「わ、わたしが一生ごはん作ってあげる!!」
そう言われてから・・一ヶ月たつ。
「兄さま~今日は鳥の丸焼きだよ~」
エプロン姿の典韋さんが、テープルの上で繋ぎ合わせた両指の上に頭を乗せながらニコニコと俺を見つめてくる。
「や、やあ~今日も豪勢だね・・質もだけど、なによりも「量」がさ・・」
俺の目の前には、美味しそうな鳥が丸々一羽おかれていた。
「てへっ、兄さまに、わたしの料理いっぱい食べてもらいたいくて作りすぎちゃった」
そんな風に可愛らしいく返事をするが。
作りすぎたことへの反省は全然ないようだ。
「さあ~兄さま、食べて!食べて!」
「う、うん・・いただくよ」
急き立てられた俺は、そういいながら箸を伸ばし鳥を掴もうとするが・・。
「兄ちゃん!!兄ちゃん!!兄ちゃん~!!!!!!!!!!!!!!」
怒涛の叫びと共に・・。
目の前の鳥が消え、掴もうしていた箸は空を切った。
「な、なんだ!!な・・ん・・だ・・」
突然の事に驚いた俺は声を上げるが、徐々に声が出なくなる。
『ガオー!!』的な擬音にピッタリの生物が、俺の視界一杯に・・。しかも、大きく口を開けた状態で広がってるためだ。
「ひえええ!!と、虎だ!!!!!」
俺は目をつぶり、最後の瞬間を待ったが・・。
「・・あれ?」
数秒たっても、なんの動きもなく。
俺は、恐る恐る目を開く。
よく見ると目の前の虎は白目を向いており、全体もダラーンとし動いていない。
「し、死んでる・・・?」
全然状況は掴めないけど、と、とにかく大丈夫そうだ。
「兄ちゃん!!!!」
「ひ、ひえええ!!」
そんな風に落ち着いた次の瞬間。
虎の方から、大声が発せられ俺は再び悲鳴を上げるが。
「えっ?あっ・・き、許緒さん?」
虎の巨体の下に隠れるようにして、許緒さんが居るのに気づき俺は声をかける。
「兄ちゃん!!兄ちゃん~!!!!!みて!!みて!!すご~いお~きい~虎つかまえてきたよ!!」
まあ・・なんだか興奮してる許緒さんは俺の言葉を無視して、担いでいる虎を更に俺に近づける。
「う、うん・・すごいね」
「そうでしょ、そうでしょ!!」
「・・す、すごいのは分かったから」
虎を近づけるはやめてくれ。
目の前に広がる虎の口から野生独特の匂いが~・・。
「えへっへへ・・じゃあ、この虎を早速食べよう!!」
「えっ!こ、これをたべるの!」
「そうだよ!!」
許緒さんは、さも当然の事のようにそう言い切るが。
白目を向き、ダラーとした虎の姿からは一切の食欲が沸いてこない。
「て、典韋さん、虎って食べれないよね」
俺は、典韋さんの方を縋るようにみつめるが・・。
「・・(カチャ、ガチャ)」
典韋さんは何も言わず、淡々と許緒さんがぶっ飛ばて床に落ちた鳥や食器を片付けていた。
・・な、なんかこわい。
「大丈夫、食べれるよ!」
そんな、典韋さんを無視して許緒さんが答える。
「い、いや・・それより典韋さんの料理が」
俺がそう答えると・・。
許緒さんは軽く典韋さんの方を見るが、すぐさま俺のほうを向く。
「流琉ちゃんのなんてーどーでもいいよ~。それより『私』の虎を早く食べよう」
「い、いや・・でもね」
許緒さんは『私』をやけに誇張しながらそんな事を言うが。
「・・・・(カチャ、ガチャ、・・チッ!!ガチャ、ガチャ)」
な、なんか、片付ける音に混ざって、舌打ち聞こえた気がするし。は、早く謝ろう、ねえ、お願い!!あの無言で片付けてる娘怖い!!。
「じゃあ!早速、調理してくるね」
そんな心の叫びは当然無視され、許緒さんは部屋から出て行った。
「・・・・」
「・・・・(カチャ、ガチャ、ガチャ!ガチャ!!ガチャ!!!)」
な、なんか片づけが徐々に荒くなってる気がする典韋さんと残された俺は、国家(己)の安全保障の観点から・・。とにかく謝ることに決定した。
「ご、ごめんね・・典韋さん」
俺は恐る恐る、片付け中の典韋さんの背中に声をかけるが。
「だ、大丈夫だよ・・兄様、私は気にしてないから」
意外に、振り返った典韋さんは何時も通りの笑顔を俺に向けてくれていた。
「い、いや・・でも」
「それよりも季衣ちゃんは虎を捕まえるため頑張ったんだから~。今から出てくる料理を褒めてあげてね」
「て、典韋さん~・・」
・・こ、この娘はほんとに良い娘だ!!
