第10話 魔王化VS騎士化
オレとノワールは今大変な状況下にある。
昨日の約束でモンスター退治のついでに迷子の女の子を捜しだし、無事送り届けてあげた。
ここまでは良いとして、問題はこの後だった。本当ならクエストを終えてノワールとデートという予定があったのだがそれは見事なまでに玉砕した。
オレは今の状況では一番会いたくない人物達に会ってしまったのだ。
その、人物とは俺の仲間だ。いわば、ネプテューヌ達だった。
ちなみにオレはフードを深く被っているのでネプテューヌ達には不審者に見えているだろう。
普通は感動の再会なんだけどなー。ここでばらすわけにもいかないし。
ノワールにはすでにネプテューヌ達が仲間ということは言っておいた。
最初は戸惑っていたが、徐々に納得してくれて最終的には丸く収まったのかな?
このまま逃げることも考えてみたが、それはノワールのよって止められた。
今回は「これは私達女神の問題だから」と言われてしまい返す言葉がなくなってしまった。
「ネプテューヌ!私はお兄ちゃんとの予定を守る為にもあなたを倒すわ!覚悟してもらうわよ!!」
あー、別に予定なくなってなかったんだ。よかったー。
すでに女神化したノワールが四人の前に浮いていた。
片手には巨大な太古の武器?見たいな感じのやつ。
「よく分からないけど、私達は負けるわけにはいかないわ!」
「そうですー!私達でかかれば怖いものなしですー!」
「あなたには悪いけど、この勝負勝たせてもらうわよ!」
三人はすでに準備万端といった感じである。
いつ勝負が始まってもおかしくはない空気だ。
「私も戦わせてもらいます」
ライカも準備ができたのかガトリングを構え一歩前に出る........マジかよ!
やばい、ライカが加わったらそれこそ終わりだ。ライカの力は女神をも圧倒する力を持っている。
まあ、暴走した時だけだが、通常の状態でも女神と互角の戦闘力を持ち合わせている。
「ふ、ふん!別に一人増えたところで私の勝利は変わらないわ!」
一方のノワールは強気だが、オレから見たらただ不安を隠しているようにしか見えない。
目には不安の色が見える。ノワールは昨日の戦闘で散々負けということを思い知らされた。
対する、ネプテューヌは自信に満ち溢れていた。
このままでは大切な人たちが傷つけあうのを見てしまうことになる。
それだけは、止めなければ。
「いくわよ!」
先に動いたのはノワールだった。ノワールは勢いをつけたままネプテューヌに剣を振り落とす。
「ッく、やる!」
ネプテューヌはそれをギリギリで剣で防ぐ。
速く止めないと!オレがそう思い駆け出そうとした瞬間、
突如ネプテューヌ達の間に強烈な光が現れる。
そして、それはすぐに音も無く弾け二人の身体を吹き飛ばす。
「間に合え!」
オレは何とか片手でノワールを受け止め、片手で抱いたまま、ネプテューヌの元に走る。
「おっと、ぎりぎりセーフかな」
何とか、ネプテューヌを壁に当たる寸前で受け止めた。
緊張の糸が切れたのか、先ほどから手に女の子の感触を感じている。
「ひゃん!」といった可愛い感じの声が両脇から聞こえてきた。
「いや、これはだな、決して意図的にやったわけじゃなくてな........フードが取れてるー!!」
「そ、そんな、タイチなの?」
ネプテューヌは驚きの声を上げている。実際のところ容姿はほとんど変わってないのだ。
ノワールは「ばれたわね」と何故か、ため息交じりの声で言ってくる。
「ずいぶん楽しそうね、タイチ」
「........セフィア」
俺の数m先に立っているのは白いドレスを纏った美少女であった。
腰まで伸びた白い髪、背丈はノワールと一緒ぐらいだろうか。ちなみに胸のサイズは80cmです。
何で、分かるかは秘密です!
