No.171042

真・恋姫†無双 黄巾√ 幕間

アボリアさん

黄巾党√ 幕間です
ネタに詰まったり、やる事があったりと色々あり、前話から少し間が開いてしまいました
もしこんな作品でも待って下さっていたという方がいらっしゃいましたらすみません
あと本編を待って下さっているという奇特な方は……もう少々お待ちください
誤字脱字、おかしな表現等ありましたら報告頂けるとありがたいです

2010-09-07 18:46:58 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:8170   閲覧ユーザー数:6632

幕間 地和

 

 

 

俺達は黄巾党として立ち上がったあの日以来、味方になってくれる人達や協力者を募る為に各地を旅していた。

それと同時に『この世界で今後台頭してくる、もしくは障害となるであろう英傑がどんな人物か知るべき』という考えもあり、さし当たって知るべき人物……曹操、袁紹、袁術、董卓の中で一番近くの領地を治める曹操を見定めるため、その領地へと向かっていた。(ちなみにこの世界では孫堅は既に死んでいて、子の孫策は袁術の客将という立場に甘んじているらしい。それと劉備が頭数に入っていないのは何処にいるか分からない為だ)

 

現在もその旅路の途中なのだが……

 

 

「「つ~か~れ~た~」」

 

「……姉さん達、さっきからそればっか。他に言う事はないの?」

 

グダグダな姉二人に嘆息する人和。

その光景は旅が始まって以来、何度も繰り返されてきた事だったりするので、周倉さん始め黄巾党の皆さんも半ば微笑ましいものを見るように苦笑しつつ、三人のやりとりを見守っていた。

 

「う~ん、前の村で聞いた話だともう少しって所だと思うよ?だから二人とも頑張ろうぜ」

 

そういって二人を元気付けながら俺達は歩を進めるのだが、それでも疲れは隠せないようだ。

 

「もう少しって言っても、まだ見えない距離なのよね~……」

 

そんな事を愚痴りつつ、地和は後ろにいる俺達の方を向きながら後ろ向き歩きで歩き始める……って、そんな変な歩き方してると……

 

「って、きゃあ!?」

 

俺が危惧すると同時、地和は驚きの声を上げると、後ろ方向へドスンッ!!と派手に転倒してしまった。

 

「痛~い……もう、なんなのよ~」

 

「自業自得。変な歩き方してる姉さんが悪い。……ほら、立てる?」

 

涙目になる地和へ悪態をつきながらも人和が手を差し伸べる。地和はその手を取って立ち上がろうとするのだが……

「っ!いたた……」

 

立ち上がった瞬間、顔をしかめる地和。その足を見ると、足首がほんのりと赤くなっていた。

 

「足を捻ったのかもしれないわね……見る限りでは軽く捻った程度でしょうけど、このまま歩くのは難しいかも」

 

「だ、大丈夫よこの位……っぅ!」

 

人和の言葉に対抗するように強がって見せる地和だったが、その姿は明らかに辛そうだった。

仕方ない、と俺は地和の前で屈む。

 

「……え、何?」

 

「何も糞も無いだろ?おぶっていってやるから乗れって」

 

俺がそういうと、地和は何故か「なっ!?」と言いながら顔を真っ赤にし、何か言おうとしていたのだが、それを口にする前に天和が割り込んでくる。

 

「あ、それ名案!じゃ、一刀お願いね~」

 

「ちょ!?姉さん勝手に……!!」

 

「はいはい、ちい姉さん落ち着いて。……一刀さん、荷物は私達が持ちますんで、姉さんのほうをお願い」

 

「人和まで!!」

 

ワーキャーと騒ぐ地和だったが、二人はその言葉を軽く流しつつ先に進んで言ってしまう。

 

「で?乗ってくか?」

 

「……分かった」

 

少し憮然とした風にいう地和を背負い、俺は先へと歩き始めるのだった。

……以外に、恥ずかしい。

 

地和を背負って歩きながら、俺はそんな事を考えていた。

つい先程まで、背中から「そもそも一刀がちい達の面倒を見るのは当然!」やら「ちいを背負えるなんて光栄に思いなさいよ」やら聞こえていたうちはまだ良かったのだが、地和も気恥ずかしくなったのか、今では静かになってしまったせいで『女の子をおんぶしている』という事を嫌でも意識してしまったのだ。

