No.457516

魔法少女イレギュラーなのは~16~ ?「それは、ただの単純な願い」

コレは、転生者たちが、リリカルなのはの世界で転生生活を頑張るお話。

2012-07-22 17:30:42 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1453   閲覧ユーザー数:1388

孤独。

 

それが、僕にピッタリな言葉だった。

 

誰にも心を許すことは出来ず。

誰からも、本当に必要とされる事は無い。

 

 

 

 

 

喋っていたって、それはただの社交辞令。

 

実を言うと、友達と遊んだ事が僕は一度も無い。

 

 

 

 

 

だから。

だから願った、求めたんだ、もう一度、人生をやり直せると知った時に。

 

 

 

 

 

絆を力と変える、あの力を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四倉(しくら)司(つかさ)。

 

2度目の生で得た、僕の名前だ。

 

家族はいない。

事故で死んでしまった。

僕は叔父に引き取られて生活している。

……まあ、その叔父も仕事で忙しく、滅多に家にいないけど。

 

「聖祥大付属小学校」、なんてそこそこ良い学校に通い、日々を過ごしている。

 

 

 

友達は出来た。

こんな年だとやっぱりみんな無邪気だ、普通に遊んでくれる。

 

 

 

 

 

……そう言えば、この世界は「リリカルなのは」の世界だと僕を転生させてくれた神様……イシスは言ってたっけ。

 

名前しか聞いた事ないし、どうなってるのかさっぱり解らない。

 

……まあ、原作を知らないからどうしようもない。その時その時で何とかしていくしかないね。

 

 

 

焦る必要もない。

普通にこの日常を謳歌しよう。

 

 

 

まだ、「力」を持ってもいないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなある日。

 

僕の机の上に、手紙と宝石が置いてあった。

 

『ようやく渡す時が来ました。大事に扱ってくださいね』

 

手紙に書いてあったのは、これだけ。

 

扱う……って、この宝石?

手に取り、光にかざしてみる。……赤色の、綺麗なものだ。

 

 

 

……っ!

 

 

 

解る。

これを、どう使うのかが、理解できる。

……呟けば良い。

 

 

 

 

 

「……セット、アップ!」

 

 

 

 

 

カッ!

 

宝石が輝いた。

 

 

 

『Stand by、set up!』

 

 

 

同時に聞こえる、不思議な声。

 

光が収まった時、左手には籠手のような物が装着されていた。

 

白と黒を基調とした、最先端技術を使いました、みたいな物だ。

手の甲の部分に、赤い宝玉がはめ込まれている。

 

「……え?うわ、何なのこれ?」

 

端から見れば立派なコスプレアイテムなんだけど。

 

 

 

『機動完了。使用者確認。適合問題無し。命名希望』

 

喋った!?

 

「命名……君の?」

 

『肯定』

 

な、名前か……。

ネーミングセンスは無いんだよね……。

 

……あ。

 

 

 

 

 

「……カムイ」

 

 

 

 

 

『承認』

 

とあるマスコットの力の名前だ。

アイヌ語で、神様だったと思う。

 

 

 

……ってそれはともかく。

これ……どうするんだ?

 

……解らない。

 

『……』

 

こいつも無口だし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……様、四倉司様……」

 

……ん?

誰かに呼ばれた気がする。

 

結局あの後、訳も解らず寝ちゃったんだよね……。

 

……で、誰?

基本家でボッチの僕を呼ぶのは……。

 

 

 

 

……え?

