No.222982

恋姫外史・あるところに一刀第29話

アキナスさん

お互い一歩もゆずらない両軍

その均衡を破るのは・・・

2011-06-16 13:41:26 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:11377   閲覧ユーザー数:8272

戦いは依然として膠着状態にあった。

 

時間だけが過ぎていき、両軍の兵士達の士気はかなり落ちていた。

 

何か変化があればまだ良かったのだろうが、延々と同じ事を繰り返し、全く進まない戦況に両軍の兵士達の疲労はピークに達しようとしていた。

 

そんなとき、公孫賛軍本陣で

 

「・・・そろそろか」

 

椅子に座っていた一刀がゆっくりと立ち上がる

 

「七乃さんよお、あれ出してくれ」

 

「は~い」

 

そう言うと、七乃は近くに置いてあった小箱を取り、中からあるものを取り出して一刀に渡す。

 

「どうぞ~」

 

「サンキュ」

 

そしてそれを受け取ると一刀は大きく息を吸った。

 

七乃から受け取ったもの

 

それは天和達から借りたマイクであった。

 

そして

 

「お前ら!オレの歌を聴け~~~!!」

 

一刀の歌声が戦場に響いた・・・

「肩を落とした~、鉄の背中~が続く~、何処ま~で~も果て~し~な~く続く」

 

戦場の中央

 

「・・・どうやら始まったな」

 

聞こえてきた一刀の歌声に、華雄はそう呟いた。

 

「な、何だ?この歌は?」

 

夏侯惇は戸惑いの声を上げる

 

そんな夏侯惇に華雄は言った。

 

「私達の勝利の歌さ」

 

華雄は兵士達に叫ぶ

 

「皆!今まで良く耐えた!これからが本当の戦いだ!全員我に続け~~!!」

 

「「「「オオーーーーー!!」」」」

 

一刀の歌を聴いて、疲れきっていた公孫賛軍の兵士達に再び活力がみなぎった。

 

そして全力で曹操軍めがけ突撃を敢行する。

 

「させるか~~!!」

 

「てーい!!」

 

それを遮るように夏侯惇と許緒が華雄に向かって攻撃を放つが

 

「お前達の攻撃は既に見切った!!」

 

華雄はそう言って、夏侯惇の一撃を紙一重で避けると許緒が放った鉄球を金剛爆斧で跳ね返す。

 

「わわ!」

 

許緒は慌てて体勢を立て直そうとするが

 

「ふっ!」

 

ボゴッ!

 

「・・・かはっ」

 

その隙をついて接近された許緒の鳩尾に華雄がコブシを叩き込んだ。

 

許緒は地面に倒れる

 

「季衣!貴様ァーー!!」

 

夏侯惇は激怒し、全力の振り下ろしを見舞ってきた。

 

「・・・冷静さを欠いたお前の負けだ」

 

華雄はその一撃を前もってくるのが分かっていたように右へ避けて

 

「ハァーー!!」

 

流れるように横薙ぎの一撃を見舞った。

 

「クッ!」

 

夏侯惇は体勢を崩し、それでも防ごうと七星餓狼を構えるが・・・

 

ガキーン!!

 

ズザザーー!

 

「うああ!!」

 

不十分な体勢から受けきれず、吹き飛ばされ倒れる夏侯惇

 

そして立ち上がろうとするも

 

「・・・終わりだ」

 

己の武器を突きつけそう言う華雄

 

そして将を失い、士気も著しく下がった曹操軍の中央は、一刀の歌で活力を取り戻し、華雄の活躍で天井知らずに士気が上昇した公孫賛軍にどんどん押し込まれていった・・・

「穢れちま~った~、赤い雨が振~り注ぐ~、容赦~な~く~俺~達に注ぐ~」

 

左翼

 

「皆さん!今こそ攻める時ですわよ!!」

 

「「「「はい!ウオオーーーー!!」」」」

 

こちらでも麗羽の命令により突撃が始まった。

 

「な、何故!疲れきっていたやつらの何処にこんな力が!?」

 

楽進は動揺していた。

 

こちらの兵士達も明らかに疲労困憊なのに、敵軍の本陣から歌が聞こえだすと奴等は眼に光が宿り、全力で突撃を敢行してきたのだから。

 

「凪!このままやとマズイで!!」

 

「分かっている!ここは・・・」

 

楽進が拳に気を溜めようとする

 

しかし

 

「させねえ!!」

 

ブン!

