No.423668

【南の島の雪女】琉菓五勇士チンスゴー(3)

川木光孝さん

【前回までのあらすじ】
落ち込む白雪を元気付けようと、「琉菓五勇士チンスゴー」なるテレビ番組を見せるぐ風乃。
そのとき、風乃宅に、ある訪問者があらわれるのだった。

2012-05-16 05:17:13 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:410   閲覧ユーザー数:410

【お友…達?】

 

「風乃、お友達が来てるわよ。

 玄関にいるから、迎えにいきなさい」

 

1階に降りた風乃の姿を見て、

母親がそう言う。

 

「うん、わかった」

 

玄関へ行く風乃。

 

「お友達かぁ…

 誰なんだろう」

 

風乃は、玄関の外にいるのが誰なのか、

興味と不安を抱きつつ、玄関ドアを開ける。

 

訪問者

「どうも」

 

風乃

「ふぇっ!?」

 

風乃は我が目を疑った。

自分の目の前にいる「友達」は、人間のかたちをしていなかった。

 

どっちかというと、チンスコウに近いかたちをしていた。

それも、5人もいた。

左から、ピンク、ブラック、茶色、緑、黄色。

どこからどう見ても、さっきテレビに映っていた、あのチンスゴーである。

 

しかし、こんなに色とりどりでチンスコウ似の友達なんて

風乃は知らなかった。作ったおぼえもない。

 

明らかな不審者臭を感じ、風乃は母親に大声でさけぶ。

 

「お母さん!

 こんなの友達じゃないよ!」

 

「と、友達じゃないだと…」

 

友達否定宣言をされ、茶色のチンスコウは、がーん!とショックを受ける。

 

 

【チンスゴー訪問する】

 

「いやーまさか、チンスゴーさんたちが来るなんて

 思わなくて」

 

風乃は、頭を指でかき、あははと笑った。

 

「どう見ても人間じゃないから、

 風乃の友達かと思ったわ」

 

母親はおほほと笑った。

 

「人間じゃないから友達っていったい…」

 

黄色のチンスコウである、パイン・チンスゴーはあきれたような声で言った。

 

「この子は、幽霊の類をよく家に連れてくるものだから。

 幽霊は友達」

 

「ゆ、ゆゆゆ、幽霊だって!?

 怖いよ!」

 

ピンクのチンスコウ、ハイビスカス・チンスゴーは

パインのうしろに隠れた。

どうやら、このチンスコウは幽霊が苦手なようだ。

 

「最近は、幽霊だけにとどまらず、

 2階に雪女を飼っているのよ」

 

「な、なんだと!」

 

茶色のチンスコウ、プレーン・チンスゴーは驚きの表情を見せた。

のっぺらぼうのようなチンスゴーの顔のどこに眉毛や目があるのかわからないが、

とにかく驚きの表情を見せたのだ。

 

「雪女はペット扱いかよ」

 

緑色のチンスコウ、ゴーヤー・チンスゴーはクールに突っ込んだ。

 

「お母さん! 白雪はペットじゃないよ」

 

風乃が母親にツッコミをいれる。

 

「ごめんなさい。

 首に縄つけて散歩させてないから、ペットじゃないわね」

 

「犬かよ!?」

 

プレーンはさらに驚きの表情を見せた。

 

「だから、お母さん! 白雪はペットじゃないってば!」

 

風乃は怒ったような声をあげ、テーブルをバンとたたいて

母親に注意する。

 

「白雪は、他人だよ!」

 

「それはそれでひどくね?」

 

ゴーヤーはクールに突っ込んだ。

 

 

【チンスゴー訪問の目的とは】

 

風乃

「で、何しにきたの、チンスゴーさんたち」

 

モズク

「実は、ある落し物をしまして」

 

黒い物体モズク・チンスゴーはゆっくりとした口調で

語りだす。

 

モズク

「ちんすこうを、落としました」

 

風乃

(ちんすこうがちんすこうを落としたって! …ぷっ! くすす!)

 

黒いモズク色のちんすこうが、「ちんすこうを落とした」などとほざいている。

風乃は、このシュールな光景に思わず、笑いそうになる。

が、なんとなく失礼な気がして、口元をおさえる。

 

風乃

「そ…その、まさか、そのちんすこうの色って、

 レインボゥ?」

 

ちなみに、レインボゥの発音だけ若干ネイティブ気味である。

 

モズク

「そうなんですよ、レインボゥなんですよ!

 グッドな発音ですね!」

 

ちなみに、レインボゥとは日本語で「虹」(にじ)という意味だ。

 

風乃

「レインボゥ!」

 

ほめられ、笑顔で調子に乗る風乃。

 

モズク

「その虹色のちんすこうなんですが…

 実は、私たちチンスゴーの新たなメンバーでして」

 


 
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