No.226483

『舞い踊る季節の中で』 第116.5話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

 見知らぬ土地に突然と意味も分からぬままに放り出された雛里。
 そんな彼女の前に、汜水関で行方不明になった彼女が立ち塞がる。
 絶体絶命の危機を、雛里は切りぬけれるのか?

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2011-07-05 19:57:30 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:10979   閲覧ユーザー数:7603

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√ 第百十六.五話

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割拠編-

   ~ 夢見る雛は、星の導きにより空高く舞い踊る ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)

   習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、太鼓、

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

        

  (今後順次公開)

 

 

 

 

雛里視点:

 

「んっ……、ん~~、はぁ~~」

 

 朝日の光だろうか、顔に感じる眩しさに、私は身体を横にしたまま、大きく伸びを伸ばする。

 まだ重くて開ける事の出来ない瞼をうっすらと開けるもの、うっすらとボヤける視界をよそに、目覚め切っていない重い身体をむりやり起こす。

 

「う″~………」

 

 少しでも眠気を頭の中から追い出すために、呻き声を漏らしつつ。 おろした髪をいつも通り結わえながら、眠気を振り払おうと手を背中にやった時に、いつもと違う感触に気が重くなる。

 あるはずの場所にあるべき感触が無く、途中で触れた馴染んだ感触に、夕べは髪を解かずに寝てしまったのだと分かり憂鬱になってしまう。

 また枝毛が増えたかもしれないし、髪自身が傷んだかもしれない。それを元に戻るように手入れをする手間を考えたら、僅かな時間を惜しんで睡魔に負けて眠ってしまった自分が恨めしくなってしまう。

 それでも、やるべき事は変わらないのなら、せめて勢いを付けて今日一日を過ごそうと、気合をいれて眠気を一気に振り払うように声を出して目をめいいっぱい開ける。

 

「えいっ!………………はい?」

 

 だけど、そんな有り触れた声と日常は、有り触れでは無い光景と零れ出てしまった間抜けな声で終わりを告げてしまい。

 

 

 

 見渡す限り石と水晶で囲まれた家々。

 家? ……果たしてそれを家と言えるのか?

 まるで塔のように高くそびえ立つ建物。

 だけどそこから人が出入りしている以上、人の手による建物になんら間違いは無いと思うのですが、家と思う理由は、そんな異様な建物が数多く建っているからです。

 寺院社や砦の一種と言うのならば、ここまで多く近接して立つ意味がありません。ならば市位の人々の建物と推測いたしました。

 ただ驚くべきなのは、その塔が私の知るどの塔のどれよりもはるかに高いものだったり。空に月が浮かんでいると言うのにもかかわらず。日の光のような明るさを放つものにより、昼間と変わらぬ明るさが建物や道を照らしています。

 

「……硬い石の地面。……馬も無いのに走る鉄の馬車。 此処は一体どこ?」

 

 目が覚めた部屋から出た私を迎えた光景は、さらに私を混乱へと陥れようとします。

 それでもなんとか今置かれた自分を取り囲む状況を掴むために、感情をむりやり殺して街(?)の中を、いつの間にか来ていた見覚えのない服を着て歩むんでいるうちに、いきなり妙な感触に襲われます。

 

 

ドォーーーーーンッ!

「あわわっ」

 

 襲い掛かる閃光と爆音。そし巻き起こる炎が、妙な感触に気を取られて躓き転んでしまった私の頭上を通り過ぎて行きます。

 頭上を通り過ぎてモノが行き着く先に在ったのは、凄惨だけど見慣れた光景が繰り広げられていた。

 その事実に私は、もの凄い勢いで意識が収束されてゆくと共に、目が細まって行くのを自覚する。

 その目を隠すかのように帽子のツバを下ろそうとして、帽子をしていない事を思い出して、手が虚しく空を切った時、あたり一体に高らかな女性の声が響き渡ります。

 

「よくぞ今のを避けた。 流石我が好敵手と言っておこう」

 

 その声は高い鉄の棒に支えられ、暗い夜を照らす明りを放つ不思議な光源の上から聞こえ。その鉄の棒に威風堂々と立つ姿を下からの光が照らしだします。

 その姿に…………え~となんで貴女が?

 しかも、今の攻撃は一体? それに好敵手って?

 脳裏に浮かぶ疑問言葉とは余所に、私の口から漏れ出た最初の言葉は、

 

「あわわ。 か、華雄さん。 その生きていたんですか?」

 

 見知った顔がいる事に、つい出てしまった場違いな言葉。

 そんな私を汜水関で愛紗さんに敗れ、配下の兵達と共に何処かに姿を消えたはずの華雄さんは、口元を引きつらせながら眉を顰めます。

 

「そうか、貴様にとって私はすでに亡き者と同じと言う事か。随分と舐められたものだな」

「あわわっ。何か微妙に話が通じてない気が」

 

 身体を怒りにブルブルと震わせ、離れた此処からも分かる程の圧力に、私は咄嗟に駆け出します。

 そんな私に華雄さんは、手にした巨大な戦斧を振り上げ。

 

「うぉぉぉぉーーーーーーっ」

 

 毀れ出る気合の声と共に、その斧の先端に赤い閃光と共に大気から炎が集まって行きます。

 そしてその炎が、先程私の頭上を通り過ぎた物より大きくなると共に、一度斧を後ろに振り……まさかっ

 

「喰らえっ!」

「あわわゎぁぁぁーーーっ!」

どっごぉ~~~~~~~っん!