 

「クッ!」

 

猪々子がそれを中断させるように大剣を振り回してくる

 

そして于禁、李典も助けに行こうとするが

 

「ここから先には通しません!!」

 

斗詩が立ちふさがり、楽進の助けにも、兵士達の援護にも行くことができない

 

そして周りの兵士達はグイグイ押し込まれていく

 

「クソッ!そこを退け!!」

 

「どかねえよ!!」

 

ギイン!と猪々子の大剣と楽進の拳がぶつかる。

 

こうして左翼は崩れるとまでは行かなかったが

 

曹操軍は少しずつ、後退させられていった・・・

「肩を喘が~せ~、爛れた大地を~、ひ~た~すら~踏~み~しめ~る~」

 

右翼

 

「・・・来た」

 

恋の後ろから右翼指揮官ねねが馬にのって走ってきた

 

「恋殿!!」

 

「・・・コクッ」

 

ねねの呼びかけに恋は頷いた。

 

そしてねねは叫ぶ

 

「皆あの歌が聴こえますか!?聴こえたのなら湧き上がってくるものがあるはずです!それを奴等にぶつけてやるのです!!」

 

「「「「ウオオオーーーーー!!」」」」

 

そして恋も

 

「・・・行く」

 

夏侯淵、典韋に向かって突っ込んできた。

 

「クッ!」

 

「させません!!」

 

二人は恋を止めようと攻撃するも

 

「・・・もう終わり」

 

恋は止められず

 

ゴツ!

 

「・・・あ」

 

こめかみを方天画戟の柄で打たれ典韋は気絶そして夏侯淵も再度弓を引こうとするが

 

ポキッ

 

恋の攻撃で弓は折られた

 

「・・・まだやる?」

 

「・・・そうしたいが、どうやら無理のようだな・・・」

 

周りは既に敵兵のみ

 

そして

 

曹操軍右翼は恋達を止める事はできず、あっと言う間に崩れていったのだった・・・

「散~り逝く友に未練など~、無~いさ俺達はDummyBoy」

 

「・・・アカン、このままやと・・・」

 

霞は戦場から少し離れた所にいた為状況が良く見えた。

 

総崩れ真近、と言ったところだ。

 

そして霞の取った決断は

 

「皆ウチに続け~~!!」

 

白蓮に向かって突っ込んで行った。

 

「くそ!皆逃げるぞ!!」

 

白蓮はとにかく逃げた

 

もう矢も尽きてそれしか出来なかったからだ

 

それを霞は追いかけていた・・・のだが急に方向転換した。

 

その方向は・・・

 

「マズイ!皆、張遼を止めろーー!!」

 

白蓮の叫びが響く

 

霞が突撃する方向にあるのは公孫賛軍本陣

 

しかもそこを守る将はほぼいない

 

白蓮達は追うが、距離を取りすぎたため追いつく事ができない

 

そして

 

張遼隊は敵を掻き分け一刀のいる本陣へ向かった・・・

「遠く弾ける鉄のドラム~、そ~れが俺達のララ~バ~イ」

 

曹操軍本陣

 

「中央突破されました!夏侯惇様!許緒様共に捕縛されました!!」

 

「左翼!どんどん押し込まれています!このままでは・・・」

 

「右翼!呂布の進行を止められません!!夏侯淵様!典韋様捕縛されました!!」

 

来る情報はどれも絶望的なものばかりだった。

 

「まさか・・・こうも呆気なく崩されるとは・・・」

 

「歌による鼓舞・・・ですか~。それは考えもしませんでしたね~~・・・」

 

郭嘉と程昱が暗い表情でそう言った。

 

「華琳様!ここももう持ちません!!お逃げください!!」

 

「・・・そうもいかないのよ、桂花」

 

荀彧の進言に曹操は首を横に振る

 

「何故ですか!?」

 

「・・・約束してしまったのよ」

 

「約束?」

 

「ええ、北郷とね・・・」

 

それは一刀が使者として曹操の下へ行った日

 

帰る前に一刀は、曹操と二人で話をした

 

「なあ?約束して欲しい事があるんだけどよ」

 

「あら?何かしら?」

 

「どっちが勝っても負けても、お互いに逃げず、そして自殺もせず、勝った方に負けたほうが仕えるっていう約束なんだけどよ」

 

「ええ、いいわよ」

 

曹操は即答した。

 

「・・・そんなに安請け合いしていいのか?」

 

「負ける気は無いもの。アナタこそ、負けてから約束を破ったりしないようにね」

 

「ああ、絶対破らない」

 

「そう。ならいいけどね」

 

・・・・・・・

 

「そのような約束!守る義理は・・・」

 

「荀文若!この曹孟徳を嘘つきの卑怯者にさせる気か!?」

 

「も、申し訳ありません!華琳様!!」

 

曹操の叱責に頭を下げて謝る荀彧

 

「だいたい、春蘭達が捕まってしまっているのに私だけ逃げて何が残るというの?彼女達、そして貴方達を失うくらいなら・・・」

 

そう言いかける曹操だったが

 

ドーン!!

