「決闘ですわ!!」
その一言が始まりで、俺は今、とんでもない事になっている。
「その程度ですの、私を侮辱したこと後悔なさい。」
四方八方から放たれるビームを、急制動をかけながら回避するも、必ず、こちらの意識の外からの攻撃が当たり、シールドエネルギーを削る。
「うぐっ。」
幾ら絶対防御があるといっても、衝撃はくる、そして、にわか仕込みの技術では、受けた衝撃を流すことは出来ない。
今は、相手が遊んでいる為、保っているが時期落しに掛かるはずだ。
「残念ですけど此処までですわ。最後に私のとっておきでフィーナーレにさせて頂きますわ!!」
蒼い機体が、手に持つ二メートルはあるかというライフルを構え、逃げようとする軌道を四方のレーザーが潰す、そして........。
箒と別れた俺は、その後の授業もずっと上の空だった。
正直、未練があるか、といわれれば、勿論ある。
「箒.....綺麗だったな....。」
身体つきもそうだが、六年間彼女が溜めた不の感情が体から滲み出し、少しクセがあるが、大人の女というかなんと言うか、凄く雰囲気があってそそられた。
授業中横目で盗み見る箒の横顔は美しく、自分が今までなかった性への目覚めを感じさせる相手だった。
だから、今俺の目の前に踏ん反り返って立つ女には、失礼だがそれ程魅力は感じない。
箒とこれを比べたら月とスッポンだ、相手には悪いが特殊な性癖に目覚めてしまった俺には普通のお嬢様は眼中になかった。
「ちょっと宜しくて貴方。この私が話しかけているというのにその態度はなんですの。」
はあ、そろそろお嬢様がご立腹だ。まあ、金髪たてがみロールもありだが......実弾という意味では大きく箒に差を付けられている。
それに箒はあの黒髪だからこそいいのだ。白装束に日本刀をもって、彼岸花の簪をつけた箒を想像するだけで胸が熱くなる。
俺は目の前に立つお嬢様の胸を見ながらボンヤリと箒のことを考えていた.....。
「いい加減にしてくださいまし、貴方先程から見ていれば授業も上の空で...............。」
しかし、この金髪よく喋る、一体どうやったらこんなに言葉がスラスラと出て来るんだか。
呆れるのを通り越して感心してしまった。
今度機会があったら聞いてみよう。
「........大体この私栄光あるイギリスの代表候補生であるセシリア・オルコットと一緒のクラスというだけでも光栄なことなのに...................................。」
まだ言うらしい、イギリス人は話が長い、たしか名前はセシリア・オルコットというのか......別に覚える必要もないか。
「大体文化的程度も劣っているあなた方日本よりも優れている..................。」
随分と大昔のことを話しているらしい、さてはこの女歴史オタクだな、自分の国のことをここまで褒めちぎる事が出来るのは早々いない、やっぱり此処に来ているだけあるんだな。
「たしかに日本の技術は認めてあげなくもないですが、しかしテロリストを生み出すような、しかもその幼馴染であるテロリスト予備軍の貴方が此処に来ている事すら可笑しいですわ。貴方今直ぐ此処から即刻出て行きなさいまし、「おい。」な、なんですの。」
思わず地が出てしまったが、止まらない。
「俺は、オレ達家族は、テロリストでもその仲間でもない。いいか、その小汚い金髪たてがみに隠れた耳の穴かっぽじってよく聴け。俺は何を言われようとも構わない、だが、俺の家族や大切な人を傷つけるような事を言ってみろ。容赦はしない。」
クラス中がシーンとなる中、俺の声だけが響き、セシリアは最初は俺の声に怯えていたが、段々と顔が赤くなり、
「な、なななななな、なんですの貴方。男の癖にその物言いは。いいですわ、貴方のその言葉、この私に対する挑戦状として受け取りましたわ。」
セシリアは高笑いを上げながら俺に指を指して宣言した。
「決闘ですわ!!」
こうして、俺とセシリアとの間で戦いの火蓋が切って落とされ.......、
「何時まで立っているんだ馬鹿者。とっくにチャイムは鳴っている。さっさと席に着かんか。」
千冬ね.....千冬先生がいつの間にか傍にいて二人とも出席簿の角で頭を叩かれてしまった。
互いに話に夢中になってチャイムを聞き逃していたらしい。
はあ、欝だ......箒に蔑まれた目で見られながら箒の胸に埋まりたい。
「では、授業を始める前に、クラス対抗戦の代表者を決める。自他推薦でも構わん、自分こそはと思うものは手を上げてくれ。」
また変な単語がでたが、まあ対抗戦と言うんだから運動会なんかじゃなくIS使って戦うんだろうな。
「はい、私織斑君がいいと思います。」
.....what?
「私も。」「あ、それじゃ私も。」「私も」........以下略。
どう言う事なんだ、クラスの殆どの女子から推薦されてこのままではその代表とかになってしまうではないか。
しかし、クラス中に鳴り響く机を叩く音で、静かになった教室に、凛とした声が響きわたる。
「待ってください!納得行きませんわ。」
セシリアは立ち上がって胸に手を当てて自信高らかに言う。
「本来ならばクラス代表はそのクラスでトップのものがなるもの、実力成績共にトップで尚且つイギリスの代表候補生であるこのセシリア・オルコットこそ代表に相応しいのです。」
おお、おお、いいぞ言ってやれ、俺はこの学園で箒以外に興味ないから代表なんて面倒くさいのやってられないよ。
「大体、こんなテロリストの仲間のような男なんかがクラス代表なんて恥じどころか異常ですわ!この私にそんな不名誉を一年間も味わえとおっしゃるのですか?絶対に私は認めませんは。」
........ヤバイな。
千冬ねぇの前でテロリストなんて言ったら何が起こるか.......俺は何時何が起きてもいいように身構えそして、
「それだけかセシリア・オルコット。」
底冷えするような声を出す千冬ねぇ、いや千冬さまはそういってセシリアを見る。
流石にこの状態の千冬さまに反論するような胆力を持ち合わせてはいないのか、プレッシャーを浴びせかけられたセシリアはそのまま椅子にへたり込んでしまう。
「皆も不服はないな、あればこの場で言ってほしい。私は全てを聞き入れ受け止める。」
誰も答えない生徒達、ふと教室の角に眼をやると蹲って頭を両手で抱える山田先生が、
「怖くない怖くない怖くない怖くない。」
などと震えながら結構虚ろで危ない目をして繰り返し繰り返し呟いていた。
うん、見なかったことにしよう。
「だが、セシリアの意見にも一理ある。よってクラス代表は織斑とオルコットの両者の実力で決めることにしよう。では、以上でクラス代表の話を終える。」
千冬ねぇ、ちょっと無理やりだけど本当に先生してたんだな。
ふと、横目で見た箒と千冬ねぇとが視線があった気がしたが.....気のせいだろうか。
二人とも直に視線を逸らしたように見える。
.....一体なんだったのだろう。
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第十二話