周りにいる皆もその姿を遠巻きに、かつなんだか生暖かい目線で見てくるせいで更に恥ずかしさに拍車がかかる。

どうしたもんか……と俺が嘆息していると、「ねえ」と、久々に背中の方から声が聞こえてきた。

 

「一刀ってさ、未来から来たんだよね」

 

その問いに「そうだよ」と答えると、背中の声……地和は更に続ける。

 

「それが本当なら、少なくともこの国の生まれじゃないわけでしょ?なのに、何で私達に協力してくれるの?」

 

「なんだよ急に?」

 

「前から思ってたことを、暇だから聞いてみただけよ。それよりほんとの所はどうなのよ?」

 

改めて聞かれても、といった心境で俺は苦笑する。

 

「だってそうでしょ?あんたの家族がいるわけでも、愛国心って訳でも無いだろうし。なのに私達に協力して、危ない目にあう理由なんてないじゃない」

 

「う~ん。まあ、そういったらそうなんだけど……」

 

理由は……説明するのも恥ずかしいんだけど、この様子じゃあ言わないわけにもいかないんだろうなぁ。

そんな事を考えつつ、俺は地和の質問に答える為に口を開いた。

 

「まあ、地和が言う様に、愛国心って訳じゃないかな。この時代にきてまだ数ヶ月しか経ってないし、愛着を感じてるわけでもない。でもこの時代の……一生懸命生きてる人達と出会ってさ、その人達が大変な目に遭うのを見過ごせないって気持ちはあるかな」

 

「……あんたって、ほんとにお人好しよね」

 

そういって首を振る地和。

 

「そうでもないぞ?そんな偉そうな考えしながら、最初はこんな乱世に乗り出すのなんて御免だって思ってたし」

 

でもさ、と俺は続ける。

 

「乱世をどうにかしないと、地和達の夢が叶わないだろ?」

 

「……へ?」

 

「だから、三人の夢……大陸一番の歌手になるって夢」

 

この世界に来て初めて会った、そしてある意味自分の恩人でもある彼女達の持つ、大きな夢……それを叶える姿を自分も見てみたいと思った。

 

「その夢を叶える為にも、頑張りたいと思って……って、どうした?」

 

話している内に、彼女からの返答が無くなり、なんだか顔を押し付けるような感触を背中に感じたので、聞いてみるのだが……

 

「な、なんでもないわよ!!無駄話してないで、早く行くわよ!!」

 

そう、大声で怒鳴る地和。

 

「自分から話振ってきたんだろ?ま、いいか。これ以上話してると、本当に置いてかれちゃうし」

 

前を見ると、少々話しに夢中になりすぎたのか、皆との距離が離れてきていた。

 

「じゃ、少し急ぐぞ」

 

そういうと、俺は歩くことに専念し、気持ち早足で皆の後を追うのだった。

 

ただ、

 

「……ん、ありがと、一刀」

 

向かう最中、そんな、囁くような小さな声が背中から聞こえてきたのは……聞き間違いではなかったと思う。

人和 幕間

 

 

 

「はぁ~……」

 

俺は溜息を吐きつつ、歩を進める。

 

現在俺は、曹操領へ向かう途中で立ち寄った街の街道を人和と共に歩いているのだが……何故溜息を吐いているかといえば、黄巾党に関する悩みからだった。

 

「最初から何もかも上手くいく、なんて考えてたわけじゃないけど、やっぱり金の話を取り付けるのは大変だよなぁ」

 

「そうね。……でも、最低限の協力は取り付けることが出来たし、よしとしましょう」

 

先程まで俺達は協力者を募ってこの街の有力者や富豪達の下を訪ねていたのだが……会話から分かるように、あまり芳しい結果は得られていなかった。

とはいっても、ここまで来る間に地元の名士である元清流派の陳寔(ちんしょく)さんを始め、現時点で何人かに協力を取り付ける事は出来ていたのだが、如何せん金銭面が切迫していた。

この時代、いくら名のある人物の協力があるからといって今の状況で叛乱の話で金を集めることなんて出来る段階ではないし、名士の人達だって官を辞めさせられている以上、裕福なわけでもない。

