No.144010

恋姫異聞録62 定軍山編 -神速と鬼-

絶影さん

定軍山編続きです

最近の忙しさはハンパじゃない
なので更新が遅くなってしまって申し訳ないです

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2010-05-18 22:53:38 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:12789   閲覧ユーザー数:10156

 

「さて紫苑殿、俺はこれから最も楽しい戦に身を投じる」

 

「ええ、銅心様が素早い対応をしてくださったお陰でこのまま逃げ切れそうですわ」

 

「はっはっはっ、礼には及ばん紫苑殿達のお陰で楽しませ貰っている。俺は後続の歩兵隊を逃がす為時間を稼ぐ」

 

「御武運を」

 

韓遂率いる涼州騎馬兵が空馬を韓遂の元へ近づけると、後ろに乗る黄忠はひらりと空馬に乗り換え

目礼をして前へと馬を追う

 

クックックッ、ここからが俺の魅せ場よ。鉄心の我儘で何度殿を楽しんだことか

 

敵は包囲を突破、囲んだ兵たちは既に撤退を始めている

翠が連れて来ているだけあって全て騎兵、逃げるには申し分ない騎馬など本来は逃げる為にあるのだ

敵本隊の方も恐らく直ぐそこまで来ていることだろう、足止めには撹乱して逃げよと言ってあるからな

曹操の兵があの程度の撹乱でさほどの足止めにもならん事は解りきっている

 

「おじ様」

 

「翠、なんだ叱られに来たのか?」

 

「なっ、そんなんじゃないっ!あたしも殿で戦う、動きの遅い歩兵を逃がすんだろう?」

 

「ああ、よかれと思い連れて来た歩兵が足手まといになっているからな」

 

翠の兵と軍師殿の策から森の中で動きやすい歩兵を連れてきたが裏目に出たな・・・・・・

慧眼に策を見破られただの足手纏いだ、しかし歩兵三百必ず生きて帰還させる

 

「ほぉ、紺碧の張旗が近づいてくるな」

 

「神速の張遼、あたしが相手を」

 

「お前は騎兵を三十率いて守れ、恐らく疾風が来る。出来るな?」

 

「劉封か、解った。兵を守る、腕に覚えのあるもの三十あたしに続け」

 

馬超の声に応え、涼州騎兵達は反転し殿へと身を投じる。亡き英雄に仕えた

勇敢なる男達は仲間を守る時にこそその力を発揮すると言わんばかりに

 

父を超えろ翆、お前にならば出来る

俺はお前を必ず鉄心を超える将へ育てよう、それまでは俺が守ってやる

 

「俺と共にある兵達よ。我等の新たな英雄を育てる為力を貸せ」

 

『『応』』

 

韓遂は手綱を口に咥えると、新たな槍を持ち兵を反転させ突撃をしてくる

霞に馬を走らせた

 

「散開し敵を撹乱、足止めをする。張遼は俺に任せよ」

 

突進するの霞の騎兵達の鼻先を削るように当っては退き、当っては退きの繰り返し

掠めるような攻撃にどうしても進みは遅くなる

 

「なんちゅう動きをするんや涼州の騎馬兵は、がっちり食いつくわけでもない、イライラさせよって」

 

 

 

 

攻撃を繰り返しながら、韓遂は顔から笑みを絶やさない、殿の一番後ろで一人馬を走らせ

退く事無く、片手で槍を振り回し敵兵を突き殺していく

 

クックックッ、張遼め貴様は臆病者か?真ん中で黙ってみていたら俺の槍に貴様の兵は突き殺されて

ゆく一方だぞ、武を誇るのならば俺と戦いたいだろう?かかってこい、存分に相手をしてやる

 

霞は騎馬隊の中央で兵を突き殺しながら笑みを向ける韓遂を睨む、退く兵に追撃をかける

有利な立場でありながらまるでこちらが不利な立場であるように挑発をされ、握る手綱に

力がこもってしまう

 

韓遂、英雄馬騰の片腕だった男、相手にとって不足無しや。どっちにしろアンタを討ち取らんことには

あの騎馬兵は崩れん、だが馬超までおる。ウチが突っ込んで下手に崩されても厄介や

 

「霞様、馬超はお任せを」

 

「おお、一馬!よう来てくれた、やぁっと動けるわ。昭は大丈夫だったんか?」

 