この世界に来て初めて心許せる女性に会えた気がするよ~。
「兄様、季衣ちゃんの件お願いね」
「わ、わかったよ!典韋さん!!・・あ、あと今日の鳥は残念だったけど、機会があればもう一度作ってくれないかな?」
そういい、俺は自然に典韋さんの手を両手で掴んでいた。
「えっ・・。う、うん、兄様いいよ」
「あ、ありがとう・・典韋さん」
典韋さんは最初こそ驚いたようだが・・、
徐々に頬を染め、俺の手を握り返しながらOKと答えてくれた。
その日の夜
「典韋さんはほんと良い娘だな~。許緒さんも暴走する時も在るけど基本良い人だし・・。できればずーっとここにいられればな」
そんな事を思いながら、俺は自室で寝転んでいたら。
「・・ト・・トン・・・ン・・・」
「ん?」
皆が、寝静まってる時間帯に物音が聞こえてきたので。
・・俺は不審に思い、部屋から出て音がする方向に向かった。
「トントントントントン」
音の元は、台所にいた典韋さんが持つ包丁だった・・。
真夜中に料理?
もしかして朝食の仕込みとかかな・・。まあ、訊いたら分かるか。
「典韋さ・・」
「邪魔だな・・」
俺が声を掛け終わる前に、典韋さんが「ポッ」と何かを呟いた。
「今日の一件といい、季衣ちゃん邪魔だな~。このごろ季衣ちゃんが周辺の野獣を狩りすぎて肉が手に入れなくなったし・・。そんなに「肉」を食べてもらいたいな季衣ちゃん自身を料理してあげようかな」
典韋さんが「うふふ・・」っといつも以上に微笑む・・。
「駄目だよ!!駄目だよ!!!食べられちゃうと、わたしの兄様の中に季衣ちゃんが入っちゃう!!」
いきなりそう叫んだ典韋さんだったが。
徐々に落ち着きだした・・いや、笑い始めだした。
「そう兄様は、兄様の温もりは、わたしだけの物ほかの女には指一つ・・うふふふ・・」
そして、俺が先ほど握った手を愛しげに頬で撫で始めた。
ちなみに、包丁は何も切っていなかった。
「・・・ひいい!!」
「あっ、どうしたの兄様」
俺の悲鳴に気づいた、典韋さんが、俺のほうを振り向き近づいてくる。
・・包丁を片手に持ちながら
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
「兄ちゃん!どうしたの!!」
俺の悲鳴に許緒さんも駆け付ける・・。
斧を携えて(後々考えれば狩猟用に研いでいたのだろう)。
「ひいいぎゃあああ!!ご、ごめんなさい~俺もうここから出ます~~!!!」
そういいながら、俺はなにも取らず飛び出していった。
残された二人は突然の事にしばらく止まっていたが・・。
「「兄様(兄ちゃん)!!」」
2人の少女の叫びが木魂す・・。
まるで獲物を逃した虎のような叫びを。
「ううっ・・こ、怖かったよう」
それから数時間後、俺は今だ半泣きで夜の街道を歩いていたが・・。
「み、みつけたぞ!!北郷!!曹操様の命だ大人しく縛につけ!!」
「げっ!!夏侯惇様!!」
夏侯惇様と偶然出会い、俺は、すぐさま逃げ出そうと踵を返すが・・。
「あまい!!」
軟弱な現代っ子が歴戦の武将にかなうはず無く・・あっけなく取り押さえられる。
「ほ、北郷・・ひ、久々だな・・さ、探したぞずいぶん~」
なんか危ない目をしながら、夏侯惇様が話しかけてくる。
「こ、今度は~、この私からは絶対逃がさんぞ~。ふっふふふ・・」
ほんと危ない目をしながら、夏侯惇様が笑い出す。
「秋蘭!縄だ縄をかせ!!」
そういい、夏侯惇様は手を後ろに伸ばすが・・。
後ろに控えている人は微動足りしなかったが・・。
「かわいい・・」
後ろに控えていた・・夏侯惇様によく似ている。
それでいてクールそうな女性が何かを呟いた・・でも、なんか顔が真っ赤だな。
「か、かわいいな~北郷は・・」
「へっ?」
あとがき
空を切る包丁・・なんかの漫画かアニメで空を切るオタマがあったのでそこからパクリましたw
他の恋敵を料理(比喩じゃなく))するネタもヤンデレ系で多様されますし、なんか全体的にパクリが多いssです。
その理由は・・今だ季衣&流琉の真名の区別がつかない程の両名への知識不足からくるネタ不足の為です。
次は姉妹でヤンデレ予定・・これは書きやすいんですが。
次の次の魏三人衆が、相当時間かかりそうです。
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恋姫がソフトヤンデレ化したssです。
思いつきssなので期待は無しで。
※「お気に入り500越え」&「お気に入りランキング100以内」記念ssです。