 

 先程以上に気合の入った華雄さんの攻撃は、私の居た場所を大きく逸れた炎の塊は、近くの建物に当たり。先程以上の凄まじい爆発音と共にその炎の威力を私に見せつけます。

 

「……石と水晶で出来た建物の一つ半壊するだなんて…。

 あわわっ…、あんなものを喰らったら一溜りもありません」

 

 塔と言えるほどの建物の中腹が、華雄さんの攻撃で爆発四散し、崩れ落ちる姿に私は絶句します。

 そこへ華雄さんが、高い鉄の棒から飛び降りるなり。

 

「ふっ、私を挑発でもって怒らせ。狙いを逸らせるとは、相変わらず小賢しい小細工を使ってくれるな。

 だが次はそうはいかんぞ魔法少女ひなりん。 我が杖【金剛爆斧】の錆にしてくれる」

「………はっ? 杖って、そんな巨大なのに? それに魔法少女って…」

「私を混乱させようとする手は、もう通用しんと言ったはずだっ! 炎よ我が杖に集え。火炎被閃群」

「ひぃぃーーーーーっ」

 

 華雄さんの訳の分からない言葉に混乱する私を、華雄さんはどう見ても巨大な戦斧にしか見えない杖から、先程より遥かに小さい炎の球を吐き出しながら攻撃してきます。

 とにかく小さいとはいえ、建物一つを簡単に半壊する攻撃を見ては、とても小さいからといって安心できるものではありません。 私は必死に逃げ回ります。

 小さな体を活かして……。

 乱立する大きな建物の影を利用して……。

 そしてその甲斐あって、華雄さんの目を結んである建物の中に身を隠します。

 

 

 

 

「はぁー、はぁー、………いったい何でこんな事に?」

「まったくだ。 何故いつもいつも最初は逃げ回るのだ。

 正義と言う物は逃げ腰であってはならぬ。そういつも教えているではないか」

「星さん!?」

 

 荒く息をしながら呼吸を整える私に、聞きなれた溜息を吐く声に私は声を上げる。

 そして周りを見回す中。その顔を見い出し私は嬉しさと安堵のあまりに涙が零れ落ちそうになるのですが。

 

「………あの星さんですよね?」

「何を言っている。私は華蝶仮面。 そのような者の名など知らぬと何度も言わせるな」

「………まぁ良いです。 良くはありませんけど、それはこの際どうでも良いです」

 

 私は星さんから返って来た言葉に頭痛を覚えながら、私はもう一度顔をゆっくりと起して星さんの姿を覗き見る。

 ………蝶を模した変な仮面を付けているのは良いです。 気にはなりますが、先程の華蝶仮面と言う聞いた事のない名前は此処から来ているのだと簡単に推測できるし、此処でそれを指摘しても無駄な労力を発するだけだと何となく分かるからです。

 それよりも問題なのは……。

 

「……何でそんな小さいんですか?」

「はて?私は最初からこの大きさだぞ。 今日は何時になく可笑しな事を言うな。どこぞで頭でも打ったのか?」

 

 手のひらに乗りそうな大きさしかない星さんは、心配げに顔を僅かに傾けて私の肩に飛び乗って来ます。

 そう、文字通り飛んで…。背中から生やした羽をうっすらと光らせて…。

 

「……あの、何で黒揚羽蝶の羽なんですか?

 それに何かお尻の方に、矢印のような形の変な形の尻尾も生えていますし」

「うむ。本気で頭を打ったようだな。 ならば先程の無様な闘争ぶりも納得が行くか。

 それにしても今日はどこで転んだのだ? 階段か? それとも桃の皮でも踏んだか? それとも何時ものように何もない道の真ん中で転んだのか?

 まったく可愛い無垢な振りをして、そうして男共に己が下履きを見せつけて気を引こうなどと。 将来はさぞ男を誑かす悪女・」

「ち・ち・ち・ひがいますっ! あわわっ、しょんな下履きを男の人に見られるだなんて、ひゃ、ひゃずかしくて死んじゃいます」

 

 いきなりとんでもない事を言いだす星さんに、私は顔を恥ずかしさに真っ赤にさせて大きな声を出してしまいます。 ううぅ、想像しただけでも恥ずかしすぎます。

 

「どうやら本気で重傷のようだな。 ふむ、困った」

「あわわ、聞いてください私は・」

 

 とにかく恥ずかしいのを我慢して、私は今知り得ている自分の状況を星さんに簡潔に話します。

 私は劉備軍の軍師で、気がついたら見知らぬ土地に居た事を。

 現状を出来るだけ知るために、話にも聞いた事のない建物が聳え立つ街の中を歩いていた事を。

 そして訳の分からぬままに、突然華雄さんに似た女性に襲われた事を。

 