かといって商人相手に、未だ非戦闘員も含めて百人にも満たない義勇軍に金を出してくれ、と頼んでも大体は断られるか気持ち程度の協力をしてもらえれば御の字といった所だった。

 

「さて、とそろそろ公演の準備もあるし、金策についてはまた明日にでも……」

 

「いえ、まだ時間はあるわ。もう少し頑張りましょう」

 

「ええ?大丈夫なのか?」

 

今はちょうど昼になるかという時間で、午後一から公演があることを考えるとそろそろ切り上げないと、昼飯を食べる時間もなくなってしまう。

だが、俺がその旨を説明しても人和は首を横に振って答えた

 

「公演の準備は姉さん達に任せてあるから大丈夫。それより今は少しでも多くの協力が必要なんだから、お昼をしている時間なんて無いわ」

 

そういうと、人和はさっさと歩いていってしまう……う~ん、大丈夫だろうか。

俺は座って楽器を演奏するだけだから大丈夫だけど、歌って踊ってが続く人和は何も食べないというわけにはいかないだろう。

そんな事を考えながら人和の後を追っていると、ある物がおれの目に留まったのだった……

「お~い、人和~!!」

 

「もう、一刀さんなにやって……ムグッ!!」

 

俺の声に立ち止まる人和の振り向きざま、先程店で買ってきたあるものを口に押し付ける。

 

「コホッ、コホッ。いきなり何を……って、これは、シュウマイ?」

 

流石にいきなりで驚いたのか、押し付けた物……シュウマイを手に落とす人和。

 

「ゴメンゴメン。でもこれなら歩きながらでも食べれるだろ?」

 

そういって買ってきた点心の袋を掲げるのだが……なぜかそれを見て心なしか人和は呆れ顔だった。

 

「……一刀さん。これから金策に行くって言うのに、そんなに沢山買ってきてどうするんですか?」

 

「うっ……!」

 

確かにそれもそうだ。食べ物を沢山持ったまま『お金がないので義勇軍にお金を出してください』って頼みに行っても……うん、絶対に上手くいかない。

 

「それに、そんなに買うお金が何処にあったんですか?」

 

「あ~、え~、とそれは……今までの公演で溜め込んでた俺のへそくりからなんだけど……ゴメン」

 

そういって人和に謝る……すると、人和は呆れ顔を崩して、こう答えたのだった。

 

「……謝る必要なんてないですよ。一刀さんが私の事を気遣ってくれた、というのは分かってますから」

 

え?っと俺が聞き返すと、人和は更に続ける。

 

「……やっぱり今日はこれぐらいにしましょう。私が無理して一刀さんに心配かけるのは本意じゃないし、明日もあるし。……一刀さんが買ってきてくれたシュウマイを無駄にするわけにはいかないですしね」

 

人和はそういいながらシュウマイを口にすると、俺にむかって微笑んでくれる。

……うん。やっぱり、この子は難しい顔しているよりも、笑っている顔の方が何倍も魅力的だった。

 

「それより一刀さん?公演までの時間も出来ましたし、シュウマイでも食べながら、そのへそくりとやらについて、話をしましょうか?」

 

「……お手柔らかにお願いします」

 

……訂正、同じ笑い顔でも、小悪魔的な笑い顔は勘弁して欲しいです……

天和 幕間

 

 

 

それは公演に、金策にと一日中駆け巡り、やっと今日という日が終わろうとした時の事だった。

 

「やっほ~、一刀起きてる?」

 

「……こんな時間に何の用だよ?」

 

起きてる、と口では言いながらノックもなしに部屋に入ってくる天和を半目で見つつ、寝床に横たわっていた俺は体を起こしながら聞く。

 

「ぶ~、一刀ったらのりが悪いよ~。普通、こんな可愛い女の子が部屋に来たら『まさか夜這い!?』とか、もっと反応があってもいいじゃな~い」

 

「……まさか夜這い?」

 

「そんなわけ無いじゃん」

 

「そうだとおもったよ」

 

疲れた体に鞭打って、棒読みになりながらも天和の要求通りに聞いてみると、想像通りのお答えが返ってきた……ってか、何だこのやりとり。

 