「セフィア。俺は君を救いに来た」
「あら、奇遇ね。私もあなたを救いに来たのよ。女神という何千年もあなたを縛り付けている鎖を断ち切ってあなたを救って見せるわ」
「まさか、じゃあお前はフードのやつらに関係があるってことか!?」
「彼らは、協力者よ。ブラックハートの抹殺を彼らに頼んだのも私よ」
セフィアがブラックハートことノワールに鋭い眼つきを送る。
そんな視線に気付き一瞬身体をびくと強張らせるノワール。
「大丈夫だ。ノワールは俺が守ってやる」
「お兄ちゃん」
ノワールの頭に手を置き軽くなでなでをする。
なでなでをされてるノワールは気持ちいいのかたまに「ふぁ」と言ったかわいらしい声を出す。
そして、オレは再びセフィアのほうを向き
「女神はオレが守る!君もオレが.....救ってみせる!!」
オレは力いっぱい叫んだ。セフィアは一瞬驚いたのか目を見開いていた。
だが、すぐにそんな驚きは消え、くすりと笑いながら
「相変わらずね。私だけじゃなくて少し、妬けちゃうわ」
セフィアはそう言うと右手を掲げ、魔神召還の呪文を詠唱している。
邪魔はしてやりたいのだが、今出たところで詠唱はとっくに終わっているため意味が無い。
俺は両脇の2人から離れ一歩前に出る。
目の前にいるのは白きドラゴン。純白の鱗は見るからに硬そうである
セフィアの右手に握られている<エクスカリバー>が神々しく光っている。
「さあ、始めましょう」
セフィアが口を開いた瞬間ドラゴンは雄たけびを上げ<ホーリーブレス>を仕掛けてきた。
ドラゴンの口から出た白い風は無数の刃になり、こちらを襲ってくる。
オレはすぐに剣を地面に突き立てる。
甲高い音がしたと同時にオレの目の前に巨大な闇の壁ができ、風の刃を全て防いでゆく。
オレは開いた片手をネプテューヌ達のほうに向け
「彼女達に、最高の加護を!」
オレが叫ぶとどこと無く現れた光がネプテューヌ達を包んでいった。
ネプテューヌは何かを叫んでいるが、まったく聞こえない。
今さっき、使ったのは結界の中でも最高位のものである。
ちなみにあの結界の中に入っている間は精神的にも肉体的にも非常に癒されるという効果つきなのである。
最高位の結界だけあって外からの攻撃はほとんど受けつかない。
かといっても例外はいくつかある。オレやセフィアの攻撃なんかはまさにそれに当てはまる。
そんなことを考えていると目の前の闇の壁がドラゴンの強力なビームによって破壊されてしまった。
「さすがは、魔神といったところか」
「余所見はダメよ」
声のした後ろにすばやく向き直るとそこには<エクスカリバー>を横に構えているセフィアとネプテューヌたちを包んでいる結界があった。
後ろには今まさに<ホーリーブレス>を使おうと口を開いているドラゴン。
オレは剣を地面から抜きセフィアのほうを向き
「何で仕掛けてこなかった?」
片手をドラゴンの方に向けすばやく魔法を詠唱して、ドラゴンの動きを止める。
ドラゴンの動きを止めているのは鎖の形をした闇である。
身動きの取れないドラゴンは鎖を解こうとするが暴れるたびに締め付ける強さはどんどん増してゆく
。
「こうするためよ」
セフィアは剣を結界に振り下ろした。だが、次の瞬間
「きゃぁぁぁぁぁ!.....な、何が起きたの?」
剣が結界に触れた瞬間、セフィアの身体に黒い電撃が奔った。
セフィアは衝撃に耐えられず、思わず地面に膝をつく。
「その結界には特殊な施しがしてあってな、、セフィアが攻撃すると電撃が奔る仕組みになってるんだ。よし、これで一対一だな」
「い、いいわよ、試してあげるわ。あなたの力を」
さてと、状況は特に変わらないな。どうせあの鎖もあと五分もしたら壊れるだろ。
短期決着だな!長期戦はオレのの力だとどうも不向きだからな。
逆にセフィアは長期戦に関してはエキスパートな為、長期戦に持っていかれるとオレに勝ち目は無い。オレは剣を構え足の裏に力を込めてゆく。真正面から当たっても致命傷は与えられない。
ならば、後ろに回りこむ!オレは地面を蹴り一瞬のうちに後ろに回りこみ、その勢いのまま横に一閃したはずだった。
「いい動きをするわね。けど、それじゃあ勝てないわよ」
オレの剣はエクスカリバーのよって簡単に受け止められていた。
「騎士化したのか!?......可愛いなあ.....って、おわ!」
さっきの言葉が気に触ったのか、俺の顔めがけて剣が振り下ろされた。
オレは何とか反応して、後ろに飛び去る。
前髪が若干切れてしまった。反応が遅れてたらあと少しで半分になってたな。
やばいな、セフィアの顔が真っ赤だ。もしかしたらゲイムギョウ界が吹き飛ぶかもしれない。
まあ、可愛いのは事実だし仕方ないよ。変身前も可愛いけど。
腰まで伸びきっていた髪はポニーテールになっており、
服は変わらずドレスだがその上には甲冑がついている。
まるで、あれだな。Fat〇のセイ〇ーだな。惜しい、髪が金色だったら完全だったのに!