「頭を打った際に生じた衝撃が原因における記憶の混乱と言う奴か。

 そう言えば雛里よ。胡蝶の夢と言う話を知っておるか?」

「あわわ、……ですから、私は本当にこの土地の人間では。 それに寝ぼけている訳ではありません」

「うむ、分かっておる。貴公は魔法少女ではないと言うのだな。

 だが私の知っている雛里は魔法少女で、貴公の魂は私の知る雛里とまったく同じ色をしている」

 

 結局、私の説明や考えも、星さんの言う魂の色を理由に受け入れてもらえません。

 それでも何とか、協力して今の状況を脱したい私は一生懸命星さんに話をします。

 そんな私に星さんも、これ以上は水掛け論になると思ったのか。

 

「ならば雛里よ。こうして見るがよい。 それで全てが分かる」

「………あわわ、そ、それ如何してもやらないといけないんですか?」

「貴公が私の知っている雛里と違う、証明したいのなら必要な事だ。

 もしそれで私の知る事態が起きなければ、私も大人しく貴公の言い分を認めるし、貴公が元の土地に帰れるよう尽くすことを約束しよう。

 なに、真に困った者を救うのが正義の使者たる華蝶仮面の仕事ゆえに遠慮は無用」

「……はぁ、分かりました」

 

 

 

 

 私は華蝶仮面を名乗る星さんの言うとおり右手を胸の前に置き、大きく息を吸う。

 そして吸った息を一気に吐き出すように。

 

「太陽と月と星の導きに従い。今、此処に契約者雛里が願う。

 闇と光を繋ぎし鳳凰の杖よ。 古の契約に基づき、今こそ我が手にその姿を現したまえ。開封ーーっ!

 ……あわわ、最後まで噛まずに言えました」

 

 珍しく噛まずに最後まで言えた事に思わず喜んでしまう私と裏腹に、事態は一変します。

 外と違って、薄く暗かった部屋は突然、光に照らされてその部屋の様子を露わにします。

 その光の発生源は私の足元。 幾つもの幾何学模様が光の円の中で回りながら更に光を増して行きます。

 

「おぉ、やはり」

 

 星さんの歓声とは裏腹に、地面に浮かぶ模様から発せられる輝きに目を開けられなくなって顔を覆った時。 忽然とその輝きは消え伏せます。

 そして部屋の様子は以前のように薄い暗闇に覆われていると言うのに、

 

「………あわわ、これは私の杖。いったい何処から?」

 

 御爺さんから頂いた想いの結晶たる杖が、いつの間にか私の手に握られていました。

 そして同時に、見た事もなかった服を着ていた私は、いつの間にか何時もの服と帽子を身に着けている事に気が付きます。

 

 

 

 

「おぉぉ、やはり【魔法少女 マジカル☆ひなりん】ではないか。 まったく余計な心配を掛けおって」

「ち、ちがいます。 大体なんですかそのマジカル☆ひなりんと言う・」

「わはははっはっ!

 強い魔力を感じて来てみれば、こんな所に隠れていたか、マジカル☆ひなりんっ!

 今日こそは、貴様を地獄に叩き落してくれる」

 

 喜ぶ星さんに、なんて言ったらこの事態を違うと理解してもらえるか、本気で訳が分からなくなった時に、またしてもややこしい事態が舞い込んできます。

 華雄さんの言葉から察するに、先程の言霊の影響で此方の居場所が分かってしまったようです。

 そして、きっと今まで私を探し回っていたであろう華雄さんは、その鬱憤を晴らすかのようにその杖【金剛爆斧】を振りかざし、先程のように炎を集めます。

 いけない、こんな所では逃げ場も隠れ場もありません。

 慌てふためく私をよそに、心の中の奥にいる私は冷静に現状を見回します。

 魔力の集中を感知、おおよその魔力値九十二と推定。 属性は炎で連続放出型の攻撃魔法の確立大。

 対応、魔力二十にて風の盾を斜めにて展開し、まともに受けずに攻撃を逸らす。

 

「くらえっ! 魔撃連炎弾百十三射撃っ!!」

「あわわ。風よ。我が前に舞い踊れ」

 

ふぁんっ!

ごぉああっ!

 

 自然と口に出た言葉と、前に突き出した杖から発した輝きが、華雄さんの攻撃を受け流します。

 弾かれた華雄さんの、数え切れない程の炎の弾は、私の前に展開された盾によって、華雄さんの攻撃にその楯を削られながらも後方へと弾いてくれます。

 その光景を魔女帽のツバから覗き見ながら、驚愕に目を見開いてしまう。

 

「……いったい、これは?」

「敵を寄せ付け、もう一度実戦を体験をすれば思い出すであろうと思っていたが、……その目論見は半分しか敵わなかったと言う訳か」

「せ。星さん」

「私は華蝶仮面。 そのような者ではないと何度も言わすな。

 それよりも良いのか、そろそろアヤツも本気で来るであろう。

 此処では状況は不利と見たが、どうする?」

「あわわ。と、とにかく場所を移動します」

 