 

 

 

 

気がつけば、僕は見慣れた部屋ではなく、列車の中にいた。

 

吊革が規則正しい距離を置いて天井から吊り下がっている。

周りは青一色。

 

そして。

何故か真ん中にある円形のテーブル。

 

椅子に座る1人の老人。

その背後に立って控えている1人の男性。

 

 

 

 

 

「ようこそ、我がベルベットルームへ」

 

 

 

 

 

老人が口を開いた。

大きな眼、長い鼻がかなり特徴的だ。

 

 

 

「これはこれは。また、数奇な運命を持つお方がいらしたようですな……ふふ」

 

 

 

不愉快さを微塵も感じさせない、不思議な笑み。

 

……まさか。本当に出会えるなんて、ね。

老人に進められるがままに、席に座る。

 

 

 

「まずは自己紹介を……私の名は、イゴール。お初にお目にかかります。そして彼はテオドア。私の補佐を担当しております」

 

「テオドアと申します。テオ、とお呼びください」

 

テオドアは……初見だね。

まあ、姉妹よりかは常識がありそうだ。

 

「さて、司様。ここは夢と現、物質と精神の狭間の世界……何らかの形で契約を為された方が、訪れる場所でございます」

 

手を組み直して、イゴールは続ける。

 

「貴方は、まだ契約を為されてはおられないご様子……ここを訪れたという事は、近い内に契約を為されるのでしょう」

 

契約。

一体、どんな形になるんだろう。

 

「契約を果たされましたなら、力を手に入れる事と思われます……その力を覚醒なされた時、またお呼びすると致しましょう……楽しみですな、ふふ。では、ご機嫌よう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

僕は放課後、図書館に来ていた。

 

イゴールの言葉も気になるが……正直、今の僕には何をどうすれば良いのか、なんて解らないしね。

とりあえず、いつも通りの日々を過ごそう。そう考えた訳。

 

で、今日は借りた本を返しに来た。

 

司書の人に本を渡してから、中を散策して、また新しいものを探す。

 

ちなみに、専らファンタジー系読んでます。

面白いんだから、しょうがない。この世界自体、実はファンタジーでした、なんてオチもあるけど。

 

 

 

 

 

「ん、んしょ、と……」

 

 

 

 

 

あれ?

車椅子の女の子が手を伸ばしている……あの本が取りたいのかな?

 

「これ?」

 

ひょいと手に取り、渡す。

 

「あ、ありがとうな!助かったわ~!」

 

笑みを浮かべる彼女。

うわ、結構可愛い。

 

ふと、彼女が持つ本のタイトルが目に入った。

 

「北欧神話」。

 

さっき僕が取ったのは、「ギリシャ神話」だった。

 

「神話、好きなの?」

 

「せやねん。もしかして、そっちも?」

 

「うん、大好き」

 

良いよね、神話って。

神様がかなり身近に感じられるから。

……ギリシャ神話はともかく、北欧神話とかエジプト神話を知ったのは大部分がペルソナのお陰です、なんて言えないけどね。

 

 

 

 

 

という訳で、しばらく2人で神話について話し合った。

 

 

 

 

 

「ふふ、楽しかったわ。付き合ってくれてありがとな」

 

「いや、僕も楽しかったよ。普通、こんなに神話について話せる小学生はいないから」

 

確かにせやね、とその子はくすりと笑った。

 

「私は、八神はやてや。はやて、でええで」

 

「僕は四倉司。司、で良いよ」

 

「ほんなら、司君。また、ここで会えへんかな?」

 

おお、デートのお誘い?

……いや、まさかまさか。

 

「そうだね……また時間を見つけて、ここに来るよ」

 

 

 

 

 

約束やで、と。

手が差し出された。

 

 

 

 

 

一瞬面食らうけど、はやての手を握る。

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

『我は汝……汝は我……。汝、新たな扉を開いたり。「魔術師」の力……汝に授けん』

 

 

 

 

 

 

 

頭に、不思議な声が響いた。

 

知っている。

僕はこの声を知っている。

 

 

 

「契約」が、果たされたんだ。

 

 

ふと、ある言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

『我、自ら選び取りし、如何なる結末をも受け入れん』

 

 

 

 

 

上等。

 

どんな物語かは知らないけど。

 

 

 

 

悲劇なんか、認めない。


 
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