No.169897

真・恋姫†無双 黄巾√ 第六話

アボリアさん

黄巾党√ 第六話です
今回は今後の方針についてのお話なんですが……淡々と説明だけを繰り返す会話は難しいですねw
あと、歴史考察など、甘い部分もあるかもしれませんが、温かい目で見ていただけると幸いです
誤字脱字、おかしな表現等ありましたら報告頂けるとありがたいです
P,S, 今回あるキャラが出てきますが、あくまでモブ(前作の徐栄のようなもの)ですので、過度な期待はしないでくださいw

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2010-09-02 18:35:04 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:8758   閲覧ユーザー数:7065

「で?一刀の考えってどんななの?」

 

開口一番、地和が聞いてくる。

今現在、俺達は宿屋の一階に位置する食堂に集まり、女将さんのご好意である朝ご飯を食べているところだった。

 

「そ~そ~。お姉ちゃん、それが気になって夜も眠れなかったよ~」

 

ガヤガヤとそんな事をいう二人……って、オイ。

 

「それを話そうとしたら、二人が眠いって言ったせいで話が中断したと思うんだけど?」

 

特に天和の「眠れなかった」は明らかすぎるほどに嘘だろ。

そんな俺の突っ込みにうっ、と言葉を詰まらせる二人だったが、

 

「うっ……す、過ぎた事はどうでもいいでしょ!?大事なのはこれから先の事よ!!」

 

「うんうん、ちいちゃん良いこと言った♪」

 

そう、いつもの感じで流されてしまう。……ま、別にいいんだけどさ。

 

「全く……一刀さん。二人の言い方はアレだと思うけど、早速話を聞かせてもらえますか?」

 

「ん、分かった」

 

何で人和ちゃんの言う事は素直に聞くのよ~、やら、ちょっと人和!?アレって何よアレって!! やら色々騒がしい二人がいたものの、俺と人和は無視して話し始める事にした。

 

「まず俺達の目指す目標、というか結果なんだけど……皇帝陛下や、それに類する政治の最高役職に訴えかけて、漢王朝を復興させる事でいこうと思ってるんだ」

 

「へ?そなの?」

 

素っ頓狂な、という表現がまさにあう感じの声で天和が聞いてくる。

 

「私、叛乱を起こす、なんていうからてっきり『漢を打倒して、私達の国を作る!!』とか言うのかと思ってた」

 

「うん、俺達が真似しようとしている叛乱の指導者はそう考えていたみたいだけどね。でも、この時代、いくら腐敗政治だとはいえ、天子様には逆えないって人は沢山いるだろうしね」

 

それが、張角の叛乱が大陸を巻き込む規模になりながらも、反対勢力や離反者を多く出してしまった要因の一つだったりする。

それに、と俺は続ける。

 

「もし、漢を打倒するにしても……仮に成功したとして、俺達が新しい政府を作らないといけなくなる。天和は政治とかできるのか?」

 

「……え~と、人和ちゃん。出来る?」

 

「無理ね」

 

姉の問いにきっぱりと答える人和。まあ、真っ当な意見だ。

 

「そういうこと。それに、俺達が望むのは乱世を起こさない、そして民が苦しまない世の中にするって事だからね」

 

「それもそだね~」

 

天和がそう言うと、地和、人和も同じ考えだというように頷く。

俺はそんな三人の同意を確認すると、更に話を進めた。

 

「次に方法だな。これは昨日も話したように、歌で人を集めて、ていう方法なんだけど……これもすこし詳しく話しておくべきかな」

 

「詳しく、というと?」

 

「不満を持つ人や漢の復興を願う人達を集める、っていうやり方には変わりはないんだけど、俺達がおおっぴらに人を集めてたり、大勢の人を引き連れて旅をするわけにもいかないだろ?それに人を集めていると、それを利用して悪事を起こそうって奴も出てくるかもしれない」

 

一旅芸人である自分達が人を募っていたら明らかに怪しいだろうし、それこそ叛乱を起こそうというほどの人数をつれて歩けるわけも無い。

 

「それらの問題を解決するためにも……義勇軍を立ち上げようと思うんだ」

 

「義勇軍?」

 

「そ、義勇軍。最近多発している賊に対抗する為の義勇軍だっていえば人を募っても不思議じゃない。それを隠れ蓑にして、各地の人達に、蜂起の協力を取り付けていく。そうすれば義勇軍参加者だけ連れて、協力者全員を連れていく必要もないし、賊討伐を掲げている義勇軍なら、それを騙って悪さをするのも抑えられるしね。それに、義勇軍を組織していれば叛乱を起こすまでの間に賊に苦しめられる人達を助ける力にもなる。そうすれば、歌だけでなくそっちからでも人の協力を得られるようになるだろ」

「それは分かったけど、運営はどうするの?」

 

「商人や土地の豪族に協力を依頼するつもりだよ」

 

