No.168302

真・恋姫†無双 黄巾√ 第三話

アボリアさん

黄巾党IF√第三話です
誤字脱字、おかしな表現等ありましたら報告頂けると有難いです

2010-08-26 17:53:37 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:8326   閲覧ユーザー数:6935

 

「あ、次の村が見えてきた!!」

 

「ほらほら、人和ちゃんも、一刀も、急いで~」

 

目的地が見えてきた事により、途端に元気になった天和、地和がはしゃぎながら進んでいく。

 

「はぁ~……全く。さっきまでは、もう歩けない、なんていってたのに現金なんだから……」

 

「ま、二人らしいといえばらしいけどね。……ただ、二人の荷物を持ってるのは誰か、考えてから言って欲しいけどね。ははっ……」

 

対する俺と人和はといえば、そんな二人の行動に嘆息しつつ、ゆっくりと歩を進めていた。

 

前の街での公演も、太平要術書なんて予想外の出来事はあったものの、無事大盛況のまま幕を閉じ、俺達は次の公演に向けて旅を続けていた。

……ちなみにあの後、要術書はどうしたのかといえば、俺の荷物の中、奥深くに厳重に縛って保管してあったりする。

 

まあ、そんな話はともかくとして、最近では盗賊や、野盗なんかが以前にも増して続出するようになった、なんて話も良く聞くようになって来たし、急ぐに越した事はないか。

 

「やれやれ……それじゃ、二人が痺れを切らす前に後を追ってあげるとしようか?」

 

「そうですね。あの二人の場合、放っておいたら本当に先に行っちゃうかもしれないし」

 

俺と人和は、そんな事を言いながら、歩くスピードを上げながら二人の後を追う。

 

(だけど、賊、か……。やっぱ、黄巾党が出てきてないとはいえ、世の中が乱れてきているっていうのは間違い無いのかもな)

 

今まではこうして、トラブルらしいトラブルに巻き込まれる事も無かったけれど、いつ自分達がそれに巻き込まれるかは分かったものではない。

その時は……命のやりとりなんてした事は無いけど、

 

(少なくとも、この三人だけは助けないとな……)

 

「……?一刀さん、姉さん達に置いてかれちゃいますよ?」

 

「ん、ゴメン、ゴメン」

 

恩人である三人の顔を思い浮かべつつ、俺はもう大分先に行ってしまった天和を追うため、早足になるのだった……

「ほぉ、旅の歌い手ですか。このご時世に、ようこんな村にまで来てくださいましたなぁ」

 

長い髭を蓄えた老人……この村の長老さんはそういうと、快く俺達を歓待してくれた。

あの後、村にたどり着いた俺達は公演の許可を取る為に村の有力者である長老さんの家を訪れていたのだった。

 

「いえ。こちらこそ、いきなり押しかけてしまってすみません。……それで、早速なんですが、この村でも公演をしたいと思っているんです」

 

「ああ、ああ。こちらこそ、是非頼みたいくらいなもんで。最近では、娯楽らしい娯楽もありませんで、村のもんも喜ぶでしょう」

 

はっはっは、と笑いながらにこやかに承諾してくれる長老さんを見て、ほっ、と胸を撫で下ろす俺達。長老さんもいっているように、こんな時代だと楽しみというものも少ない訳で、大抵のところでは受け入れてくれるのだが、こんな時代だからこそ、娯楽に興じる余裕なんてない、と断られてしまう事も稀にあるので一安心だった。

 

無事許可をもらえた俺達はその後も長老さんと談笑していたのだが、ふと、視線を感じた気がしてそちらを向くと、そこには小さな女の子が柱に隠れるようにしてこちらを窺っていた。

 

「ん?おお、なんじゃそんなところに隠れおって。こっちにでてきて、挨拶なさい」

 

長老さんも、その視線に気付いたのかそちらを振り返り、女の子に手招きをする。

女の子は最初こそモジモジとしていたものの、やはり興味があったのか、長老さんの手招きに応じて俺達の前へと出てきた。

 

「これは儂の孫娘でして。来客なんて珍しいもんで、隠れて見ておったようですわ。ほら、挨拶なさい」

 

