「うっ…」
目覚めると俺は、病室のベッドの上だった。
(ん?なんで病室…?)
ふと横を見ると、ベッドにうつ伏せている女性が居た。
(誰だ…??)
見つめていると女性が目をさまし、
こちらを見る。
「あっ…」
声を漏らした瞬間、彼女が抱きついてきた。
(えっ?えっ?)
いきなりの出来事で慌てる俺に
『やっと、やっと目が覚めたんだね…!!』
女性が言った。
「ちょっちょっと待って。」
俺は女性を元の位置に戻し、
「あの…誰?」
そう言い、恐る恐る彼女の顔を見上げた。
…案の定、ショックを受けたように戸惑っている。
抱きつかれたし、俺の恋人とかそういうのだろうけど、
俺はこの人を知らない。
『誰って…あたしだよ。ナギサだよ!!』
必死な顔で言われても、どうしてもわからない。思い出せない。
「あの…俺は?」
『えっ?』
「俺の名前は?」
俺の問いに彼女はぎょっとした。
『お…覚えてないの?』
「…ああ。俺が誰なのかも、君が誰なのかも、
どうしてここにいるのか、何も覚えていない。」
俺はうつむいた。
申し訳なくて、もう彼女の顔を見る事が出来ない。
『…そっ…か』
彼女の声が震えていた。
ガタッ
『あっあたし、今日は帰るねっ』
俺は顔をあげ、すぐにまたうつむいた。
『また明日くるからっじゃあね!』
バタン
(帰ったか…)
ホッっとした。
ドクン、ドクン、
(まだ鳴ってる…)
顔をあげたとき、彼女は…
泣いていた。大粒の涙を零して、
なのに声は震えながらも明るくて。
俺は自分が情けなくてどうしようもなかった。
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記憶喪失になってしまった主人公が
彼女と一緒に
思いだそうとする奮闘小説です!!