俺の意見に首を振って答える人和。

 

「義勇軍ならそれでもなんとかなるかもしれない。だけど、それだけじゃ叛乱を起こすには不足、そこまでは、ただでは協力してくれないと思うわ」

 

人和のいうことは最もだ。何をするにもお金というものはついて回るし、それを調達するのは至難の業だ。

それを踏まえつつ、俺は話を続ける。

 

「それなんだけど……人和、『党錮の禁』って、知ってる?」

 

「えっと……確か、多くの官が弾圧された事件でしょう?大きな出来事だったから聞いたことがあるけど」

 

「うん、それであってるよ」

 

人和の答えに頷く俺。俺の知っている歴史とこの世界では似ているようで微妙な誤差(張角達が女の子だったり)があるようだったから、一安心だ。

 

「党錮の禁で弾圧された知識人達は清流派って呼ばれる派閥なんだけど……彼らは宦官や皇帝の売官制度に反対した為に役職を奪われたんだ。つまり……」

 

「漢王朝を立て直したいと考えていて、権力こそ奪われているけれど信頼や地元での支持が圧倒的に高い人達……その人達に協力を呼びかけるってことね」

 

「でもでも、そんなに上手くいくの?」

 

俺と人和の推論に対し、天和が聞いてくる。まあ、当然の疑問だよな。

 

「こればっかりは歌だけでどうにかなるものじゃないから、地道に呼びかけていくしかないな。でも、俺達に本当に叛乱を起こせるほどの求心力があって、漢を正しい方向へ向かわせたいということが伝われば不可能じゃないとおもうんだ」

 

清流派が一概に正しいとは思わないが、弾圧されるまで自分自身の正論を貫ける人達ではあるだろうし、憂国の士でもあるだろう。

それにこれが上手くいけば彼らにも復権の目もでてくるのだから絶対に無理という話ではない、というのが俺の考えだった。

「つまり、その辺りは私達の頑張り次第、って事ね」

 

「最終的にはそうなるね。でも、叛乱を起こせる絶好のタイミング……機会までは時間があると思うし、コツコツ信頼を得ていくべきだと思う」

 

「機会って?」

 

地和が問いかけてくる。

 

「無闇に叛乱を起こしても、俺の知っている歴史では最初こそ押してたんだけど、時間が経つにつれて地方の豪族や官軍に撃破されてしまうんだ。相手は戦うのが専門、こっちは素人なんだから当然だな。それに大きくなりすぎて、指揮が疎かになった所を各個撃破されてしまう。だからこそ、叛乱は短期間で、一気に決めないといけない」

 

「そんな事が出来るの?」

 

「うん、これも俺が知っている歴史の話になるんだけど……賊の出現が一段落する頃に、朝廷で大規模な権力争いがある。そこで朝廷を牛耳ることになる人物を討つ為に大陸の諸侯が一箇所に集まるんだ。そこで……」

 

「その朝廷を牛耳る人と、諸侯を一気に抑えちゃおうってことだね♪」

 

そういうこと、と俺の言葉を継いだ天和に頷く。

 

まだ起こると決まったわけではないので名前は出さないでおくが、歴史の流れが会っているなら十中八九、諸侯連合が組まれる事態になるはずだ。

俺がそんな事を考えていると「でもさ~」と地和が話し始める。

 

「話だけ聞いてると簡単そうに聞こえるけど、実際やろうとなると大変な話よね」

 

「まあ、そうだな」

 

実際、俺が話したのは所詮机上の空論といえるものだし、元学生の俺の考えが何処まで及ぶかは分かったものではない。

 

でも、

 

「動かないままでいることなんて出来ない、だろ?」

 

そういって三人の顔を見る。すると、三人とも、同意見だといわんばかりの笑顔で頷いてくれる

 

「そうね。もともと簡単な話だとは思ってなかったし。やってみなきゃわからないもの」

 

「ま、ちい達にかかれば不可能なんてないわよ!!」

 

「うんうん、私達四人一緒なら大丈夫♪」

 

「よし、そういう事で、長居しても悪いしそろそろ行こうか。すみませ~ん……って、あれ?」

 

そんなこんなで朝食を終え、女将さんに挨拶をしようと思った俺たちだが、肝心の女将さんの姿が見えない。

一応、厨房の方も探してみるが、一向にいる気配が無かったのだった。話に夢中になっていた為、どこかに行ったのに気付かなかったのだろうか?