そういって長老さんが促すと、女の子はおずおずと喋り始める。

 

「こ、こんにちは。お姉ちゃん達、歌い手さんなんだよね」

 

「うん、こんにちは。そうだよ~、私達、いろんな所を旅して、歌を歌ってるんだ~」

 

女の子の問いかけに、天和が優しげに答える。すると女の子は、警戒心が解けたのか、興奮気味に話しかけてきた。

 

「本当!?今までどんな所にいった!?」

 

「そうねぇ~、ちい達は、それこそいろんな所にいったわよ」

 

そういって地和が今までの旅について面白おかしく話す

まあ多少脚色気味の話だったが、聞いている女の子の方は、その話を興味深そうに、目を輝かせながら聞いていたのだからいいか。

 

そんな風に俺達は和気藹々と過ごさせてもらい、その日はもう遅いから、という長老さんのご好意に甘え、その日は長老さんの家でお世話になることになった。

その間も、いつの間にか三人に懐いてしまった女の子と遊んだり、人の良い長老さんの話を聞いたり、と楽しい時間を過ごしたのだった。

次の日、俺達は朝から公演の準備に追われていた。

 

ここは村、とはいっても結構な人数が暮らしている比較的大きな村だった為、舞台設営(とはいえ、大規模な事をするお金も無いため、天和達が踊る舞台の準備と、観客席の縄張りだけではあるが)に苦戦していたのだが、それを見た村人の有志が手伝ってくれた為、何とか午前中の公演までには出来上がりそうだった。

そんな村人さんたちの協力もあり、あとは開演を待つばかり……だと思われたのだが、突然、予想外の出来事が、俺達の身に降りかかってきたのだった。

 

 

 

 

 

「おい、貴様等!!何をしている!?」

 

なんとか舞台が出来上がるか、というタイミングに、突然後ろからそんな声がかかる。

作業の手を止め、俺達が振り返るとそこには……武装をした男達と、それに囲まれたいかにも役人です、といった風貌の小太りの男がいた。

どちら様ですか?と聞くと、どうやらこの男はこの辺り一帯を取り仕切る県令――つまり太守の下役で、太守が治める郡を一国と考えた場合の県知事みたいなものだ――らしい。

そんなお偉いさんが何のようだ?と俺が考えていると、小太りの男が話し始めた。

 

「近頃横行している賊がこの付近に現れるとの情報を得た故、その賊討伐をせよとの上役の命を受け、遠路はるばるこんな寂れた村に足を運んでやったのだが……」

 

男の高圧的な態度に、俺を始め、村人も嫌悪感を抱いたようだったが、それに気付いていない様子で男は更に続ける。

 

「で?我々がこうしてやってきてみれば、貴様等は何をやっているというのだ」

 

腹は立ったものの、説明しなければ事はす済まなそうなので仕方なく事情を説明する。

途中からはその様子を見て、駆けつけてくれた長老さんや、衣装を着替え終わり様子を見に来た天和達も交えての話になったのだが、その話を聞いた男はふん、と鼻を鳴らし、俺達を睨みつけてきた。

 

「我々が命懸けの任を受け、賊退治に赴いてきてみれば、貴様等は旅芸人の公演だと?はっ、いい気なものだな」

 

「ちょ、何よその言い方!?」

 

男の言葉に地和が食って掛かる。

 

「言葉どおりだ。おい、この村の責任者はいるか?」

 

俺達に用は無いと言外でいうように男が言い、責任者という事で長老さんが前にでて話を聞くことになった。

 

その話によると……今から、この村は賊討伐の為の拠点代わりとなる為、今後は自分達の指揮下に入れ、という一方的な話だった。

 

「―というわけだ。従って、このようなふざけた催しなど認められん。旅の芸人など、素性も分からん妖しい輩ばかりだしな」

 

「そ、そんな……!!」

 

「まあ、旅芸人共が我々の労に報いる為、袖の下でも渡すというのならば話は別なんだがなぁ」

 

男が下卑た笑みを浮かべると、周りの兵達もそれに習い嘲るような見下した笑い声をあげる。

 