 星さんの言葉に私は更に盾に魔力を少しだけ送り込み、短い間ですがその場に固定します。

 やり方は先程の盾と同じで、自然と頭の中に浮かび上がってきます。

 この杖を手にした時より、まるで杖が教えてくれているかのように……。

 それはともかく、華雄さんのあの攻撃は威力や敵に攻撃させる隙を与えないと言う優れた物ですが、その分その攻撃を放っている間は、素早く動け無くなってしまいますし、あの手の攻撃魔法は途中で止める事が出来ないと言う欠点を持っています。

 だから私は華雄さんが動けない今を狙って、戦場を離脱すべき駆け出します。

 稼いだ時間はほんの数秒、ですが今はそれだけで十分です。

 私は心の声と杖に導かれるままに、先程の華雄さんの攻撃で割れた窓から身体を乗り出し。そのまま身体を石と水晶で出来た塔から、夜空へと放りだします。

 

「凰の雛鳥よ。 その翼でもって共に空を羽ばたかん」

 

ふぁさっ

 

 先程と同じように、自然と出た呪文の詠唱と共に、杖の左右に装飾された翼が一瞬だけ眩く輝くと共に、その大きさが私を包み込目るほどに大きくなり、杖は私を乗せて夜空高くへと舞い上がります。

 す、凄い。人間が空を飛べるだなんて。

 眼下に映る高さへの恐怖よりも、あまりにも現実離れをした出来事と美しい光景に目を奪われていると。

 

「待たんか、この卑怯者めっ」

「あわわ。足元に炎を生み、其処から生まれる気流を生む事で空を飛ぶなんて、むちゃくちゃです」

 

 すごい形相で此方以上の速度で追いかけてくる華雄さんの姿に、知らないはずの知識が私にその原理を教えてくれます。 そして、このままでは追いつかれてしまう事も。

 

 

 

 

「それにしても何であの人は、あそこまで私を追いかけるんでしょうか」

「な、なに。正義と悪との戦いと言う物は古よりそのようなものであろう。 うむ。そんなものだ」

「………何か隠してませんか?」

「ぐっ、……まったく記憶が混乱していると言うのに、その辺りの鋭さは相も変わらず健在という所か」

 

 そうして星さんが教えてくれたのは、以前に私の知らない私が華雄さんと遭いまみえた時、華雄さんがあまりに面白い反応をするので、私に気が付かれないように、私の声を真似をして華雄さんの耳に飛ばして散々からかったと言う話でした。

 そしてその内容の余りの酷さに私は眉を顰め。

 

「……禁酒一カ月」

「んなっ、そ、それはあまりではないか」

「……人のせいにする方が余程酷いです。 反省が無いようですので、更に禁メンマ一週間」

「なんとっ! それはあまりにも横暴だ。私は断固として戦うぞ」

「禁メンマ二週間」

「ぐぅ…ぉ…、だが、此処で折れては、華蝶仮面の名が・」

「禁メンマ一カ・」

「私が悪かったと認めようではないか。 と言う訳で禁メンマだけは何とかならぬか」

 

 あっさりと自分の非を認めるも、禁メンマだけは何とか取り消そうとする星さんの姿に、私は溜息を吐きながら、二度としない事を条件に禁メンマだけは取り消します。

 その事に星さんは、仕方ない当分は雛里のベットの下に隠した秘蔵の酒でとか小さな声でボソボソ呟く星さんのよそに、私は冷静に華雄さんに追いつかれるまでの時間と、それまでの移動距離を計算します。

 街中は多くの人を巻き込んでしまいますから、少しでも離れた場所で、人気のない場所に移動しなければ。

 

「このちょこまかとっ」

 

 其処へ予想もしなかった事態が、華雄さんの手によって引き起こされようとしていました。

 魔法による高速移動中による魔法攻撃。 そんな事をすればたちまち飛行のための魔力が乱れ、墜落してしまう。 それを一時的に魔力をオーバフローさせて、私に一気に追いつくだけの速度を得た華雄さんは、飛行のための魔法を全て投げ捨て、その杖に石と水晶の建物であるビルを半壊させた時のような炎の魔力を集めだします。

 後先を一切考えない捨て身の攻撃。

 こんな状態でそんなものを放てば、姿勢を大きく崩し過ぎる為、地面に墜落する前に再び飛行するための魔法を発動させれるかどうかという事態に陥ります。 それ故にこの攻撃は大きい。

 

「堕ちろっ!! 魔撃連炎弾十八射撃っ!」

「あわわわわわっ~~~っ」

 

 華雄さんの無茶苦茶な攻撃を、私は杖に必死にしがみ付いて杖に避わしてと頼み込むように念じます。

 その甲斐あってか、杖は螺旋を描きながら不規則な機動で、さすがに先程より遥かに少ない華雄さんの攻撃を躱して行きます。

 ですが、

 

ボッ!

 

 最後の一撃が杖から生える翼の端に触れるや否や、炎が上がり杖は唯でさえ無理な軌跡を描いていた事もあって、急激に高度を失い。私を地面へと叩きつけようとします。

 

「あわわ杖さん、ひょね、ひょ願いしますっ!」

 

 私の必死の願いに杖が応えてくれたのか、私の杖は地面ギリギリのところで、攻撃を受けて燃え上がる翼を大きく羽ばたかせ、地面への激突を回避してくれます。

 ですが其処までです。 杖の翼は【くぁ~~……】と悲しげな幻聴と共に光の粒と化し、元の形に戻ってしまいます。 其処へ飛行の魔法が間に合わないまま落下して来る華雄さんが。

 

「我が杖よ唸れっ! 爆炎衝破っ」

 

ドッゴォーーーーーンッ!!