「兄者は直ぐに本隊の衛生兵に、必ず助かります」

 

「ウチの目の前通って本陣向かう時は驚いたわ、ほんなら行こか、もうさっきからアイツぶちのめしたくて

ウズウズしとるんや」

 

霞は馬の腹を蹴り速度を上げて韓遂へと突進していく、偃月刀を握り締め乾いた唇を一舐めすると

目はギラギラとした鋭さを持つ、殺気は鋭く研ぎ澄まされた剣のように

 

一馬も来たし、馬超への心配は無くなった。乗っている馬が爪黄飛電にかわっとるのは昭が

託したんやな、馬託せるほど話せるなら大丈夫やろ。これで心配は全部無くなった

涼州では戦えんかったが、惇ちゃんを唸らせるほどの武を見せてもらおうやないか

 

「さっきからウチのこと挑発しおって、そんなに死にたいんなら殺したらぁ」

 

中央から一気に走り抜け兵を突き殺す韓遂に追いつき偃月刀が上段から襲い掛かる

 

来おったか、挑発などに乗るようではまだまだよ。俺の闘いを見て前に出たことを後悔するが良い

 

韓遂は右脚を鐙から外し、馬の鞍に取り付けられた突起に固定させサイドサドルの格好を取る

そして瞬時に槍を回転させ偃月刀を弾き、その反動を使い槍で馬を扶助し逆側の敵兵を突き殺す

一つの行動が三つの動作を生み、兵を次々に突き殺していく

 

「なっ、ウチと戦いながら兵をっ!それになんやその乗り方っ!?」

 

「どんどん攻撃して来い、貴様の攻撃で仲間が死ぬのだ。だが俺を倒さねば貴様の兵はただ死んでいくぞ」

 

「ちっ、ウチらに寄るな。距離を開けるんや」

 

霞の指示で兵たちは素早く周りから距離を開け、まるでその場は二人だけの空間であるとばかりに

混戦する兵たちの中でぽっかりと穴を開けた

 

「兵を退いたか、それでは俺の手数が増えるだけよ。貴様に俺の槍が捌ききれるか?」

 

「なめるなよオッサン、神速の偃月刀をみせたるわっ!」

 

偃月刀を一度片手で振り回すと馬上から凄まじい速さの斬撃が繰り出される

左右上下、縦横無尽に走る斬撃を起用に槍でいなし、跳ね返った槍で馬の腹を叩き

扶助していく

 

「その程度か、神速が聞いて呆れるわ」

 

「なかなかやるやないか、ほんなら本気で行くで・・・はぁっ!!」

 

気合を込めて両足を馬の腹にしっかりと挟めて固定すると、偃月刀は更に加速し

韓遂の槍が次第に追いつかなくなっていく、弾いた槍には直ぐに返す刀が覆いかぶさり

次第に槍が偃月刀に振り回されていってしまう

 

「どうやっ!このままあんたを切り刻んだる」

 

韓遂は弾かれ振り回される槍を見ながら、口の端がゆっくりと持ち上がる。まるで子供が新しいおもちゃを

見つけたような無邪気な笑顔で口に咥える手綱を放し、チッチッと舌鼓を打ち始め馬を扶助し始める

 

「な、なんや?」

 

「楽しいなぁ、夏候惇で腹いっぱいになったと思ったが喰い足りんようだ」

 

霞の表情はだんだんと驚きに変わっていく、今まで槍で扶助していたことを今度は舌鼓でやり始め

馬はその音で韓遂の思い通りに動いていく、霞の目には今まで見たことも聞いたことも無い

馬の乗り方、そして操り方が目の前で繰り出されその美しい動きに魅せられてしまっていた

 

「それが西涼の馬の操り方かっ!」

 

「これは俺独自の乗り方よ、鉄心も真似したが俺ほどではない。さぁこれで俺の槍はお前を攻撃するだけに

なったぞ」

 

 

 

 

ニヤリと更に顔を笑みに変えると、鞍に取り付けた突起と鐙を挟み込むように力を入れた

そこからはギリギリと締め付けられる音がなり、完全に馬に体を固定させた韓遂は顔を顔を真っ赤にすると

凄まじい速さで槍を放つ

 

ギギギギギギギギギギギギギンッ

 

削り取るような金属音が鳴り響く、直線の槍と薙ぎ払う刀ではいくら霞の攻撃が早くとも距離の差が出てしまい

次第に押し負けていってしまう

 