「まあ、それが無理だというのなら、さっさと村を出て行くんだな。さもなくば、賊の斥候とみなし、捕縛も辞さんぞ」

 

その言葉に、何も言い返せなくなってしまった俺達は、不満を抱えつつも、村を後にする事になってしまったのだった……

「何よ!あいつ等のあの態度!!」

 

未だ怒りが治まらないといった風に地和が憤慨する。

 

あの出来事があり、村にいられなくなってしまった俺達はせめて日が明るいうちに、という事で一刻ほど前に村を出てきていたのだった。

 

「お姉ちゃんも、役人の人達には頭きちゃった!!……でも、長老さん達には悪いことしたね」

 

「そうだな……あの子も、村の人も、楽しみにしててくれたのになぁ……」

 

村を出るときの、あの女の子の顔が頭に浮かんでくる……それはもうがっかりとしていて、泣きそうな顔をしながら、長老と一緒に見送ってくれたのだった。

 

「ああ、もう!!それもこれもあいつらが悪いのよ!!」

 

「ちい姉さん、落ち着いて。いくら言ったって結果は変わらないでしょう?」

 

「なによ!なら人和は頭にこなかったって言うの?」

 

「そんなわけ無いでしょ?私だって官軍の態度は正直嫌になった」

 

辛辣な言葉を吐きつつも、だけど、と人和が続ける。

 

「官軍の言う事も一理あるわ。賊が出るかもしれない中で公演をするわけにもいかないし、悔しいけれど旅芸人をしている以上、素性が知れないといわれれば反論できないもの」

 

「う~、でも~」

 

地和も、人和の言っていることが分かるからこそ悔しいんだろう、未だ歯噛みをしていた。

……でも、官軍だからといって、あそこまで高圧的に見下すような態度を取り、あまつさえ露骨に賄賂を促す発言をするなんて、正直信じられない話だと思った。

これも、乱世特有の官の腐敗、といってしまえばそれまでなのだが、ちからの無い立場からしてみれば、本当にたまったもんじゃないよなぁ。

 

「ま、今回は駄目だったけど、またいけば良いだけの話だよね」

 

「「「……は?」」」

天和の突然の発言に俺、地和、人和、共に間抜けな声がでてしまった。

 

対する天和は、寧ろ俺達の反応こそ予想外だったとでも言うような顔をしていた。

 

「え?だってだって、今回駄目だったのは官軍の人達がいたからなんだから、あの人達がいなくなったらまた村に寄れば良いだけでしょ?」

 

それに、と天和が続ける。

 

「別れ際に、あの子と約束したんだ♪。また来るから、楽しみにしてて、って。」

 

そう、笑顔で言う天和を見て……俺達は、声を上げて笑ってしまった。

 

「え!?一刀も、ちいちゃんも、人和ちゃんも、何で笑うのよ~!」

 

「あはは、ゴメンゴメン。でもそうだよね!またあいつらがいないときにいけば良いのよ」

 

「ふふっ、……まさか、天和姉さんのほうが一枚上手だったとわね」

 

全くだ、と俺が同意すると、天和は頬を膨らませて怒っていたが……ふっ、と笑う妹達を見て微笑んだ気がした。

 

まさか、天和は俺達を元気付ける為に……と、俺はそこまで考えて、考えるのをやめた。

そんなのはどちらでも良い。先程までの暗い空気ではなくなったんだから、それで良いじゃないか

そういって俺達は和気藹々とした気分で足を進め、ふと、俺は後ろを振り返り、

 

 

 

その光景に、目を疑った

 

 

 

「どうしたの、かず……と……」

 

立ち止まる俺を不審に思ったのか、天和達も立ち止まり、その光景を目の当たりにする。

 

俺達が来た方向……もう、一刻半ほど時間が経っているため、村は米粒ほどにも見えなくなっていたのだが、

 

そこから、黒煙が上がっていたのだ。

 

「う、そ……、あれって、まさか」

 

「とにかく、急いで戻ってみよう!!」

 

俺達は、胸に嫌な予感を抱えつつ、全速力で来た道を引き返していったのだった……

 


 
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