「あ、あなたも速く魔王化しなさい!」
「いや、俺は遠慮しとくよ。にょ、女体化するのは困るからな」
そう、俺は魔王化するに従って身体が女体化するというわけも分からん能力が付属する。
本当だったらオレは女体化などせずに普通に男の状態のはずだ。
これの原因は至って簡単で力を完全に使いこなしていないから女体化するそうだ。
逆に力を完全使いこなすことが出来たら初めて完全な魔王として降臨出来るとか。
「いいのかしら?あなたが魔王化しなければ彼女達が傷つくのも時間の問題よ」
セフィアの言うことはごもっともだな。今の状態で戦ってもまったく歯が立たない。
オレは.....ネプテューヌ達を守りたい!
「やってやる!魔王化<デモン・インフェルノ>!」
オレの視界は真っ白になり、身体が変化していくのがわかる。
髪は長くなりコートは赤の古風のドレスに変化してゆく。
そして、胸がわずかにだが膨れている。
そして視界が元に戻った。手に握られるのは美しい装飾の施された緋焔の剣。
深紅に変わった髪。背は普通伸びるか、変わらないはずなのだが
見事なまでに背は縮みネプテューヌの女神化前より少し大きい程度。
完全に俺の面影が微塵も無い。理不尽だなー。
自分で言うのも気が引けるのだが容姿はかなりの美少女だった。さすがに心までは変わらんよ。
「あなた、何で女の子になってるのよ!?......か、かわいい。抱きしめてあげたいわ」
「せ、戦闘中ですよ?いくわよ!.....覚悟しなさい!」
お、おかしい。何かがおかしい。.........何で勝手に女の子の口調になってるんだ?
確か、前もこんな感じだったよな...........この問題は保留しておこう!
オレは剣に手を添え魔術を詠唱してゆく。
「我が力に答えし煉獄の炎よ、今ここに罪を浄化する力を!」
その声とともに手に握られていた剣から灼熱の紅い炎が吹き荒れる。
炎を纏うと言うよりも発していると言ったほうがあってるかもしれない。
開いている片手で瞬時に炎でできたランスを形成してゆく。
外見は真っ赤で特にこれと言った装飾は施されていない。
ドラゴンとオレとの距離は5m程度だが、それでも十分距離がある。
オレは軽く地面を踏みしめ狙いをドラゴンに定め瞬時にランスを突き出す。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ドラゴンは断末魔の声を上げた。
俺の手元にはランスはなくドラゴンの胸には大きな穴が貫通していた。
そして胸に開いた大きな穴から炎が噴出しドラゴンの体は跡形も無く消え去った。
先の攻撃はランス自体を炎のレーザーとしてドラゴンにぶっ飛ばした技である。
威力は桁違いなのだが、その分使い勝手が悪い。一発しか使えないと言ったところだ。
「その力、あなたにはそんな力なかったはずよ?」
「それは秘密よ。.....いくわよ!」
オレは瞬時に駆け出しエクスカリバーに重い剣戟を叩きつける。
だが、さすがはエクスカリバー。折れる気配は微塵もしない。
「折れないなら、消し炭にするまでよ!」
再び距離をとり剣にさらに力を流し込む。
火焔の剣はより強く炎を発してゆく。
オレは先程とは比べ物にならないスピードと剣戟でセフィアを追い詰めてゆく。
「ッく!さすがね。けど、これならどう!?」
先程まで討ちあっていたエクスカリバーから強力な光が発せられる。
目くらましか!だが、これでやれると思うなよ!
.......右に強大な気配が一つ。こちらには向かってこないな。
「零鎮魂曲<ゼロ・レクイエム>!」
「!?...火焔っ!きゃぁぁぁぁ!!」
オレの体は宙に浮いている。全身に苦痛を感じるのは先程の攻撃によるものだろう。
あと、もう少し速く反応できたら......視界が直った?
最初に映ったのはダンジョンの天井。まだ、セフィアの気配は感じる。
オレは何とか剣を地面に突き立て、立ち上がりセフィアの姿を探す。
ドレスはボロボロに破けてしまい、肌が露わになってしまっている。
だが、今はそんなことを気にしてる余裕は無い。
「......み、見つけた。ぐ、紅蓮の炎よ。我が敵を、捕らえ、うぐ!?」
「ごめんなさい。.....次に会うときは完全に目覚めていてね」
オレの溝には剣の柄が叩き込まれていた。
「ま、待って......セフィ....ア」
ダメだ、彼女を行かせちゃ!だって、セフィアは泣いてるじゃないか!!
また、彼女を泣かせるのか?もう、二度と泣かせないと誓ったはずなのに!
「タイチ、タイチ!」
「ネプテューヌ、ご、ごめんね。巻きこん......」
オレはいつの間にかネプテューヌに抱きとめられていた。
そして、そのまま意識を失った。
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ノワールとのデートの予定は思わぬ出会いによって崩れ去っていった。タイチの目の前に現れたネプテューヌ達。ある人物との何千年ぶりの邂逅!そして、ついにタイチが変身!!