「くっ、早いっ!」

 

「神速に早いなどと言われるとは、また一つ鉄心に土産が出来た」

 

「ちいっ、ほんなら今すぐ送ったるわっ!」

 

霞は振り回す偃月刀を大きく振り、韓遂の槍を一瞬弾き上げると構えを槍のように変えて

韓遂と同じように凄まじい速さで突きを放つ

 

槍と偃月刀は火花を散らしてぶつかり合う、御互いの意地と意地のぶつかり合い

己の技に絶対の自信を持つ韓遂と己の速さにゆるぎない誇りを持つ霞が一歩も退かずに

何十合と言う数を討ち合っていく

 

「こ・・・・・・のっ」

 

「フンッ!」

 

流石の韓遂も神速と歌われる霞の偃月刀の手数には追いつかず、少しずつ鎧を削り頬を斬られ

額の皮を切り裂いていく、そしてバギンッ!と言う音と共に兜が吹き飛ばされると、笑みを絶やさず流れ落ちる血を

舌で舐め取る

 

「クククッ、はーっはっはっはっはっ!!」

 

韓遂は大きな笑い声を上げながら心底楽しそうに笑い、傷つく体を気にする事無くなおも槍を放ち続けた

その鬼気迫る姿を見ながら霞は体が振るえ、鳥肌が立つ。そして霞の口も釣り上がり笑みを濃くしていく

 

「あんたも惇ちゃんとおんなじ修羅か・・・熱いなぁ、韓遂あんた熱過ぎるくらいやっ!」

 

「貴様も面白いっ!血が滾る将がもう一人、鉄心よあの世で悔しがるが良い!」

 

なおも御互いに武器を合わせ続け、またバギンッ!と派手な金属音と共に衝撃で二人の馬が寄れて

距離が離れる。霞は息一つ乱さずゆっくりと馬の態勢を立て直すと偃月刀を回して構えなおす

 

対する韓遂は馬の体制を体の重心移動で扶助し、立て直すと手に握る槍を見つめる

槍は穂先がへし折れてしまい、もはやただの棍となってしまっていた

 

「折れよったか、ウチの技と真桜の技術の勝や」

 

「なるほど、良い鍛冶師がいるようだな」

 

かすり傷だらけで血を流しニヤリと笑うと、韓遂は圧し折れた槍を脇にはさみ更に二つに折り

霞めがけ投げ放つ、瞬時に反応した霞は偃月刀で弾き飛ばした

 

「阿呆っ!苦し紛れにつまらんこと、うわっ!!」

 

二つに折った槍の一本が霞の馬の頭に直撃し、馬は駆けながら崩れ落ちていく

霞はとっさに馬から飛び降り、駆け去っていく韓遂を睨みつけた

 

「すまんな、貴様と戦っていたいが兵を逃がすのが俺の仕事だ」

 

「くっそ!それが西涼の将がやることかっ!!」

 

「馬は殺しておらん、脳震盪だ脚を折らんように気をつけろ、お前との再戦も楽しみだ」

 

韓遂の言葉で振り返れば崩れた馬は直ぐさま立ち上がり、首を二、三度振ると霞に擦り寄ってくる

霞は馬の首を撫でて振り返れば韓遂は既に遠くに行っており、自分の兵達は自分が落馬したことで

完全に脚を止めてしまっていた

 

やられた、うちは完全に韓遂に魅入られていたっちゅうわけか。随分と敵歩兵も先にいっとる

 

まだ食いついてるんは一馬が率いる騎馬三十か、一馬の馬術についていけるんはあの三十しかおらん

一馬の助けに回るか、韓遂はこれ以上突付いてもしゃあない。あれほど行ってもうたら追いかけても

敵の領土深く入って返り討ちになるだけや、向こうの援軍が更にあるかもしれんからな

 

「うちらはこれから一馬の援護に行く、伝令、華琳にこれ以上は追撃不可能と伝えるんや」

 

相手は馬超か、昭が義妹にしたゆうてたがどれほどの実力なんか楽しみや。馬に乗ってて

一馬がそう簡単にやられるとは思わんが、気いつけとって損はない何と言っても英雄の娘やからな

 

「さぁ行くでっ!馬超にウチらの騎兵の恐ろしさをたっぷり教えたれ!」

 

『『応っ!』』

 


 
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