サラタウンの近くの川に観光用の汽船がやってきた。その船は<レモン号>と呼ばれる船ということで、レモンはクラスのみんなにも招待状をくばったのだ。
少女探偵レモンとクラスメイトのみんなはそしてその日、船上で開催されたパーティに出席するために、出かけてきたのよ。
「やあやあレモンくん、それにアーサーにサラ・コナンくん、あと……君は」
とレモン号の船長の、恰幅のいいダイヤモンド船長が仰々しく桟橋のゲートで出迎えた。
「カレンです」
とピンクの髪の元気少女が残念そうにダイヤモンド船長に告げる。あんまり有名ではないことにがっかりしながら。
船を所有する会社がサラタウンの子どもたちを招待したのだ。そのチケットをたまたまレモンは大量に所有することになった。ある事件の解決の報酬代わりに譲ってもらったのだ。
桟橋から船のデッキに登ると、レモン号はごく小さな汽船だったが、学校のみんなでいっぱいだった。
気分のいい音楽と美味しい料理がふるまわれた。
「モニカ!」
と数ヶ月前にサラタウンに引っ越してきた女の子のモニカを見つけたレモンはいう。ようやくモニカにも自分以外の友人ができたようだ。
楽しそうにみんなとおしゃべりしている。
子ども相手専門の少女探偵だが、一応レモンも学生なのだ。
黒髪ロングに、キトンの黒いシルクハット、黒いワンピースドレスとチェックのタータンのスカートに身をつつんだレモンだったが、みんなは普通のネクタイ姿やフォーマルなワンピースが多い。
もっともそれを気にしていたら、レモンなどは個性(属性)をなくしてしまうので、無視することにする。
これはお酒ね……。
とレモンは思う。なにも考えずに渡されたものは、アルコール入りのようだ。大人用との手違いかもしれない。もっともアルコール濃度が高くないのでそのままストレートに飲んでしまう。
「あら?レモン酔っているの?」
とカレンがいう。そういうカレンも頬が赤い。
「これはソーダ・ファウンテン・ジンジャー・ラムだよ」
わたしの家の特製のレシピ。と、カレンが微笑む。
「そうなの?」とレモンは曖昧に答える。パーティのチケット配りは忙しかった……。と思いながら。
「大丈夫?」
「今にも甲板に横になりそうなぐらいぐらぐらする……」
「ちょっと横になったほうがいいんじゃない?」
とカレンの声が聞こえた。他愛もなく酔っている自分を、レモンは意識する。
その後しばらくして。
「今回はミステリ倶楽部主宰のパーティに出席いただきましてありがとうございます。
ついにミステリ倶楽部にも13人目の正会員が誕生しましてな。
そのお祝いというわけです」
とダイヤモンド船長が青空のしたでスピーチする。あれ?とレモンは思う。
このパーティは船会社のものだったはずだ。声はダイヤモンド船長だが。
レモンは突然気づいた。桟橋に横付けされている船が大きく揺れている。
エンジンの音がする。
どこかへ向かっているのだ。
「大変だ!」とレモンは青ざめる。これも余興に違いない。
ミステリ倶楽部によって船が乗っ取られたのだ。おそらく最初から船会社のパーティという説明は嘘だったのだろう。
ついにミステリ倶楽部は本性を出したのだ。
「この船には殺人者が乗っている」
と船のスピーカーがノイズ交じりで声を告げた。
「君たちは13人目、つまりキングの誕生によって1人犠牲となるのだ……」
突然(スピーカーから)銃声が響いた……。
……さてここでレモンは勘違いしていることに気づいた。
そう気づいたレモンは落ち着きを取り戻し、体をのばして、服をととのえた。船が出航しているのは確かだが……。
今レモンは船室にいる。ダイヤモンド船長の声と倒れた人間と周りの人間の歓声が聞こえる。シャンパンの楽しそうな音も。
仕方なく、レモンは報告書を書いた。
レモンの報告書:わたしだけ置いてけぼりにされちゃったのね……。船会社のパーティはとっくに終了して、わたしはそのままデッキの横の船室で寝ていたみたい。
そのあとミステリ倶楽部のパーティが始まって、わたしはそれを聞いていただけなのね……。
とレモンがバッグから手帳とペンを取り出して、報告書を書いていると、
やがてドアがノックされて、モニカとサラ・コナン、アーサーが入ってきた。カレンもいっしょだ。みんな残ってくれたのだ。
続:レモンの報告書:それにしてもミステリ倶楽部の会員の数がなぜエースからクィーンまで一定なのか理解したわ。
一人増えると一人殺される(いなくなる)……のね。いったい誰がいなくなったのかしら?
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観光汽船レモン号に招待された少女探偵レモンとクラスメイトたちだったが、やがてミステリ倶楽部が主催する謎のパーティが始まる……。