 

 呪文と共に、その巨大な杖【金剛爆斧】を落下と共に地面に叩きつけるかのように振りおろし、華雄さんと地面の間に巨大な爆発を生みます。

 そして、その爆煙の後には………。

 

「これで、もう逃げられんぞっ魔法少女ひなりんっ!」

「あわわわあわわっ、む、む、む無茶苦茶すぎますっ! な、な、な、何で無傷なんですか」

 

 煤一つなく私に杖(?)の先端を向け宣言する華雄さんの姿に、私は余りにも無茶苦茶な事態に悲鳴をあげます。 だけど私の言葉など関係なしに、その巨大な斧のような杖に、気合の声と共に魔力を集中させてゆきます。

 魔力値の上昇を確認。九十……百四十……百九十……まだ上がるのっ?

 

「うぉぉぉーーーーーーっ!」

「あわわわわっ。先程の物とは比べ物になりません」

 

 私の一度に引き出せる魔力を遥かに上回る魔力に、私は何か使えないかを見回しますが、あれほどの魔力を集中させて放つ魔法攻撃の前には、多少の建物ぐらいでは盾にもなりません。

 盾の魔法を展開しても、私の魔力では紙の盾でしかないっ。

 

「神獣の羽ばたきをもって消し炭となるがよいっ。 奥義、煉獄飛翔破っ……くっ」

 

 華雄さんの杖から放たれた巨大な炎の塊。

 それは巨大な火の鳥の姿と成し、私を襲い掛からんと飛翔します。

 だけど最後に苦悶の声と共によろめいた華雄さんは、その狙いを僅かにずらし。眩しいばかりの炎の輝きを持った火の鳥は、私の遥か後方へと飛んで行き。

 

ひゅごぉーーーーーっ!!

 

 一瞬で巨大な火柱が空高く築かれ。

 それと共に周りの空気が、その炎の竜巻に吸い込まれて行きます。

 

「あわわっ…吸い込まれます」

「ぐっ、これはマズイ。 雛里よ。何としても踏ん張るのだ。 アレに巻き込まれたら骨一つ残らぬぞ」

「あわわっ。そ、そんなの嫌ですっ!」

 

 星さんの言葉に、私はとっさに杖を地面に突き刺します。

 魔力を杖の先端に集中させたおかげで、杖は地面深くに突き刺さり。

 何とか私と星さんの身体を、それ以上炎の柱に吸い込まれないように支えてくれます。

 

「はぁはぁ……、あわわっ、地面が融けて、まるで鏡のように輝いています」

「うむ。敵ながら恐ろしい攻撃だ。 それ故に先程の無茶が祟って攻撃が逸れてしまったのだろう。

 だが……」

 

 

 

 

 分かっている。

 高速飛行しながらの、攻撃魔法の放出。

 更には瞬間的に魔力を爆発させて、地面への激突を回避。

 そのあと続けざまに、あんなとんでもない攻撃魔法を放っては、幾ら華雄さんでも魔力が追い付かなかっただけ。

 今度は同じ過ちを犯すわけがない。

 華雄さんは其処まで詰めの甘い人じゃない。

 その証拠に……、

 

「ふぉぉぉ~~っ」

 

 前ほど急速ではないですが、杖に集まる凄まじい魔力を感じます。

 深く呼吸をしながら、じっくりと魔力を練り上げているのが分かる。

 かと言って、此方から攻撃を仕掛けるには、この人は強すぎます。

 少なくても魔力を練りながら、その巨大な斧に酷似した杖と体術でもって、私を近づけさせないぐらいの事は、先程の無茶な着地の仕方だけ見ても、容易に想像できます。

 

「まったく馬鹿の一つ覚えと言うか、同じ技を連続で放つ等。私に言わせれば美学に反すると言うものだが……どうする?」

「…………ならば、紙の盾でもって破って見せます」

 

 私の言葉に驚きながらも、星さんはその小さな身体で、再び私の肩に腰かけてきます。

 不敵な笑みと、その瞳に楽しげな輝き浮かばせて。

 風の盾を前方に展開。

 更に魔力を上乗せして空間に立てを固定。

 続けてその直ぐ後ろに、更に盾を展開と固定。

 

「そんな程度の盾で我が最終奥義を防ごうなどとはどこまでも巫山戯た真似をっ!

