力ないぞ?

 

「私にだって民を憂う志はある。仲間外れは納得いかんな。」

「あぁ~、白蓮ちゃん拗ねないで~。」

「別に拗ねてなどいないさ・・・ふんっ。」

 

いじける白蓮か、少し可愛いな。

 

「まぁいい。みんなで賊どもを討とうじゃないか。」

「うむ。」

「おう。」

「鈴々に任せろなのだ!」

「私も頑張っちゃうよー!応援を・・・何か、言ってて虚しくなってきたよ。」

 

桃香がなぜか勝手に凹んでるよ。そんな桃香の頭を「そんなことないよ。」と言い聞かせながら頭を撫でていると、白蓮が城壁から兵たちに向けて口を開いた。

 

「聞け!公孫の勇者たちよ!これまでどれだけ討ってもどこからともなく湧いてくる盗賊たち!そいつらを今日こそ我らの手で殲滅して見せようぞ!幸い、今回は天の御使いが我らにはついてくれている!」

 

俺は白蓮に手招きされ彼女の横に並ぶ。

 

「この方こそが天の御使いだ!先日この地にやってきたと聞いた!それで彼から一言、勝利の抱負としてもらいうけることになった。」

 

いきなりのことに目を白黒させていると白蓮が横から何か耳打ちしてきた。どうやらさっきの仕返しらしい。俺にとばっちりが飛んでくることになるとは・・・。まぁ、俺も存在を忘れていたのだ、反論はできないけどな。そのようなことを考えていると下にいる兵たちからは、「あれが天の御使い様か」やれ「そんな風には見えないけどな」などいろんな言葉が聞こえてくる。俺にだって自覚はまだないんだ、何とも言えない。俺は兵に伝えることを言うために息を吸った。

 

「俺はみんなに天の御使いと呼ばれている北郷一刀だ。みんなに言うことは一つだけだ。命を大事にしてくれ。この中には戦いには始めての人もいると思う。俺もそう、人を斬ったことはない。今だって手足が震える。けど、俺もできることは全部やる。だから、最善を尽くしてほしい。でも約束してほしい。勇気と無謀は違う。もう駄目だと思ったら逃げてもいいし後退してもいい。だから・・・、みんなで頑張ろう。」

 

俺の話が終わると辺りが静まり返っていた。俺、なんかまずいこと言ったかな?少し不安に駆られていると兵たちから歓声が上がった。

 

「北郷様、一緒に賊どもを殲滅しようぜー!」

「一生ついていくぜー!」

「俺の命を懸けてあんたを守る!」

 

みんなの言葉に泣きそうになった。

 

「ありがとう。」

 

日も落ちて、一刀たちは明日の賊討伐に備えてそれぞれに割り当てられた部屋に向かおう。俺は部屋のベッドで横になると明日の賊討伐について考えていた。明日、人を斬ることになるかもしれない。お爺ちゃんが言っていたよな。大切な人を守るために剣を抜けって。俺にとって桃香たちや星に白蓮、集まってくれた人たちみんな大切な人たちだ。けど賊の人たちだって人間なんだ。何か理由があって賊をやっているのかもしれない。できるなら話し合いで解決したいけど・・・。そんなことを考えていると桃香が部屋に入ってきた。

 

「ご主人様、眠れないの?」

「そうなのかな。明日のことを考えてるとさ、人を斬らなくなると怖くなって。全力を尽くすって言ったからにはそうする。でも昼間も言った通り人を斬ったことがない。今も出来ることなら話し合いで解決したいって思ってる。昨日会ったような武の嗜みのない人が相手なら俺も徒手で命を奪わない自信があるよ。けど、相手が武人だったり桃香たちが危険な目にあったりするとどうしても剣を抜かざるをえないから。もし斬ったことを考えたら手足がすくむんだ。情けないよな・・・。」

 

ご主人様、震えてる。晩の食事のときは気丈にふるまってたけど怖いんだ。今の私にできることはご主人様を安心させてあげることだよね。桃香は一刀を優しく抱き寄せた。

 

「桃香?」

「ご主人様、安心して。盗賊の人たちに武人の人がいるかは分からないけど、私たち・・・っていっても愛紗ちゃんたちは強いから大丈夫か。私はみんなが守ってくれるから。私はご主人様が、みんながいるから安心して待っていられるんだよ?だから、今日は私がご主人様が落ち着くまで一緒にいてあげるから。」

「そうだね。また頼っちゃうこともあるだろうけど、その時はまたお願いしてもいいかな?」

「うん♪どんどん頼っちゃって!じゃあ、私はご主人様に甘えさせてもらおうかな。」

「おう。どんとこい。今はもう少しこのままでお願い。」

「はーい♪」

 

数分後、一刀も落ち着いたところでもういいよと桃香に言った。しかし桃香は抱き寄せる力を緩めず反応もない。

 

「桃香、もういいよ。・・・桃香?」

 

ふと桃香の顔を見てみると、

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

桃香は寝息を立てて眠っていた。

 

「まぁ日も落ちて時間も結構経つしな。今日もなんだかんだで慌ただしかったし、ここで起こすのもかわいそうか。」

 

寝息をたてている桃香の腕からそっと抜け出し彼女を自身のベッドに寝かせる。ベッドに横にさせても起きる気配はない。明日何もないなら俺が床で寝るところだけどそれで俺が体調を崩したらもともこうもないからな。今日は俺もベッドで寝かせてもらう。

 

桃香に毛布をかけると一刀も横になり一つの毛布を二人で使う形となる。ふと横を見れば桃香のあどけないで寝顔が見える。何とも愛おしいというか、守ってあげたいと思う自分がいる。会って間もないけど、少なからず俺の支えになってくれているのは桃香だ。感謝の言葉をどれだけ並べても足りない。こんなどこの誰ともしれない俺を仲間にしてくれた。それだけで胸がいっぱいになった。一刀は桃香の頭を撫でながら眠りについた。

 

「おやすみ。どうか、桃香がいい夢を見られますように。」

 

 

陽が明け、先に目を覚ましたのは桃香だった。

 

「・・・んっ、ん、あれ?」

 

私、いつの間にお部屋に戻ったんだろう?確かご主人様のことが気になってお部屋まで行って、ご主人様が不安そうにしてたから抱きしめてあげてて・・・、あれ?それからどうしたっけ?桃香のぼやけた視界が鮮明になり自身の視界に映るのはいまだ夢の中にいる一刀の姿。そっか、あのまま私が眠っちゃってご主人様がお布団に入れてくれたんだ。桃香は自身の髪のうえに添えられていた一刀の手を握る。そして祈る。今日、ご主人様が不安に駆られずに済みますようにと。桃香は一刀の手を握りながらふたたび夢の世界へ旅立った。

 

あとがき 第弐節いかがだったでしょうか。今回は約10000文字とキリの良いところで終わったので2部編成とさせていただきます。更新に4日もかかってしまいました。テスト期間に入りましたので次の更新は7日後あたりになると思います。では第弐節 真・恋姫無双 刀蜀・三国統一伝 第二節・ハムと常山の昇り龍と盗賊討伐 ~盗賊討伐から独立へ・・・はわわ!あわわ!編~でお会いしましょう。


 
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