「北郷ぉぉー!俺が、もっとも~っと~、ギュ~ギュ~抱擁してやるぞ~!」
「あ、あの~。そのですね、こ、黄祖さん。も、物凄い恥ずかしいんですが~……」
この外史に舞降りた北郷は天の知識を生かす事もできず、日々「ヒモ」として江夏太守黄祖に囲われ(抱きつかれ)生きていた。
北郷は江夏に舞降りた直後こそ天から降りてきた珍客として、黄祖に上客としての相応の礼を持って迎えられたが・・。
黄祖になぜか気に入られた今ではペットの如く飾り立てられた(80年代のローラアイドル風に)上に、常時可愛がる事が出来るようにと黄祖の横に侍らさせられていた。
「えーと・・なので(恥ずかしいので)黄祖さん~抱きつくの一旦中止でどうしょうか~?」
「ん~?毎日俺が抱きしめてやってるんだぞ、なんで今更恥ずかしいんだ~?」
「いや・・今日は他の人見てますし~」
北郷を抱きしめ惚けてる黄祖の姿からはあまり実感がわかないが。
黄祖はこうみえても後漢の太守である、その為黄祖には今のような(ちなみに今日は休日)プライベートな時間でも常時護衛が数名ついている。
北郷が恥ずかしがっていたのは、その護衛たちの目だった。
「ほっとけ~ほっとけ~護衛なんて空気だと思え~」
「む、無理だよ・・そ、その特に」
「ん~?」
北郷が言い及んだ後、目線を一人の護衛のほうにおどおどと向ける、黄祖もそちらのほうに向く。
「・・・・・」
目線の先には、褐色肌の護衛が一人佇ずんでいた。
その護衛は、まったくの無表情であり他の一見他の数名の護衛と変わらないが・・。
だが、先ほどから北郷がその護衛一人に異常に気にしている理由・・そう、その目だけは圧倒的な怒りを含んでいた。
「甘寧、お前が睨むから俺の可愛い北郷が気にする~出てけ~」
黄祖がその護衛・・甘寧に部屋から出るよう命じる。
「警護中ですので」
「邪魔だといってるだろ」
甘寧は動く気配が一切ない。
「警護中ですので・・」
「・・主の名がきけんのか」
黄祖の声質が若干変わる・・他者を威圧する様な声だ。
だが・・。
「警護中ですので・・・・」
返された返答はソレだった・・。
「「・・・・・・」」
その後、黄祖と甘寧はしばらく無言でにらみ合う。
「だっそうだ・・」
黄祖は諦めたように、北郷のほうに目を戻す・・。
「それに俺は見られたほうが燃えるぞ北郷~ほ~ら、もっとギュっとしてやる~♪」
「ちょ!こ、黄祖さん・・や、やめっ//」
「だめだ~ギュ~うだ♪」
しかも、なぜか更に北郷を強く抱きしめながら。
「・・・・」
無言のままの甘寧に見せ付けるように。
数日後の深夜
「・・あ、あのさ、甘寧さん船で何するの?」
「黙ってついて来い」
北郷は甘寧に誘われて(まあ、剣で脅されてともいえるが・・)甘寧の船に連れて行かさせらていた。
「いやでも・・城を出るにしても許可取らないと・・俺、黄祖さんに怒られるんだけど」
「大の男が城を出るぐらいの事で他者の許可を得る必要は無い!」
「お、俺もそう思うけど・・黄祖さんがこの世界は半分犯罪者だから危ないからっていうし」
「アレ(黄祖)がお前を独占するため為にいった嘘だ」
「そ、そうなの・・?」
「そうだ!お前を出来る限り自分以外の者に触れさせぬためにな・・だいたい半分が犯罪者で国が成り立つわけないだろう」
北郷はなるほどと頷くが・・。
「あの~甘寧さん?さっきから気になってたんだけど・・一応黄祖さんって主君だよね「アレ」呼ばわりはまずいんじゃ?」
「私は黄祖軍より出奔(辞める)する!だから、あのような女はもう我主ではない!!」
「えっ出奔?今からするの?」
「そうだ」
「もしかして俺って捕虜とか・・」
北郷の顔が一気に青ざめる、甘寧が江夏から逃亡(出奔)の為に黄祖の寵愛を受ける自分を人質にするかと思ったからだ。
「・・ちがう!!お前を逃亡の為の道具として使う気は無い!!だから私をそんな怯えた目で見ないでくれ」
「じ、じゃあ?俺をどうするつもりなの?」
「しばらくは、私の兵と共に海賊をしてもらう」
「な、なんで俺を?海賊をするほどの腕っ節もないし、海のことも全然知らないし」
「そ、それはお前をわたしの伴り・・」
甘寧が急に顔を赤め、ぼそぼそと何かを喋りだすが・・。
「ごぉらあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
港のほうからの突然の怒声にかき消された。
怒声の主は黄祖で兵を引き連れ船に一直線に向かってくる。
「ちっ!もう気づかれたか!!お前たち出航の準備をいそげ!!」
「ごぉらああ!!甘寧、貴様!!俺の北郷を連れてどうするつもりだ!!」
「黄祖!お前は独占しすぎた!!これは私が頂く!!」
「そんな事認めると思うか甘寧!!」
黄祖が弓を引き甘寧に向け放つが・・。
「ちぃ!!貴様に認めてもらう気は毛頭ない!!お前たち黄祖を狙え!
甘寧は、それを剣で払い逆襲とばかりに兵たちに弓を射掛けさせる・・。
「むう!甘寧、貴様ぁ!主に向かって弓を引くか!!お前らあの船ごと叩き潰してやれ」
黄祖勢も応射し騒ぎは更に大きくなっていく。
そんな中・・。
「・・ええと、事情がのみこめないんですが」
繰り返しになる北郷は一人事情をのみこめてなかった
それから数ヵ月後。
荊州侵略を目指す孫家と、それを防ぐ黄祖の間で行われた数回の戦いの内の一つが行われていた。
孫家の首領、雪蓮は名乗りを上げようと舳先に身を表す・・その姿は普段と異なり、まさに江東の虎の名に相応しい威容に満ちていた。
「黄祖!!母様の仇、今回こそはその首・・」
「ごぉらあああああああああああああああああああああああああああああ!!!甘寧!!!!!!!!!」
まあ・・無視されたが。
「今日こそお前を倒し!!北郷を俺が助け出してやる!!!!!」
「黄祖!!しっこいぞ諦めろ!!」
「やめて・・俺の為に争わないで~!!」
この戦いは数回目の黄祖と孫家に寝返った甘寧の痴話喧嘩(それを自然に煽り続ける北郷)の場でもあった。
なので兵の士気はとことん低い、仕事とはいえ第三者の彼らがピーチ姫(女性)を巡る争いならまだやる気も出るがマリオ(男)を巡る痴話喧嘩にやる気を出すのは不可能・・ということだ。
ちなみに・・。
「母様・・なんであんなのに負けたの」
無視された形の孫家の大将、雪蓮は一人舳先で泣いていた。
まあ、黄祖といえば甘寧みたいな・・?
的な発想ssです。
Tweet |
|
|
23
|
2
|
追加するフォルダを選択
黄祖を恋姫風に・・ssです。
馬鹿ssです。