 我が渾身の一撃は無双の一撃! 喰らえっ、煉獄飛翔破っ!!」

 

 今度こそ華雄さんは、その杖【金剛爆斧】を勢いよく振り切り。あの恐ろしい攻撃魔法を真っ直ぐ私に向けて放ちます。

巨大な炎で出来た鳥のくちばしが、まっすぐ私を喰らいつこうと口を開けて向かってくる。

 その大きさと迫力に、私は力が抜けそうになります。

 だけどそれでも、私は逃げ出さない。

 だって、私の後ろの方には街があります。

 先程は運よく逸れましたが、今度は間違いなく私の遥か後ろにある住宅街に、あの攻撃魔法が直撃してしまう。

 なら私は逃げる訳にはいかない。

 この杖に誓ったように、戦いから目を逸らす事はもうできない。

 だから私に出来る全てをぶつける。

 

「仮想人格の多重生成。 行動転写を設定。

 生成対象は………ぐっ」

 

 思考が一瞬で幾つにも分かれてずれる感触に、私は思わず呻き声を放ってしまう。

 視界の先で、展開していた盾が華雄さんの火の鳥に触れるや否や、一瞬で消滅するのが映る。

 だけどその事実も、頭の中で連続して反響するその呻き声も無視して魔法を展開する。

 

「「「「「「「 風よ。我が前に舞い踊れ 」」」」」」」

 

 頭の中で反響するかのように僅かにずれて放たれる呪文の詠唱。

 連続して吸い出される魔力に、意識が遠のきそうになるのを歯を食い縛って耐える。

 これで終わる訳にはいかない。

 何度も何度も呪文を唱える。

 濡れた紙でもって、燃え広がる火事を鎮火する。

 そんな馬鹿げた方法。

 だけど今の私に打てる最良の手段。

 全ての力を出し尽くして見せるっ!

 

「さらばだ! 魔法少女ひなりんっ」

 

 勝利を確信した華雄さんの声が聞こえる。

 そんな声など無視して私は呪文を唱え続ける。

 だけど私の紙の盾は、どんどんとと炎の鳥に喰い破られて行きます。

 呪文を展開するよりも速く突き破ってきます。

 その威力を半分ほどに弱らせただけで、どんどんと。

 やがて……。

 

「くっ……。皆、ごめんね」

 

 

 

「いや、まだだよ」

 

 えっ。

 私の諦めの言葉と共に、聞こえる男の人の声。

 そして突然前方の視界を、白く輝く服を纏った背中が埋め尽くす。

 あっ、この人は。

 理解するより、心の奥底から温かいものが湧き上がってきます。

 だけど感じる魔力は華雄さんはおろか、私に比べても遥かに小さな魔力。

 その魔力値はたった五程しか感じない。

 だけど次の瞬間。

 

 ふぉゎっ

「なにっ!!」

「あわわっ!」

「な゛っ」

 

 小さな音と共に、炎の鳥は四散してしまう。

 違う。その両手に持つ大きな鉄扇でもって四散させられたんだ、と言う事が真後ろで見ていた私に良く分かった。

 その閉じた鉄扇の先端の一点に集中させた鉄扇型の杖でもって、炎の鳥の魔力核の中心に打ち込む事によって魔法そのものを破壊し、魔法を唯の火炎属性の魔力の塊にして打ち込んだ二つの鉄扇でもって二つに分けた後。鉄扇を広げると同時に更にその二つを細かく四散させた。

 原理そのものとしては、私が先程杖を地面に突き刺したのと同じ方法。

 だけどその使い方も精度は全くの別物で、あんな真似は誰にも出来やしない。

 1毛(0.03㍉)でも中心を外せば、攻撃をまともに受けてしまう事になる。

 それを高速で動く攻撃魔法に対して行うなど不可能な方法。

 

「くっ、また貴様か『御使い』っ! 何故いつもいつも邪魔をする」

「さぁ、どうしてだろうね。 でもどうせ味方をするのなら、誰かのために戦う可愛い娘の方を選ぶ。ただそれだけだよ」

「魔力も禄に無い半端な魔法使いのくせに、何処までも巫山戯た奴めっ!

 煉獄より来たりて我が敵を焼き尽くせ。 餓狼炎」

 

 華雄さんの呪文と共に、華雄さんを中心に地面を這うように炎が広がると、その炎が次第に膨れ上がり狼の形を取ります。 その数にしておよそ二十匹程。 その炎で出来た狼に対して華雄さんは、

 

「男の魔法使いの相手など、こやつ等で十分だ」

 

 そう言い放ち、炎の狼を嗾けます。

 

 

 

 なのにあの人は肩を小さく竦め。

 何かの呪文を唱える事もせずに此方に背中を向けたまま。

 

「誰かのために力を尽くそう。と言う君の想いは正しいものだよ。

 でも、それだけじゃ足りない。 君は大切なものを忘れている。

 だから彼女は君が倒せ。 君なら出来るはずさ。 君が真の魔法少女ならばね」

 

ぽふっ

 

 そう言うなり、彼は私の頭を帽子越しに優しく撫でると、地面を滑るように駆けてゆきます。

 自分に襲いかかろうとする炎の狼の群れの中に。

 その身体に保有する魔力量からしたら、けっして敵うはずのない敵に向かって。

 その鉄扇を炎の輝きを受けながら夜空に舞わせ。

 ごく僅かな魔力をただ一点に集中させて。

 月夜の夜に舞い踊ります。

 

 その姿に私は思い出す。

 あの人の残した言葉の意味を。

 そう、あの人の言うとおり。

 あんな想いで戦っていたら、華雄さんに勝てる訳がない。

 私はその想いを胸に、想いの結晶たる私の杖をもう一度握りかえします。

 