 

まあ、こうしていても仕方ないし、もしかしたら外にいるかもしれないということで俺達は一旦店から出ることにしたのだった。

「それで、最初は何処に向かおうか?」

 

「う~ん、まずはこれから障害になるかもしれない曹操がどんな人物か知りたいから曹操の領土に向かっ、て……」

 

そういいかけて、俺は言葉を失ってしまった。

 

店を出ると、そこには女将さんの姿……だけではなく、

 

生き残った村人、それも老若男女問わず、全ての人達が立っていたのだ。

 

「あんた達、もういくのかい?」

 

その先頭に立つ男性が声をかけてくる。

 

「え、ええ。もう発とうかと思います。……あ、見送りにきてくれたんですか?」

 

俺がそういうと、男は「いや」と首を振る。

 

「俺達が集まったのは他でもない。……っと、自己紹介が遅れたな。俺は村の自警団員をやってる周倉ってもんだ」

 

周倉さんはそういうと、俺達の方へと叫ぶ。

 

「頼む!!俺達も、あんた達の旅に同行させてくれないか!?」

 

そういって皆が頭を下げる……って、えぇ!?

 

「な、なによ!?どういうこと!?」

 

「すまないけど、あんた達の話は聞かせてもらったよ」

 

そういったのは、店の女将さんだった。……しまった、話に夢中になりすぎてて、周りに気を配ってなかったか……

「……話が伝わってしまっているようなので、はっきり言わせて貰いますが……私達は敵討ちをするわけじゃないんです。ですから……」

 

「そんな事は分かってるさ。敵討ちのためじゃねえ」

 

「え?」

 

てっきり敵討ちの為について行きたいと言っているものだと思っていた俺達にとってその言葉は驚きだった。

 

「俺達自警団は、官軍の奴等に命じられて、賊の偵察に出されてたんだ。その隙に賊に襲われて……家族を、みんなを殺されて、奴等に、復讐してやろう、って思ってた」

 

でも、と周倉さんは続ける。

 

「あんた達の歌を聞いて、あんた達の考えを、こんな事を二度と起こさないって考えを聞いて、思ったんだ。俺も、その力になりたいって!!」

 

周倉さんの言葉に、後ろの人達も続く。

 

「俺もだ!!弟を、兄弟を殺されて、もう死んじまおうかと思ってた俺が、あんた達の歌を聞いて救われたんだ!!この命、あんた達の為に使いてえんだ!!」

 

俺と同い年くらいの青年が

 

「私もだよ!!旦那が殺されて、息子もいなくなった私が、こうしていられるのもあんた達のおかげさ。料理や洗濯ぐらいしか出来ないけど、女だからって足手まといにはなんないからさ!!」

 

宿屋の女将さんが、

 

「こんな老骨でも、方々の村に知り合いだけは沢山おる。そいつ等の説得なら任せい!!」

 

杖をついたお爺さんが、

 

「僕も、母ちゃんも父ちゃんも居なくなちゃったけど……でも、お姉ちゃん達の歌を聞いて、幸せそうな顔してた。だから、僕も連れてって!!」

 

小さな男の子が、

 

村の、皆が、そう言ってくれたのだった。

 

「ねえ、一刀」

 

呆然と立ち尽くす俺に、天和が話しかけてくる。

 

「一刀のいう戦いは、いろんな人、み~んなで戦うってことでしょ?だったら、答えは決まってるよね?」

 

「……うん、そうだな」

 

天和の言葉で、決意を固めた俺達は村の人達に頼んで、ある物を用意してもらう事にしたのだった……

「……いいの?本当に燃やしちゃって」

 

「ああ。これが無くたって、人の心は動かせるって、実証できたからね」

 

そうして俺は黄色い包みに……太平要術書に、火をつける。

小さい火種が次第に大きくなって……それが燃え尽きるのを確認すると、俺達は後ろを振り返る。

 

そこには、さっき用意してもらった物……黄色い、大小さまざまな布を、頭に、腕に、腰にと各自さまざまな部分にまいた村人達……いや、仲間達の姿があった。

 

「……私達の戦いは、困難なものになるかも知れません。危険もあるでしょう。それでも、ついてきてくれますか?」

 

「「「「「応!!」」」」」

 

「大変な事ばっかりだけど、それでもちい達の為に戦ってくれる!?」

 

「「「「「応!!」」」」」

 

「じゃあ皆~!!私達の為、皆の為、そして、この国に暮らす、み~んなの為に!!一緒に、頑張ろ~!!」

 

「「「「「おおおおおーーーーー!!!」」」」」

 

「漢を、蒼天を立て直す為に、黄天、今こそ立ち上がるべし!!」

 

「「「「「蒼天正為!!!黄天當立!!!」」」」」

 

「いこう!!俺達黄巾党の手で、平和な世の中を掴む為に!!」

 

「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!」」」」」

 

こうして俺達の……黄巾党の戦いが、幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、黄巾党って名前、可愛くない~」

 

「いや、名前に可愛さを求められても……」

 

「黄色い布だからって黄巾って、名付けの才能ないわよね」

 

「悪かったなセンス無くて」

 

「一刀さん……ゴメン、そこは庇えないわ」

 

「君等そろいも揃って言いすぎじゃない!?」

 

……ただ、幕を開けた直後から締りが無かったのだった。

 


 
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