「……で?どうしたんだこんな時間に」

 

「え~?なんていうか、暇だったから一刀にお話に付き合ってもらおうかと思って~」

 

そうあっけらかんという天和……いや、自分疲れてるんですが……

 

「ま、いいじゃない。なんかお話しようよ~」

 

俺の考えを読んでいるかのように言ってくる天和……やれやれ

 

「ま、いいけどさ。あんま遅くまでは勘弁してくれよ?」

 

「うんうん、そうこなくっちゃ!」

 

そんなこんなで、結局天和の笑顔に負けてしまった俺は、暇つぶしのお話とやらに付き合うことになったのだった……

始めこそある程度で切り上げようと思っていた雑談会だったが、俺も天和も思いのほか興が乗ってしまい、気がつけば結構な長時間話をしていた。

 

俺のいた世界の話、天和達の昔の話、それから俺達が出会ってからの話……と、そこまで話した所で「そういえば」と天和が切り出してくる。

 

「こうして話ししてみると、一刀と一緒に旅するようになってからは色々な事があったよねぇ~」

 

「色々な事、っていうか……主に大変な事ばっかり起こってる気はするね」

 

太平要術書の一件や、村での出来事、黄巾党設立……うん、思い返してみても波乱万丈という言葉がしっくり来る感じだ。

けれど天和はまた違う感想だったようで、「え~、でもさ~」と言いながら話を続ける。

 

「大変な事ばっか、って言うけどさ。私は一刀に会えてよかったと思ってるよ?一刀と会ってからは私達の歌を聞いてくれる人達も多くなったし~、荷物持ちや楽器演奏してくれるお陰でのびのび歌えるし~、人和ちゃん一人に任せてた交渉やなんかもやってくれるし~」

 

「……なんかそれだけ聞いてると俺便利屋扱いだね」

 

ちょっとショックを受けつつ聞いていると俺の呟きは聞こえなかったのか、「何より~」と指折り数えながら天和は続ける。

 

 

 

「人和ちゃんや私達の悩みだって聞いてくれたでしょ?あの時一刀がいなかったらどうなってたかわかんないもん」

 

「……へ?そんなことは……」

 

「そんな事あるんだよ。ちいちゃんも人和ちゃんも口にしては無いけど、一刀にはすっごく感謝してるんだから。だからさ」

 

 

 

そういって俺に向き直る天和。

 

「これからも二人の事、よろしくね?」

 

そういって笑いかけてくる天和だが……少し気になった事があったので、俺は口を挟む。

 

「二人だけじゃなくて、天和も、だろ?」

 

「……へ?」

 

別に天和を除かないといけない話な訳じゃないし、何より一番面倒をかけてきそうなのは天和なんだよな~……なんて考えながら天和を見ると、心なしか顔が赤くなっていた。

 

「どうしたんだ天和?」

 

「え、あ、いや、一刀がいきなり変なこと言うから」

 

そういってワタワタと慌てる天和……俺、なんか変な事いったか?

そんなことを考え、悩む俺だったが、その姿を見た天和がはぁ~、と溜息をつく。

 

「もう、一刀はもうちょっと乙女心が分かるようにならないと駄目だよ」

 

頬を膨らませながら天和が言うのだが……如何せん、全く分からない。

 

「ま、いいや。もう結構な時間になちゃったし、私は部屋に戻るね」

 

そういって立ち上がる天和。確かにもう大分おそくなちゃったな。

部屋の外まで見送るために俺も立ち上がろうとすると、いきなり天和が顔を近づけてきて……

 

 

 

「んっ」

 

 

 

って.……え?

瞬間、頬に柔らかい感触を受け、俺は固まってしまう。っていうか、今のって……!!

 

「えへへ~、今日は話に付き合ってくれてありがと。今度は本当に夜這いに来るかも……な~んてね」

 

それじゃね~、と言いながらさっさと出て行ってしまう天和を呆然と見送る俺。

 

「……え~、と」

 

それから数分間の間、俺はただ呆然と立ち尽くしてしまった。

 

……余談ではあるがその夜、俺は疲れていたにもかかわらず全く眠れなかったのだった……

 


 

 
 
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