「雛里よ。思い出したか」

「……私は魔法少女。ですからもう大丈夫です」

「ならば行くがよい。 お主の想いのままに、今度こそ羽ばたくがよい」

「はいっ」

 

 星さんの言葉に、私は杖を持って華雄さんに向かって駆けます。

 華雄さんは既に魔力を貯め終わっている。

 その魔力値は今まででの最大で八百を超えている。

 それに対して私が一度に出せる最大値は僅か六十。一割にも満たない値です。

 でもこれで十分。 いいえ。やって見せます。

 

「想いの結晶たる杖よ。私に力を貸してください」

 

 杖に語りかけると共に、その先端に魔力を集中させます。

 杖に集まる皆の想いを集中させます。

 あの魔法使いを倒して欲しいと願う皆の想いを。

 ただ一振りの刃と化します。

 

「今度こそ終わりだっ。魔法少女ひなりんっ! 煉獄飛翔破っ!」

「あわわっ。本当に必要なのは守りたいと言う想いじゃありません。

 むろん、力を出し尽くす事でもないんです」

「な、なにをっ言って」

 

 ぶつかりあう炎の鳥と光の刃。

 いいえ。鬩ぎ合う杖【金剛爆斧】と杖【●●●●】。

 

「何が何でも守り抜く。と言う強い想いなんです!」

 

 皆の想いを背負ってなお貫く想い。

 それが一番大切なモノなんです。

 私の杖真の力は、皆の想いを魔力に変える事。

 そしてその魔力を導くのは、私の何があっても揺らぐ事のない強い想い。

 

「あわわーーーーっ!!」

「ぐっ、負けるものかーーーっ!」

 

 膨れ上がる魔力と魔力。

 やがてその膨れ上がる魔力に、視界が焼けるほどの輝きに包まれてしまいます。

 だけど、そんな事に構わず私は、想いをぶつけます。

 皆の想いをこの杖に集め。

 必ず皆を守りきると言う強い信念を叩きつける。

 

ぱきっ

 

 やがて真っ白な視界の中で、何かを叩き折る音と感触を、杖越しにしっかりと感じながら私は、真っ白な視界に包まれるように意識を失う。

 

 

 

 

ちゅん。

ちゅん。

 

「ん………ん~………」

「目が覚めたか、雛里よ」

「えっ?」

 

がばっ!

 

 聞きなれた星さんの声に、私は毛布を跳ね飛ばしながら飛び起きます。

 そして体を起こすなり私は、

 

「あわわ。あれからどうなったんです。 華雄さんは? あの人は? 街の皆……えっ」

 

 其処には私の良く知った女性が佇み。その顔に優しげな瞳を浮かばせています。

 青い髪を首下で無造作に切り揃えているものの。それが酷く似合っており。 細身ながらも豊かな身体を誇張するような服装をしつつも上品に振る舞って見せるのは、同じ女の私から見ても羨ましいと思えるほどです。 ただ、私が戸惑ってしまったのは、私の目の前にいる星さんは。

 

「……あの、華蝶仮面は止めたんですか?」

「……はぁ~…。どうやら我等が軍師殿は、まだ寝ぼけているようだな。

 念のため言っておくが、華雄は汜水関で愛紗に敗れてから行方不明だ。あの人と言うのは誰の事か分からぬが、民の事なら今の所深刻な問題は出ていない。それと、華蝶仮面と言う名には記憶の中には無いが、知り合いか? なにかこう、心の奥底が熱くなるような響きを感じる」

 

 私が理解できるようにゆっくりと。 だけど同時に私の反応を楽しむかのような悪戯っぽい瞳を浮かべた星さんは、私の口にした質問に対して一つ一つ答えてくれます。

 

「………ゆ…め?」

「ふむ。夢を見たのか。 だが、もしかすると夢を見た夢を見ているだけかもしれぬぞ」

 

 無意識に紡ぎだした自分の言葉に、頭が急速に覚めて行くのが分かります。

 そう夢。 その証拠に、何の夢を見ていたのか思い出せなくなってきました。

 夢と言うのは、その大半が目が覚めると早々に忘れるモノと言います。

 ならば、あの出来事は夢なのだと思います。

 そして、私の手に握られたままだった杖がその証。

 この杖からはあの夢のような力を感じる事が出来ません。

 ならば、こっちが私にとって現実なんです。

 きっと今覚えている僅かな事も、昼には思い出せなくなると思います。

 

「星さん状況を教えてください」

「どうやら、何時もの雛里に戻ったようだな」

 

 私の言葉に、今度こそ心の底から安堵したような息を吐いてから、何故星さんが此処に居るかを話してくれます。

 昨日の訓練で、私と朱里ちゃんが朱然さんが率いる新兵部隊を勝利寸前まで追い詰めた事。

 だけど朱然さんの策で、もう一人だけこっそりと朱然さんの配下の兵である丁奉さんが紛れ込んでいて。

 しかも訓練前から地面の下に穴を掘って隠れていて、私達の本陣がその真上に来た瞬間に穴を隠していた土と木の板を一気に跳ね上げ奇襲するも、いくら屈強であろうと一般兵でしかない丁奉さん、此方の部隊の兵士に攻撃を受けて倒されてしまう。 それでも、その直前に槍斧を投げつけ此方の旗を叩き折ったとの事。

