No.185967

流琉√

米野陸広さん

こんにちは、お久しぶりです。
流琉ルートをあげます。
つたないですが宜しくお願いします。

2010-11-22 15:43:10 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4687   閲覧ユーザー数:4099

流琉√

「♪~♪~~~♪~」

私はとても幸せものだ。こうして好きな人のためにご飯を作ることができる。

これ以上の幸せがあるだろうか?

いや無い。皆さんにとってそれぞれ幸せの形があるだろうけれど、私にとっての幸せはこうして毎日、兄様の食事を作って上げられることだ。

それにしても、……まだ少しお尻のあたりがむずむずする。

「~~♪~~♪~♪~」

「ん、んんん?」

寝返りを打ったのと同時に目を覚ましたようだ。

兄様の寝起きの声はいつもと違って少し頼りない。だけどそこが私は好きだ。こうなんていうか母性を刺激される、みたいな。

うわっ、自分で言っていて恥ずかしい。

私は恥ずかしさを紛らわせるように、兄様に声をかけた。

「あ、起きましたか、兄様」

「る、る? もう、朝?」

「はい」

「今日は、急ぎの仕事なかったよね?」

もちろん自分のはない。兄様のも定期的に確認しているからないはずだ。

兄様もそんなことは分かっているのだけれど、一緒に生活するようになってから、兄様とはこういう会話をするようになった。

なんでも、夫婦の間のお約束というらしい。

「えっと、はい。今日はいつも通り朝議に出ていつも通り政務に向かえばいいはずです」

「そっか、そっか。うんうん、流琉はホントにいいお嫁さんだな」

「そんな兄様、照れますよぉ」

私は顔を真っ赤にする。うぅう、恥ずかしい。

「ねぇ、流琉。……まだ、名前では呼べない?」

残念そうに兄様は私に問いかける。そうもうかなり長い間一緒に暮らしているけれど、私は兄様を名で読んだことがない。

でもこれは譲れない一線なのだ。魏の将として。

私が、華琳様の元を離れるまで、越えてはならないと決めた私なりの線引き。

「はい。……ごめんなさい、兄様」

俯く私に兄様は寝台から降り、こちらへと向かってきた。

そしてゆっくり私の小さな体を抱きしめる。

「いいや、俺こそ無理言った。少し堪え性が足りないな」

見えないけれど、今の兄様はきっと苦笑しているに違いない。だから私も笑って返すのだ。

「ですね、……それと、堪え性がないのはこちらもですか?」

やはり兄様は、どこまでも元気だった。私は兄様のぬくもりを強く感じるようにその身体を抱きしめる。

自然と兄様のそれが自分の身体に押し付けられた。

「う、これは生理現象というか」

「このきかん棒のせいで、まだお腹がむずむずしますよ」

「ご、ごめん」

「でも……」

聞こえないように否定の言葉をつぶやいた。

「ん? 何か言った?」

「いえ、昨晩は、ほんとに……激しかったから」

私がそうつぶやくと兄様は驚いた顔で、ごめんごめんとひたすらに謝ってくれました。

「でも、大好きですよ、兄様」

「俺もだよ、流琉」

 

私の名前は、典韋。天の御遣いの胃袋をつかんだ魏の将だ。

 

うわっ、自分で言ってて恥ずかしいよぉ。

 

「おい、流琉! ご飯が、ご飯が!」

「え? あ、あああああ!!!」

今日も北郷の部屋では賑やかな声で一日が始まります。

 

「流琉ー! 迎えに来たよー!」

「ちょっと、季衣。いつも兄様の部屋に入るときはのっくをしてっていってるじゃない」

「えー、だって春蘭様が、言ってたよ。『北郷の部屋に入るときはのっくなどしなくていい。扉が壊れたときに毎回毎回弁償させられてはかまわんからな』って」

「それは、春蘭様が力加減をしないからでしょ! それに、もし季衣が入ってきたときに私が……」

「私が?」

「……んでもない」

「え、どうしたのかなー? あっれー、もしかして、やらしいことでも考えてたー?」

この小憎たらしいのは、親友の許緒だ。出身が一緒で、今も一緒に華琳様の親衛隊を務めている。

最初はまさか二人でこうして華琳様にお使えすることになるとは思わなかったけど。

「考えてないってば! ほら行くよ、季衣。兄様もまた後で」

「あ、うん。それじゃあ、いってらっしゃい」

そういって笑顔で手を振る兄様。私はいつも通り上機嫌で部屋を出ようとした。

しかし、振り向きざまにふと後ろ手を捕られ、兄様に振り向かされた。

「え?」

季衣は気づいていない。だってそれは一瞬のこと。

小柄な私を抱えるように引き寄せた兄様は私の唇に、そっとその柔らかな感触を重ねた。

「……いってらっしゃい、流琉」

「////////」

私は、何も言えず、その場に立ち尽くした。

「……ん、おーい流琉ぅー、なにやってるのさー。早く行こうよー」

「あ、うん」

私が着いて来ていないのに気がついたのか、季衣が声をかけて初めて私は我に帰った。

「もう、兄様の馬鹿!」

赤くなって私は小さい声で叫ぶと、上々々機嫌でその場を立ち去った。

「あーあ、赤くなっちゃって。ホントお嫁さんだね流琉は」

「え、季衣? ナニヲイッテイルノ?」

「いや、流琉。顔見ればばればれだし、僕これでも魏の将だよ。華琳様の親衛隊だよ? 二人の気配ぐらいある程度探れるに決まってるじゃん」

「気を遣ってくれたの?」

「まぁ、親友だしねぇ」

あはは、と笑う季衣は本当に私にはもったいないくらいの親友だ。

「ねぇ、季衣。今日のお昼何がいい?」

「炒飯!!」

……即答だったのはまさかこの流れを予想していたからではないでしょうね。

「……わかったわ、後で皆で食べよ?」

「うん!」

元気よく私の相棒は頷くのだった。

今日も私は幸せだ。

 


 
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