No.446354

魔法少女イレギュラーなのは~2~ 「とある少女のプロローグ」

これは、リリカルなのはの世界で転生者たちが転生生活をがんばるお話。

2012-07-05 12:09:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2620   閲覧ユーザー数:2530

……ここは?

ああ、そうか……。

あたし、自殺したんだっけ。

 

高校では虐められてばかりで。

せっかく庇ってくれた子にも、何も恩返しが出来ない自分が辛くて。

 

家で親は喧嘩ばかり、あたしはいつもそのイライラの捌け口。

体中に痣なんて日常茶飯事、下手したら骨折もあった。

……ああ、父親には性的虐待も受けたことあったなぁ。処女ではいられたけど。

 

……こうやって今考えてみると、あの2人はあたしの親って言えないんじゃないかな。

 

……ああ、でも今更考えたってしょうがないよね。何せあたし、死んじゃったんだし。

 

ここは、死後の世界って奴かな。

凄いなぁ……ホント白一色。

 

 

 

「……やあ、ようこそ。現世とあの世の狭間に」

 

 

 

ふと声がした方向に振り返る。

そこには、イケメンがいた。

……うん、やっぱりイケメンだ。

真っ白な肌に、オールバックにした黒い髪が映えている。

学ランのような服は白で、ズボンは黒。

……で、唯一のツッコみ所は、首に巻かれた長いマフラー。余りすぎだよ……。

 

「……貴方は?」

 

「んー……いわゆる神様、かな」

 

へー……居たんだ神様。

あんなに救いの無い人生だし、いないのかなって思ってた。

 

「……で、神様がこんなあたしに何の用かな?」

 

……神様にタメ口だけど、別に良いよね?細かいことは今更気にしない。

 

「うん、それなんだけど。……転生、してみないかい?」

 

テンセイ?

首を傾げるあたしに、神様は微笑んで説明してくれる。

 

「……要するに、人生やり直さないか、ってこと。ただやり直すだけじゃなんだし、特典として、1つの力もプレゼントするよ」

 

……なんか、惹かれる話だ。

1つの力を貰える、って辺りが、特に。

 

「転生……かぁ。特典って、何でも良いの?」

 

「基本的には、ね」

 

この時、あたしが思い浮かべたのは、正義と愛を求め、そして磨耗していった1人の青髪の少女だった。

 

「じゃあ……美樹さやかが良いかな」

 

「へえ……なかなか変わったものを選ぶね」

 

「私は、何も誰かの役に立てたりしなかったからね……だから、さやかの生き方は凄いなって思って。それに……転生出来るなら、彼女の分まで、生きてあげたいなって」

 

そう言うと、神様はまた微笑んだ。

 

「ふふ……じゃあ、こう言えば良いのかな?……君の願いは、エントロピーを凌駕した……ってね」

 

……解るんだ神様……。

……あ、光る扉が現れた。

 

「その先に、君の第2の人生が待っているよ……覚悟は良いかい?」

 

頷いて、歩き出す。

 

「……どうか、君に幸あらんことを」

 

そんな言葉を聞きながら、あたしの意識はホワイトアウトしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可愛い女の子だと思った?

残念、美貴ちゃんでした!

 

どうも、あたしです。

 

生まれて数年……最初の頃こそその……まあ、色々と苦労したけど、普通の家庭で平和にやってます。

 

あたしの名前は、「神楽 美貴」。

 

ごく普通の小学生。

普通ってのがこんなに幸せだなんて、思わなかった。

ほんと、最初は感動で泣いてばかりだったよ。そのせいで泣き虫扱いされて……うう。

 

そして、今は何をしてるのかと言うと。

 

「ふっ、やっ、はっ!」

 

剣の素振りしてます。

勿論人の目につかないところで。

だって今のあたし、普通の格好じゃないし、剣振ってるし。

 

 

……そう、今のあたしは「魔法少女としての美樹さやか」の姿なんだよね。

大胆に肩とか露出させた服で、マントを羽織ってる。

ほんと体も軽くて、良い感じ。

 

 

 

4歳ぐらいの頃かな?

あの神様から、手紙が届いたんだ。

 

それによると、この世界にはソウルジェムとか、キュウべぇとかは無いんだって。少しほっとしたような。

 

それで、あたしの魔力ランクはAAランク(魔力にランクなんて付けるもんなの?)で、癒しの祈りの力はあるけど、剣を作り出したりは出来ないらしい。

その代わりと言っちゃなんだけど。

 

『今日は良い調子ですね、マスター』

 

こいつ……この喋る剣が貰えた。正式には、「デバイス」と言うらしい。

 

「うん、ありがと、ブルー」

 

名前を付けてあげて、って書かれてたから、無難に「ブルー」という名前を付けた。……言っとくけど、どこぞの先輩魔法少女みたいなネーミングセンスは無いからね?

 

ちなみにいつもは、ブルーは指輪の形をしてる。

だけど、「セットアップ」って言うと、剣の形になって、同時にあたしの姿も魔法少女の姿に変わる。この衣装、「バリアジャケット」って言うらしいんだけど……よく解んない。

 

後、潜在能力やらなんやら書かれてたけど……そんな状況が来るのかな。来て欲しくないけど……でもどんな能力か、気にはなったり。

 

そう言えば、あの神様……名前、「タナトス」って言うらしい。なんか、不思議な名前だなぁ……。

 

 

「……さってと、素振り終わり。帰ろうか」

 

『了解です、マスター』

 

 

ブルーが指輪の形に戻り、あたしの姿も普通の小学生に戻る。

 

 

家に帰ったら、宿題をして、母さんの美味しいご飯を食べて、みんなで笑って。

 

何の変哲もない……でも大切な、時間。

このまま。

ずっと続いてくれたら良いのに。


 
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