 私と朱里ちゃんは、その時の騒動に巻き込まれ気絶してしまったとの事。

 そして気絶した私を星さんが。 朱里ちゃんを桃香様が看てくださったとの事です。

 説明を受けているうちに私も事の顛末を思い出し、あれだけ見栄を張りながらも、結局昨日も勝てなかった事に唇を噛みます。

 

 

 

 

 悔しいです。

 今迄で一番悔しい。

 だって、昨日は上手く行っていた。

 朱里ちゃんの羽扇子と私の杖。

 短いながらも大きな声で発する事の出来た命令と連動させた指示の内容は、まだ慣れない事もあって互いに戸惑いもしたけど、今まで以上にうまく部隊を動かせました。

 なのに結果は敗北。 星さんが言うには、私達が気絶した後。

 

『朱然。………一応理由を話してくれる?』

『あはははっ、あそこまで上手く行くとは思わなかったんですけどね。 二人の指示が機能し出したら、こっちに勝ち目なんてある訳ないから、せめて少しだけ脅かそうと……その……』

『それで丁奉を巻き込んで、ルール違反か……はぁ~……』

『るうる?』

『規定や決め事の事だよ。気にしないでくれ。

 とにかく、今回はこっちに責任がある。すまなかったな桃香』

『気にしなくても大丈夫だよ。 星ちゃんが言うにはただ気絶しているだけで大した事ないって言ってたし。

 お兄さんは、私達のためにしてくれている事だもん』

 

 というようなやり取りがあったようですが、そんなことは関係ありません。

 一人だけとはいえ尖鋭の兵士を、前もって地面の中にに伏せさせていた朱然さんの行動を非難する気はないです。 彼女からしたら他国の軍師である私達に簡単に負ける気はないと、ただでは負けないと孫呉の兵士の力を示したかっただけです。

 地面から出てきた丁奉さんにも罪はありません。あの人は朱然さんの指示を守っただけで、むしろあの状況下で私達に気取られず。最後は相打ちで倒れたとは言え己の目的を果たした丁奉さんの勝ちと言えます。

 何より、その程度の事など想定していて当然でなければいけない。。

 朱然さんの意図通り、孫呉の兵士の底力を見せつけられました。

 数多くの苦難と逆行を乗り越えてきた本物の歴戦の兵士の力を。

 それ等を知る事が出来ただけ、機能の訓練は価値ある出来事と言えます。

 だから、あんな夢を見たんでしょう。 内容的には混沌とし過ぎていて意味不明ですが。昼間聞いたあの人のお話と夕方の訓練が、あんなとんでもない夢を見てしまった原因だと思います。

 

「……星さん。今日こそは勝ちます。いいえ勝って見せます」

「ふむ当然だ。 昨日は孫呉の兵士の強さを見せつけられた言うのなら、今度は我等の軍師の意地を見せてきてもらわねば、軍を預かる将の一人としては困ると言う物」

「あわわっ…、そんな意地とか体面とかそういう立派なものではなく・」

「必ず勝つのであろう?」

「は、はいっ」

「ふふっ、雛里もそんな顔が出来るようになったとはな」

 

 星さんは何でか知りませんがおかしそうに、それでいて心から気持ちよさそうに笑い声をあげて天幕を出て行きます。

 その後ろ姿に、私はもう一度大切な想いと決意を胸に大切にしまい込みます。

 例え夢で忘れてしまうモノだとしても、これだけは忘れてはいけない大切な宝として。

 そして決意を新たに、髪を整えてから何時もの帽子を被ります。

 

ぽふっ

 

「ん……」

 

 ふと誰かに帽子越しに頭を撫でられた気がしました。

 不器用に、……だけどとても温かな手に優しく撫でられた気が。

 あの人に撫でられたような気がします。

 良く分かりませんが、ぽかぽかととても温かい気持ちが湧き上がってくる。

 自然と心が落ち着く感じがします。力が湧いてくる気がします。

 とにかく、その意味するところは分かりませんが、

 

「うん、悪くない……です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく。

 

 

 

 

 

 

 次回『 魔法少女マジカル☆ひなりん 』

 

    「 真の黒幕は宿(恋)敵? それとも親友? 」

 

                  をお送りします。

 

 

 

 

 

 

 

 

こっちは、つづかない

あとがき みたいなもの

 

 

 こんにちは、うたまるです。

 ~ 夢見る雛は、星の導きにより空高く舞い踊る ~ 改め【 魔法少女 マジカル☆ひなりん 】 を此処にお送りしました(マテw

 

 夢落ちですが、まるまる一話分おまけをやってしまいました。(w でも後悔はしていません。

 どうせ忘れてしまう夢ですので、思いっきり遊んでみました。

 最近某ラウンジで『 腐ってやがる。 早すぎたんだ』とか『 『腐』敗が進んでる 』とか言われているので、これくらい腐ったお話は問題ないでしょう(w

 一応おまけ的なお話ですので、良い子は今回あった話の展開は記憶から消してくださいね。作者からのお願いです(ぉ

 

 急募! 雛里の杖の名前募集しています。

 

 では頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程をお願いいたします。


 
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