 

兵士達が吹き飛び、飛び出てくる影。それは・・・

 

「曹操よ!勝敗は決した!降伏するがいい!!」

 

華雄、そして

 

「・・・終わり」

 

恋であった・・・

「噴~き~飛ば~せ~この地獄を~~」

 

いまだ歌い続ける北郷一刀

 

そこへ

 

「邪魔やーー!!」

 

兵士達を突っ切って霞が現れた。

 

「・・・霞か」

 

一刀は歌を止めて言った。

 

「悪いけど捕まってもらうで?一刀」

 

霞は偃月刀を振りながら言う

 

「・・・そうもいかねえ」

 

マイクを近くに居た七乃に放り投げ、一刀は腰の剣を抜く

 

「勝てると思っとんのか?」

 

「・・・あんまり思ってねえが、退けないだろ?流石に・・・」

 

「せやな」

 

そして霞も偃月刀を構える

 

対峙する二人

 

そして

 

「「「「ウオオオーーーー!!!!」」」」

 

前から兵士達の咆哮が聞こえた。

 

「何だ?」

 

「何やろ?」

 

二人は声のする方を見た。

 

・・・公孫賛軍の兵士達は歓声を上げ、曹操軍の兵士達は涙を流し、膝を折っていた。

 

「・・・間に合わんかったか」

 

「フー、危ねえ危ねえ」

 

霞は悔しそうに唇を噛み、一刀は大きく息を吐いた。

 

 

 

こうして

 

 

 

公孫賛軍の勝利で

 

 

 

この戦いは幕を閉じたのである・・・

 

 

 

 

「お前達!どいてくれ~~!!」

 

白蓮は自軍の兵士達の中で身動きが取れなくなっていたそうな・・・

「・・・私達の負けよ。ここまでボロ負けすると、むしろ清々しいわね」

 

「正直ギリギリだったけどな、本陣に将を残せる余裕があれば良かったんだが・・・」

 

チラッと霞を見る一刀

 

「そう・・・ご苦労だったわね、霞」

 

「いや、結局間に合わなかったんや。スマンなあ、華琳」

 

「いいえ、アナタは十分な働きをしてくれたわ」

 

そう言って霞をねぎらう曹操

 

「・・・春蘭達は無事かしら?」

 

「ああ。多少怪我はしてるが一応無事だぞ」

 

「そう・・・後で会わせてもらえるかしら?」

 

「いいぜ」

 

「ありがとう」

 

礼を言う曹操

 

「それじゃあ、約束を果たそうかしら」

 

「ああ。詳しい事は後で決めるから、とりあえず兵まとめて帰ろうや」

 

ねね達が既に事後処理を始めていた。

 

「そうね。それと・・・」

 

「ん?」

 

「華琳。それが私の真名よ。心して受け取りなさい」

 

「・・・分かった」

 

真名を一刀に渡す華琳

 

・・・ちなみに荀彧が一刀の視界の隅で郭嘉と程昱に押さえられていたのだが・・・まあ放っておこう

 

「それじゃ帰るか」

 

事後処理もあらかた片付いて、帰ろうとする一刀

 

そこへ

 

「伝令!伝令~~!!」

 

曹操軍の伝令が一人、馬で駆けてきた。

 

軍の方からでなく、曹操の治める領地の方から・・・

 

自軍が敗北したことを知って絶望する伝令であったが、その伝令が持ってきた情報は驚くべきものだった。

 

「蜀軍が西涼に侵攻してきました!!」

 

「・・・そこまで堕ちたか、劉備」

 

吐き捨てる華琳

 

そして

 

「・・・火事場泥棒とは、舐めた真似してくれるじゃねえか」

 

 

 

 

一刀は不機嫌そうに

 

 

 

 

そう言ったのだった・・・

 

 

 

 

どうも、アキナスです

 

あー・・・長かった。

 

戦争シーンはどうしても長く取らないといけないんですよねー。

 

おまけにどうしてもちぐはぐな所が否めないし・・・

 

ちなみに一刀の今回の歌を真での奥義にすると

 

北郷一刀 奥義・鉄のララバイ 消費15 自軍攻撃力アップ敵攻撃力ダウン

 

て感じでしょうか?

 

とにかく、早速新たな問題が浮上しました

 

蜀のこれからは!?

 

そして一刀達はどう出るのか!?

 

それでは次回に・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日輪の力を借りて!今!必殺の!サン!アターック!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 
 
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